2024年12月 2日 (月曜日)

この盤もグリーン後期の傑作『The Final Comedown』

パッキパキ硬質でファンクネスだだ漏れなシングル・トーンのギターが個性のグラント・グリーン。グリーンの後期のギターの特色は「ファンクネスさらに濃厚」。とりわけファンキーなシングル・トーンで、彼独特のグルーヴを叩き出す。そんなグリーンの後期のリーダー作も好盤がどっさり。

Grant Green『The Final Comedown』(写真左)。1971年12月13–14日の録音。ブルーノートの4415番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), IPhil Bodner (fl, piccolo, as, oboe), Harold Vick (as, ts), Irving Markowitz, Marvin Stamm )tp, flh), George Devens (vib, timpani, perc), Richard Tee (p, org), Cornell Dupree (g), Gordon Edwards (el-b), Grady Tate (ds), Ralph MacDonald (conga, bongos), Warren Smith (marimba, tambourine)。ここに、ヴィオラ、チェロの弦楽器とハープが入る。

ブラックスプロイテーション(黒人による黒人のための映画)のサウンドトラック盤。グラント・グリーンとしては異色中の異色作になる。映画のサウンドトラックなので、あまり大きな音で目立つことはできない。バックの音と程よいバランスをとった、グリーンのギター。あまり目立たないが、ここ一発というところでは、ハッとするような、ファンクネスだだ漏れでソウルフル濃厚なパフォーマンスを聴かせてくれる。「抑制の美」である。

ピアノ、オルガンにリチャード・ティー、サイド・ギターのコーネル・デュプリー、エレベにゴードン・エドワーズ。ここにドラムのスティーヴ・ガッドがいれば、伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」になる。グラディ・テイトのドラムも、叩き出すリズム&ビートは「縦乗り」で、どこかガッドに似ているドラミングが良い。
 

Grant-greenthe-final-comedown

 
バックのリズム・セクションが「ほとんどスタッフ」なので、演奏全体がファンキーでソウルフルで、うねるようなグルーヴを湛えたリズム&ビートが、「ファンクネスさらに濃厚」な、パッキパキ硬質なシングル・トーンのグリーンのギターにバッチリ合っている。うねる様なグルーヴに、ファンクネス濃厚なシングル・トーンのギターがよく似合う。

映画のサントラということで、ソロイストの音は控えめ、それが「抑制の美」に繋がって、演奏メンバー誰もが、逆に凄みのあるクールでヒップなフレーズを叩き出している。ゴードン・エドワースのエレベがブンブン唸り、デュプリーのサイド・ギターがファンクネスを撒き散らし、テイトのドラムがビートを刻む。バラード曲での絶妙の伴奏を披露するティーのキーボード。この「ほとんどスタッフ」のリズム・セクションが、グリーンのギターのグルーヴ感を2倍にも3倍にも増幅する。

「Father's Lament」のソフト&メロウなバラードでの、ファンクネス濃厚なグリーンのシングル・トーンなソロ演奏、ティーのソウルフルなグルーヴ濃厚なオルガンが凄まじく良い。「Afro Party」でのブラスの響き、グリーンのファンキーでソウルフルな伴奏弾き、エドワーズのソリッドな重低音が響く、グルーヴ撒き散らしのエレベ。サントラ的な小曲の間に、絶妙なファンキー&ソウルフル&ブラコンなキラーチューンが入っているから堪らない。

1971年の録音だが、後のフュージョン・ジャズを先取りした、ソフト&メロウ、ソウルフルでグルーヴ感満載なジャズ・ファンクな演奏はどの曲も聴きもの。映画のサントラ盤なので、イージーリスニング志向で、甘い演奏かと思いきや、意外と硬派でファンクネス濃厚、グルーヴ感満載な演奏がギッシリ詰まっているのには、ちょっとびっくり。この盤も、グラント・グリーンの活動後期の傑作だと思います。
 
 

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2023年6月12日 (月曜日)

モブレーのアウトテイク集です『Straight No Filter』

CDの時代になって、アルバム1枚の収録時間が飛躍的に増えた。LPはAB両面で大体45分、CDについては当初74分。実に30分程度、収録時間が増えたことになる。ここでLP時代のアルバムをCDでリイシューする時、この収録時間の余裕が問題になる。

LP時代のアルバムはそれだけで完結しているのだから、そのままCD化すれば良いものを、この収録時間の余裕が出来た分、LP時代に収録されなかった音源、未発表音源や既収録曲のテイク違いをその余裕部分に追加収録し始めたのだ。いわゆる「ボーナス・トラック」。略して「ボートラ」である。

レーベルのプロデューサーとアルバムのリーダーのジャズマンは、LP時代のAB両面の収録曲で、1枚のアルバムとして納得してリリースしていたのに、当時、収録するつもりのなかった、いわゆる「ボツ音源」を後世のレコード会社が追加収録してアルバム・リイシューしたのだ。

これは意外と困る代物で、ジャズ盤を鑑賞する場合、基本的にこのボートラが邪魔になることが殆ど。僕はジャズ盤鑑賞の時は、最初はこのボートラを一切聴かない。省略して、本来のLP時代のアルバムの収録曲のみを鑑賞対象としている。それで無いと、アルバムのリリース当時と比べて、アルバムの印象が変わるので、正しいアルバム評がまとめられない。

Hank Mobley『Straight No Filter』(写真左)。ブルーノートの4435番。ハンク・モブレーが、1963~65年に録音した音源のアウトテイクを、1985年にLPにて編集してリリースした盤。1985年のLPリリース時の収録曲は6曲。

Tracks 1–3は、1966年6月17日の録音。セッションそのものがボツになった音源で初アルバム化。「Straight No Filter」「Chain Reaction」「Soft Impressions」の3曲。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Lee Morgan (tp), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。

まずは、この3曲の内容が素晴らしい。モブレー&モーガンの2管フロントのクインテット編成で、迫力ある疾走感タップリのモード・ジャズが展開される。勢いたっぷり濃密な迫力のセッションを楽しめる。勢いのあるリズム・セクションが要で、特に、タイナーのピアノが格好良い。

Tracks 4–5は、1965年2月4日の録音。『The Turnaround!』セッションのアウトテイクで「Third Time Around」「Hank's Waltz」の2曲。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Freddie Hubbard (tp), Barry Harris (p), Paul Chambers (b), Billy Higgins (ds)。
 

Hank-mobleystraight-no-filter

 
Tracks 1–3から1年半前の録音になる。リズム・セクションがハードバップ志向のメンバーながら、意外とモード・ジャズしているのが面白い。頑張ってるなあ、という印象。内容的には悪く無い。Tracks 1–3と比較すると、やはりモード濃度は薄く、演奏の雰囲気はちょっと軽め。録音当時、ボツになったのも何となく納得出来る。それでも、Tracks 1–3との違和感はほとんど無い。

そして、Tracks 6は、1963年10月2日の録音。『No Room For Squares』セッションのアウトテイクで「The Feelin's Good」の1曲。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Lee Morgan (tp), Andrew Hill (p), John Ore (b), Philly Joe Jones (ds)。

Tracks 1–3から2年半前ほど前の録音になる。Tracks 1–3と同じ、モブレー&モーガンの2管フロントのクインテット編成。リズム・セクションに、ヒルのピアノが入っていて、それなりにモーダルな演奏としてまとまっている。が、演奏全体で雑なところが見え隠れして、録音当時、ボツになったのも頷ける。それでも、Tracks 1–3の雰囲気に繋がる、モブレー印のモーダルな演奏として成立していて、これはこれでアリかな。

ということで、このアウトテイク集は、もともとは、セッションごとボツになった1966年6月17日の録音を世に出したかったのではないかなあ、と感じている。それほど、1966年6月17日の録音は、モブレー印のモーダルな演奏として、かなり充実している。確かにボツにしたままでは勿体ない音源である。そういう意味で、LP時代の『Straight No Filter』は、収録曲6曲で意味のあるアウトテイク集だったと思う。

が、CDリイシュー時に、なんとさらに3曲が追加され、特にラス前からの2曲は、1963年3月7日の録音。『No Room For Squares』セッションのアウトテイク集で、フロント管の相棒がドナルド・バードになっていて、フロント2管のモーダルなフレーズが未だハードバップ風。LP時代の収録6曲とはちょっと演奏志向、雰囲気が異なっていて、ボートラとしての追加に意味が無いような気がする。

LP時代のアウトテイク集に、CDリイシュー時、さらにボートラを追加するのはちょっと乱暴な感じがする。さすがにCDリイシューの全9曲は、最後の3曲辺りでちょっとマンネリ気味で飽きてくる。そういう意味で、LP時代のアウトテイク集の全6曲は、しっかり吟味されて意味があるものだったんやなあ、と改めて思います。ボートラの功罪。ボートラはジャズ研究家、評論家向けに、別編集で供給した方が良いのでは、と最近、思います。
 
 

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