2026年2月11日 (水曜日)

ケリーの個性を盤一枚で感じる

昔から、ジャズ・ピアノは、僕の一番得意な楽器。今、レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいる。ジャズ・ピアノ盤の名盤・好盤の類がズラリ記事に並んでいて、今の耳で、このジャズ・ピアノの名盤・好盤を聴き直すのは、以外と楽しい作業である。

Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。1959年2月19日と3月10日の録音。ちなみにパーソネルは以下の通り。セクステット編成が2月19日、ピアノ・トリオ編成が3月10日の録音になる。

セクステット編成での2月19日の録音「Kelly Blue」「Keep It Moving」は、Wynton Kelly (p), Nat Adderley (cor), Bobby Jaspar (fl), Benny Golson (ts), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

トリオ編成での3月10日の録音「Softly, as in a Morning Sunrise」「On Green Dolphin Street」「Willow Weep for Me」「Keep It Moving」「Old Clothes」は、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

さて、ウィントン・ケリーは、健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。これは、この盤のトリオ編成の演奏で良く判る。この盤のトリオ演奏でのケリーのピアノは絶好調。ケリーのメイン楽器としてのピアノの個性が手に取るように判る。
 

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一方、ウィントン・ケリーは伴奏上手でも有名で、彼のピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が、フロント管をサポートする上で、ボーカルをサポートする上で、効果的に響くのだろう。その「伴奏上手のケリー」は、この盤のセクステット編成の演奏で、じっくり聞けば良く判る。

冒頭のタイトル曲「Kelly Blue」のセクステット演奏の前奏部分が、フロント3管のユニゾン&ハーモニーが、ファンキーだが、どこかダルで、どこか間延びした、ちょっと古い響きがするので、ちょっと聴き始めは戸惑うが、次の有名スタンダード曲「Softly, as in a Morning Sunrise」がトリオ演奏なので、ケリーのピアノが前面に出てくるのでホッとする。後は「On Green Dolphin Street」から「Willow Weep for Me」では、ケリーのスタンダード曲の解釈を感じ取る事ができる。

この盤は、ケリーのピアノを愛でるという切り口では、トリオ編成の演奏をメインに聴くべくアルバムだと思う。伴奏上手なケリーも聴くべき個性だとは思うが、この「伴奏上手」を聴き取るには、ある程度のレベルのステレオ装置が必要となって、気軽にという訳にいかず、なかなか判り難い個性である。

この盤、リヴァーサイドの中でも「ポップでキャッチャーな内容のファンキー・ジャズ盤」として、ジャズ者初心者向けのアルバムとして、よくそのタイトル名が上がる盤。しかし、ファンキー・ジャズとして聴くより、ケリーのピアノの個性がとても良く判る「ウィントン・ケリー入門盤」の一枚だろう。
 
 

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2026年2月10日 (火曜日)

1950年代ジャマルのトリオ演奏

レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」。日本の演奏家も含めて、ジャズ/フュージョンを代表するピアノの名演をまとめて紹介するというものだが、有名な名盤からちょっとマニアックな好盤から、ジャズ・ピアノの個性という切り口でチョイスし紹介している、好感の持てる企画記事である。

『Ahmad Jamal At The Pershing: But Not for Me』(写真左)。1958年1月16日、シカゴの「Pershing Hotel」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Israel Crosby (b), Vernel Fournier (ds)。シカゴ在住メンバーで固めた、ラウンジ風ハードバップ・ジャズなピアノ・トリオのライヴ・パフォーマンスの記録。

ジャス・ピアノの代表的名盤といえば、このアルバムは必ず出てくる。ハードバップ時代のトリオ演奏におけるピアノの代表的個性のひとつ。ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1950年代は、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。
 

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そんな1950年代ジャマルの小粋なピアノが満載。ライヴ録音なので、適度な緊張感あって、ラウンジ風のピアノ・トリオではあるが(実際、ホテルのラウンジでの録音)、タッチに力強さもあり、音を厳選する中で、印象的なアドリブ・フレーズを小粋に弾き進めている。とても趣味の良い、聴き心地の良いピアノ。端正で崩れが無いので「面白く無い」という向きもあるが、テクニックのレベルも高く、これも、ジャズ・ピアノの代表的な個性のひとつだろう。

今の耳で、じっくり聴き進めてみると、ジャマルのトリオは、ビ・バップのピアノ・トリオのパフォーマンスを下敷きに、弾く音を限りなく厳選し、左手のブロックコードをシンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入れている様に聴こえる。ベースとドラムがリズム・キープに徹しているところも「ビ・バップ」基調だし、少なくとも、このトリオには「インタープレイ」という概念は無い。

上質の、内容のある、ラウンジ風ハードバップ・ジャズなピアノ・トリオだろう。この1950年代ジャマルの、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードを、マイルスは評価した。ジャマルのピアノを伴奏に、トランペットを吹けば、トラペットのフレーズがとりわけ映えるだろう。ジャマルを勧誘したマイルスの気持ちが良く判る。
 
 

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2026年1月27日 (火曜日)

エロール・ガーナーを再聴する

昔、僕がジャズを本格的に聴き始めた約50年前。ジャズ初心者向けのアルバムの紹介本や、紹介記事、紹介チラシに、なぜか必ず入っていたピアニスト、エロール・ガーナー(Erroll Garner)。僕は、当時、このエロール・ガーナーのリーダー作、それも何故か『Concert By The Sea』ばかりが紹介されていて、これも勉強とばかりに購入、意気込んで聴き始めたのだが、これが、なんとも良く判らない。戸惑った。

Erroll Garner『Contrasts』(写真左)。1954年7月27日の録音。ちなみにパーソネルは、Erroll Garner (p), Wyatt Ruther (b), Fats Heard (ds)。エロール・ガーナーが1954年に発表したスタジオ録音のアルバムである。1988年のCDリイシュー時には「The Original Misty」というタイトルでリイシューされた。

ガーナーの個性は、スイング・ジャズを踏まえたピアノだったり、当時の流行の弾き方だったブギウギ・ピアノであったり、スライド・ピアノであったりする。つまりは、モダン・ジャズの基となった、モダン・ジャズ以前の、モダン・ジャズの要素となった、ポップで大衆的なピアノの響きなのである。つまり、モダン・ジャズにおけるピアノとは、アプローチ、テクニック、響きが違う。そこが「戸惑い」の原因。

ガーナーの個性は、即興性というジャズの基本を踏まえつつ、テクニックは優秀、そして、曲の美しいフレーズを捉えて、歌心満点のピアノを弾きまくるという点。つまり、聴き手を十分に意識した、聴き手に「聴いて楽しませる」ことn主眼を置いた、ジャズ・ピアノの「エンタテインメント性」を表出した、最初のピアニストということになる。
 

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例えば、アート・テイタムは、ガーナーと同じ時代を生きたピアニストだが、テイタムは、驚異的なテクニックを武器に、アクロバティカルな、テクニックの高さをウリにした、エンタテインメント性を追求したピアノ。ガーナーは、逆に、テクニックの高さはあるが、それよりも歌心溢れるフレーズ、いわゆる、聴き手を意識したエンタテインメント性をウリにしたピアノであると言える。

そんなガーナーの個性がとても良く理解出来るアルバムがこの『Contrasts』。ガーナーはテクニックの高さを優先しないで、歌心を重視した弾きっぷりで、明らかにビ・バップとは違う切り口での弾き回し。スイング・スタイルのピアノは、この歌心だけを重視して、テクニックは二の次、あとはリズム楽器としての役割を追求するものだったので、ガーナーのピアノとは全く性質が違う。

ガーナーの「ビハインド・ザ・ビート」が心ゆくまで感じる事ができる。「ビハインド・ザ・ビート」とは、左手でビートを刻み、右手のメロディーが、左手のビートから若干遅れて出てくる弾き方。弾き方というか、エロル・ガーナーの場合は、自然発生的にこの弾き方になっている。これが、このアルバムでは良く判る。

モダン・ジャズ期にテイタムのテクニックの高さをウリにした、エンタテインメント性を弾き継いで、モダン・ジャズ・ピアノとして成立させたのが「バド・パウエル」、歌心溢れるフレーズをウリにした、エンタテインメント性を弾き継いで、モダン・ジャズ・ピアノとして成立させたのが「ビル・エヴァンス」。そんな単純な解釈を僕はして、彼らのピアノを楽しんでいる。
 
 

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2026年1月22日 (木曜日)

”Night Train” 17年振りに記事化

レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」。日本の演奏家も含めて、ジャズ/フュージョンを代表するピアノの名演をまとめて紹介するというものだが、有名な名盤からちょっとマニアックな好盤から、ジャズ・ピアノの個性という切り口でチョイスし紹介している、好感の持てる企画記事である。

Oscar Peterson Trio『Night Train』(写真左)。1962年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p) Ray Brown (b) Ed Thigpen (ds) という、1959年以来の不動のメンバー。いわゆる、オスカー・ピーターソンの黄金の「ザ・トリオ」である。当ブログでは、2009年10月28日にて「ピアノ・トリオの代表的名盤・2」としてご紹介済み。

ピーターソンのピアノの凄いところは、アート・テイタムやバド・パウエルに匹敵するテクニックの持ち主だが、不必要にテクニックを前面に押し出さないところ。必要な時は、テイタムばりに、バドばりに、ガンガン弾きまくるが、アルバム・コンセプトとして不要な場合は、絶対に弾き過ぎない。非常に分別がある、理知的な、コントロールされたピアノが特徴。
 

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冒頭のタイトル曲「Night Train」を聴くだけでそれが判る。とても素敵なブルース曲だが、ミッドテンポのゆったり悠然とした、余裕タップリの弾きっぷり。排気量の大きなスポーツカーが、般道路をゆっくりと悠然と走っているような感じ。指捌きを聴けば、ピーターソンのピアノ・テクニックの高さが直ぐに判る。

そして、テイタムやバドにはちょっと希薄な「スイング感」が、ピーターソンのピアノには「てんこ盛り」。ジャジーでブルージーでちょっとファンキーなスイング&ドライブ感が素晴らしい。歴代のジャズ・ピアニストの中で、最高にスイング&ドライブするピアノ、だと断言したい。特に、この盤では、実に趣味良くクールにスイングしている。

これは、テイタムやバドには無い、ピーターソン独特の個性である。ハイテクニックでスインギーにドライブするピーターソンのピアノ。テイタムは「エンターテインメント」、バドは「ストイック」、そして、ピターソンは「スインギーなドライブ感」。ジャズ・ピアノの「ハイテクニック3人衆」。ピーターソンのピアノには「成熟」を感じる。
 
 

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2026年1月20日 (火曜日)

Bud Powell ”Jazz Giant” 再聴

レコード・コレクターズ2026年2月号の特集に「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」がある。この特集は、日本の演奏家も含めて、ジャズ/フュージョンを代表するピアノの名演をまとめて紹介するというもの。

ジャズ・ピアノの基本的な名盤については、当ブログについては、15〜20年前に記事化済みなので、ブログの右下の「カテゴリー」から、ジャズマン・グループの名前から入れば、読むことが出来るのだが、かなり前の記事なので、その名盤に対する、印象、聴き方も変わっていると思うので、今の耳で、もう一度、聴き直してみるのも一興と思い立った。

Bud Powell『Jazz Giant』(写真左)。1949年2月の録音と1950年2月の録音の2セッションを併せたアルバム。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p) をリーダーとして、1949年2月の録音は、Ray Brown (b), Max Roach (ds)、1950年2月の録音では、Curley Russell (b), Max Roach (ds) が参加している。

ジャズ・ピアノの個性は千差万別で、ピアニスト毎に個性が変わると言って良い。弾き方については、幾つかの切り口でグルーピングすることが出来て、ここでは「弾きっぷりのテクニック」について語りたい。

ジャズ・ピアノの弾きっぷりのテクニックの高さという点では、アート・テイタム、バド・パウエル、オスカー・ピーターソンがベストスリーだろう。
 

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テクニックの高さの基準は、アート・テイタムで、テイタム志向の、クラシック・テクニックに匹敵するのが、バド・パウエル。スイング感+豊かなオフビートという、ジャズ・ピアノらしさの切り口では、オスカー・ピーターソン。

この『Jazz Giant』では、そんなバド・パウエルの弾きっぷり、個性如実に判るジャズ・ピアノの名盤の一枚。冒頭の「Tempus Fugue-it」を聴くだけで、アート・テイタムに匹敵するバドのハイ・テクニック、クラシック・ピアノに匹敵する、テクニックの正確さを聴き取ることが出来る。とにかく、凄まじい指回し、凄まじいブロックコードの打鍵である。

バド・パウエルの個性を愛でるに相応しいアルバムは多々あるが、この『Jazz Giant』が、バド・パウエル体験の入口に当たるアルバムだと僕は思う。ジャズ・ピアノを聴き極める上で、まず、このバド・パウエルをクリアする必要はある。

バド・パウエルは、モダン・ジャズ・ピアノの祖であり、ピアノ・トリオ・スタイルを確立させた、つまり「ピアノ+ベース+ドラム」の現代のピアノ・トリオ編成を定着させたピアニストだからである。

そのバド・パウエルをクリアする第一歩が、この『Jazz Giant』。まず、このアルバムを聴くことで、ジャズ・ピアノの最高水準はどの辺りなのか、確認することができる。そんなジャズ・ピアノの名盤の一枚である。
 
 

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