1970年代仕様 ”GJT” の最終盤
グレート・ジャズ・トリオ(The Great Jazz Trio・以降「GJT」と略)。ピアノのハンク・ジョーンズをリーダーとして、ベースにロン・カーター、ドラムにトニー・ウィリアムスのピアノ・トリオ。
1918年7月生まれで最年長のピアノのハンク・ジョーンズと、1945年12月生まれで最年少のトニー・ウィリアムスとの年齢差は「27歳」。真ん中のロン・カーターが1937年5月生まれだから、ハンクとの年齢差は「19歳」で、トニーとの年齢差は「8歳」。
年長の兄貴格のロンと弟格のトニー、その二人に君臨する父親格のハンクという図式になる。しかしながら、このGJT、発案は一番年下のトニー・ウィリアムス。マイルス・バンド出身、当時、ジャズ界で先進的なリズム&ビートの担い手であったロン&トニーと、モダンかつ典雅なタッチが個性のベテラン、ハンクのピアノの組合せが実に新鮮だった。
The Great Jazz Trio『The Great Tokyo Meeting』(写真左)。1978年7月31日の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Jones (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。1978年7月29日、田園コロシアム「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」での伝説のライブから2日後の東京でのスタジオ録音。
GJTのアルバムの中で、一番、リラックスした、一番、ジェントリーなパフォーマンスを記録した盤。6枚目のアルバムからして、もうGJTはやることが無くなったのだろう、と揶揄されることがほとんどの盤である。が、聴き直した時に、常に思うのが、そんなに酷評される盤なのかしら、である。
トニーの「ど派手」なドラミングが「ど派手」を封印して、シャープで切れ味の良い、タイトなドラミングになっているだけで、ロンのベースとハンクのピアノは変わらない。
トニーのドラミングの雰囲気に合わせて、ハンクがバップ・ピアノを硬軟自在に変化させ、ロンがモーダルなベースラインを供給する、というのが「GJT」の基本。
しかし、この盤では、トニーのシャープで切れ味の良い、タイトなドラミングにハンクがジャスト・フィットした、バップ・ピアノを弾き回し、ロンが以前と変わらず、モーダルなベースラインを供給する、と言った雰囲気。やることが無くなった、どころか、新しいGJTの提示ではないか、と僕は感じ続けている。
トニーのシャープで切れ味の良い、タイトなドラミングに、従来、典雅で黒いハンクのピアノが映えに映えているし、ロンのモーダルなベースラインも、タイトでソリッドな音色が新しいアクセントになっている。
僕はこの新しいGJTの提示を好意的に聴く。冒頭の「Pink Lady」からラストの「To Destiny」まで、実はGJTのメンバーの自作曲で占められているのも、このアルバムの特徴。なかなかの佳曲ばかりで、トニーのシャープで切れ味の良い、タイトなドラミングがリードする、新しいイメージのGJTにぴったりの楽曲ばかりである。
従来のトニーの「ど派手」なドラミングがリードする、ド派手なハードバップなGJTから、ガラッとイメージが変わったので、当時のジャズ者の方々は、GJTは過去のものになった、と感じたのでは無いだろうか。
実際、この盤はリリース当時、まったく「ウケなかった」。酷評につぐ酷評であったことを覚えているが、21世紀になった「今の耳」で聴くと、そんなに酷評される盤では無い様に思う。
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