2026年5月18日 (月曜日)

「ジャッキー&ロイ」の異色作

ジャッキー&ロイは、ジャス・ボーカルのデュオ。スインギーで軽快でポップなスタイルがメイン。しかし、このアルバムは、クロスオーバー・ジャズ志向のモーダルな演奏、ボーカルを基本とした「ポスト・バップ」な、実にジャズとして、アーティステックな内容を追求した、デュオ・ボーカルのアルバムになっている。これは、他にほどんと類を見ない。

Jackie Cain & Roy Kral『A Wilder Alias』(写真左)。1973年12月の録音。CTIレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie Cain (vo), Roy Kral (vo, el-p arr), Roy Pennington (vib), Joe Farrell (ts, ss), Hubert Laws (fl), Harvie Swartz (b), Steve Gadd (ds)。いわゆる「ジャッキー&ロイ」の異色作である。

最もアヴァンギャルドで実験的な「異色作」。エレクトリック・ジャズをベースとしたスピリチュアル・ジャズ、そして、プログレッシヴなクロスオーバー・ジャズをベースとしたジャズ・ボーカルのチャレンジしている。加えて、米国ジャズっぽくない、欧州ジャズにも通じる浮遊感のある心地よいサウンドが耳に新しい。
 

Jackie-cain-roy-krala-wilder-alias   

 
そして、最大の特徴は、「声」を楽器として扱った、歌詞のない世界。実際の「歌詞」があるのは2曲目の「Niki's Song」のみ。それ以外の楽曲はすべて歌詞を持たない「スキャット(ワードレス・ヴォーカル)」で歌われている。この「声」を楽器として扱う「スキャット」で、クロスオーバー・ジャズ志向のモーダルなフレーズを唄い上げていく。

バック・バンドの演奏もふるっている。まず、ガッドのドラミングに耳を奪われる。正確無比でファンキーなドラムブレイク、さらに変拍子やラテンビートへの適応は素晴らしいの一言。限りなく自由度の高いモーダルな、ファレルのサックスとロウズのフルートが、ジャッキー&ロイのスキャットとスリリングに絡み合い、絶妙なインタープレイを繰り広げる。これがまあ「聴いたことがない」インプロの響き。「声」の楽器があまりにユニーク。

このアルバムの名義は「Jackie & Roy」という親しみやすいユニット名ではなく、あえて「Jackie Cain & Roy Kral」と本名をフルネームでクレジットした点も含め、これまでのポップなイメージを離れて、アーティステックな内容を追求したシリアスなアルバムを作る、という二人の強い意志と矜持を感じる。
 
 

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2026年5月15日 (金曜日)

ジャズ・ファンク3部作の最終盤

この盤の雰囲気、リズム&ビートからして、純粋なジャズとは言い難い。しかし、エレクトリック楽器やファンクのリズムを導入しつつも、ジャズの即興演奏に重きをおいたアレンジは、クロスオーバー・ジャズとしてのジャズ・ファンクとして聴けば違和感は無い。「ダンサフル、ファンクネス満載、グルーヴ感満載」で、後のレア・グルーヴ御用達盤である。

Joe Farrell『Canned Funk』(写真左)。1974年11-12月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farrell (ts, ss, bs, fl), Herb Bushler (b), Joe Beck (g), Jimmy Madison (ds), Ray Mantilla (conga, perc)。ジョー・ファレルのCTIレーベルでの最後のリーダー作。ジャケットのぶっ飛んだデザインも強烈なインパクト。ファレルの考えるジャズ・ファンクの完成形。

冒頭のタイトル曲「Canned Funk」から、ファレルの考えるジャズ・ファンク全開。ファレルのサックスは、メインストリーム・ジャズ志向の正当派な吹きっぷりなんだが、バックのリズム&ビーとがエグい。ファンク度満点。そして、ベックのエレギがこれまたエグい。ベックの弾き出すファンクネスは半端無い。そして、ファレルとベックのユニゾン&ハーモニーから滴り落ちるファンクネスがこれまたエグい。
 

Joe-farrellcanned-funk

 
また、この盤でのグルーヴ感は特別で、当時CTIレーベルに多かった「スタジオで上品に作り込まれたフュージョン」とは一線を画した、当時のファレルのレギュラー・バンドによるライヴさながらの一発録りが、生々しいグルーヴ感を醸し出している。ファレルの正統派サックスとフルートが映えに映える録音は見事なもの。

この盤でも、ジョー・ベックのエレギの存在が大きく、ファンキーなカッティングから、ロック調の激しい歪み系ソロまで縦横無尽に弾きまくっている。そして、ベースのハーブ・バシュラーも、エフェクターを駆使したエレクトリック・ベースで強烈なうねりを創り出している。ジミー・マディソンのドラム、レイ・マンティーリャのパーカッションの「太鼓隊」の叩き出すグルーヴも半端ない。

3曲目の「Suite Martinique」などは、プログレッシブ・ロックやラテンジャズにアプローチした複雑な構成で、クロスオーバー・ジャズとしての面目躍如的な演奏。1作目"Penny Arcade" 、2作目 "Upon This Rock" 、3作目 "Canned Funk" の「ファレルの考えるジャズ・ファンク」シリーズの最終作。クロスオーバー・ジャズ志向のジャズ・ファンク盤としての佳作である。
 
 

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2026年5月 9日 (土曜日)

ジャズ・ファンクのファレルです

チック・コリア率いる第1期リターン・トゥ・フォーエヴァーのメンバーとしても知られるサックス&フルート奏者のジョー・ファレル。それまで、CTIレーベルに来て、正統派クロスオーバー・ジャズなアルバムを制作してきたが、この盤は、よりファンキーな路線へと舵を切ったCTI第4作目。

Joe Farrell『Penny Arcade』(写真左)。1973年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farrell (ts, ss, fl, piccolo), Joe Beck (g), Herbie Hancock (p), Herb Bushler (b), Steve Gadd (ds), Don Alias (conga)。ジョー・ファレルが伝統的なジャズからジャズ・ファンク〜ジャズ・ロックへと転換した、エポックメイキングな作品。

冒頭のタイトル曲「Penny Arcade」から、ジャズ・ファンク全開。ジョー・ベックのギターリフが完璧にジャズ・ファンクしていて、演奏全体にファンクネス蔓延。続くスティーヴィー・ワンダーのカバー曲「Too High」は、もともと曲自体が、R&Bの名曲なんで、冒頭から、どっぷりジャズ・ファンク。
 

Joe-farrellpenny-arcade

 
13分を超える白熱のジャム。ファレルはソプラノ・サックスで、複雑なメロディを自在に吹きこなし、とてもエモーショナルな吹き回し。そのファレルのソプラノ・サックスに、ハービー・ハンコックが、原曲のクラビネットをエレピ(フェンダー・ローズ)に置き換え、うねるようなソロで絡みに絡む。このスティーヴィー曲のカバーでのハンコックのエレピのソロは絶品である。

続く「Hurricane Jane」では、7/4拍子という変拍子ながら、スティーヴ・ガッドの強烈なドラミングがエグい。そこに、ハンコックのエレピが、ジャズ・ファンクよろしく、どっぷりファンキーに絡んで、その上でファレルがファンクにモーダルにサックスを吹きまくる。この雰囲気って、どこか、ハンコックのジャズ・ファンクの歴史的名盤『Head Hunters』を想起する。

ラス前の「Cloud Cream」と。ラストの「Geo Blue」は、アーバンでメロウな雰囲気のムーディーな演奏で、ジャズ・ファンクというよりは、これこそフュージョン・ジャズである。最後の2曲が、それまでの圧倒的な「ジャズ・ファンク大会」な雰囲気をクールダウンさせているところで、ちょっと損をしている。それでも、この盤、当時のジャズ・ファンクの好盤としてお勧めである。
 
 

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2026年4月 8日 (水曜日)

悪くは無い” CTIのハバード盤”

CTIレーベルからリリースされた、フレディ・ハバードのの5枚目のスタジオ録音盤である。パーソネルを見ると、純ジャズ畑はら、テナー・サックスのジュニア・クック、エレピでジョージ・ケイブルス、エレベでロン・カーターが参加。他のメンバーは、馴染みのない名前ばかりなので、恐らく、当時の腕利きスタジオ・ミュージシャンを調達したのではないだろうか。

Freddie Hubbard『Keep Your Soul Together』(写真左)。1973年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Junior Cook (ts), George Cables (el-p), Aurell Ray (g), Kent Brinkley (b), Ron Carter (el-b), Ralph Penland (ds), Juno Lewis (perc)。ジャケットがあまりに俗っぽくて敬遠したくなるが、この盤につまっているのは、意外と硬派なクロスオーバー・ジャズ。

この盤では、冒頭の「Brigitte」と2曲目「Keep Your Soul Together」で、抑制されたハバードのトランペットが聴ける。テクニック最高のハバード、そんなハバードが抑制されたトランペットを吹くとき、その時のハバードは「無敵」である。彼の持つ個性のひとつ「歌心」が、抑制されたトランペットの前面に押し出てくる。そして、彼の高いテクニックが、この「歌心」の為に発揮される。無敵である。
 

Freddie-hubbardkeep-your-soul-together  

 
しかし、3曲目の「Spirits of Trane」で、コルトレーンばりにバリバリ吹きまくるクックと、シーツ・オブ・サウンドよろしくエレピを弾きまくるケイブルスを目の当たりにしたハバードは、思わず「目立ちたがり」な面がグイグイ出てきて、高テクニックを最大限に発揮して、クックとケイブルスを撃沈するトランペットをペラペラと吹きまくり出す。こうなると、ハバードのトランペットは「耳に付く」。

ラストの「Destiny's Children」は、初期のエレ・マイルスをポップにファンキーに判り易くした様な演奏で、クロスオーバー志向のファンキーなイージーリスニング・ジャズといった面持ち。R&B志向のリズム&ビートは採用していないので、この演奏はあくまで「ファンキー・ジャズ」の域は出ていない。ハバードは、なぜか吹きまくっていて、ちょっとウザく、吹きすぎなのが惜しい。

内容的には、旧来からの純ジャズのファンにも、新しいクロスオーバー・ジャズのファンにも、両方に受ける様なアレンジとプロデュースがみえみえで、クックとケイブルスの好演、エレベのロンの頑張りがちょっと霞んでいるところが惜しいアルバムである。とにかく、良くも悪くも、ハバードのトランペットが「目立つ」アルバム。しかし、悪くはない。
 
 

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2026年4月 1日 (水曜日)

ガボール・ザボのCTI第2弾

ガボール・ザボは、1936年生まれのハンガリー出身のギタリスト。ジプシー特有のフィーリングのプレイが特徴。不思議な響きと不思議なフレーズを持ったギター。

従来のスタンダードな、ジャズ・ギターの音色がしないし、展開やフレーズも、従来のジャズ・ギターの伝統を全く引き継いでいない。ちょっとマイナーな響きが特徴。このマイナーな哀愁たっぷりなギターを捉えて「ジプシー・ギター」と形容する人もいる。

Gabor Szabo『Rambler』(写真左)。1973年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Gábor Szabó (g), Bob James (p, org, syn), Mike Wofford (el-p), Wolfgang Melz (b), Bobby Morin (ds), Unknown (perc)。

タイトル邦題「放浪者」をテーマに、ストーリー性を持たせた内容の企画盤。ボブ・ジェームスが「音楽スーパーバイザー」を担った、クロスオーバー志向のエレ・ジャズ。CTIレーベルにおけるグルーヴィーでメロウな、クロスオーバー志向のソウル・ジャズと形容してもよい、ユニークな内容のCTI盤。

欧州の、東欧のローカルな響きが耳新しい、哀愁感を強く帯びた、テクニック優秀なジャズ・ギターが相変わらず炸裂している、CTIレーベルでの第2弾である。
 
Gabor-szaborambler  
 
アルバム全体の雰囲気は、ポップで流麗な、ちょっと、イージーリスニング志向を意識した音作りになっている。フュージョンの様な「ソフト&メロウ」まではいかないまでも、メロウな雰囲気の静かな曲は、フュージョンの先駆けと言えるのではないか。

それでも、ザボのギターは、個性的な、国籍不明、ジャンル不明な、硬質でロックっぽい、ちょっと「ヘタウマ」なギターのままで、ただ、弾き紡ぐフレーズは、判り易く、チャッチーで明るい哀愁感をまとった、ポップなフレーズに変化している。これは明らかに、CTIの総帥プロデューサーのクリード・テイラーの志向ではないだろうか。

タイトでグルーヴィーなリズムセクションとザボ節のギターが絡み合うジャズ・ファンクな、冒頭のタイトル曲「Rambler」、ジプシー・ギターの神様、ジャンゴ・ラインハルトに捧げた「Reinhardt」を中心に、メロウな曲を効果的に挟んだ、メリハリのある収録曲の構成が意外と填まっている。

ポップ化が進んだガボール・ザボのクロスオーバー・サウンド。ここでも、ボブ・ジェームスのアレンジと、音楽スーパーバイザーとしての役割が好要素として効いている。
 
 

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2026年3月30日 (月曜日)

ブラジルとクロスーバーの融合

アイアート・モレイラは、ブラジル出身のドラマ−&パーカッション奏者。1941年8月5日生まれ。未だ現役である。ャズシンガーのフローラ・プリムと結婚しており、娘のダイアナ・モレイラも歌手。

1960年代後半にブラジルのアンサンブル、クアルテート・ノヴォのメンバーとして名を馳せる。その後、米国に移住し、マイルス・デイヴィス、リターン・トゥ・フォーエヴァー、ウェザー・リポート、サンタナらと、クロスオーバー&フュージョン・ジャズのシーンで活躍した。

Airto Moreira『Fingers』(写真左)。1973年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Airto Moreira (ds, perc, vo), Hugo Fattoruso (key, harmonica, vo), David Amaro (ac-g, el-g), Ringo Thielmann (b, vo), Jorge Osvaldo Fattoruso (ds, vo), Flora Purim (perc, vo)。CTIレーベルでのデビュー盤『Free』(1972年)に続く、CTIレーベルでの第2弾リーダー作になる。

内容的には、ブラジリアン・クロスオーバー・ジャズ。アルバムを覆う、躍動的でテンションの高い「サンバ・グルーヴ」が特徴的。「純ジャズ命」の硬派なジャズ者の方々からすると、全く認めたくない内容のブラジリアン・クロスオーバー。とても、ブラジル&南米色の強い、いかにもアイアートの音志向らしいアルバムである。人気のサンバ曲「Tombo In 7/4」のオリジナルの収録盤としてお馴染みの1枚である。
 

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キーボード、ベース、ドラム&パーカッションといった、リズム・セクションは、ウルグアイのフュージョン・グループOPAのメンバーを連れてきている。米国ジャズマンが演奏するブラジリアン・ミュージックより、違和感無く、自然に溶け込んでいる様に思わず納得する。サンバのリズムやフレーズの適合がとてもスムーズで違和感が無い。

当然、リズム&ビートは、リーダーのアイアート・モレイラがリードしていて、特にアイアートのドラミングは特徴的。ブラジル・ミュージック的ドラミングとでも形容しようか。じっくりと聴き耳を立てて聴いてみると、その個性とユニークさが良く判る。このアイアートのドラミングが、アルバム全体のブラジリアン・クロスーバーな雰囲気を牽引している。

ギターのデヴィッド・アマロは、米国カリフォルニア州出身のギタリストだが、まるでブラジル生まれのようにギターを演奏する希有な存在。ジャズ、ロック、ブラジル音楽を融合させたサウンドとスタイルを確立したギタリストの1人であり、この盤でも、アマロのギターが要所要所で効いている。

3曲目の「メリー・ゴーランド」とか5曲目の「パラナ」などは、ブラジリアン・クロスオーバー・ジャズの名演。ブラジリアン・ミュージックと、クロスオーバー・ジャズが良い方向で融合していて、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの好盤として、その内容は聴きどころ満載。とても、CTIレーベルらしいアルバムでもある。
 
 

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2026年3月26日 (木曜日)

この盤にも”一本取られた感”満載

ランディ・ウエストン(Randy Weston)は、ニューヨーク出身のピアニスト。1926年生まれ、2018年9月、92歳で鬼籍に入っている。デューク・エリントンやセロニアス・モンクの影響を色濃く感じるタッチの強さと不思議なフレーズの飛び方。そして、作曲の才にもつながる美しいメロディーラインが個性の、硬派なバップ・ピアニストだった。

Randy Weston『Blue Moses』(写真左)。1972年3ー4月の録音。ちなみにパーソンネルは、Randy Weston (el-p), Freddie Hubbard (tp), Grover Washington, Jr. (ts), Hubert Laws (fl),David Horowitz (syn), Ron Carter, Vishnu Bill Wood (b), Billy Cobham (ds), Phil Kraus, Airto Moreira, Azzedin Weston (perc), Madame Meddah (vo), Don Sebesky (arr, cond)。ここに、重厚なブラス・セクションが加わる。

CTIレコード、ドン・セベスキーのアレンジ、クリード・テイラーのプロデュース、そして、ビッグバンド・サウンド。これは、もう甘々のゴージャスなビッグバンド仕様のフュージョンだろう、と高をくくっても仕方の無い組合せ。それが、である。冒頭の長尺の「Ifrane」を聴けば「あら、ビックリ」。硬派な正統派なエレクトロニック・ビッグサウンドが炸裂する。うへ〜とひれ伏してしまう(笑)。
 

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まず、硬派なバップ・ピアニストだったウェストンのエレピが良い味を出している。コンテンポラリーなエレクトリック・ジャズな雰囲気を色濃くしているのは、このウェストンのエレピの音色。よく聴くと、確かに、バップなピアノのマナーで、エレピを弾き倒しているのが判る。さすがウェストン、エレピを弾く時も、自分の弾き方の個性を全く失っていない。

そして、ハバードがトランペットをド派手に吹きまくる。目立ちたがり屋の真骨頂(笑)。しかし、そんなハバードを凌駕する、ど迫力でドライブ感抜群、力感溢れる硬派で正統派なテナーを吹きまくるのが、グローヴァー・ワシントン・ジュニアその人。最初、聴いていて、誰だ、この凄いテナーを吹きまくるのは、と思ってパーソネルを見たら、ワシントン・ジュニア。あのフュージョン・テナーの第一人者のワシントン・ジュニア。やはり、素性確かなテナー・マンだったのだ。

どこか、全体にアフリカンな響きが漂う、正当派なビッグバンド仕様のクロスオーバー・コンテンポラリー・ジャズ。この盤は一年前、初めて聴いて「目から鱗」。わが国では相当マイナーな存在だが、恐らく、この盤、CTI盤だからだろう。昨日も書いたが、この盤も、1970年代の硬派なジャズ盤としても良い内容。ほんと、CTI盤って、時々、こういうことがあるから隅に置けない。
 
 

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2026年3月25日 (水曜日)

この盤には”一本取られた感”満載

一言で言うと、上質のクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズ。CTI盤だからと、甘々のイージーリスニング志向のフュージョン。ジャズでしょ、と思うなかれ。スタンリー・タレンタインも甘々なフュージョンに身をやつしたか、と思うなかれ。聴いてみると判るが、上質のコンテンポラリー・ジャズが展開されているから爽快である。

Stanley Turrentine『Don't Mess with Mister T』(写真左)。1973年3月, 7月の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Bob James (ac-p, el-p, arr, cond), Harold Mabern (el-p), Richard Tee (org), Idris Muhammad, Billy Cobham (ds), Rubens Bassini (perc), Ron Carter (b), Eric Gale (g)。ここに、Randy Brecker (tp), John Frosk (flh), Alan Raph (b-tb), Pepper Adams (bs), Jerry Dodgion (as), Joe Farrell (ts)のブラスセクションとストリングスが入る。

まず、リーダーのスタンリー・タレンタインのテナー・サックスであるが、これが硬派でダンディズム溢れる、ファンキーでソウルフルな正統派テナーで、ばりばりに吹きまくっているから堪らない。ソフト&メロウなんて、どこにも無い。力感溢れるファンキーでソウルフルなテナーが各曲に響き渡り、その吹奏こそが、この盤を上質のクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズに仕立て上げている、大きな要素である。
 

Stanley-turrentinedont-mess-with-mister-  

 
ボブ・ジェームスのアレンジとアコースティック・ピアノが実に「効いている」。ジャジーにファンキーにコンテンポラリーにアレンジされたエレ・ジャズで、ロンのベースも、ムハンマド&コブハムのドラムもジャジーに効いていて、この盤の演奏の数々は、決して、イージーリスニング志向のフュージョン・ジャズなんかでは無い。しっかり、ジャズしている。

ティーのオルガンも良い感じ。エリック・ゲイルのギターも良い感じ。ファンキー&ブルージー、ソウルフルな雰囲気をこれでもかと増幅する。後の伝説のフュージョン・グループ「スタッフ」のメンバーの二人。R&Bなグルーヴ感が半端ない。そうそう、ボブ・ジェームスとハロルド・メイバーンのエレクトリック・ピアノも良い味を出している。

聴く前は、ブラス・セクションとストリングスの存在がちょっと不安だが、ソウルフルでブルージー。これはアレンジの勝利。この盤のブラス・セクションとストリングスのアレンジはとても良い。ボブ・ジェームスの面目躍如。

ずっと昔にこの盤は聴いたことがあったが、その演奏内容については「忘却の彼方」。今回、改めて聴き直して、ちょっとビックリ。なんと、とってもジャジーでファンキーでソウルフルな、上質のクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズが展開されている。1970年代の硬派なジャズ盤としても良い内容。CTI盤って、時々、こういうことがあるから隅に置けない。
 
 

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2026年3月22日 (日曜日)

ガボール・ザボのCTI第一弾

Gabor Szabo(ガボール・ザボ)のギター。ガボール・ザボって1936年生まれのハンガリー出身のギタリスト。ジプシー特有のフィーリングのプレイが特徴。不思議なギターである。

従来のスタンダードな、ジャズ・ギターの音色がしないし、展開やフレーズも、従来のジャズ・ギターの伝統を全く引き継いでいない。どう聴いても「ジャジー」では無いギター。ちょっとマイナーな響きが特徴。このマイナーな哀愁たっぷりなギターを捉えて、ガボール・ザボのギターをあからさまに「ジプシー・ギター」と形容する人もいる。

Gábor Szabó『Mizrab』(写真左)。1972年12月の録音。CTI 6026番。ちなみにパーソネルは、Gábor Szabó (g), Hubert Laws (fl, piccolo), Bob James (el-p, arr, cond), Ron Carter (b, arco-b), Billy Cobham (ds, on trak;1,3), Jack DeJohnette (ds, on2,4,5), Ralph MacDonald (perc)以上が主要バンドメンバー。そして、バックにオーケストラが入る。

アレンジと指揮を「クロスオーバー&フュージョン・ジャズの仕掛け人」ボブ・ジェームスが担当している。このボブ・ジェームスのアレンジ、ちょっとミステリアスで、エキゾチックなアレンジが、見事にザボの「ジプシー・ギター」を前面に押し出している。
 

Gabor-szabomizrab

 
CTIレコードからの第一弾。さすが、CTIの総帥プロデューサー、クリード・テイラー。イージーリスニング志向のクロスオーバー・ジャズの中で、優れたアレンジをベースに、ガボール・ザボのジプシー特有のフィーリング溢れる、怪しげで哀愁たっぷりの摩訶不思議なギターを印象付け、映えに映えさせる。ボブ・ジェームスのアレンジと指揮のたまもの。

インパルス時代は、どうにも、このザボの摩訶不思議なギターを上手く扱えず、時には、レノン&マッカートニーの「イエスタディ」のカバーなどをさせて、完全に、プロデュースの迷走状態。不思議な内容のギター・アルバムは多々制作したが、どれも決め手に欠ける、未完成のものだった印象は拭えなかった。

しかし、このCTIレコード第一弾のは、このザボの摩訶不思議なギターを上手く扱い、ザボのギターの個性と特徴をしっかりと前面に押し出すことに成功している。

この盤には、ザボのギターの個性と特徴がアルバム全体に渡って、散りばめられている。ジプシーと言えば「欧州」の響き。適正にアレンジされたオーケストラと、ザボのギターとの相性が良いことも見抜いてのプロデュースは見事である。
 
 

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2026年3月10日 (火曜日)

アーティステックなCTI盤です。

CTIレーベルは、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの中心となったレーベル。総帥プロデューサー、クリード・テイラーの下、意欲的&挑戦的なニュー・ジャズから、硬派でメインストリームなクロスオーバー・ジャズ、イージーリスニング志向のフュージョン・ジャズまで、1970年代のジャズのトレンドを網羅したレーベルである。

Hubert Laws『Live At Carnegie Hall』(写真左)。1973年1月12日の録音。CTI 6025番。ちなみにパーソネルは、Hubert Laws (fl), Bob James (el-p), Gene Bertoncini (g), Ron Carter (b), Billy Cobham, Freddie Waits (ds), Dave Friedman (vib), Dave Miller (bassoon), Don Sebesky (arr)。ジャズ・フルート奏者の雄、ヒューバート・ロウズのカーネギー・ホールでのライヴである。

カーネギー・ホールでのライヴということを意識したのだろうか。アカデミックかつ、アーティスティックなクロスオーバー・ジャズが展開される。これがCTIレーベルからリリースされたサウンドか、と初めて聞いた時は、LPのレーベルを秘密の喫茶店のレコードプレイヤーまで見に行ったくらいだ。

CTIレーベルは、時々、こんな硬派でメインストリームな、内容のあるクロスオーバー・ジャズをリリースする。この盤もそうで、ヒューバート・ロウズという、ジャズ・フルートの代表格の演奏が前面に押し出され、アーティスティックなアレンジに乗ったクロスオーバー・ジャズが展開される。
 
Hubert-lawslive-at-carnegie-hall
 
演奏曲からしてアーティスティック。チック・コリアの「Windows」とジェイムス・テイラーの「Fire and Rain」のメドレー、そしてバッハの「パッサカリア ハ短調」。ジャズとクラシックの間を効果的に行き来するジャズ・フルート奏者、ヒューバート・ロウズの個性と特徴が良く判る演奏曲のチョイスである。

ドン・セベスキーのアレンジが優れている。収録された難曲、ジャズの即興演奏とオーケストラの洗練さを融合させるのに難度の高い秀曲を、セベスキーは、ロウズのフルートの演奏表現をベースに、ジャズの即興演奏、ロックのリズム、オーケストラのテクスチャを効果的に融合させている。このアレンジが、ロウズのフルートを引き立て、アーティステックなクロスオーバー・ジャズを実現させている。

バックのミュージシャンの演奏も白眉。ロウズのフルート、セベスキーのアレンジを十分に理解し、極上のクロスオーバー・サウンドで、このアーティステックなクロスオーバー・ジャズを、更にその高みに引き上げている。

CTIレーベルなんて、甘々のフュージョン・ジャズばかりなんでしょ、なんて、聴かず嫌いで敬遠していると、1970年代ジャズのトレンドと特徴の半分を聴き逃すことになる。まあ、1970年代ジャズなんて、聴くに及ばず、とするなら、いざ仕方なし。でも、1970年代ジャズを理解する上で、CTIレーベルのカタログは避けて通れないと僕は思う。
 
 

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