2021年6月11日 (金曜日)

爽快感抜群の「TPサウンド」

雑誌 Jazz Life の「Disc Grand Prix 年間グランプリ」の記事を読んでいて、懐かしいバンドの名前に出くわした。「Tower of Power(タワー・オブ・パワー)」である。凄く懐かしいバンド名。「タワー・オブ・パワー」は、米国カリフォルニア州オークランドを起源とした「ファンク+R&B」志向のホーン・セクション&バンド。1970年のデビュー。

特にホーン・セクションの威力抜群で、1970年代前半は「ブラス・ロック」なんて形容されていた。しかし、ベースはソウル・ミュージック志向のジャズ・ファンクで、採用されたリズム&ビートは明らかに「ジャズ」。ただロック風の展開もあるので、音の位置づけとしては、ホーン・セクションを駆使したクロスオーバー・ジャズ志向のファンク・バンドだろう。

さて、このタワー・オブ・パワー、活動の最盛期は1970年代前半から中盤。ディスコ・ブームに乗り遅れ、その名前は忘れられていったが、バンド活動は継続。2021年の現在もバンドは活動出来る状態で存在する。2018年『Soul Side of Town』が秀逸な出来で復活を印象付け、昨年のこの盤は、往年のタワー・オブ・パワーのアルバムの中でも白眉の出来。クロスオーバー・ジャズ志向のファンク+R&Bの音作りが今の耳に新鮮に響いている。
 

Step-up-tower-of-power
 

Tower of Power『Step Up』(写真左)。2020年3月のリリース。オリジナルメンバーである4人、エミリオ、スティーヴン“ドク”クプカ、デヴィッド・ガリバルディ、フランシス“ロッコ”プレスティアは健在。ほぼ現在のメンバーに落ち着いてから20 年以上経つとのこと。当然、出てくる音は1970年代に僕が聴き親しんだ「TPサウンド」。

音作りの傾向から、前作『SOUL SIDE OF TOWN』と対をなす「兄弟盤」と言える。もともと、2016年夏の時点で優にアルバム2枚分の楽曲をレコーディングしており、そこから13曲を仕上げて、前作『SOUL SIDE OF TOWN』に収録。残った中から再び13曲を完成させて、この新作『STEP UP』にした、ということらしい。

なるほど、音の志向&傾向が同じですよね。心地良い、1970年代から培ってきた「クロスオーバー・ジャズ志向のファンク+R&Bの音」が、これまた懐かしいホーン・セクションの独特のアレンジの下、鳴り響いている。良いアルバムです。純ジャズの合間に、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズの好盤を愛でる。爽快感抜群です。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》
 
 ★ AORの風に吹かれて        
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  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや


 
 
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2020年4月18日 (土曜日)

ジャズ・ファンクは格好良い

引きこもりの日常に加えて、今日は朝から大荒れの天気。結構な強い雨が降っていて、一日一回の散歩も出来ず、一日、新しいブログのコーナーを立ち上げていた。まあ、そんな話はともかく、春というのに、これだけ天気が悪いと気持ちも沈みがちになる。毎日の「ジャズ盤の聴き直し」もノリの良い曲が聴きたくなる。

ということで、真っ先に選んだ盤が「ジャズ・ファンク」。「ファンク・ジャズ」と「ジャズ・ファンク」、似たようなジャンル言葉があるが、僕は後ろの単語に重きを置いて解釈している。「ファンク・ジャズ」は、ファンクの要素を取り込んだジャズ、「ジャズ・ファンク」は、ジャズの要素を取り込んだファンク・ミュージック。今回は後者の好盤を選択。

Boogaloo Joe Jones『Right On Brother』(写真左)。1970年2月16日の録音。ちなみにパーソネルは、Boogaloo Joe Jones (g), Rusty Bryant (ts, as), Charles Earland (org), Jimmy Lewis (el-b), Bernard Purdie (ds)。いずれのメンバーも、ファンク・ミュージック畑の名うての名手達。ジャズ者の僕から見ると、名前に馴染みがあるのは、オルガンの「Charles Earland」とドラムの「Bernard Purdie」かな。
 
 
Right-on-brother  
 
 
全編に渡って、ブガルーのファンク・ギターが凄い。ダンサフルな曲はノリノリ、しっとりバラードな曲はしみじみ。かかるような、前のめりのカッティングが心地良い。高速ファンク「Brown Bag」のギター・ソロなんか、惚れ惚れするばかり。シンプルに8分音符で埋め尽くす様な短くリズミカルなフレーズの嵐。軽薄で格好良い、そんな形容がピッタリのファンク・ギター。

アーランドのオルガンは、思いっ切りソウルフル。加えて、ブガルーのファンク・ギターを惹き立てる様な、相性抜群の音が実に良い。ファクネスたっぷりに、高速ファンク曲は疾走感抜群に、バラード曲は情感溢れんばかりに、アーランドのオルガンが響き渡る。ブライアントのテナーもソウルフル。耳に馴染む、緩急自在のファンキー・サックスは抜群のグルーヴ感を醸し出す。

高速ファンク曲の合間合間に挟まっている「Things Ain't What They Used to Be」や「Let It Be Me」などのバラード曲も、ファンクネスだだ漏れの名演に、ただただ聴き惚れるばかり。単純に軽薄で格好良いジャズ・ファンク。メインストリーム・ジャズとは異なる、ポップでダンサフルなジャズ・ファンクは格好良い。思わず足で拍子を取りつつ、思わず腰が動く。気持ちもほっこり温かくなります。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 
 
 ★ AORの風に吹かれて 【更新しました】2020.04.18

  ・『Down Two Then Left』 1977
  ・『Silk Degrees』 1976

 ★ まだまだロックキッズ  2020.03.29更新。

  ・ELP「恐怖の頭脳改革」である

 ★ 青春のかけら達  2020.04.01更新。

  ・チューリップのセカンド盤の個性



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2018年11月23日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・134 『Soul Brothers』

ジャズ・ヴァイブのレジェンドと言えば、まずは「ミルト・ジャクソン(Milt Jackson)」。ジャジーでブルージーなヴァイブが身上で、テクニックは優秀、ファンクネス溢れるアドリブ・フレーズが最大の個性。伝説のカルテット、Modern Jazz Quartet(MJQ)の一員でも有名で、アーティステックでブルージーなヴァイブはMJQ、ファンクネス溢れる流麗なヴァイブはソロで、というのが定番。どちらが優秀ということでは無い。どちらもミルトの個性である。

そんなミルトの個性がふんだんに発揮された隠れ好盤がある。Milt Jackson & Ray Charles『Soul Brothers』(写真左)と『Soul Meeting』(写真右)。ソウル・ミュージックの大御所シンガー、レイ・チャールズとのコラボ盤である。『Soul Brothers』が1958年、『Soul Meeting』が1961年のリリースになる。このコラボ盤、ミルト・ジャクソンのヴァイブの個性を最大限に引き出しているのだ。

ソウル・ミュージックの大御所シンガーのレイは、ピアノとアルト・サックスでの参戦がメイン。1958年の『Soul Brothers』では正にアコピとエレピ、そしてアルト・サックスでの参戦でボーカルは全く無い。いわゆる、ジャズメン、レイ・チャールズとして、ジャズ・ヴァイブのレジェンドであるミルトと対峙している。で、これがまた絶品で、レイのジャズメンとしての才能も類い希なものがあったのだ。
 

Milt_jackson_ray_charles

 
1961年の『Soul Meeting』では、レイはアコピとボーカルでの参戦だが、ボーカルは全く控えめ。レイはピアニストとして、ミルトのヴァイブに対峙する。これがまた相性抜群で、二人の楽器演奏の底に流れる「ジャジー・ブルージー・ファンクネス」が共通の個性として共鳴し、増幅されるのだろう。2枚とも演奏される曲はブルースがメイン。こってこてファンキーでブルージーな演奏ばかりで思わずウットリ聴き惚れる。

そんな音環境での演奏である。ミルトのヴァイブもファンクネス全開。ソロ演奏での最大の個性である「ファンクネス溢れる流麗なヴァイブ」が炸裂している。決して、前に出るような派手なパフォーマンスでは無いんだが、クールに熱気溢れるアドリブ展開で、レイのブルージーなピアノに完全フィットするのだ。この二人、よほど相性が良かったんだろうなあ。聴いていてどこかウキウキしてくる。

バックのジャズメンも燻し銀のジャズ職人揃い。ギターにケニー・バレル、ドラムにコニー・ケイ、ベースにオスカー・ペティフォード。このギターメインのリズム・セクションが実に渋い。特に、ケニー・バレルの漆黒なファンキー・ギターは絶品。ミルトとレイの「ジャジー・ブルージー・ファンクネス」な個性に、しっかりと追従していて素晴らしい。この2枚、我が国ではあまり採り上げられませんが、お勧めの好盤です。

 
 

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2018年6月 9日 (土曜日)

ブルースとジャズの融合の好盤

ジャズのアルバムを続けざまに聴いていると、ちょっと「耳休め」に他のジャンルの音楽を聴きたくなる瞬間がある。もともと50年ほど前にはクラシック音楽に親しみ、45年ほど前にはロック小僧だった訳で、特に最近、歳をとったのであろう、70年代ロックやソウル、ブルースが無性に聴きたくなる時がある。

そういう時は無理せず「ジャズの合間の耳休め」盤として、そちらの好盤に耳を傾ける様にしている。ただし、ジャズの合間の耳休めなので、あまりジャズからかけ離れた音楽を聴くのは、ちょっと憚られる。この4〜5年、ジャズの合間の耳休めに聴く盤としては、米国ルーツ・ミュージック系のアルバムをチョイスするようにしている。

T-Bone Walker『Very Rare』(写真左)。モダン・ブルース・ギターの父と呼ばれる T-ボーン・ウォーカー。 彼が亡くなる直前(1975年3月没)が亡くなる前、1974年にリリースした好盤である。ちなみにパーソネルを見渡すと、Larry Carlton, David T. Walker, Dizzy Gillespie, Gerry Mulligan, Herbie Mann, Zoot Sims, Joe Farrell, Al Cohn, Wilton Felderなど、ジャズ界の一流どころを目一杯起用。
 

Very_rare_1

 
前述のパーソネルから、この盤は「ジャジーでソウルフルなブルースの好盤」に仕上がっている。特に、この盤は、T-ボーン・ウォーカーのボーカルをフィーチャーしており、聴けばお判り頂けるかと思うが、ライトでフュージョンなジャズ・ボーカルの秀作としても聴くことが出来る内容なのだ。渋くてブルージーなT-ボーン・ウォーカーのボーカルとジャジーなバック演奏とが、とても相性が良いようだ。

あのジャズ・ギタリストの祖、チャーリー・クリスチャンがジャズに採用したよりも早く、エレギをブルースの採用したと言われる、モダン・ブルース・ギターの父、T-ボーン・ウォーカーの弾くエレギはあまり出てこないのですが、ところどころに出てくる「一発芸」的なアドリブ・フレーズはやはり、相当にブルージー。流れればハッとし、聴き惚れて「ええ雰囲気やな〜」と、思わず感嘆の声が出てしまう。

ブルース、ジャズ、ソウル、R&Bなどが融合した、フュージョン・ミュージックな内容に惚れ惚れする。参加ミュージシャンの顔ぶれはブルース・アルバムとしては異色の面々ではあるが、こってこてファンキーなブルース・フィーリングは、このバック・ミュージシャンの面々がしっかりと担っています。ジャズの合間の耳休みとして、好適な盤だと思います。
 
 
 
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2018年5月13日 (日曜日)

ジャズの合間にゴスペル・ロック

ジャズの合間の耳休めには、米国ルーツ・ミュージックを融合したロックやR&Bが良い。というのは、私、松和のマスターの主観。実際、ハードな純ジャズやフリー・ジャズを聴き続けて、ちょっとジャズに耳がもたれた時、米国ルーツ・ミュージックを融合したロックやR&Bが耳に優しい。

ジャズと違和感の無い米国ルーツ・ミュージックのジャンルに「ゴスペル」がある。ゴスペルとは簡単に言うと、米国の黒人教会文化が生んだ「魂の歌」。神のことばや神から受けた恵みを感謝したり、伝えたいという思いが歌となったものが「ゴスペル」。ジャズでは、このゴスペルの特徴である「コール・アンド・レスポンス」や音の重ね方について、特にファンキー・ジャズのジャンルで取り込んで活用している。

ロックの世界でも、ゴスペルの要素はよく取り込まれている。特に、1960年代末から1970年代前半のトレンドでもあった「スワンプ・ロック」にとりわけ活用され、同時期に流行ったソウル・ミュージックにも、しっかりと取り込まれている。いわゆる、アフリカン・アメリカンの「魂のフレーズ」なのだ。
 

Right_on_be_free  

 
The Voices of East Harlem『Right On Be Free』(写真)。1970年の作品。ロックをベースにしたゴスペル・ミュージックである。イーストハーレムのゴスペル・グループが、1970年にリリースした1st.アルバムになる。リロイ・ハットソン、カーティス・メイフィールドが絡む前のストレートでパワフルな「ゴスペル・ロック」。ゴスペルの良いところをロックで強調した様な音世界。

ゴスペルのパワフルな歌唱をそのままに、ロックのビートに乗って、さらにその高揚感が高まっている。ロックの伴奏自体が切れ味が良く、曲の要所要所で「決め」の部分がバッチリと決まっていて、爽快感すら漂ってくる。重厚なコーラスが音の厚みに貢献し、しっかりと聴き応えのある音に仕上がっている。

すっきりとしたファンクネスが良い感じ。レアグルーヴ的な要素も随所に聴かれ、1970年の作品とは言え、音の古さをあまり感じ無い。レアグルーヴ〜ニュー・ソウル好きには必聴の好盤。ジャズの合間の耳休めにもピッタリのゴスペル・ロック盤です。聴いていて、思わず体が動き始め、クラップ・ハンドしてしまう。ゴスペルの魅力満載ですね。

 
 

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2018年5月12日 (土曜日)

ハサウェイの傑作ライブ盤

1970年代、ジャズは多様化が進む。純粋なジャズだけの音もあるにはあるが、ロックの要素を取り入れたクロスオーバー・ジャズが幅を利かせ、その後、大ブームとなったフュージョン・ジャズが席巻する。ジャズの音の要素は他のジャンルにも広がっていく。ソウル・ミュージック、その後のR&Bにジャズのテイストは浸透していった。

ジャズを聴いていて、耳が少々、ジャズに疲れた時は「ジャズの合間の耳休め」の盤を選盤して耳を傾ける。しかし、それがあまりにジャズからかけ離れていては駄目だ。ジャズ周辺のフュージョン周辺の音が良い。その演奏のテイスト、その演奏の雰囲気。ジャズに通じるノリと演奏テクニック。芳しきファンクネス、そして、ソウル。

Donny Hathaway『Live』(写真左)。1972年の作品。全米18位。早逝したR&Bの天才歌手、ダニー・ハサウェイの傑作ライブ盤である。ちなみにパーソネルは、Phil Upchurch, Cornell Dupree, Mike Howard (g), Willie Weeks (b), Fred White (ds), Earl DeRouen (conga, ds)。フィル・アップチャーチ、コーネル・デュプリーなど、後のフュージョンの名うてミュージシャンが参加している。
 

Donny_hathaway_live  

 
アルバムの前半(1〜4曲目)には、1971年8月にハリウッドのトルバドールで行われた公演からの抜粋が収録され、後半(5〜8曲目)には10月にニューヨークのビター・エンドで行われた公演から抜粋されている。これが、とっても良い雰囲気のライブ・パフォーマンスなのだ。バックのシンプルな演奏もさることながら、聴衆のレスポンス、パフォーマンスが見事。

ファンクネス溢れ、米国ルーツ・ミュージック、とりわけ、ブルース、ソウル・ミュージック、ゴスペルの要素を取り入れつつ、ジャズをベースとした演奏をバックに、ハサウェイはソウルフルにそれぞれの曲を唄い上げていく。従来のジャズ・ボーカルよりも、ポップでソウルフルでスピリチュアルな歌唱。

特にカバー曲が秀逸。冒頭の「What's Going On」、4曲目の「You've Got a Friend」、7曲目の「Jealous Guy」など、思わず惚れ惚れして聴き込むほどの出来の良さ。一分の遅れも隙もなくプレーヤーと一体化した観客、一緒になって大声で歌う瞬間。このライブ盤は、その場で自分も聴いていると錯覚させてくれるほどの「ライブ感」に満ちあふれている。

 
 

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2018年4月23日 (月曜日)

ロックとジャズとR&Bと

ジャズの合間の耳休めには、あんまりジャズからかけ離れない様にしている。70年代ロックを本格的に聴く時は、初めにジャズは聴かない。いきなり70年代ロックで入る。ジャズを聴いている合間の耳休めは、ジャズからあんまり離れない。クロスオーバー系のロックや、フュージョン系のロックを聴く。

1960年代終わり頃から1970年代にかけて、ブラス・ロックなるジャンルがあった。フロント楽器が金管楽器。3〜4管編成で、重厚なブラスのユニゾン&ハーモニーが特徴。バックのリズム・セクションがロック系のエレギ、エレベ、そしてドラム。このブラス・ロックをベースにジャズとR&Bの要素を織り交ぜた、ロックとジャズとR&Bのクロスオーバー・ミュージックがあった。Blood, Sweat & Tears(以降、BS&Tと略)である。

Blood, Sweat & Tears『Child Is Father to the Man』(写真)。邦題『子供は人類の父である』。1968年のリリース。ちなみに、当時のBS&Tのメンバーを並べてみると、Randy Brecker (tp, flh), Bobby Colomby (ds, perc), Jim Fielder (b), Dick Halligan (tb), Steve Katz (g), Al Kooper (key), Fred Lipsius (as), Jerry Weiss (tp, flh)。ランディー・ブレッカーがおる。アル・クーパーがおる。フロントのブラスが4管。いわゆる「ブラス・ロック」の編成である。
 

Child_is_father_to_the_man  

 
音の味付けは「R&Bとジャズ」。ブラス・ロックの音の傾向は「クロスオーバー・ジャズ」。しかし、リズム&ビートはロック。このBS&Tの音世界はシカゴと並んで、ロックとジャズとR&Bのクロスオーバー・ミュージックの創始であった。ロック基調な分、ファンクネスは控えめだが、ブルージーな雰囲気は色濃く、フレーズはシンプルで判り易い。ボーカルもクセの無いストレートな歌唱で、これまた判り易い。

1968年のリリースという背景もあって、当時のミュージック・シーンの混沌とした感じやサイケデリックな音が、ところどころ顔を出す。この辺が純粋なジャズと全く異なるところで、ヒッピー・ムーブメントの影響をダイレクトに感じるのだ。アルバム・ジャケットを見てもそれを強く感じる。

アル・クーパーのボーカルが魅力的。明らかにロックのボーカルで、ジャズの様にこってこてファンキーでウェットな歌唱にはならない。しかし、このアルバム、聴くべきは「ブラス・ロック」の真髄の部分。洒落たホーンアレンジ、ジャジーなアドリブ展開、重厚なブラスのユニゾン&ハーモニー。「ブラス・ロック」は、ジャズの合間の耳休めに最適な音楽ジャンルのひとつである。

 
 

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2017年12月25日 (月曜日)

ソウルのクリスマス・ソング集

音楽についてはちょっと変わった子供だった気がする。時は1970年、小学6年生の時だと記憶している。親父のラジオをくすねて、こっそり聴き始めた音楽放送。NHKだったと思う。夜の10時過ぎだったか、洋楽・軽音楽を中心に様々な音楽を流していた。これを聴くのが、ほんと楽しくてねえ。歌謡曲には無いビートと旋律。ラジオを通じて米国を感じていた。

そんな色々な西洋音楽の中で、妙に心に響く音楽があった。まずは、フランク・シナトラやナット・キング・コールなどの男性ジャズ・ボーカル。ダンディズム溢れる彼らの歌声はむっちゃ格好良かった。そして、ソウル・ミュージックである。このオフ・ビートの「ノリ」、心地良いファンクネス。日本の歌謡曲より、格好良く心地良い音世界がそこにあった。

ソウル・ミュージック。米国においてアフリカ系アメリカ人のゴスペルとブルースから発展、1960年代を頂点とする,アメリカ黒人の現代的な大衆音楽。以前よりR&Bと呼ばれ、後にブラコンと呼ばれる。ゴスペル由来のコード進行、たたみかけるような覚えやすいリズム、コール・アンド・レスポンス、即興の多用、ジャズにも通じる黒人の感性を洗練されたサウンドで表現する音楽形態である。ソウル・ミュージック好きが切っ掛けとなって、ジャズも好きになり、短い間だがジャズ・ピアノも教えて貰った。
 

Soul_christmas_2

 
中学に入って、ブラスバンドでアルト・サックスも吹けるようになった。どうにも黒人系の音楽が大好きで堪らない。自分でも変わった子供だ、と思った(笑)。オフビート、ゴスペル、コール・アンド・レスポンス、そして、ファンクネス溢れるボーカル。どれもが心に響くソウル・ミュージックの要素。

そんなソウル・ミュージックをベースとしたクリスマス盤が『Soul Christmas』(写真左)。ジャケット違いで曲数も多い「ソウル・クリスマス」盤もあるが、「ジ・オリジナル」と付くのはこの盤。1968年当時のジャケットもレトロっぽくて懐かしい。スタックスと袂を分かつ前のアトランティック配給の数々のアーティストを集め、クリスマスの曲を実に楽しそうに演奏している。

レイ・チャールズ、クラレンス・カーターやジョー・テックス、ソロモン・バーク等々、ソウル・ミュージックを彩るスターの数々。そうそう、キング・カーティス、オーティス・レディング、カーラ・トーマス、ウィリアム・ベル、ブッカー・T&MGズの曲ももちろん入っています。

ジャズの合間の耳休め。とっても楽しいソウル・ミュージックのクリスマス・ソング集。今年はこの盤で「メリー・クリスマス」。

 
 

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2017年8月27日 (日曜日)

ブルー・アイド・ソウル系のAOR

昨日、我がバーチャル音楽喫茶『松和』はジャズ専門では無い。70年代ロック、70年代Jポップ」が裏専門。以前は、土日は「70年代ロック、70年代Jポップ」の記事にしていたなあ、ということで、そのルールを復活である。と宣言したので、今日もジャズの話題から離れて「70年代ロック、70年代Jポップ」に関する話題を。

70年代ロック&ポップスの範疇であるが、僕はAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)というジャンルのアルバムが好きである。特にR&B寄りのAORはたまらない。特に1970年代後半から1980年代前半、大学時代〜社会人なりたての頃、ジャズの合間の耳休めに、このAORの世界にドップリ浸かっていた。

John Valenti『Anything You Want』(写真左)。1976年の作品。R&Bの範疇、ブルー・アイド・ソウル系のAORになる。ジョン・ヴァレンティは、当時、巷では「白いスティーヴィー・ワンダー」と呼ばれたが、どうして、聴けば判る。決して、単なるスティーヴィーのフォロワーでは無い。独特の爽快感と切れ味が備わった、実に魅力的なブルー・アイド・ソウル系のAOR盤である。
 

John_valentianything_you_want  

 
確かに1曲目のタイトル曲「Anyting You Want」を聴けば、確かに「スティーヴィー・ワンダーのフォロワー」と呼ばれても仕方が無いよな、と思われる位の徹底ぶりである。でも、内容的には実に充実していて、よくよく聴けば、ブルー・アイド・ソウル系なので、ファンクネスが軽い。確かにファンクネスが漂うのだが爽やかなのだ。これが「個性」で、僕はこの雰囲気に填まった。

曲作りも基本的にはギターがベースで、キーボードやブラスは脇役に回っているところが、他のコッテコテR&B〜ブラコン系のAORとは異なる。アコギの多用、メロディアスなエレギのソロ。これはこの盤独特の個性で、この部分だけでも「白いスティーヴィー・ワンダー」とは呼べない。似て非なるもの、と解釈して良いだろう。

AORってどんな音楽なの、って聴かれたら、結構、このヴァレンティの『Anything You Want』をかけることが多い。演奏の基本部分は「R&B」であり、ギター中心のアレンジは「フュージョン・ジャズ」の雰囲気を踏襲していて、とにかくAORの代表的名盤の一枚であることは間違い無い。そうそう、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では「ジャズの合間の耳休め盤」として活躍している。

 
 

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2017年7月10日 (月曜日)

ソウル・ジャズの人気ライブ盤

意外とソウル・ジャズが好きだ。結構、俗っぽいので「ソウル・ジャズなんてな〜」と思って控えようかと思うんだが、あの独特のノリとファンクネスが忘れられず、やっぱり聴いてしまう(笑)。肩肘張らずに笑顔で「ノリノリ」で聴けるところが良いよね。ソウル・ジャズって、ジャズのこと、何も知らなくても十分楽しめるから隅に置けない。

ソウル・ジャズの好盤と言えば、このアルバムが良く出てくる。僕も最初、ジャズ盤紹介本で読んで、誰か判らんなあ、と思いつつ、紹介本で絶賛されているもんだから、手に入れて聴いてみて、ありゃ〜これは、コッテコテのソウル・ジャズではないの。良い感じです。Les McCann & Eddie Harris『Swiss Movement』(写真)。

1969年6月。スイスはモントルー・ジャズ・フェスでのライブ録音。ソウルフルなテナー奏者エディ・ハリスとソウルフルなピアノ奏者レス・マッキャンが初共演。ジャズメンによる、コッテコテのR&B大会の様相。これが「ソウル・ジャズ」だ、と言わんばかりの独特のノリとファンクネス。
 

Swiss_movement

 
冒頭、ロバータ・フラックの名唱でも知られる、ソウルフルな「Compared To What」から、リズミカルな演奏が心地良い「Cold Duck Time」と1〜2曲目の流れを聴くだけで、これは本当のコッテコテの「ソウル・ジャズ」であることを確信する。聴いていて、自然と身体がスイングし、足でリズムを取りつつ、顔はいつの間にか笑顔でニコニコ、強調されたオフビートのリズムでクラップハンド。

我が国では「踊れるジャズ」は敬遠される傾向があって、どういう訳か全然人気のない2人、レス・マッキャンとエディ・ハリス。このライブ盤もなかなか表に出ることは無かった。つい10年位前からかなあ、このライブ盤がジャズ盤紹介本で取り上げられるようになったのは。ソウル・ジャズって俗っぽいという評価だが、そんなことは全く無い。とにかく聴いていて楽しい。それが一番ではないか。

このライブ盤に収録されたライブ演奏について面白いエピソードがある。このライブ演奏、レス・マッキャンとエディ・ハリスのスケジュールが合わず、なんとリハーサル無しの一発勝負でライブ録音されたらしい。いや〜リハ無しの一発勝負でこれだけノリの良い、コッテコテのソウル・ジャズが展開できるなんて、やはりジャズのフィールドで培われた「即興の底力」ですね〜。素晴らしい。
 
 
 
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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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