2026年4月 7日 (火曜日)

良好な発掘盤 ”Flight to Norway”

哀愁のバップ・ピアニスト、デューク・ジョーダン。1970年代、彼の復活作が『Flight to Denmark』。SteepleChaseレコードのジョーダンのリーダー作には、このヒット・アルバムのタイトルにあやかった「Flight to 〜」で始まるタイトルのアルバムが2枚かある。その一枚がこれ。

Duke Jordan『Flight to Norway』(写真左)。1978年11月10日、ノルウェー、ホヴィコッデンのアートセンターにてのライヴ録音。2003年、SteepleChaseレコードからのリリース。

ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Wilbur Little (b), Dannie Richmond (ds) 。2003年に突如リリースされた、デューク・ジョーダン・トリオの「良質な内容の蔵出し発掘ライヴ盤」である。

録音年から、25年経ってのリリースである。恐らく、演奏の内容は良いのだが、何か録音に問題があったんだろうな、と当たりをつけて聴き始める。なるほど、ドラムの音量が大きすぎたり、ベースの音量が小さすぎたり、お蔵入りライヴ音源の「あるある」の状態なんだけど、デューク・ジョーダンのパフォーマンスは良好。
 

Duke-jordanflight-to-norway

 
ジョーダンのピアノの個性である、フレーズ展開のセンスが抜群、メロディアスで、ハーモニーに富み、抑制と優雅さを兼ね備えたスウィング感が良好。基本はバップ・ピアノ。どの演奏も、疾走感溢れ、軽快にスイング、バップらしいメリハリの効いたもの。ピアノ・トリオ演奏のお手本の様なパフォーマンス。

演奏の内容については、やはり、スタンダード曲のアレンジと解釈が抜群に良い。5曲目の「I Should Care」。バップ・ピアノでありながら、どこか気品漂う、クールでジャジーな弾き回しが絶品。

ジョーダンのオリジナル曲も当然良い感じ。底抜けに明るく軽快な、冒頭の「Jealous Blues」。日本の新幹線にインスパイアされた、ジョーダンの4曲目「The Bullet」。10曲目「On Green Dolphin Street」は、僕の大好きなスタンダード曲なのだが、イントロの作りが実にお洒落。

ベースのリトルとドラムのリッチモンドは、反応の良い、玄人好みのリズム隊。ジョーダンのオンビートなフレーズに適応して、ジョーダンのピアノを支え、鼓舞する。録音バランスの問題はあるが、ジョーダン・トリオの良いところを捉えた、なかなかのピアノ・トリオ盤である。
 
 

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2026年4月 6日 (月曜日)

ジョーダンの ”Flight to Japan”

デューク・ジョーダン(Duke Jordan)。バップ・ピアノの名手であり、名作曲家出会ったが、デビュー以来、NYの時代は不遇の時代。とにかく売れない。1960年代半ばにはニューヨークでタクシー運転手をしていた時期もあった。しかし、973年北欧のスティープルチェイスに移籍、欧州での「ハードバップ・リバイバル」の流行に乗って、ジョーダンは人気ピアニストに。

Duke Jordan『Flight to Japan』(写真左)。1976年9月25日、東京の「Victor Studios」での録音。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Wilbur Little (b), Roy Haynes (ds)。東京・吉祥寺にあるクラブ「サムタイム」に出演した後、翌日の深夜2時にスタジオ入りし、夜明けまでにレコーディングを終了したという逸話の残る、ピアノ・トリオの佳作。

ジョーダンのピアノは明らかに「哀愁」が漂う。ジャズってマイナー・キーが多用されるのだから、誰が弾いたって「哀愁」が漂うでしょうが、と思われるのだが、これが違う。ジョーダンのピアノだけが突出して「哀愁」が漂うのだ。ブルージーで哀愁漂う「オン・ビート」のバップ・ピアノ。この「オン・ビート」の弾き回しが、最大の個性だと僕は思っている。
 

Duke-jordanflight-to-japan  

 
この盤、ジョーダンのオリジナル曲がほとんど。さすが、ジャズの名作曲家の一人。良い曲ばかりで、自作曲であるが故、アドリブ展開なんかも、スムーズで魅力的なフレーズをバンバン叩き出している。しかし、6曲目の「I Can't Get Started」だけがスタンダード曲なのだが、この演奏が、このトリオ盤の中で白眉の出来。さすが、バップ・ピアニストの第一人者の一人、スタンダード曲の解釈については、一目置くところがある。

曲目をみると「Love Hotel」や「The Bullet(Shinkansen)」なんていう曲もあって、思わず苦笑するが、曲としては良い曲、良い演奏だからまあいいか(笑)。「Lullaby of the Orient」は、日本滞在中に作ったジョーダンのオリジナルで、クミコという若い女性ファンの為に書かれたそう。「Stone Wall Blues」では、冒頭、当時、国鉄の車内放送のジングル「汽笛一声新橋を」から始まるユニークなアレンジ。

1970年代に、スティープルチェイス・レーベルに残したリーダー作は良好盤ばかりで駄盤が無い。スティープル・チェイスの総帥ディレクター、ニルス・ウィンターがデューク・ジョーダンの才能を高く評価していたこと、そして、なにより、双方の相性が相当良かったのだろう。この『Flight to Japan』もその例に漏れない。高レベルを維持したジョーダンの佳作。
 
 

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2026年3月28日 (土曜日)

復帰後8枚目、好調ジョーダン

NY時代、不遇だった哀愁のピアニスト、デューク・ジョーダン。1962年の『East and West of Jazz』以降、1960年代半ばにはニューヨークでタクシー運転手をしていた時期もあった。1973年の『Brooklyn Brothers』でカムバック。1973年北欧のスティープルチェイスに移籍し、『Flight to Denmark』で完全復活を果たし、この盤は、11年のブランクを経て復帰後、8枚目のリーダー・アルバムになる。

Duke Jordan『Misty Thursday』(写真左)。June 30, 1975年6月30日、NYCでの録音。 SteepleChaseレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Chuck Wayne (g), Sam Jones (b), Roy Haynes (ds)。ピアノ・トリオにギター入りのカルテット編成。

ギターにチャック・ウェインが参加している。チャック・ウェインは、1940年代に頭角を現し、ビバップ・スタイルで演奏した初期のジャズギタリストの一人。ちょっと録音バランスが悪くて、ギターの音が大きく録音されているが、ジョーダンのバップ・スタイルのピアノとの相性が良く、そんなに五月蠅いとは感じ無い。
 

Duke-jordanmisty-thursday

 
ジョーダンのピアノは好調を維持している。ジョーダンのピアノは「オン・ビート」。頭拍子、頭打ちでのフレーズの弾き回しである。バックのリズム隊はオフ・ビート。フロントのピアノはオン・ビート。この状態で哀愁感溢れるフレーズをキメまくるので、嫌が応にも、ジョーダンのフレーズが印象に残る。フレーズがビートに埋もれず、前に出るのだ。

そのリズム隊、サム・ジョーンズのベース、ロイ・ヘインズのドラムが実に良い味を出している。このリズム隊のパフォーマンスが、ジョーダンのピアノを映えに映えさせている。実はこのリーダー作から、北欧の老舗レーベル、スティープル・チェイスの録音でありながら、ジョーダンはNY録音に切り替えている。そのせいで、リズム隊も総替え。NY在住のリズム隊で以降録音しているのだが、これが当たるのだから面白い。

スティープルチェイスでのジョーダンのリーダー作は外れが無い。ジョーダンのピアノも好調で、どのリーダー作を聴いても、出来にバラツキが無いのは立派。1980年代からのキース・ジャレットのスタンダーズがウケるのであれば、1970年代のスティープルチェイスのジョーダンも、もっとウケても良いと思うのだが。如何だろう。
 
 

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2026年3月21日 (土曜日)

1966年のマクリーン・その2

録音年月日、録音場所を見ると、昨日、当ブログでご紹介した『Dr. Jackle』と同一日、同一場所のライヴ音源になる。記録を見てみると、『Dr. Jackle』の収録曲からの流れで、この『Tune Up』の収録曲になっているみたい。記録によると、1966年12月18日、米国ボルチモアのジャズ・ソシエティ「Left Bank」でのライヴ音源は全11曲。そのうち、前半5曲が『Dr. Jackle』に、後半6曲が『Tune Up』に収録されている。

Jackie McLean『Tune Up』(写真左)。1966年12月18日、米国ボルチモアのジャズ・ソシエティ「Left Bank」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、SteepleChase Recordsから1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), LaMont Johnson (p), Scotty Holt (b), Billy Higgins (ds)。

つまり、『Dr. Jackle』と、この『Tune Up』を併せて、1966年のジャキー・マクリーンのライヴ・パフォーマンスが体験出来るということ。こちらのパフォーマンスも、マクリーン流のモード・ジャズをガンガンに展開している。限りなくフリーに近いが、しっかりと秩序と統制がとれたモード。マクリーンの考える「限りなくフリーに近いモード」。マクリーンのオリジナルである。
 

Jackie-mcleantune-up

 
雰囲気的には、エリック・ドルフィーのパフォーマンスに類似性がある。ドルフィーは、フレーズが、セロニアス・モンクのピアノの様に「飛んだり跳ねたり」するが、マクリーンは流麗。しかし、二人とも、それぞれなりに「人が吹かないフレーズ」を吹きまくる。決して「フリー」ではない。あくまで、秩序があり、統制がとれた、クールで熱い吹奏である。

バックのリズム・セクションが、オーネットのバンド・メンバーというのも興味深い。オーネットのバンド・メンバーを借りてきているのであれば、オーネット流のフリーな吹奏を踏襲するのでは、と思いきや、マクリーンはそうなならない。あくまで、マクリーン流の「限りなくフリーに近いが、しっかりと秩序と統制がとれたモード」なフレーズを吹きまくる。

こういうところに、マクリーンの矜持を感じる。決して、人後に落ちない、あくまで、その時代その時代のジャズの演奏トレンドをいち早く押さえつつ、オリジナルな自分の個性的な吹奏を追求する。進化するアルト・サックス奏者、マクリーンの面目躍如的なライヴ・パフォーマンスがこの盤にも記録されている。録音が少し悪いが気にならない。マクリーンのパフォーマンスが圧倒的である。
 
 

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2026年3月20日 (金曜日)

1966年のマクリーンのライヴ盤

北欧の老舗ジャズ・レーベルである「スティープルチェイス・レコード」からのリリースなので、ホームグラウンドのコペンハーゲンの「カフェ・モンマルトル」のライヴ録音かとおもいきや、1966年、米国ボルチモアでのライヴ録音である。恐らく、ライヴ音源をスティープルチェイスが買い取って、録音から13年後の1979年にリリースしたものと思われる。

Jackie McLean『Dr. Jackle』(写真左)。1966年12月18日、米国ボルチモアのジャズ・ソシエティ「Left Bank」でのライヴ録音。SteepleChase Recordsから1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), LaMont Johnson (p), Scotty Holt (b), Billy Higgins (ds)。進化するアルト・サックスの雄、ジャキー・マクリーンがフロント1管のワンホーン・カルテットである。

つまり、このライヴ盤では、1960年代半ば辺りの、進化するアルト・サックス奏者、ジャキー・マクリーンのパフォーマンスが聴ける貴重なライヴ音源ではある。1960年代半ば辺りのマクリーンと言えば、ブルーノートでのスタジオ録音『Consequence』(1965年12月3日録音)、『New and Old Gospel』(1967年3月24日録音)の間、確かに、マクリーンのディスコグラフィーからすると、1966年の録音がごっそり抜けている。そういう意味で、このスティープルチェイスのリリースは意味があったことになる。
 

Jackie-mcleandr-jackle

 
ここでのマクリーンは、マクリーン流のモード・ジャズをガンガンに展開している。限りなくフリーに近いが、しっかりと秩序と統制がとれたモード。コルトレーンのようだ、という形容する人がいるが、これは違う。聴いていると、エリック・ドルフィーが浮かぶ。ドルフィーほど、飛んだり跳ねたりしない。マクリーンは流れる様な、人が吹かないフレーズを連発する。この人が吹かないフレーズを吹くところは、ドルフィーとよく似ている様に感じる。

バックのトリオはオーネットのバンド・メンバー。限りなくフリーに近いモーダルな展開にしっかり適応している様は見事。マクリーンのフレーズの個性をしっかり捉えて、マクリーンのフレーズ展開にしっかり追従するリズム&ビートはなかなかのもの。その適応力はレギュラー・バンドと言っても良い位である

マクリーンと言えば、初期はプレスティッジ、1959年からはブルーノートで、このプレスティッジ&ブルーノートーという印象が強いが、1970年代は、スティープルチェイスの時代。北欧コペンハーゲンの「モンマルトル」でのライヴ音源をはじめ、欧州ナイズされた「進化するマクリーン」が聴ける。このライヴ盤は、その前触れ的位置づけの米国録音のライブ音源である。ひたむきなマクリーンが恰好良い。
 
 

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2025年12月 8日 (月曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 118

ジャズの好盤は、なにも、ジャズの歴史に名を残した、一流ジャズマンだけが創り出したのでは無い。意外と無名に近いジャズマンが、ある日突然、一瞬の輝きの様に、素晴らしい好盤を残すことがある。その好盤がジャズ評論家の誰かが見出して、その当時は好盤として評価されるが、時が経つにつれ、その評価の印象が、忘却の彼方に埋もれてしまった好盤は沢山ある。

Albert Dailey Trio『That Old Feeling』(写真左)。1978年7月13日の録音。スティープルチェイス・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Albert Dailey (p), Buster Williams (b), Billy Hart (ds)。優れたピアニストでありながら、生涯を通して完全に無視され評価されることの無かった不遇のピアニストの1人、アルバート・デイリーのトリオ盤。

アルバート・デイリーは1939年、ボルチモア生まれ。1968年から1969年にかけてはアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズにも断続的に参加、1970年代、デイリーはソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツ、エルヴィン・ジョーンズ、アーチー・シェップらと共演。しかし、特に注目されることも無く、1984年、45歳で死去してしまう。リーダー作はたった5枚。しかも、今でもサブスク等で聴くことの出来るリーダー作は、1970年代の3枚のみ。

その3枚の中でも、このスティープルチェイスから『That Old Feeling』は、ピアノ・トリオの演奏ということもあって、アルバート・デイリーのピアノの個性と、その優れた実力が、とても良く判る内容になっている。
 

Albert-dailey-triothat-old-feeling

 
というか、これ1枚だけがデイリーのジャズ・ピアニストとしての実力を推し量れる好盤と言える。バックのリズム隊のバスター・ウイリアムスのベース、ビリー・ハートのドラムが、そのデイリーの実力を前面に推し出している。

熱のこもったトリオ演奏。タイム感覚とハーモニー感覚、そして、フレーズ展開において、オリジナリティ溢れる多様性と独創性を発揮、バリバリ、モーダルに弾きまくるポスト・バップな展開。このデイリーのピアノの弾き回しは唯一無二。速いフレーズは疾走感に溢れ、左手のコードは演奏全体の推進力。そんな個性的なピアノが冒頭の「Music That Makes Me Dance」から全開。

続く「Lover Man」のバラード演奏での表現も個性的。繊細なタッチでバラードなフレーズを弾き始め、演奏が進むにつれ、硬質で美しいピアノの響きで、徐々にテンポが上がり、独特のハーモニーとタイム感覚で、この有名スタンダード曲「Lover Man」を、デイリー独特の解釈で弾き上げていく。見事という他ないパフォーマンス。

3曲目の有名スタンダード曲「Yesterdays」、4曲目のレノン=マッカートニーの「Michelle」そして、続く「That Old Feeling」「Body and Soul」「Night and Day」など、ハードバップ時代に「手垢の付いた」スタンダード曲でのテンポを上げた弾き回しも見事。デイリーの個性が満載。デイリーの唯一無二はフレーズの弾き回しがてんこ盛り。

聴き終えれば、スタンダード曲を中心に、デイリーの個性的なピアノが確認出来、堪能出来る。非常に優れたトリオ盤であることに気が付く。デイリーのトリオ演奏の秀作はこの盤だけだが、この盤も謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」の1枚とさせていただきたい。
 
 

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2025年11月29日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 116

当時、バリー・ハリスは65歳。円熟の境地、大ベテランの域に達した「バップ・ピアノの職人」の、成熟した味わい深いバップ・ピアノを聴くことが出来る。硬質でハッキリしたタッチの右手の弾き回しのリズム&ビートを、左手のコード弾きが押さえていく。左手のリズム&ビートに乗った、雄弁で流麗でバップな右手が唄いまくる。

『Barry Harris Live At "Dug"』(写真左)。1995年5月29日、東京新宿のバー「Dug」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Barry Harris (p), Kunimitsu Inaba (b), Fumio Watanabe (ds)。バップ・ピアノの職人、バリー・ハリスの、ベーシストの稲葉邦光とドラマーの渡辺文夫とのトリオでの東京におけるライヴ録音。

このライヴ盤では、硬質でハッキリしたタッチの右手の弾き回しが「心地良く丸くなった」。左手のコード弾きが「深遠な響きになった」。歳を取って衰えたわけでは無い。

バップ・ピアノとしての表現が「深くなった、深化した」と表現した方が適切だろう。指の弾き回しも衰えていない、リズム感は淀むことは皆無。バップ・ピアノの「正しく成熟した音」の好例の一つ。
 

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収録曲は全10曲。2曲はバリー・ハリスの自作曲。残り8曲はスタンダード曲。有名どころから、渋い選曲まで、なかなか考えた選曲で、バリー・ハリスのバップ・ピアノが映える寸法。「Somebody Loves Me」「It Could Happen to You」「Cherokee」そして「On Green Dolphin Street」等々、絶品のスタンダード解釈とパフォーマンス。

バックを務めるリズム隊、ベーシストの稲葉邦光とドラマーの渡辺文夫も、バップなリズム隊を好演。出過ぎず、控えすぎず、バリー・ハリスの弾く曲想によって、自在にリズム&ビートをチェンジ・オブ・ペースし、適度にハリスのピアノの支え、鼓舞する。まるで、レギュラー・バンドの仲であるかのように。

『バリー・ハリス/ライヴ・アット・ダグ 完全版』(写真右)が、2014年6月にCD2枚組でリイシューされている。オリジナル盤とは当然曲順も違うので、聴いてみても、どうもしっくり来ない(笑)。僕はどうも、このオリジナル盤の方がしっくりくるみたい。

ハリスは、1993年に脳梗塞になり、復帰が危ぶまれたが、再起を果たした後の来日でのライヴ録音だったとか。そんなことを微塵も感じさせない、バリー・ハリスの快作である。
 
 

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2024年2月16日 (金曜日)

流麗バップで粹な『Lover Man』

長年、デューク・ジョーダン(Duke Jordan)のピアノがお気に入り。ジャズを聴き始めた頃に、ジョーダンの名盤『Flight to Denmark』に出会って、ジョーダンのピアノと曲がお気に入りになった。ブルージーで哀愁漂う「オン・ビート」のバップ・ピアノ。この「オン・ビート」の弾き回しが、最大の個性だと僕は思っている。

Duke Jordan『Lover Man』(写真)。1975年11月18日、NYCでの録音。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Sam Jones (b), Al Foster (ds)。エレ・マイルスの要であったアル・フォスターのドラム、60年代後半のピーターソン・トリオのベーシスト、サム・ジョーンズのベースのドラムが耳新しい、ジョーダン・トリオの秀作。

ドラムがアル・フォスター、ベースがサム・ジョーンズになったからと言って、ジョーダンのピアノの個性と特徴、弾きっぷりが変わる訳では無い。逆に、ドラムのアル・フォスターとベースのサム・ジョーンズが、ジョーダンのピアノの個性と特徴、弾きっぷりを十分に理解して、ジョーダンのピアノが引き立つリズム&ビートを供給する様が、この盤の聴きどころ。
 

Duke-jordanlover-man

 
そして、そんなドラムのアル・フォスターとベースのサム・ジョーンズのリズム&ビートを得て、ジョーダンのピアノは、よりダイナミックで明確なタッチ、反面、歌心溢れる叙情的な「流麗バップな」ピアノを弾き進めている。とりわけ、スタンダード曲の解釈とアレンジが聴きもので、タイトル曲の「Lover Man」など、惚れ惚れと聴き込んでしまう。

ジョーダンの自作曲も良い。2曲目の「Dancer's Call」、続く3曲目の「Love Train」がそうなのだが、良い曲書くなあ、と感心する。しかも、ジョーダンのピアノは自作曲でより輝く。思いっきり「オン・ビート」のピアノが美しい。そして、CDリイシュー時のボートラ2曲中の1曲、アル・フォスター作の「Sea」が独特の個性を振りまいている。この1曲だけは、CDリイシュー時のボートラの恩恵。

ジョーダンは、自らのピアノの個性や特徴を変えることは絶対に無い類のピアニスト。リーダー作を重ねていくとマンネリ化する恐れが大。そこは、フロント管を1〜2本追加して、カルテット、もしくはクインテットと編成を変える、もしくは、トリオの場合は、ベーシストとドラマーを変えて、リズム&ビートのニュアンスを変える、のどちらかで回避する訳だが、この盤の場合は「後者」。ドラムのアル・フォスターとベースのサム・ジョーンズのリズム&ビートの人選が、ものの見事に成功している。
 
 

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2022年12月 1日 (木曜日)

ジョーダンとファーマーの共演盤

デューク・ジョーダン(Duke Jordan)。欧州に渡った後、1970年代に、スティープルチェイス・レーベルに残したリーダー作は良好盤ばかりで駄盤が無い。スティープル・チェイスの総帥ディレクター、ニルス・ウィンターがデューク・ジョーダンの才能を高く評価していたこと、そして、なにより、双方の相性が相当良かったのだろう。

Duke Jordan『Duke's Artistry』(写真)。1978年6月30日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Art Farmer (flh), David Friesen (b), Philly Joe Jones (ds)。フロント管にアート・ファーマーのフリューゲルホーン1管のカルテット編成。ファーマーのフリューゲルホーンが優しく唄い上げ、ジョーダンのピアノのバッキングの巧みさ、そして、ジョーダンの書く曲の良さが、とても良く判る盤である。

全曲デュークによりオリジナル曲で占められており、これがまた、どの曲も出来が良い。作曲家としてのデューク・ジョーダンの才能を改めて認識出来る内容。この良き曲に恵まれて、ファーマーの暖かくて丸みのある、それでいて、相当にテクニカルで力感溢れるフリューゲルホーンが映えに映える。
 

Duke-jordandukes-artistry

 
デューク・ジョーダンのピアノ、デイヴィット・フリーゼンのベース、フィリー・ジョーのドラムによるトリオのバッキングがこれまた見事。特に、ジョーダンの伴奏上手なピアノには感心する。フリーゼンのベースは厚みのある骨太な音で堅実、そして、フィリージョーは意外と整ったバップ・ドラミングで、リズム&ビートを供給する。

ジョーダンの曲はどれもが「ユッタリ&シットリ」していて、どの曲も良好。5曲目の「Lady Dingbat」はバラード曲。ジョーダンのバラード曲は絶品。ジョーダンのピアノがイントロから映えに映える。ファーマーの丸いフリューゲルホーンによるアドリブ展開も優しくて良し。そうそう、ブルース曲も良いですね。ラストの「Dodge City Roots」など、小粋で格好良くて、気品溢れる展開が聴き応え十分。

この盤、裏面の解説を紐解くと、ファーマーが当日夕刻のフライトで移動するという、相当タイトなスケジュールの中の録音だった様です。そんな中、リーダーのデューク・ジョーダンの周到な準備によって、メンバー集まり次第、即、録音に臨むことが出来、1曲当たり多くても2テイク、トータルで2時間で録音を完了したとのこと。そんなタイトな録音環境を全く感じさせ無い、とても充実した内容のアルバムです。
 
 

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2022年3月24日 (木曜日)

ジョーダンの曲の良さを愛でる

ハードバップ時代、ジャズ曲の作曲の名手というのが幾人かいる。デューク・ジョーダンなどは、そんな名手の1人。「Jordu」「No Problem(危険な関係のブルース)」など、完全にスタンダード曲化した名曲は数知れず。どっぷりマイナーで哀愁滲む泣き節フレーズがてんこ盛りのジョーダンの自作曲の数々は、とにかく「ジャズらしい」のだ。

Duke Jordan『Duke's Delight』(写真)。1975年11月18日、NYの「C. I. Recording Studios」での録音。スティープルチェイス・レーベルの1046番。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Richard Williams (tp), Charlie Rouse (ts), Sam Jones (b), Al Foster (ds)。リチャード・ウィリアムスのトランペットと、チャーリー・ラウズのテナー・サックスがフロント2管のクインテット編成。

2曲目の「(In My) Solitude」のみ、スタンダード曲であり、ジョーダンのピアノのソロ演奏。その他全て、デューク・ジョーダンの作曲。このジョーダンの自作曲の出来が非常に良い。同じ編成の名盤、ブルーノートの『Flight to Jordan』もそうだったが、ジョーダンの手になる曲は、どれもが内容があって素晴らしい。マイナー調で攻めまくり、哀愁感だだ漏れ、それでいて、フレーズは凛としていてキャッチャー。思わず引き込まれてしまうほどのブルージーでジャジーな旋律。
 

Dukes-delight_duke-jordan

 
そう、ジョーダンの書く曲はどれもが「ジャズらしい」のだ。これぞ「ジャズ曲」という雰囲気が濃厚に漂う、ジョーダンの自作曲。ジョーダンのリーダー作には、ジョーダンの書く曲が一番フィットする。当然、ジョーダンのピアノは、ジョーダン曲にピッタリとマッチする(当たり前か)。ジョーダンの端正で骨太なタッチに、ジョーダン作の凛としてキャッチャーな楽曲が良く似合う。

ジョーダン作の曲のフレーズが美しいので、恐らく、それを吹いたらきっと楽しいんだろう。リチャード・ウィリアムスのトランペットと、チャーリー・ラウズのテナー・サックスのフロント2管は活き活きとして、実に楽しそうに吹きまくっている。特に「隠れ名手」のリチャード・ウィリアムスのトランペットが、流麗かつ凛とした音色で活き活きと吹きまくっているのが印象的。

そうそう、渋う渋いテナー・マンのチャーリー・ラウズも何時になく楽しげにサックスを吹き上げてます。サム・ジョーンズも何時になくモダンなベースをブンブン弾きまくってるし、アル・フォスターのドラムもジャジーの極み。そう、このアルバム、ジョーダンの自作曲を渋い渋いパーソネルでの演奏によって思いっ切り引き立たせ、ジョーダン作曲の曲の良さを思いっ切り愛でまくることが出来る、そんなアルバムです。
 
 

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