2026年4月 5日 (日曜日)

『Rainbow Seeker』の聴き方

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいる。当ブログでは、「この曲」を「この一枚」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。

特に、この記事は、純ジャズばかりでなく、和ジャズ、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの名盤・好盤にも言及しているところが良い。特に、クロスオーバー&フュージョン・ジャズについては、なかなか説得力のあるアルバムを選んでいるので、好感度良好である。

クロスオーバー&フュージョンの世界では、超絶技巧、テクニック優先、音の雰囲気優先なので、なかなかミュージシャン本人の個性まで及ぶことはなかなか無いんだが、それでも、中には、その人の演奏を30秒ほど聴いたら、それと判る、コッテコテの個性の持ち主は結構いたりする。

クルセイダーズのキーボード奏者ジョー・サンプルなんかは、コッテコテの個性の持ち主である。凄い時は、ピアノのフレーズ5秒ほど聴いただけで、なかなか判り難い時でも30秒ほど聴けば、そのフレーズを弾いているキーボーティストは「ジョー・サンプル」だと判るくらい、コッテコテの個性の持ち主である。

Joe Sample『Rainbow Seeker』(写真左)。1978年の作品。邦題『虹の楽園』。ちなみにパーソネルは以下の通り。なんだか、クロスオーバー&フュージョン畑の名うてのミュージシャンがズラリである。

Joe Sample (p, el-p, key), Robert Popwell (b), Stix Hooper (ds, perc), Ray Parker (g), Dean Parks (g), Billy Rogers (g), David T. Walker (g), Paulinho DaCosta (perc), Garnett Brown (tb), Ernie Watts (sax, fl, piccolo), Fred Jackson (sax), William Green (sax, fl, piccolo), Robert O. Bryant (tp), Jay Daversa (tp), Steven Madaio (tp) 等々。
 

Rainbow_seeker_2

 
ジョー・サンプルのキーボーディストとしての才能がギッシリ詰まった傑作盤である。響きの良い小粋なエレピと、明朗でリリカルなアコピが、そこはかとなくファンキーな香りを漂わせながら、キラキラ輝く様に乱舞している。フレーズの弾き回し方が実に個性的で、ジョー・サンプルにしか出せない音が満載である。

健康的で明朗な音で、アーバンな雰囲気色濃く、ファンクネスがクールにお洒落に織り込まれているところが個性的。速いフレーズが、コロコロと涼しく転がる様に弾き回していく様は、ジョー・サンプルならでは。

レココレの特集では「この曲」としてあがっている、4曲目の「Melodies Of Love」。確かに、この1曲にジョー・サンプルのキーボーティストの特徴が溢れている。

決して、目を見張るようなテクニックでは無いのだが、ちょっとファンキーな香りが芳しい、明朗でリリカルなアコピが凄い。テクニックでは二の次、音の響きと印象的な旋律でガッツリ聴かせるとでもいおうか、いかにも、ジョー・サンプルらしい美意識が、バッチリと表現されている。

コンポーザー&アレンジャーとしての魅力も満載。収録された曲はすべてオリジナル。収録された曲という曲はどれもが良い曲であり、良いアレンジが施されていて、印象的な、しかも判り易く親しみ旋律が満載。「良い曲やな〜」と思いながら聴き惚れていると、あっという間に収録曲全8曲が終わってしまう。

ジョー・サンプルの「この一枚」は、この『Rainbow Seeker』(虹の楽園)。クロスオーバー&フュージョンのキーボードでしょ、と甘く見るなかれ。上品で小粋、そこはかと無くファンキーの香り漂う、明朗で印象的な旋律が満載で、とにかく聴き易く、とにかく美しい。
 
 

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2026年2月27日 (金曜日)

『The Real McCoy』の聴き方

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいる。当ブログでは、「この曲一曲」を「これ一枚」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。今回は「この一曲」から始まって、結局は「これ一枚」に落ち着いた、マッコイ・タイナーの名盤を聴き直している。

McCoy Tyner『The Real McCoy』(写真左)。1967年4月の録音。ブルーノートの4264番。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Joe Henderson (ts), Ron Carter (b), Elvin Jones (ds)。時代はロック台頭の時代、そして、 1967年7月には、コルトレーンが急逝する激動の時代。タイナーはコルトレーンのバンド配下を辞してでの、ブルーノートでの初リーダー作である。

レココレでの「この1曲」は、アルバムのラスト、5曲目の「Blues on the Corner」を挙げている。ブルーノートのアルバムでは、リーダーが必ず1曲は持ってくるようにと、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの要請に応じた、タイナー自作のブルース。まあ、この『The Real McCoy』に収録された曲は全て、タイナーの自作曲で占められてはいるが。
 

The_real_mccoy

 
ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手。迫力満点のモーダル・ピアノが、タイナーのピアノの個性と特徴なんだが、このラストの「Blues on the Corner」でそれが判るかどうか。このちょっと緩やかなテンポのブルースでは、ちょっと判り難いかもしれない。

やはり、冒頭1曲目の「Passion Dance」だろう。エルヴィンのドラムが、激しいリズムの嵐を叩き上げ、タイナーのビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手のビートに乗って、ダイナミックで迫力満点の右手のモーダルな「シーツ・オブ・サウンド」が炸裂する。左手のハンマー打法なビートは、強弱と間を効果的にあしらって、うねるようなモーダルなビートを叩き出す。右手は、タイナー流の「シーツ・オブ・サウンド」で、モーダルに疾走する。

このタイナーのブルーノート初のリーダー作『The Real McCoy』は、やはり、これ1曲というよりかは、この1枚、アルバムを全曲聴いて、速い曲、緩やかな曲、ブルース、バラード、それぞれ、異なった曲想、演奏内容の中で、タイナーの揺るぎない「ダイナミックで迫力満点のモーダルな右手、そして、ビートを打ち付ける様なハンマー奏法な左手」を確認し愛でるのが、タイナーのピアノを理解する一番の近道だと僕は思う。
 
 

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2026年2月26日 (木曜日)

『Maiden Voyage』の聴き方

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいる。当ブログでは、「この曲を」を「このアルバムを」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。しかし、今回は「この一曲を」で、ハービー・ハンコックの「ピアノの個性の一つ」を聴き直している。

Herbie Hancock『Maiden Voyage』(写真左)。1965年3月15日の録音。ブルーノートの4195番。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p), Freddie Hubbard (tp), George Coleman (ts), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。邦題『処女航海』。マイルス・スクールで、直接、帝王マイルスの薫陶を受けた(ハバードは除く)若き精鋭達で構成されたクインテットの名演集。

この盤は、マイルスの薫陶を受けた若き精鋭達による「モード・ジャズ」の記録である。全ての曲がモード奏法で展開される。ハードバップの演奏とは全く雰囲気、響き、フレーズが全く異なる「モード奏法」が、聴いていてとてもよく判る。しかも、ハービー・ハンコックのピアノによる「モード奏法」が手に取るような内容になっているのだ。
 

Maiden_voyage_3

 
実はこの盤、フロント2管のパフォーマンス、安全運転で化学反応は起きていない。しかし、面白いことに、フロント2管が安全運転な分、バックのリズム・セクションのバッキングの演奏の創造力は素晴らしい。安全運転なフロント・フレーズに相対する様な、創造的でバリエーションに富んだモーダルなフレーズの連発。特に、バッっキングに回った時のハンコックのピアノの創造性と革新性は素晴らしい。

そんな「バッキングに回ったハンコック」の凄みが噴出しているのが、冒頭のタイトル曲「Maiden Voyage(処女航海)」。バックのリズム・セクションの一角に陣取ったハンコックは凄まじい想像性と革新性に富んだモーダルなフレーズを叩き出している。フレーズの音の拡がりと間を活かした、創造的でバリエーションに富んだモーダルなフレーズの連発。この「Maiden Voyage」一曲で、ハンコックのピアノによる「モード奏法」が瞬時に理解出来る。

他のフロント管のモーダルな展開のバッキングに回った時のハンコックは、ハンコックならでは、の個性溢れるモーダルなフレーズを連発する、という不思議な傾向がある。そして、その好例の一つが、この盤の冒頭一曲目の「Maiden Voyage」である。ここで、改めて、この「Maiden Voyage」で判るのは、ハンコックのピアノによる「モード奏法」。ハンコックは多角的なピアニスト。他の個性の理解については、他のアルバムに求める必要がある。
 
 

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2026年2月23日 (月曜日)

逆説的な ”モンクの個性” の表出

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいるのだが、当ブログでは、「この曲を」を「このアルバムを」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。今回も、「この一曲を」では無く、「このアルバムを」で、セロニアス・モンクのピアノの個性を聴き直している。

Thelonious Monk『Brilliant Corners』(写真左)。1956年10月9日・16日、12月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p, celesta), Sonny Rollins (ts), Ernie Henry (as), Clark Terry (tp), Oscar Pettiford (b, 1–3), Paul Chambers (b,track:5), Max Roach (ds)。

この盤も「この1曲」ではなく「この盤」だろう。確かに、モンクのピアノを体験したいなら、この『Brilliant Corners』は最適の一枚かもしれない。まず、全編に渡って、モンクの独特のフレーズと間、がとても判り易い形で演奏され、録音されている。文句の摩訶不思議な音の飛び方をするフレーズがクッキリ浮かび上がる、摩訶不思議な「間」が実感出来る。確かに、この番、モンクの唯一無二の独特のフレーズの弾き回しと間がガッチリ体験出来る。
 

Brilliant_corners_1

 
しかも、パーソネルを見れば判るか、共演しているジャズマンは皆、一流どころ。そんな一流どころのジャズマン達が、文句のモンクの独特のフレーズと間に完全にはついていけず、戸惑い、萎え、心を立ち直らせながら再チャレンジする。あのロリンズだって青息吐息、必死のパッチである。如何に、モンクの才能が叩き出すフレーズと間が、ユニークで唯一無二で、他の追従を許さないか、が凄く良く判る内容になっているのだ。

モンクの孤高の個性と、それに追従出来ない一流ジャズマン達。そんなパフォーマンスを記録することで、モンクの孤高の個性を表現する、そんな内容のアルバムである。決して、名曲名演による名盤ではない、ということ。モンク自身のパフォーマンスは素晴らしい。しかしこの盤は、モンクの孤高の個性が、それに追従できない一流ジャズマンのパフォーマンスによって、更なる証明がなされる、逆説的なモンクのリーダー作であり、名盤である。

ということで、演奏を表面だけ聴くと、この盤ってなんや、と訝しく思うのは実は正しい。モンクの孤高の個性に追従出来る一流ミュージシャンとしては、テナーのチャーリー・ラウズがいるし、ベースのジョン・オーレがいるし、ドラムのフランキー・ダンロップがいる。これらのサイドマンとの優れた共演はモンクの名盤だし、モンクの孤高の個性を堪能したければ、ソロ・ピアノ盤を選べば良い。ただし、モンクの孤高の個性を愛でる入門盤としては、この『Brilliant Corners』は推薦できる。
 
 

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2026年2月20日 (金曜日)

『Waltz for Debby』の聴き方

レコード・コレクターズ(レココレ)2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいるのだが、アルバムの中の「一曲」だけを聴いて、そのピアニストの個性と特徴を捉えろ、というのは、ちょっと乱暴である。ということで、当ブログでは、「この曲を」を「このアルバムを」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。と昨日、書いた。そして、このアルバムがその最たるもの。

Bill Evans『Waltz for Debby』(写真左)。1961年6月25日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Scott LaFaro (b), Paul Motian (ds)。NYの老舗ライヴハウス、ヴィレッジ・ヴァンバードでのライヴ録音。兄弟盤に『Sunday at the Village Vanguard』がある。演奏は、存命中のスコット・ラフェロを含めた「伝説のトリオ」である。

このライヴ盤の、レココレの言うこの1曲がタイトル曲の「Waltz for Debby」。この耽美的で流麗でスローなワルツ曲が、ビル・エヴァンスというピアニストの個性と特徴を表している、としているが、これはちょっとなあ。実は、ビルのディスコグラフィーを見渡すと、このライヴ盤だけが、異質な響きを宿している盤だと判る。
 

Bill-evanswaltz-for-debby

 
もともと、ビル・エヴァンスは「バップ・ピアニスト」。「明確なタッチのバップなピアノ」が持ち味で、「耽美的でリリカルで静的なピアノ」が持ち味では無い。この盤での「耽美的でリリカルで静的」な響きが溢れる演奏でも、エヴァンスのタッチは明確で鋭い。決して、響きを重視した耽美的なタッチでは無い。つまり「Waltz for Debby」の一曲だけで、ビルのピアノの個性と特徴を結論付けると、間違ったビルのピアノに対する印象を持ってしまうことになる。

このライヴ盤は、マイルスの下で「ものにした」モード奏法を、バラード曲、スローな曲に限定して、この「伝説のトリオ」で実現した唯一のライヴの記録だと理解している。スローな曲調でのモーダルな演奏とインタープレイ。その最高の成果がこのライヴ盤にある。そして、その基本のビルのピアノは「バップ・ピアノ」。決して「耽美的でリリカルで静的」なピアノでは無い。

『Waltz for Debby』については、エヴァンスのピアノの「耽美的でリリカルで静的」な面がクローズアップされた特異な企画盤とした方が「座りが良い」。つまり、エヴァンスのピアノの個性と特徴の半分を体感したに過ぎない。せめて、ビルのホームグラウンドである「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのライヴ盤の諸作を聴いてもらいたい。
 
 

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2026年2月19日 (木曜日)

マルの『Left Alone』の聴き方

レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいるのだが、アルバムの中の「一曲」だけを聴いて、そのピアニストの個性と特徴を捉えろ、というのは、ちょっと乱暴である。ということで、当ブログでは、「この曲を」を「このアルバムを」に拡大して、レココレに紹介されているアルバムを聴き直している。

Mal Waldron『Left Alone』(写真左)。1959年2月24日の録音。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Jackie McLean (as :track 1のみ), Julian Euell (b), Al Dreares (ds)。マル・ウォルドロンのビリー・ホリディ追悼盤。基本はピアノのマルがリーダーのトリオ。1曲目の「Left Alone」のみ、アルト・サックスのジャッキー・マクリーンが客演している。

この盤、冒頭のマクリーンの無きのアルト・サックスが入ったタイトル曲「Left Alone」だけがクローズアップされるばかりの盤だが、案の定、レココレの「この曲のピアノを聴け」でも、この1曲の「Left Alone」を上げている。しかも、解説には、マクリーンの「泣きのアルト」とこの曲が録音された経緯の説明があるばかりで、マルのピアノの個性と特徴については、ほとんど有益なコメントは無い。

だから、アルバムの中の「一曲」だけを聴いて、そのピアニストの個性と特徴を捉えろ、というのは、ちょっと乱暴だって、僕は指摘するんだよなあ。で、話を戻すと、この「Left Alone」は、マルのピアノは伴奏に徹していて、マルはもともと伴奏上手なピアニストではあるが、この「Left Alone」では、それが聴きとれるほどではない。確かに伴奏上手ではあるけれど。
 

Mal-waldronleft-alone

 
マル・ウォルドロンのタッチは硬質で端正。しかし、硬質なタッチの底に、もやっとした黒いブルージーな雰囲気が横たわっている。そして、端正な弾きこなしの端々にラフな指さばきが見え隠れする。この「黒い情感と適度なラフさ」がマルの特徴。このマルのピアニストとしての個性と特徴は、2曲目以降のトリオ演奏を聴けば、それが良く判る。

ブルージーでミッドテンポな、2曲目「Cat Walk」の前奏部分のゴツゴツ感豊かで、ちょっとアブストラクトな、マルのピアノの特徴が溢れている。3曲目の有名なバラード曲「You Don't Know What Love Is」ですら、マルのゴツゴツ感豊かなピアノのフレーズで、パキパキ硬質な黒さが演奏の底に漂う。

4曲目以降「Minor Pulsation」からラストの「Airegin」などは、お得意の速いテンポの曲で、マルの「硬質なタッチ」のピアノが縦横無尽に展開されている。どの曲にも、マルのピアノの特徴である「黒い情感と適度なラフさ」が見え隠れしていて、聴いていてとても興味深い。

クローズアップされ過ぎて、後に巷で有名になってしまった冒頭のタイトル曲以外の2曲目以降の演奏に、マルの特徴的なピアノがぎっしりと詰まっている。この『Left Alone』の2曲目以降にマルのピアノの真骨頂がある。マルのピアノを感じ、マルのピアノを愛でるのであれば、この『Left Alone』の2曲目以降を聴け、である。
 
なお。余談になるが、CDでのラスト・トラックである「The Way He Remembers Billy Holiday」は、マルのインタビューでの談話である。演奏曲ではない。聴いてビックリしないで欲しい。有り体に言うと、これは蛇足だろう。
 
 

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2026年2月11日 (水曜日)

ケリーの個性を盤一枚で感じる

昔から、ジャズ・ピアノは、僕の一番得意な楽器。今、レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」を楽しんでいる。ジャズ・ピアノ盤の名盤・好盤の類がズラリ記事に並んでいて、今の耳で、このジャズ・ピアノの名盤・好盤を聴き直すのは、以外と楽しい作業である。

Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。1959年2月19日と3月10日の録音。ちなみにパーソネルは以下の通り。セクステット編成が2月19日、ピアノ・トリオ編成が3月10日の録音になる。

セクステット編成での2月19日の録音「Kelly Blue」「Keep It Moving」は、Wynton Kelly (p), Nat Adderley (cor), Bobby Jaspar (fl), Benny Golson (ts), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

トリオ編成での3月10日の録音「Softly, as in a Morning Sunrise」「On Green Dolphin Street」「Willow Weep for Me」「Keep It Moving」「Old Clothes」は、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。

さて、ウィントン・ケリーは、健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。これは、この盤のトリオ編成の演奏で良く判る。この盤のトリオ演奏でのケリーのピアノは絶好調。ケリーのメイン楽器としてのピアノの個性が手に取るように判る。
 

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一方、ウィントン・ケリーは伴奏上手でも有名で、彼のピアノの個性である「そこはかとなく、マイナーな影を宿しつつ、表向きには、ご機嫌にハッピー・スウィングするピアノ」が、フロント管をサポートする上で、ボーカルをサポートする上で、効果的に響くのだろう。その「伴奏上手のケリー」は、この盤のセクステット編成の演奏で、じっくり聞けば良く判る。

冒頭のタイトル曲「Kelly Blue」のセクステット演奏の前奏部分が、フロント3管のユニゾン&ハーモニーが、ファンキーだが、どこかダルで、どこか間延びした、ちょっと古い響きがするので、ちょっと聴き始めは戸惑うが、次の有名スタンダード曲「Softly, as in a Morning Sunrise」がトリオ演奏なので、ケリーのピアノが前面に出てくるのでホッとする。後は「On Green Dolphin Street」から「Willow Weep for Me」では、ケリーのスタンダード曲の解釈を感じ取る事ができる。

この盤は、ケリーのピアノを愛でるという切り口では、トリオ編成の演奏をメインに聴くべくアルバムだと思う。伴奏上手なケリーも聴くべき個性だとは思うが、この「伴奏上手」を聴き取るには、ある程度のレベルのステレオ装置が必要となって、気軽にという訳にいかず、なかなか判り難い個性である。

この盤、リヴァーサイドの中でも「ポップでキャッチャーな内容のファンキー・ジャズ盤」として、ジャズ者初心者向けのアルバムとして、よくそのタイトル名が上がる盤。しかし、ファンキー・ジャズとして聴くより、ケリーのピアノの個性がとても良く判る「ウィントン・ケリー入門盤」の一枚だろう。
 
 

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2026年2月10日 (火曜日)

1950年代ジャマルのトリオ演奏

レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」。日本の演奏家も含めて、ジャズ/フュージョンを代表するピアノの名演をまとめて紹介するというものだが、有名な名盤からちょっとマニアックな好盤から、ジャズ・ピアノの個性という切り口でチョイスし紹介している、好感の持てる企画記事である。

『Ahmad Jamal At The Pershing: But Not for Me』(写真左)。1958年1月16日、シカゴの「Pershing Hotel」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Israel Crosby (b), Vernel Fournier (ds)。シカゴ在住メンバーで固めた、ラウンジ風ハードバップ・ジャズなピアノ・トリオのライヴ・パフォーマンスの記録。

ジャス・ピアノの代表的名盤といえば、このアルバムは必ず出てくる。ハードバップ時代のトリオ演奏におけるピアノの代表的個性のひとつ。ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1950年代は、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。
 

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そんな1950年代ジャマルの小粋なピアノが満載。ライヴ録音なので、適度な緊張感あって、ラウンジ風のピアノ・トリオではあるが(実際、ホテルのラウンジでの録音)、タッチに力強さもあり、音を厳選する中で、印象的なアドリブ・フレーズを小粋に弾き進めている。とても趣味の良い、聴き心地の良いピアノ。端正で崩れが無いので「面白く無い」という向きもあるが、テクニックのレベルも高く、これも、ジャズ・ピアノの代表的な個性のひとつだろう。

今の耳で、じっくり聴き進めてみると、ジャマルのトリオは、ビ・バップのピアノ・トリオのパフォーマンスを下敷きに、弾く音を限りなく厳選し、左手のブロックコードをシンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入れている様に聴こえる。ベースとドラムがリズム・キープに徹しているところも「ビ・バップ」基調だし、少なくとも、このトリオには「インタープレイ」という概念は無い。

上質の、内容のある、ラウンジ風ハードバップ・ジャズなピアノ・トリオだろう。この1950年代ジャマルの、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードを、マイルスは評価した。ジャマルのピアノを伴奏に、トランペットを吹けば、トラペットのフレーズがとりわけ映えるだろう。ジャマルを勧誘したマイルスの気持ちが良く判る。
 
 

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2026年1月27日 (火曜日)

エロール・ガーナーを再聴する

昔、僕がジャズを本格的に聴き始めた約50年前。ジャズ初心者向けのアルバムの紹介本や、紹介記事、紹介チラシに、なぜか必ず入っていたピアニスト、エロール・ガーナー(Erroll Garner)。僕は、当時、このエロール・ガーナーのリーダー作、それも何故か『Concert By The Sea』ばかりが紹介されていて、これも勉強とばかりに購入、意気込んで聴き始めたのだが、これが、なんとも良く判らない。戸惑った。

Erroll Garner『Contrasts』(写真左)。1954年7月27日の録音。ちなみにパーソネルは、Erroll Garner (p), Wyatt Ruther (b), Fats Heard (ds)。エロール・ガーナーが1954年に発表したスタジオ録音のアルバムである。1988年のCDリイシュー時には「The Original Misty」というタイトルでリイシューされた。

ガーナーの個性は、スイング・ジャズを踏まえたピアノだったり、当時の流行の弾き方だったブギウギ・ピアノであったり、スライド・ピアノであったりする。つまりは、モダン・ジャズの基となった、モダン・ジャズ以前の、モダン・ジャズの要素となった、ポップで大衆的なピアノの響きなのである。つまり、モダン・ジャズにおけるピアノとは、アプローチ、テクニック、響きが違う。そこが「戸惑い」の原因。

ガーナーの個性は、即興性というジャズの基本を踏まえつつ、テクニックは優秀、そして、曲の美しいフレーズを捉えて、歌心満点のピアノを弾きまくるという点。つまり、聴き手を十分に意識した、聴き手に「聴いて楽しませる」ことn主眼を置いた、ジャズ・ピアノの「エンタテインメント性」を表出した、最初のピアニストということになる。
 

Erroll-garnercontrasts 
 

例えば、アート・テイタムは、ガーナーと同じ時代を生きたピアニストだが、テイタムは、驚異的なテクニックを武器に、アクロバティカルな、テクニックの高さをウリにした、エンタテインメント性を追求したピアノ。ガーナーは、逆に、テクニックの高さはあるが、それよりも歌心溢れるフレーズ、いわゆる、聴き手を意識したエンタテインメント性をウリにしたピアノであると言える。

そんなガーナーの個性がとても良く理解出来るアルバムがこの『Contrasts』。ガーナーはテクニックの高さを優先しないで、歌心を重視した弾きっぷりで、明らかにビ・バップとは違う切り口での弾き回し。スイング・スタイルのピアノは、この歌心だけを重視して、テクニックは二の次、あとはリズム楽器としての役割を追求するものだったので、ガーナーのピアノとは全く性質が違う。

ガーナーの「ビハインド・ザ・ビート」が心ゆくまで感じる事ができる。「ビハインド・ザ・ビート」とは、左手でビートを刻み、右手のメロディーが、左手のビートから若干遅れて出てくる弾き方。弾き方というか、エロル・ガーナーの場合は、自然発生的にこの弾き方になっている。これが、このアルバムでは良く判る。

モダン・ジャズ期にテイタムのテクニックの高さをウリにした、エンタテインメント性を弾き継いで、モダン・ジャズ・ピアノとして成立させたのが「バド・パウエル」、歌心溢れるフレーズをウリにした、エンタテインメント性を弾き継いで、モダン・ジャズ・ピアノとして成立させたのが「ビル・エヴァンス」。そんな単純な解釈を僕はして、彼らのピアノを楽しんでいる。
 
 

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2026年1月22日 (木曜日)

”Night Train” 17年振りに記事化

レコード・コレクターズ2026年2月号の特集「この曲のピアノを聴け! ジャズ/フュージョン編」。日本の演奏家も含めて、ジャズ/フュージョンを代表するピアノの名演をまとめて紹介するというものだが、有名な名盤からちょっとマニアックな好盤から、ジャズ・ピアノの個性という切り口でチョイスし紹介している、好感の持てる企画記事である。

Oscar Peterson Trio『Night Train』(写真左)。1962年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p) Ray Brown (b) Ed Thigpen (ds) という、1959年以来の不動のメンバー。いわゆる、オスカー・ピーターソンの黄金の「ザ・トリオ」である。当ブログでは、2009年10月28日にて「ピアノ・トリオの代表的名盤・2」としてご紹介済み。

ピーターソンのピアノの凄いところは、アート・テイタムやバド・パウエルに匹敵するテクニックの持ち主だが、不必要にテクニックを前面に押し出さないところ。必要な時は、テイタムばりに、バドばりに、ガンガン弾きまくるが、アルバム・コンセプトとして不要な場合は、絶対に弾き過ぎない。非常に分別がある、理知的な、コントロールされたピアノが特徴。
 

Night_train 
 

冒頭のタイトル曲「Night Train」を聴くだけでそれが判る。とても素敵なブルース曲だが、ミッドテンポのゆったり悠然とした、余裕タップリの弾きっぷり。排気量の大きなスポーツカーが、般道路をゆっくりと悠然と走っているような感じ。指捌きを聴けば、ピーターソンのピアノ・テクニックの高さが直ぐに判る。

そして、テイタムやバドにはちょっと希薄な「スイング感」が、ピーターソンのピアノには「てんこ盛り」。ジャジーでブルージーでちょっとファンキーなスイング&ドライブ感が素晴らしい。歴代のジャズ・ピアニストの中で、最高にスイング&ドライブするピアノ、だと断言したい。特に、この盤では、実に趣味良くクールにスイングしている。

これは、テイタムやバドには無い、ピーターソン独特の個性である。ハイテクニックでスインギーにドライブするピーターソンのピアノ。テイタムは「エンターテインメント」、バドは「ストイック」、そして、ピターソンは「スインギーなドライブ感」。ジャズ・ピアノの「ハイテクニック3人衆」。ピーターソンのピアノには「成熟」を感じる。
 
 

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