2025年4月 2日 (水曜日)

マイナーな存在の貴重な記録『Herbie Nichols Trio』

レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」。ブルーノート創立の1939年以降、ジャズの潮流が変わりつつある1968年までにリリースされたアルバムから、ブルーノートらしい「内容と音と響き」、そんな三拍子揃ったブルーノート盤の「ベスト100」を順に聴き直していく企画。今日はその「第20位」。

ハービー・ニコルス(Herbie Nichols)は、米国東海岸のジャズ・ピアニスト。1919年1月3日生まれ、1963年4月12日、44歳、白血病にて逝去。活動期間は1952年から1958年の6年間と圧倒的に短い。リーダー作は、10インチ盤で2枚。12インチ盤ではたったの2枚。

ニコルスの絶対ユニークな個性は、ブルーノートからリリースされた、10インチ盤で2枚、12インチ盤の1枚のみ。ラストの12インチ盤「Love, Gloom, Cash, Love」は、ポップなアレンジが施されて、ニコルスの絶対ユニークな個性は薄れていた。

『Herbie Nichols Trio』(写真左)。1955年8月、1956年4月の録音。ブルーノートの1519番。ちなみにパーソネルは、1955年8月の録音は、Herbie Nichols (p), Al McKibbon (b), Max Roach (ds)。1956年4月の録音は、Herbie Nichols (p), Teddy Kotick (b), Max Roach (ds)。

ブルーノートらしい「内容と音と響き」という切り口で、このアルバムを聴き直してみると、意外とブルーノートらしさは希薄である。ただし、ニコルスの絶対ユニークな個性はしっかり記録されている。

音の響きは、まるで「セロニアス・モンク」。そのフレーズのノリはモンクと同じく「スクエア」で、ところどころ不協和音を配した、ちょっと前衛的な響きのする個性的なピアノ。ニコルスは、ピアノの鍵盤を叩き、弾く様に弾く。ピアノという楽器の打楽器的要素の部分をフレーズの真ん中に置いている。これもモンクと同じ。
 

Herbie_nichols_trio_1

 
しかし、ニコルスのそれは、平易で判り易い。モンクの様に「思索的、哲学的」な、機微に富んだフレーズではなく、モンクのフレーズを研究し、テクニックを駆使して、モンクのフレーズを再現しつつ、ニコルスの考える個性を織り込んだ、ニコルス流の「リトル・モンク」的なピアノである。ちなみに、ニコルスは、モンクの研究家だったとも聞く。

ちなみに、この盤は、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンが、ニコルスの才能を発掘〜着目して、ライオンの肝入りで録音した盤では無いらしい。

ニコルスが、ライオンに、ブルーノートでの自身のリーダー作の録音をしつこく懇願し、遂にライオンが折れて実現したリーダー作らしい。ライオンが素晴らしい仕事をした訳では無く、ニコルスの粘り勝ちの果ての歴史的成果である。そういった背景が、このアルバムには、「意外とブルーノートらしさが希薄」な理由だと推察している。
 
ただ、自発的、積極的では無いにしても、このニコルスの個性を、ニコルスに懇願された結果かもしれないが、ちゃんとブルーノートのアルバムとして制作し、リリースしたところは、やはり、ブルーノートのジャズ・レーベルとしての矜持を強く感じる所以。但し、この盤にブルーノートらしい「内容と音と響き」が濃厚、とは思えない。

ニコルスの個性を動機はともあれ、ブルーノートが記録して世に出した、という事実については、大いに評価できるが、盤の内容については二の次。事実、ブルーノートの総帥であるライオンも、ニコルスの新たなリーダー作を録音することは無かった。

よって、ブルーノートの「ベスト100」の中で「第20位」というのは大いに疑問を感じる。ランキングの「番外つけ出し」として捉えるべきユニークなアルバムだと僕は思う。
 
 

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2025年2月 4日 (火曜日)

”Un Poco Loco” 3連発に想う『The Amazing Bud Powell Vol.1』

1939年、ブルーノートの創立以降、ジャズの潮流が変わりつつあった1968年までにリリースされたアルバムから、レココレ誌の執筆陣が選ん「ベスト100」。ブルーノートらしい内容、音、響き。そんな三拍子揃ったブルーノート盤の「ベスト100」を順に聴き直していく企画。今日はその「第9位」。

『The Amazing Bud Powell Vol.1』(写真左)。ブルーノートの1503番。ちなみに録音日とパーソネルは以下の通り。1951年5月1日の録音、ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), Curley Russell (b), Max Roach (ds)。1953年8月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), George Duvivier (b), Art Taylor (ds)。 バド・パウエルのピアノ・トリオ集。

このピアノ・トリオの演奏、以前から「名盤中の名盤」とされる訳だが、そうだろうか、と常々思っている。この盤の冒頭の「Un Poco Loco」3連発。これを聴いて感銘を受けなければ、もはや未来永劫、ジャズを理解することは出来ない、などと極論を述べる評論家もいた。この極論を間に受けて、「Un Poco Loco」3連発を聴き続け、結局、よ〜判らんとジャズを諦めた人もいた。

このトリオ演奏は「ビ・バップ」。バド・パウエルの「ビ・バップ」。ベースとドラムは「忠実なリズム&ビートのキープ役」。主役のバド・パウエルが、その「忠実なリズム&ビートのキープ役」をサポートを得て、心ゆくまで、即興演奏を展開する。
 

The-amazing-bud-powell-vol1
 

しかし、この即興演奏の凄さについては判りにくい。一般の人々には特に判りにくい。クラシック・ピアノをある程度極めた、ピアノを弾くテクニックの難易度が理解できる人だけが、このバドの即興演奏の凄さを体感できる。一般の人にとっては、フレーズはあんまりメロディアスではないし、変にマイナーに転調するし、一言で言って「キャッチャー」なピアノ演奏では決してない。

よって、この冒頭の「Un Poco Loco」3連発を聴いて、何にも判らない、といって、もはや未来永劫、ジャズを理解することは出来ない、なんてことは決してない、と僕は思っている。

この「Un Poco Loco」3連発は、バドの即興演奏のバリエーションの展開の仕方がよくわかるのと、やはり、ピアノを弾く、というテクニックが並外れている、ということが良く判る、優れもののパフォーマンスである。ただし、即興演奏のバリエーションの展開の仕方、ピアノを弾くテクニックが並外れている、というのは一般の人には大変判りにくい代物である。

このアルバムの存在意義は、やはり「ビ・バップのピアノ・トリオの代表的演奏の良好なサンプルの一つ」をしっかりと記録していることだろう。ビ・バップ・ピアノの祖、バド・パウエルの良好なトリオ演奏のサンプルを確認したければ、この盤を聴けば良い。そういう意味で、この盤は貴重である。しかし、ブルーノートのベスト100の「第9位」という順位については疑問が残る。
 
 

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2024年11月24日 (日曜日)

ブルーノートの ”先取気質” を聴く『Genius of Modern Music Vol.1』

ブルーノートの、創立以降、ジャズの潮流が変わりつつあった1968年までにリリースされたアルバムから、レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」。ブルーノートらしい内容、音、響き。そんな三拍子揃ったブルーノート盤の「ベスト100」。今日はその「第7位」。

Thelonious Monk 『Genius of Modern Music Vol.1』。1947年10月15日、1947年10月24日、1947年11月21日、1948年7月2日の4セッションからのピックアップ。パーソネルは以下の通り。

1947年10月15日は、Thelonious Monk (p), Idrees Sulieman (tp), Danny Quebec West (as), Billy Smith (ts), Gene Ramey (b), Art Blakey (ds)。演奏曲は、7曲目「Thelonious」、12曲目 「Humph」。

1947年10月24日は、Thelonious Monk (p), Gene Ramey (b), Art Blakey (ds)。演奏曲は、2曲目「Off Minor」、3曲目「Ruby My Dear」、5曲目「April In Paris」、10曲目「Well You Needn't」、11曲目「Introspection」。

1947年11月21日は、Thelonious Monk (p), George Taitt (tp), Sahib Shihab (as), Bob Paige (b), Art Blakey (ds)。演奏曲は、1曲目「 'Round About Midnight」、6曲目「 In Walked Bud」。

1948年7月2日は、Milt Jackson (vib), Thelonious Monk (p), John Simmons (b), Shadow Wilson (ds)。演奏曲は、4曲目「I Mean You」、8曲目「Epistrophy」、9曲目「Misterioso」。

セロニアス・モンクのピアノの強烈な個性をいち早く見出し、録音したブルーノート・レーベル。初録音は1947年に遡る。ブルーノート・レーベルの設立が1939年だから、設立後8年でモンクの音を記録している。

1947年と言えば、ビ・バップ創生期。そんな時代にあまりに個性的なモンクのピアノ。まだ、レーベル経営が軌道に乗っていない時期に、そんな「個性的でユニーク過ぎる」モンクの音を記録しているのだから、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼と判断力&行動力「恐るべし」である。
 

Monkgeniusofmodernmusicvol1

 
モダン・ジャズの最高の奇才、セロニアス・モンク。モンクのピアノの個性は強烈かつユニーク。スクエアにスイングし、フレーズは幾何学的に飛ぶ。そして、独特のタイム感覚。休符の置き方、テンポ、どれもがユニーク。クラシックの理路整然とした音とは「正反対の音」。クラシックからの影響は微塵も無い。ジャズだけ、から生まれた、モダン・ジャズの最高の個性。

このブルーノート盤では、そんなモンクの強烈かつユニークな個性のピアノを確実に誠実に記録している。一曲一曲の収録時間は短い。しかし、モンクのピアノは既にその個性を確立していることが直ぐに判る。

4つのセッションの寄せ集めだが、この盤は「モンクのピアノだけを聴くべき」アルバムである。そういう意味では、どのセッションでも、モンクの個性は平準化されているので、セッション毎について、セッション間についての違和感は全く無い。モンクの強烈かつユニークな個性のピアノで、アルバム全体の統一感をバッチリ出している。

収録曲はモンクの自作曲で統一され、モンク独特のアレンジで統一されている。このモンクの自作曲が実に個性的で、ジャズ的に「美しい」。収録された自作曲を見渡すと、後のミュージシャンズ・チューンとなって、最終的にはスタンダード曲化する。この盤では、モンクの自作曲の中でも特に有名となる曲が軒並みチョイスされている。

そして、モンクの独特かつユニークな個性のピアノには、やはり、モンク自身のアレンジが一番映える。モンク自身が、自身の個性を理解しつつ、その個性を際立たせる、自身によるアレンジ。この盤は「モンクの作曲力とアレンジ力を聴くべき」アルバムでもある。

ただし、この盤に記録された、モンクの独特かつユニークな個性のピアノは、その出来栄えとしては「原石レベル」であり、これから磨きがかかってさらに輝きを増す直前の「原石レベル」の音の個性。モンクの決定的名演は、のちのリヴァーサイド・レーベルの諸作を待たなければならない。

セロニアス・モンクの最初期の名盤である。セロニアス・モンクの個性の原石を強烈に感じること出来る、ブルーノートの素晴らしい「お仕事」。この盤は、ブルーノート・レーベルが持つ、独特の「先取気質」を強烈に感じ取ることが出来る盤と言える。
 
 

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2024年5月22日 (水曜日)

充実の『Hank Mobley With Donald Byrd And Lee Morgan』

しっかりと芯の入った骨太なブロウ。テクニック良く流れる様なアドリブ・フレーズ。ハンク・モブレーは、フレーズの密度が濃い、バップなテナー・マンだった。

そんな愛すべきバップなテナー・マンのハンク・モブレーのリーダー作の「落穂拾い」をしている。正式にリリースされたリーダー作の中で、まだ、当ブログの記事でご紹介していないものが3枚。1972年以降、引退後、発掘リリースされた盤が6枚。今年中には全9枚を記事にして、モブレーのリーダー作をコンプリートしたい。

Hank Mobley Sextet『Hank Mobley With Donald Byrd And Lee Morgan』(写真左)。1956年11月25日の録音。ブルーノートの1540番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Donald Byrd (tp), Lee Morgan (tp), Horace Silver (p), Paul Chambers (b), Charlie Persip (ds)。

さて、正式にリリースされたリーダー作の中で、まだ、当ブログの記事でご紹介していないもの、の一枚。ハンク・モブレーとして6枚目のリーダー作、かつ、ブルーノート・レーベルでの、30㎝LPでのリリース第一弾。

ブルーノートの総帥プロデューサーの気合いを感じる。モブレーを全面的に売り出したい、そんな気合いをガッツリ感じられるのが、このパーソネル。
 

Hank-mobley-with-donald-byrd-and-lee-mor

 
ダブル・トランペットに、バードとモーガン、ピアノにシルヴァー、ベースにチェンバース、ドラムにパーシップ。当時のブルーノートの、名うてハウス・ジャズマンでガッチリ固めている。

名うてのジャズマンで固めるのには理由があったみたいで、モブレーの書いた楽曲の出来が相当に良く、この相当に内容のある楽曲の優秀性をダイレクトに聴き手に届けるには、優れたジャズマンの、優れた演奏が必須。そういう観点でのこのパーソネル。当時のブルーノート・レーベルが、いまだにリスペクトされる所以である。

モブレーのリーダー作だけあって、モブレーのテナーは好調の部類。と言って、絶好調ではない。パーソネルに、錚々たる先輩ミュージシャンの名が連なっているので、モブレーにとっては結構しんどかったのでは、と感じている。それでも、バックの先輩ミュージシャンが、そんなモブレーを慮って、モブレーを支え、優しく鼓舞するサポートが、なかなか味わい深い。

セクステット編成の演奏なので、曲とアレンジの良し悪しが、アルバムの出来不出来のカギを握るのだが、この盤については、まず、モブレー作曲の曲の出来が良く、その曲を踏まえたアレンジがバッチリ決まっている。典型的な良好なハードバップな演奏がぎっしり詰まっている「隠れ名盤」としても良い、充実したハードバップ盤である。
 
 

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2024年3月 9日 (土曜日)

Genius of Modern Music Vol.2

セロニアス・モンク(Thelonious Monk)。モダン・ジャズの最高の才能、最高の奇才。モンクのピアノは強烈な個性。スクエアにスイングし、フレーズは幾何学的に飛ぶ。クラシック・ピアノの正反対の「音」。クラシック・ピアノの影響は微塵も無い。ジャズから生まれた、ジャズの最高の個性。

Thelonious Monk 『Genius of Modern Music Vol.2』(写真左)。録音日とパーソネル、演奏曲は以下の通り。

1947年10月15日は、Thelonious Monk (p), Idrees Sulieman (tp), Danny Quebec West (as), Billy Smith (ts), Gene Ramey (b), Art Blakey (ds)。演奏曲は、5曲目「Suburban Eyes」、6曲目「Evonce」。

1947年10月24日は、Thelonious Monk (p), Gene Ramey (b), Art Blakey (ds)。演奏曲は、9曲目「Nice Work」。

1947年11月21日は、Thelonious Monk (p), George Taitt (tp), Sahib Shihab (as), Robert Paige (b), Art Blakey (ds)。演奏曲は、10曲目「Monk's Mood」、11曲目「Who Knows」。

1951年7月23日は、Thelonious Monk (p), Sahib Shihab (as, except "Ask Me Now"). Milt Jackson (vib, except "Ask Me Now"), Al McKibbon (b), Art Blakey (ds)。演奏曲は、7曲目「Straight No Chaser」、8曲目「Four In One」、12曲目「Ask Me Now」。

1952年5月30日は、Thelonious Monk (p), Kenny Dorham (tp), Lou Donaldson (as), Lucky Thompson (ts), Nelson Boyd (b), Max Roach (ds)。1曲目「Carolina Moon」、2曲目「Hornin' In」、3曲目「Skippy」、4曲目「Let's Cool One」。
 

Monk-genius-of-modern-music-vol2

 
Vol .1に続いて、こちらは、5つのセッションからの曲の寄せ集め、しかも、大体がクオリティの落ちがちな「Vol.2」。今度こそ、統一感とかトーンの整合性とか、全く無視しているんじゃないか、と思うんだが、この「Vol.2」も、アルバム全体に統一感がバッチリ、演奏のトーンや内容も違和感は全く無い。

Vol.1と同様に、モンクのピアノの突出した個性、モンク独特のアレンジが、アルバム全体の統一感、演奏のトーンや内容を決定づけている。モンクの強烈個性のピアノとアレンジだけが、演奏の全面に出てきて、他の演奏者の音や個性に、アルバム全体の統一感、演奏のトーンや内容が影響されることが全く無い。

この「Vol.2」は、Vol .1と同様、収録曲はモンクの自作曲、モンク独特のアレンジで統一されている。曲名を見渡すと、Vol .1に比べるとマイナーな曲が多くなっているが、それでも「Monk's Mood」「Straight No Chaser」など、最終的にはスタンダード曲化する、モンクの自作曲の中でも特に有名となる曲も散見される。

マイナーな曲が多いとはいえ、そこは「モンクの自作曲」、ちょっと不思議なフレーズ、幾何学的に飛ぶ音、耳あたりの良い不協和音、不規則に現れる絶妙な間、がどの曲にも反映されていて、モンクの有名曲とマイナーな曲との間に相違点は無いし、一緒に収録されていても違和感が全く無い。どころか、確固たる「統一感」を醸し出している。

「Vol.2」は、Vol .1と同様、演奏の形態は、1曲の収録時間が3分前後の「ビ・バップ」ライクなもの。モンクの数々の難曲は、セッションに参加した演奏者からすると、アドリブを取りやすい、アドリブを取ると楽しい、らしく、皆、嬉々として演奏している。「Vol.2」は結構、無名なジャズマンも多数参加しているが、演奏全体の内容はどの曲も充実している。思わず目を見張る。

ブルーノートの1511番。この「Vol.2」も,Vol .1と同様、、モンク・ミュージックのショーケースの様な内容のアルバム。この「Vol.2」でも、モンクは明確な力強い尖ったタッチで、スクエアにスイングし、フレーズを幾何学的に飛ばしつつ、セッション・メンバーと一期一会の即興演奏を繰り広げている。この盤もモダン・ジャズの「永遠の名盤」である。
 
 

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2024年3月 8日 (金曜日)

Genius of Modern Music Vol.1

セロニアス・モンク(Thelonious Monk)。モダン・ジャズの最高の才能、最高の奇才。モンクのピアノは強烈な個性。スクエアにスイングし、フレーズは幾何学的に飛ぶ。クラシック・ピアノの正反対の「音」。クラシック・ピアノの影響は微塵も無い。ジャズから生まれた、ジャズの最高の個性。

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Thelonious-monk-genius-of-modern-music-v
 

何だか、4つのセッションからの曲の寄せ集めで、統一感とかトーンの整合性とか、全く無視している様に見えるが、聴いてみると判るが、アルバム全体に統一感がバッチリ、演奏のトーンや内容も違和感は全く無い。

モンクのピアノの個性が突出していて、このモンクの強烈個性のピアノだけが、アルバム全体の統一感、演奏のトーンや内容を決定づけている。フロント楽器やベースやドラムのリズム隊の音や個性に、アルバム全体の統一感、演奏のトーンや内容が影響されることが全く無い。

加えて、収録曲はモンクの自作曲で統一され、モンク独特のアレンジで統一されていて、アルバム全体の統一感、演奏のトーンや内容を決定づけている重要な要素になっている。収録された自作曲を見渡すと、後のミュージシャンズ・チューンとなって、最終的にはスタンダード曲化する、モンクの自作曲の中でも特に有名となる曲が軒並みチョイスされている。

演奏の形態は、1曲の収録時間が3分前後の「ビ・バップ」ライクなもの。モンクのちょっと不思議なフレーズを持つ自作曲で「ビ・バップ」が出来るのか、と懸念を抱くのだが、意外とモンクの曲は、ジャズマンにとってアドリブを取りやすい、アドリブを取ると楽しいみたいで、モンクのちょっと不思議なフレーズを持つ自作曲を皆、嬉々として演奏している。そう、演奏全体の内容はどの曲も充実しているのが凄い。

ブルーノートの1510番。モンク・ミュージックのショーケースの様な内容のアルバム。このモダン・ジャズの最高の才能、最高の奇才を見出し、アルバムを制作させた、ブルーノート・レーベルの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの慧眼の凄さに敬服する。この盤はモダン・ジャズの「永遠の名盤」である。
 
 

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2023年10月30日 (月曜日)

『Miles Davis Vol.2』の聴き直し

マイルスの全く仕事が入らなくなった麻薬禍真っ只中の1952年、実は、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、麻薬禍のマイルスに、本格的なリーダー作を録音する機会を提供し、彼の生活を助け、彼を支援した。

そして、ライオンがマイルスに提供した録音機会は、全部で1952年3月9日、1953年4月20日、1954年3月6日、の3セッション。1952年は麻薬禍真っ只中、1953年は麻薬禍を克服して間もない頃、1954年はほぼ完全に復調した頃。

この3セッションの音源、10-inch LPバージョン、12-inch LPバージョン、2001年リイシューCDバージョンと3通りの音源収録のパターンがあって注意が必要。ざっと、以下の様な3通りの内容になっている。

10-inch LPが一番判りやすくて、1952年の録音は『Young Man With A Horn』で、1953年の録音は『Miles Davis Vol. 2』、1954年の録音は『Miles Davis Vol. 3』と3枚のアルバムに、ちゃんと分けて収録されている。

が、12-inch LPについては、『Miles Davis Volume 1』には、1952年と1953年の録音が、但し、LPの収録時間の関係上、A面とB面1曲が、1952年録音の曲と1953年録音の曲がテレコで入っている。『Miles Davis Volume 2』には、1954年の録音がメインではあるが、1952年、1953年、1954年の録音が混在。

2001年にリイシューされたCDはスッキリしている。『Miles Davis Volume 1』は、1952年と1954年の録音が、『Miles Davis Volume 2』には1953年の録音が収められていて、『Miles Davis Volume 1』は、9曲目の「Woody 'n' You」と、10曲目「Take Off」では、明らかに演奏の雰囲気が変わるので、1952年と1954年の録音の境目はよく判る。

そこで、今回は『Miles Davis Volume 2』(写真左)の2001年リイシューCDバージョンで、1953年4月20日のセッションを聴く。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), J. J. Johnson (tb), Jimmy Heath (ts), Gil Coggins (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。マイルスのトランペット、ジェイジェイのトロンボーン、ジミー・ヒースのテナーの3管フロントのセクテット編成。
 

Miles-davis-vol2

 
1953年4月20日のセッションは、マイルスは麻薬禍を克服して間もない頃。明らかに麻薬禍を克服しているのがよく判る、ハードバップのプロトタイプの様な、当時として「新しい」響きと内容が素晴らしい。ブルーノートでの録音ということもあるだろう。

ブルーノートはリハーサルにもギャラを払って、ジャズマンにしっかりリハを積ませて演奏のレベルを引き上げ、本番でレベルの高い、内容のある演奏をさせて録音する、ということを常にやっていた。この盤でもそうだったんだろう。

特に、マイルス=ジェイジェイ=ヒースの3管フロントのユニゾン&ハーモニーが「キマッて」いる。バンド全体のアンサンブルも整然としていて緩みが無い。それぞれのアドリブ展開は創造性に富む。この盤の演奏が「マイルスによるハードバップの萌芽」と評価される所以である。

この1953年4月20日録音は、溌剌とした度合いが高く、フレーズも明るめで健康的。総じて、流麗で張りのある力強い演奏で統一されている。演奏の展開は全く「ビ・バップ」では無い。演奏をしっかり聴かせる、クールでモダンなアレンジが施され、一人一人のアドリブ展開の長さも、そのジャズマンの力量と歌心を推しはかるに十分。いわゆる「ハードバップ」な展開である。

メンバーそれぞれが、この演奏のアレンジとスタイルが「新しいもの」と感じているみたいで、実に神妙にテクニックよろしく、しっかりと楽器を演奏している様が伝わってくる。とりわけ、マイルスのトランペットは素晴らしい。クールでリリカルで訴求力ある展開は、当時のジャズ・シーンの中で、最高レベルのトランペットである。

マイルスはライオンの恩義に報いるかの様に、麻薬禍と戦いながら、素晴らしい録音をブルーノートに残した。時代はビ・バップの流行が下火になり、ハードバップの萌芽を感じられる録音がちらほら出だした頃。マイルスは、ブルーノートの録音に、いち早く、ポスト「ビ・バップ」な、後のハードバップの先駆けとなる音を残した。そして、麻薬禍を克服する。
 
 

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2022年12月28日 (水曜日)

マイルスのブルーノート録音・1『Miles Davis Volume 1』

マイルス・デイヴィスのリーダー作は、どの盤も「奥が深い」。まず、駄盤、凡盤の類が無い。各リーダー作には、それぞれ、録音時の「音の背景」とか、録音時の「音の志向」とか、が必ずあって、マイルスのリーダー作は、それぞれの盤毎に必ず「意味や意義」が存在する。マイルスは立ち止まったり、振り返ったりすることが無い。そして、マイルスには「適当に」という言葉は存在しない。

『Miles Davis Volume 1』(写真左)。1952年5月9日, 1953年4月20日の録音。ブルーノートの1501番。ちなみにパーソネルは、1952年5月9日:Miles Davis (tp), J. J. Johnson (tb), Jackie McLean (as), Gil Coggins (p), Oscar Pettiford (b), Kenny Clarke (ds)。1953年4月20日:Miles Davis (tp), J. J. Johnson (tb), Jimmy Heath (ts), Gil Coggins (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。どちらもセクステット編成。

1949年-1950年録音の『Birth of the Cool』の後、ブルーノートへの初録音と第2回目の録音から選曲された12-inch LP仕様のアルバム。当初は10-inch LP3枚に分けてリリースされたものを、12-inch LPへの移行時、2枚のLPに再編したものの最初の1枚である。

録音当時、マイルスは重度の麻薬禍に陥っており、録音も激減していたのだが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは、マイルスの才能を高く評価していて、重度の麻薬禍の状態にあったマイルスに録音の機会を与えている。マイルス自体、麻薬禍から何とか立ち直りたいと努力していた時期でもある、ライオンはそんなマイルスに救いの手を差し伸べた訳である。
 

Miles-davis-volume-1_1

 
マイルスはそんなライオンの恩義に報いるかの様に、麻薬禍の真っ只中にありながら、素晴らしい録音をブルーノートに残している。時代はビ・バップの流行が下火になり、ハードバップの萌芽を感じられる録音がちらほら出だした頃。マイルスは、ブルーノートの録音に、いち早く、ポスト「ビ・バップ」な、後のハードバップの先駆けとなる音を残している。

まだ編成楽器によるインタープレイは無いにしろ、演奏を「聴くこと」を意識したアーティスティックなアレンジ、聴き手に訴求する為のアドリブ展開におけるロング・プレイ、ビ・バップの熱気溢れる演奏志向からクールでヒップな演奏志向への変化は、既にこの1952年5月9日, 1953年4月20日の録音で、マイルスは「ものにしている」。

収録曲については、1952年5月9日録音は「How Deep Is the Ocean?」「Dear Old Stockholm」「Chance It」「Yesterdays」「Donna」「Woody 'n' You」の6曲、1953年4月20日録音は「Tempus Fugit」「Kelo」「Enigma」「Ray's Idea」「C.T.A」「C.T.A" (Alternate Take)」の6曲。

1952年5月9日録音の演奏の方が、ちょっと「くすんだ様な」大人しい演奏でクール度が高い。1953年4月20日録音の演奏の方は、溌剌とした度合いが高く、フレーズも明るめで健康的。でも、そんなに大きな変化は無くて、総じて、流麗で張りのある力強い演奏で統一されている。特にマイルスのトランペットは素晴らしい。当時のジャズ・シーンの中で、最高レベルのトランペットである。

マイルスは、ライオンの恩義に報いるように、ブルーノートに「ハードバップの萌芽」を感じさせ、トランペッターとして最高レベルのブロウを残したのだ。決して、やっつけの録音では無い、しっかりリハーサルされ、しっかり集中して演奏された素晴らしい録音の数々。やはり、当時から「マイルスは只者では無かった」のだ。
 
 

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2021年8月21日 (土曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・4 『A Night at Birdland』

「僕なりの超名盤研究」の第4回目。この盤については、どのジャズ盤紹介本でも「ジャズの代表的な演奏トレンドであるハードバップの始まりを記録した盤」としている。いわゆる「ハード・バップ誕生の瞬間」を記録した歴史的名盤と評価されている。が、売り文句としては実にキャッチャーな表現だが、この盤が記録したライヴ・パフォーマンスを境目に、ハードバップが一気に展開されていった訳ではない。

Art Blakey『A Night at Birdland Vol.1&2』。1954年2月21日、NYのライブスポット、バードランドでのライヴ録音。邦題『バードランドの夜』。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Clifford Brown (tp), Lou Donaldson (as), Horace Silver (p), Curley Russell (b)。アナウンスは「Pee Wee Marquette」。バードランドの夜は、このピー・ウィー・マーケットの熱気溢れる紹介アナウンスから幕を開ける。臨場感抜群である。

さて、この『バードランドの夜』、この演奏がハードバップの萌芽とされる訳だが、聴いてみてどこがそうなんだか、特に、ジャズを聴き始めた頃、このライヴ盤を聴いても「さっぱり判らん」が正直なところ。

ところで「ハードバップ」とは何か、であるが、Wikipediaを紐解き、要約すると「アメリカ東海岸で、1950年代に始まり1960年代まで続いた演奏スタイル。一般的なジャズサウンドのイメージはこのスタイルと言える。アレンジなどにも工夫を凝らし、メロディアスで聴きやすいと同時に、演奏者の個性や情熱を表現することができ、大衆性と芸術性の共存を可能とした演奏スタイル」とのこと。

これでもまだ「良く判らん」なので、他の演奏スタイルと比較してみる必要がある。ハードバップに至るまでのジャズの演奏形式の変化である。これをやらないと、この『バードランドの夜』を聴いても、何が「ハード・バップ誕生の瞬間」を記録した歴史的名盤なのか、さっぱり判らないままである。
 

A-night-at-birdland

 
ハードバップの前の流行の演奏スタイルは「ビ・バップ」。最初に決まったテーマ部分を演奏した後、コード進行に沿いつつ、自由な即興演奏を順番に行う形式。演奏テクニックとアドリブ・フレーズの優秀性に重きが置かれ、スインギーな側面やメロディーを楽しむ側面はそぎ落とされ、アクロバティックな即興演奏だけが着目される演奏形式となった。音楽としての「聴き手」の嗜好を無視した内容に陥り易く、ジャズの大衆性が阻害され易い演奏形式ともいえる。

で、比較である。まず、ビ・バップの演奏の雰囲気は、Dizzy Gillespie『Groovin' High』(2015年7月28日のブログ参照)などで感じることが出来る。次に、ビ・バップからハードバップの過渡期の雰囲気は、Charlie Parker『The Genius Of Charlie Parker, #3 - Now's The Time』(2021年4月8日のブログ参照)、そして、ハードバップ初期の雰囲気はこの『A Night at Birdland Vol.1&2』で感じることが出来る。

特に面白いのは、ビバップからハードバップの過渡期の雰囲気を記録してパーカー盤。ビバップの祖の一人、パーカーがメインとなっているリーダー作だが、内容的には、ハードバップの特色である「アレンジなどにも工夫を凝らし、メロディアスで聴きやすいと同時に、演奏者の個性や情熱を表現する」部分の兆しがこの過渡期の盤に記録されている。確かにこのパーカー盤はビ・バップでは無い。

そして、今回の『バードランドの夜』。確かに、この盤の演奏は明らかに「アレンジなどにも工夫を凝らし、メロディアスで聴きやすいと同時に、演奏者の個性や情熱を表現する」部分が貫かれている。曲のコードをより細かく分けたり、テンポの速くして演奏をより複雑にしたり、演奏のニュアンス、バリエーション豊かにして、演奏の表現力を豊かにした、いわゆる「聴かせること」そして「アーティスティックなこと」を前面に押し出した演奏は聴き応え十分。

このライヴ盤には、ハードバップの要素がぎっしり詰め込まれている。しかも、このアルバムはスタジオ盤では無い、一発録りのライブ録音。つまり、1954年には、皆が皆では無いにしろ、このハードバップ的な演奏がライヴで、一発録りな雰囲気で行われていたのである。当時のジャズの演奏レベルの高さというものを改めて感じる。
 
 
 
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  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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2020年12月 1日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・193『Blowing In From Chicago』

ブルーノート・レーベルの素晴らしいところは色々あるが、ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオン自らが自らの耳で、それまで無名だった優秀なジャズマンを見出して、リーダー作を録音させていたところが一番感じ入る。他のレーベルは優秀なのかどうかも判らず、売れるかどうかも判らないので見向きもしない(笑)。

そんな優秀ではあるが無名だったジャズマンを、ブルーノートはその才能を見出して、リーダー作を録音させたり、サイドマンとして、他のリーダー作に参加させていたりする。ブルーノートのお陰で、ハードバップ時代、人気ジャズマン以外にも優れたジャズマンは沢山いて、ジャズというのは演奏家のレベルで見ても、かなり裾野の広い音楽ジャンルだったことが良く判るのだ。

Clifford Jordan『Blowing In From Chicago』(写真左)。1957年3月3日の録音。ブルーノートの1549番。ちなみにパーソネルは、Clifford Jordan, John Gilmore (ts), Horace Silver (p), Curly Russell (b), Art Blakey (ds)。ブルースの街シカゴからニューヨークにやって来たクリフォード・ジョーダンとジョン・ギルモア、テナー・サックス2管がフロントの変則クインテット編成。
 
 
Blowing-in-from-chicago  
 
 
ホレス・シルヴァーが見出したそうだ。「シカゴに凄いテナーマンがいたぜ」とライオンに耳打ち。それでは、とブルーノートがリーダー作の録音をセットアップ。シルヴァー=ラッセル=ブレイキーの黒々としたリズム・セクションを用意し、素晴らしいセッションが実現した。無骨でバキバキゴツゴツと硬派なハードバップ、そして、マイナー・ブルース。

テクニックがどう、とか、フレーズの創造性がどう、とか、この盤を聴く時にはそんなものは「野暮」というもんだ。ハードバップの良いところがこの盤に詰まっている。ジャズっぽい、力強くブルージーなテナー2管の音がとても心地良い。そして、ブルース・ナンバーには、ニューヨークではない、どこかシカゴ・ジャズの雰囲気が漂う。

こういう盤を録音し、その音源が残っているから、ブルーノート・レーベルはジャズの老舗レーベルとしてリスペクトされ続けているのだ。ハードバップの宝の山であるブルーノートの1500番台の中でも、今でも有名盤では無いが、これはひときわ「ブルーノートらしい」1枚だと思っている。
 
 
 

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