2026年2月12日 (木曜日)

ナットのエレなハードバップです

ファンキー・トランペットの元気印「ナット・アダレイ」のCTI盤である。CTI盤なんで、ソフト&メロウなフュージョン盤かと思うんだが、録音年は1968年。フュージョン・ジャズの時代より前の、クロスオーバー・ジャズの初期。で、出てくる音は、エレクトリックなバックを従えたコンテンポラリーな純ジャズ。

Nat Adderley『Calling Out Loud』(写真)。1968年11, 12月の録音。CTIレーベル盤。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cornet), Paul Ingraham (French horn), Seldon Powell, Jerome Richardson, Jerry Dodgion, Richard Henderson (sax), Hubert Laws (fl, piccolo), Don MacCourt (bassoon), George Marge (cl, English horn, sax), Romeo Penque (b-cl), Joe Zawinul (el-p), Ron Carter (b), Leo Morris (ds)。

冒頭の「Biafra」から曲想は、思慮深さとダイナミック差を兼ね備えたハードバップ。バックの演奏がエレクトリック志向。ソフト&メロウなんて無し。イージーリスニング志向なところも無し。

エレクトリックなハードバップな雰囲気が、1960年代後半のクロスオーバー・ジャズの影響をモロ受けた「コンテンポラリーな純ジャズ」的雰囲気を増幅している。このハードバップ・ライクな演奏の雰囲気は、ナット・アダレイのコルネットのパフォーマンスに拠るところが大きい。
 

Nat-adderleycalling-out-loud

 
そして、このハードバップ・ライクな演奏を「コンテンポラリー」な雰囲気を付加しているのが、ジョー・ザヴィヌルのエレクトリック・ピアノ(エレピ)。このザヴィヌルのファンクネス溢れるエレピが、コンテンポラリーな雰囲気を色濃くし、プログレッシヴなファンクネスを付加する。この盤をユニークな存在にしているのは、ザヴィヌルのエレピである。

エレクトリックな雰囲気と言えば、ナットもエレクトリックのコルネットを吹いていて、これが、ザヴィヌルのエレピと絡んで、とてもプログレッシヴな雰囲気を醸し出している。このエレクトリックな雰囲気が、ファンキーを飛び越えて、ソウルフルな雰囲気に昇華している部分など、聴き心地満点。

ビル・フィッシャーの管楽器のアレンジも、プログレッシヴでコンテンポラリーなエレクトリック・ハードバップに、ちょっと柔らかなイージーリスニング志向を付加している様で、なかなか良い雰囲気で効果的。

CTI盤というのが良く無いのか、ほとんど話題に上らないアルバムだが、内容的には、上質のコンテンポラリーでプログレッシヴで、エレクトリック・ハードバップな演奏がなかなかの内容。捨てておくには勿体ない秀作である。
 
 

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2026年2月 9日 (月曜日)

フュージョン・ジャズ前夜の音

CTIレーベルのアルバムには、プロデュースの方向性として、純ジャス、メインストリーム・ジャズの要素をしっかり弾き継ぐ方向性と、クラシックの要素を取り入れて、イージーリスニング志向とする方向性と、大きく分けてこの2つの方向性があったと理解している。そして、ジョージ・ベンソンは「前者」の範疇に入る。

『Benson & Farrell』(写真左)。1976年1月と3月の録音。ちなみにパーソネルは、George Benson (g), Joe Farrell (fl,ss), Don Grolnick (el-p), Sonny Bravo (ac-p), Eric Gale, Steve Khan (g), Will Lee, Gary King (b), Andy Newmark (ds), Nicky Marrero (perc), Jose Madera (congas), David Matthews (arr, cond)。

フュージョン・ジャズ名盤『Breezin'』前夜、ジョージ・ベンソンのフュージョン・ジャズへの移行を捉えた好盤である。前作の『Good King Bad』で、R&B志向のクロスオーバー・ジャズを確立したベンソンが、「ベンソンが考えるフュージョン・ジャズ」への移行を図っていることが良く判る内容になっていて、フュージョン・ジャズ者には、実に興味深い内容になっている。
 

Benson-farrell
 

フロントのベンソンのギターとファレルのソプラノ・サックスは、そのソロ・パフォーマンスは「純ジャズ」の香りがプンプンする。そして、バックの伴奏が、どこかソフト&メロウな雰囲気漂う、テクニック志向を抑えた、聴き手に訴求する、聴き心地優先のフュージョン・ジャズの演奏スタイルが確立している。

この「純ジャズ」志向のフロントと、「フュージョン・ジャズ」志向のバックとの融合がこの盤の聴きどころ。フュージョン・ジャズは「甘い、緩い、安易」なんて揶揄されていたが、この盤を聴くと判るが、そんな評価はとんでもない。テクニックも優秀、フロント・ソロは硬派でシビア、バックの演奏も高度で聴き心地が良い。これが、フュージョン・ジャズのひとつの「プロトタイプ」であると思っている。

ただ、リリース当時は、賛否両論だったと聞く。確かに、それまでのジャズ盤とは雰囲気が異なる。つまり、「ソフト&メロウな雰囲気漂う、テクニック志向を抑えた、聴き手に訴求する、聴き心地優先の音志向」が、それまでない音世界だったので、旧来のジャズを良しとする向きには「違和感満載」だったのだろう。しかし、今の耳には違和感は無い。フュージョン志向コンテンポラリーなジャズと評価しても良い、硬派でジャズに真摯な内容の「隠れ好盤」だと思う。
 
 

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2026年2月 8日 (日曜日)

R&B志向のジャズ・ファンク

当バーチャル音楽喫茶「松和」では、純ジャズのみならず、クロスオーバー&フュージョン・ジャズもしっかり押さえていて、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの名盤、好盤もこのブログで、いろいろご紹介してきた。

で、である。このところは「CTIレーベル盤」祭り。『ALLTIME COLLECTION』と題した再発シリーズが始まり、やっとCTIレーベルのカタログをほぼ網羅したCD復刻がなされた。それに合わせてレコード・コレクターズ誌でも特集が組まれ、クロスオーバー&フュージョン・ジャズもお気に入りの当ブログでは、絶対に無視出来ない。

George Benson『Good King Bad』(写真左)。1975年7, 10, 12月の録音。1976年、CTIレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは以下の通り。クロスオーバー&フュージョン畑の強者が勢揃い。アレンジは、デヴィッド・マシューズ、指揮はボブ・ジェームス。

George Benson (g, vo), Eric Gale (g), Don Grolnick (clavinet), Bobby Lyle, Roland Hanna, Ronnie Foster (key), Gary King (b), Andy Newmark, teve Gadd, Dennis Davis (ds), Sue Evans (perc), David Friedman (vib), Joe Farrell, Romeo Penque, David Tofani (fl), David Sanborn (as), Michael Brecker, Frank Vicari (ts), Ronnie Cuber (bs), Fred Wesley (tb), Randy Brecker (tp)。
 

George-bensongood-king-bad

 
ソウル・ジャズを越えて、アーバンで洒落たR&B志向のジャズ・ファンクにシフトした、黒いジョージ・ベンソンである。ダンスフロアにさらに合致した、踊れるクロスオーバー・ジャズ。モータウンからのR&Bのグルーヴを見事にジャズに取り込んで、モータウン・クロスオーバー・ジャズとでも名付けても良い様な、上質なR&B志向のジャズ・ファンクがこの盤に溢れている。

ソウルフル&ファンクネスを前面に押し出した音作りになっているので、ベンソンはこれまでの様に、テクニックを前面に押し出した「弾きまくり」のベンソンではなく、R&B志向のグルーヴに心地良く乗った、余裕のあるファンネス溢れる「弾きまくり」のベンソンがこの盤にいる。

ソフト&メロウなフュージョン・ジャズにシフトする直前の、唄って弾きまくるギタリストにシフトする直前の、上質なR&B志向のジャズ・ファンクを確立した感のあるジョージ・ベンソン。ソウル・ジャズを推し進めて、R&B志向のクロスオーバー・ジャズを確立したジョージ・ベンソン。魅力あるアルバムに仕上がっていると思う。好盤です。
 
 

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2026年2月 7日 (土曜日)

”Deodato/Airto”の不思議

1970年代のクロスオーバー/フュージョン・ジャズの有名レーベル「CTI」。1967年、プロデューサーのクリード・テイラー(Creed Taylor)によって創設されたジャズ・レーベル。テイラーは、このCTIレーベルで、ジャズの再びの大衆化を試み、クロスオーバー/フュージョン・ジャズのブームを牽引した。A&Mレコード内に創設された時の正式名称は「Creed Taylor Issue」で、独立後は「Creed Taylor Incorporated」。いずれも、単語の頭文字をとって「CTI」。

『Deodato/Airto In Concert』(写真左)。 1973年4月20日、マジソン・スクエア・ガーデンの「Felt Forum」での録音。デオダートとアイアートのライヴ・パフォーマンスのカップリング盤。パーソネルは、以下の通り。デオダートのパートと、アイアートのパートで分かれる。

デオダートのパート「Do It Again」「Spirit of Summer」「Tropea」のパーソネルは、Eumir Deodato (key), John Tropea (g), Burt Collins, Joe Shepley (tp), Joe Temperley (bs), Garnett Brown (tb), John Giulino (b), Rick Marotta (ds), Rubens Bassini, Gilmore Degap (perc)。

アイアートのパートParana」「Branches」のパーソネルは、Airto Moreira (perc, vo), David Amaro (g), Hugo Fattorusso (p), Flora Purim (vo)。

ここでは、まずはオリジナル・アルバム、いわゆるLP時代の収録曲に限って語りたいのだが、まず、なぜ、こういうカップリング盤を出したのか、理解に苦しむ。デオダートはデオダート、アイアートはアイアートで、フルアルバムでライブ盤を出しても良かったと思うんだが。
 

Deodatoairto-in-concert
 

ただ、デオダートのパートはパートで、アイアートのパートはパートで、それなりに充実した内容のライヴ・パフォーマンスを発揮している。それぞれの音作りの個性がシッカリ出ていて、どちらも、約20分程度の短いライヴ・パフォーマンスになるが、聴いて楽しめる内容にはなっている。

冒頭の「Do It Again」を聴けば、デオダートの特徴的なブラスの重ね方、心地よい個性的なファズのかかったエレキ・ギター。金太郎飴的なストリングス。どう聴いたって、これはデオダートという演奏で、これはこれで楽しい。2曲目の 「Spirit of Summer」もスローでセンチメンタルな演奏とはいえ、あちらこちらに、デオダート節が炸裂している。

3曲目「Parana」では、アイアートのバンド演奏に代わる。この「Parana」は、ワールド・ミュージック志向のクロスオーバー・ジャズで、アイアートの音の個性がハッキリと出ている。このワールド・ミュージック志向という音作りは、この頃はまだ目新しくてこなれていないが、後に、ジャズの定番の音作りの一つとして定着するもの。アイアートは、その先駆け的な音をここで表現している。

続く、LPのB面にあたる、CDでは4曲目の「Toropea」は、デオダートのバンド演奏に戻る。ジョン・トロペイのギターをフィーチャーしたファンクネス芳しい曲で、トロペイのギターが十分に堪能出来る。切れ味の良いブラス/セクションをバックに、トロペイはバリバリ弾きまくる。

ラストの「Branches」は、やはり、ワールド・ミュージック志向の演奏だが、ちょっと不思議な曲で、パーカッション・ソロから始まり、アイアートとフローラのデュオで終わるという、基本はアイアートのパーカッションの個性をメインに据えた演奏だが、ちょっと中途半端かな、と。だが、アイアートの音の個性ははっきり判る。

それぞれ白熱のライヴ・パフォーマンスなので、聴き応えはある。しかし、これだけ白熱したパフォーマンスである。デオダート、アイアートそれぞれ、最低、LP一枚レベルのフルアルバムにして欲しかった。デオダートのパートだけは後に『Deodato – Live At Felt Forum - The 2001 Concert』のタイトルで出ているみたいだが、「Toropea」が見当たらないのは何故だろう。しかも「Skycraper」だけ、アイアートとの共演。何から何まで、不思議な内容のアルバムではある。
 
 

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2026年2月 6日 (金曜日)

CTIのエレなソウル・ジャズ

CTIレーベルのカタログを見つつ、該当のアルバムの有無をチェックしている。A&M 3000シリーズから、CTI 1000シリーズまでの約30枚については、魅力的なイージーリスニング志向の硬派なクロスオーバー・ジャズのアルバムが目白押しで、意外と聴き応えのあるアルバムが沢山ある。

Fats Theus『Black Out』(写真左)。1970年7月16, 22日の録音。CT 1005番。ちなみにパーソネルは、Fats Theus (ts), Grant Green (g), Clarence Palmer, Hilton Felton (org), Chuck Rainey, Jimmy Lewis (b), Idris Muhammad (ds), Eddie Moore (saw)。幻のサックス奏者の1人、ファッツ・テウスが、名ギタリストのグラント・グリーンとのフロントを張った、ゴキゲンなソウル・ジャズ盤。CTI初期のレアな1枚。

リーダーの幻のサックス奏者の1人、ファッツ・テウスが、名ギタリストのグラント・グリーンとのフロントを張った、ゴキゲンなソウル・ファッツ・テウスは米国ルイジアナ出身。最初のキャリアは、プレストン・ラブのバンドに在籍。次に、オルガン奏者のビリー・ラーキンのバンドに参加。その後、ジミー・マクグリフのバンドに加入し、名の知れた存在になって、この本作は、そのジミー・マクグリフ・バンド在籍中に出したリーダー作。
 

Fats-theusblack-out

 
CTIレーベルのアルバムの中では珍しい、ブラス・セクションは、弦オーケストラがいないスモールコンボでの演奏。さらに録音はルディ・ヴァン・ゲルダー。1960年代のよき時代のソウル・ジャズという雰囲気がプンプンする。CTI盤とは言え初期の盤、ソフト&メロウな雰囲気はなく、音としては、クロスオーバーなエレクトリック・ソウル・ジャズといった雰囲気濃厚。

テウスのテナーが、何かアタッチメントを付けているのであろう、エレクトリックでウォームでファンクなテナーを聴かせる。そして、グラント・グリーンが、パキパキで硬質な音質を少しラウンドさせウォームな響きに変えて、テウスとグリーンのフロント2人で、ライトでウォームでメインストリームな「エレクトリック・ソウル・ジャズ」な演奏を聴かせてくれる。

ジャズ・ファンクとまではいかないまでも、この「エレクトリック・ソウル・ジャズ」のライトでちょっとユルユルのグルーヴはこの盤ならではのもの。聴き進めていくうちに「癖になる」。ソウル・ジャズとクロスオーバー・ジャズの融合。殆ど、無名のサックス奏者のリーダー作ですが、適度にユルユルなファンキー・グルーヴが芳しい好盤だと思います。
 
 

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2026年2月 3日 (火曜日)

ファーマーがジャズ有名曲を演奏

1960年代後半になると、ビートルズの米国上陸からロックの台頭、ソウル・ミュージックの人気上昇、ニュー・ポップスの発展など、聴き手の音楽ジャンルの好みが地殻変動を起こし、ジャズは一気に人気に翳りが出だして、大衆音楽の中での人気は一気に下降していた。

そんな人気の下降の中、大手のレコード会社、例えば、ヴァーヴやコロンビアでは、ジャズのインスト特性を活かして、軽音楽風のイージーリスニング志向のアルバムをプロデュースし、販売するという、安易な売上維持策に出た。ジャズのアーティスティックな面を完全に無視した「暴挙」である。その軽音楽風のイージーリスニング志向のジャズ盤は、実は、この1960年代後半〜1970年代前半に集中している。

『The Art Farmer Quintet Plays the Great Jazz Hits』(写真左)。1967年5月と6月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh, tp), Jimmy Heath (ts), Cedar Walton (p), Walter Booker (b), Mickey Roker (ds)。アート・ファーマー・クインテットがジャズの名曲を演奏するという、途方もなく「ベタ」な企画盤。

とにかく、ジャズの有名曲がズラリと並ぶ(括弧内は作曲者)。9曲目の「Gemini」だけ、演奏メンバーのジミー・ヒースの作で、残りは、全て、ジャズ有名曲。見渡すと、ファンキー・ジャズの有名曲が中心。ところどころ、モンク曲「'Round Midnight」や、変則拍子曲の「Take Five」が混じっているところが惜しい。どうせなら、ファンキー・ジャズの有名曲で固めれば良かったのに・・・。
 
The-art-farmer-quintet-plays-the-great-j  
 
 1.  "Song for My Father" (Horace Silver)
 2.  "'Round Midnight" (Thelonious Monk)
 3.  "Sidewinder" (Lee Morgan)
 4.  "Moanin'" (Bobby Timmons)
 5.  "Watermelon Man" (Herbie Hancock)
 6.  "Mercy, Mercy, Mercy" (Joe Zawinul)
 7.  "I Remember Clifford" (Benny Golson)
 8.  "Take Five" (Paul Desmond)
 9.  "Gemini" (Jimmy Heath)
10. "The 'In' Crowd" (Billy Page)

恐らく、この収録された曲名を見たら、硬派なジャズ者の皆さんは敬遠するだろうが、聴いてみるとそんなには悪く無いと思う。こんな有名曲の連続、ジャジーなリズムに乗せた軽音楽風の大衆向けインスト盤でしょ、と思うんだが、まず、アート・ファーマーのフリューゲルホーンとトランペットの、哀愁感を帯びたウォームで切れ味の良い音とフレーズが良い。これだけでも「聴く価値」あり。

リズム・セクションは、単純なリズム&ビートを刻み続けることは無く、おかずを入れたり、チェンジ・オブ・ペースしたり、細かくリズム&ビートを変化させていて、有名曲がずらりと並ぶ、一見、飽きが来そうな展開を、きっりと飽きさせず、意外と全編、演奏に引きつけさせる工夫を施している。

確かに、対峙して聴き込む様な、アーティスティックな側面に乏しい盤ではあるが、ジャズの有名曲をズラリ並べているので、ジャズ者の僕達にとっては耳慣れている曲であり、アレンジにちょっと捻りを入れているので、ちょっと違った雰囲気のジャズ有名曲が楽しめる。「ながら聴き」に特化するに最適のファンキー・ジャズの企画盤だと思う。
 
 

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2026年1月31日 (土曜日)

ジョージ・ベンソン ”白いうさぎ”

唄って弾きまくるレジェンド・ギタリスト、ジョージ・ベンソンの「異色盤」。ターニング・ポイントとなった「唄って弾きまくる」までの、初期の「弾きまくり」ベンソンは、R&B志向のソウルフル&ジャズファンクなパフォーマンスがメイン。しかし、このアルバムは、ベンソンのリーダー作の中では「異端」で、基本が「スパニッシュ・タッチ」。CTIサウンドを創り上げた天才アレンジャー、ドン・セベスキー色が強く出た「異色盤」。

George Benson『White Rabbit』(写真左)。1971年11月の録音。CTIからのリリース。ちなみにパーソネルは、George Benson (el-g), Earl Klugh (ac-g : 5), Jay Berliner (Spanish-g), Herbie Hancock (el-p), Ron Carter (el-b : 1, 3, ac-b :2, 4, 5), Billy Cobham (ds), Airto Moreira (perc, vo), Phil Kraus (vib, perc), Gloria Agostini (harp)。ここに、木管楽器とブラス・セクションが加わっている。

タイトル曲は、グレイス・スリックによるジェファーソン・エアプレインの名曲のカヴァー。「California Dreamin'」は、ママス&パパスのヒット曲のカヴァー。そこに、有名サウンド・トラックの「"Theme from Summer of '42(おもいでの夏)」があり、エイトル・ヴィラ=ロボスの「ブラキアナス・バシレイラス第2番」からのブラジルの古典曲「リトル・トレイン」のジャズ・アレンジ・バージョンなど、良好なアレンジでの優秀なカヴァーが目白押し。
 

George-bensonwhite-rabbit

 
これだけカヴァー曲が並ぶと、イージーリスニング志向のクロスオーバー・ジャズな内容か、と構えてしまうが、ベンソンのギター・パフォーマンスが、ジャズ・ファンクの様なダイナミズムは控えめだが、印象的で硬派なフレーズを弾きまくっていて、まずはベンソンのギターが堪能出来る、そして、次にカヴァー曲のアレンジの妙に感じ入る、という内容が、しっかり軸足が「ジャズ」に留まっているところが好印象。

バックを固めるメンバーも錚々たるもの。フェンダー・ローズの響きが懐かしいハービー・ハンコック、エレベとアコベの両刀遣いで、曲毎に雰囲気を変えるロン・カーター、クロスオーバーでポップな8ビートを叩きまくるビリー・コブハム、スパニッシュ・タッチなパーカッションが小粋なアイアート・モレイラといったリズム隊が、これまた、本人達にとって異色ではあるが、かなりのレベルで充実している。

オリジナル・ジャケットについては、南アフリカで撮影したポンド族の女性の写真が掲載されている。これも、CTIレーベルのジャケ志向からすると「異色」。しかし、このジャケットが、このアルバムの内容を表しているかの様で、ベンソン自身いわく、プロデューサーのクリード・テイラーがベンソンの写真をカバーに使わなかったことが「このアルバムの成功につながった要因だった」と認めている(笑)。そんなジャケのエピソードはともかく、この盤はクロスオーバー・ジャズの好盤である。
 
 

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2025年6月23日 (月曜日)

ウエス ”A Day in The Life” 再聴

ウエス・モンゴメリーの『Smokin' at The Half Note』を手始めに、いろいろウエスのリーダー作を再聴していて、優れたギタリストというのは、演奏するフォーマットやトレンドに左右されない、いかなる演奏形式、演奏方式の中でも、自らのギターの個性を前面に出し、自らのギターの志向がブレることはない、ということを再認識した次第。

Wes Montgomery『A Day in The Life』(写真)。1967年6月6 & 26日、NYの「Van Gelder Studio」の録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Grady Tate (ds), Ray Barretto, Jack Jennings, Joe Wohletz (perc)。ここに、ストリングス・オーケストラが入る。

CTIレコードからのリリース。プロデューサーは、もちろん「クリード・テイラー」。録音はルディ・ヴァン・ゲルダー。ストリングスのアレンジ&指揮は「ドン・セベスキー」。メインのバンドのリズム・セクションは、ピアノにハービー・ハンコック、ベースにロン・カーター、ドラムにグラディ・テイトと錚々たる布陣。

しかし、プロデュースも、ストリングス・アレンジも、錚々たるリズム・セクションも、全ては、ウエス・モンゴメリーのギターを映させるためにある。確かに、このアルバムでは、ウエス・モンゴメリーのギターだけが、浮き出る様に、ブリリアントに輝く様に、映えに映える。
 

Wes-montgomerya-day-in-the-life_20250623200501

 
ソリッドで骨太なウェスのギターの音。そこに要所要所で、伝家の宝刀「オクターヴ奏法」が炸裂する。そんなウエスのギターが、奏でる楽曲の印象的なフレーズをくっきりと浮き出させる。とりわけ、レノン&マッカートニー(ビートルズ)の名曲「A Day in The Life」と「Eleanor Rigby」の独特のメロディーを、ウエスのギターがより魅力的に響かせてみせるところは見事と言う他ない。

バックの演奏のアレンジは、流麗でメロウなストリングス・オーケストラを活用した、フュージョン・ジャズ志向がかなり強いのだが、ウエスのギターはどこから聴いても「ウエス独特のバップ・ギター」そのもの。バックの使徒リングスがフュージョン志向だろうが、エレピの積極活用だろうが、ウエスのギターの音は全くブレがなく、全く変わらない。

CTIレコードからのリリースなので、このアルバム、一応はフュージョン・ジャズのカテゴリーの中に収まっているが、聴けば判るが、流麗でメロウなストリングスが入っているが、ウエスをフロントとするカルテットの演奏は「メインストリームは純ジャズ」志向。ウエスのギターの響きはどこから聴いても「ソフト&メロウ」なところは微塵もない。

あくまで「ウエス独特のバップ・ギター」。硬派でソリッドで骨太なウェスのギターの音。伝家の宝刀「オクターヴ奏法」が、それを更に確固たるものにする。そして、プロデュースが、ストリングス・アレンジが、錚々たるリズム・セクションが、ウエスのギターを引き立たせる。ウエスの名盤の一枚。
 
 

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2025年4月28日 (月曜日)

グラント・グリーンの白鳥の歌

独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギタリスト、グラント・グリーン。彼の活動後期は、イージーリスニング・ジャズ志向のリーダー作をリリースしている。

それぞれ内容のあるイージーリスニング・ジャズ志向のリーダー作だったと思うが、一般にはウケが悪かった。そして、1979年1月31日、NYで、ジョージ・ベンソンのブリージン・ラウンジでの演奏会に出席していた際、車内で心臓発作を起こし倒れ、そのまま、帰らぬ人となった。43歳であった。

Grant Green『The Main Attraction』(写真左)。1976年3月19日の録音。1976年のリリース。CTI/Kudoレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Grant Green (g), Burt Collins, Jon Faddis (tp), Sam Burtis (tb), Hubert Laws (fl), Michael Brecker, Joe Farrell (ts), Ronnie Cuber (bs), Don Grolnick (el-p, clavinet), Steve Khan (rhythm-g), Will Lee (el-b), Andy Newmark (ds), Carlos Charles (conga, perc), Sue Evans (perc), Dave Matthews (arr, cond)。

パーソネルを見渡せば、クロスオーバー&フュージョン・ジャズ畑の名うてのミュージシャンがズラリ。実に豪華な面々で、出てくる音は、典型的な「CTIサウンド」。そう、このグラント・グリーンのリーダー作は、CTIからのリリース。プロデューサーは、クリード・テイラー、アレンジ&指揮はディヴ・マシューズ。

CTIサウンドに乗ったグラント・グリーンのパッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギター。これがCTIサウンドに実に良く合う。まるで、ウエス・モンゴメリーのCTI盤を聴くが如く、ジョージ・ベンソンのCTI盤を聴くが如く、格別上等のクロスオーバー&フュージョン志向の硬派な純ジャズ・ギターを聴くことが出来る。
 

Grant-greenthe-main-attraction

 
演奏の雰囲気は、ジャズ・ファンク+ソウル・ジャズ。フュージョン・ジャズ志向のソフト&メロウなバックの演奏に乗って、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグリーンのギターが、ソウルフルに唄いまくる。ソフト&メロウなバック演奏と、パッキパキ硬派でこってこてファンキーなグリーンのギターとの対比が良好。

1曲目のタイトル曲「The Main Attraction」のイントロのブラス・セクションのユニゾン&ハーモニーからして、ソウルそして、R&B志向のこってこてファンキーな響き。そして、出てくるメインの演奏は、適度にユルユルのR&B志向のソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク。この1曲だけで20分弱の大作なのだが、ユルユルのR&B志向のソウル・ジャズ&ジャズ・ファンクだが、だれることなく、腰が揺れるが如く、足踏みをするが如く、極上のソウル・ジャズ&ジャズ・ファンクが展開される。

2曲目の「Future Feature」は、モータウンが入った、完璧硬派なソウル・ジャズ。R&B志向のブラス・セクションのユニゾン&ハーモニーが実に重厚ファンキー。ヒューバート・ロウズのフルートもファンキー&ソウルフル。スティーヴ・カーンのリズム・ギターのカッティングもファンク濃厚、そこに、思い切りソウルフルな、独特のシングルトーンでパッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグリーンのギターが唄いまくる。

ラストの3曲目「Creature」は、フェンダー・ローズの音とファンキーなフルートの音がソウルフル、そこに、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなグリーンのギターが絡む。どっぷりソウルフルでR&Bでスローな展開はクセになる。

実は、この『The Main Attraction』が、グラント・グリーンのメジャー・リリースにおける遺作になる。体調が優れなかったので仕方がないが、このCTI/Kudoレーベルでのアルバム制作をどんどん推し進めて欲しかった。それほど、このジャズ・ファンク+ソウル・ジャズをベースにした典型的な「CTIサウンド」に、グリーンのギターは合う。しかし、このアルバムのリリースの2年ほど後に、グリーンは帰らぬ人になってしまう。実に惜しい早逝であった。
 
 

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2025年1月12日 (日曜日)

ロイドのサイケデリック・ジャズ

CTIレーベルのアルバムをカタログ順に聴き直してみると、CTIレーベルは、今までジャズ雑誌などで語られていた「CTIレーベルは、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの専門レーベル」というのは、ちょっと違うのでは無いか、と思い始める。

クロスオーバー&フュージョン・ジャズばかりではなく、コンテンポラリーな純ジャズもあれば、ECMレーベルばりのニュー・ジャズもある。無いのは、フリー&スピリチュアル・ジャズだけ。つまり、CTIレーベルは、1970年代のコンテンポラリー・ジャズにおける代表的レーベルでは無いのか、ということ。意外とCTIレーベルは奥が深い。

Charles Lloyd Quartet『Waves』(写真左)。1972年の作品。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl, alto-fl), Gábor Szabó, Tom Trujillo (g), Roger McGuinn (12-string g), Wolfgang Melz, Roberto Miranda (b), Woodrow Theus II (ds, perc), Mayuto Correa (perc)。

パーソネルを見渡すと面白い。ギタリストのガボール・ザボ、ドラマーのサンシップ・テウスなどの、ちょっと風変わりなジャズ・ミュージシャンと、バーズのギタリスト、ロジャー・マッギンやビーチ・ボーイズのメンバーなどのロックアーティストが参加している。どう見ても、このパーソネルでは、正当なクロスオーバー&フュージョン・ジャズや、コンテンポラリーな純ジャズは無理というもの。
 

Charles-lloyd-quartetwaves

 
しかし、1960年代後半、キース・ジャレット、ジャック・デジョネット、セシル・マクビーを擁したカルテットで、コンテンポラリーな純ジャズを展開、一世を風靡したテナー・マン、チャールズ・ロイドが、この盤では、サイケデリック&エキゾチックな「ニュー・ジャズ」の手を染めているとは思わなかった。

ビーチ・ボーイズのようなコーラス・ワークが出てきたり、トロピカルなウェスト・コースト・サウンドが出てきたり、プログレッシヴな展開のサイケデリックなジャズ・ロックが出てきたり。この盤の音世界は、従来のジャズとは全く異なる、1970年代独特の「ニュー・ジャズ」の範疇の音世界である。

出てくる音も、どの曲も色彩豊かなサウンドが主で、特にガボール・ザボのギター、チャールズ・ロイドのフルート、そして、パーカッション隊のバラエティーに富んだリズム&ビートが、サイケデリックな雰囲気を増幅させている。

このニュー・ジャズの音世界は、1970年代のECMレーベルのニュー・ジャズを理解するジャズ者の方々には「ウケる」と思うが、一般的には理解されることは少ないだろう。しかし、これもジャズで、特にこの手のサイケデリック&エキゾチックな「ニュー・ジャズ」は、1970年代のジャズ・シーンに集中している。

一般「ウケ」はしないが、意外とこの盤は、サイケデリック・ジャズの秀作の一枚。たまに引き出してきては、2度3度、繰り返し聴いている。
 
 

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