ジャズ喫茶で流したい・298
フュージョン・エレギのレジェンドの1人、マイク・スターン。2024年、ジャズ、アフリカ音楽、ゴスペルなどを取り込んだ、エレクトリックな「ワールド・ミュージック」志向のジャズがメインの、スターンの代表作の1枚であろう好盤をものにしている。
MIke Stern『Echoes and Other Songs』(写真左)。2024年の作品。ちなみにパーソネルは、Mike Stern (el-g, vo), Chris Potter (ts), Bob Franceschini (sax), Jim Beard (ac-p, key), Christian McBride (b), Antonio Sanchez (ds), Leni Stern (ngoni), Arto Tunçboyacian (perc), Richard Bona (ac-b, vo), Dennis Chambers (ds)。
バックを固めるメンバーが隅に置けない。テナー・サックスに現代の中堅クリス・ポッター、ベースに現代のファーストコールのクリスチャン・マクブライド、ドラムに現代の代表的ドラマーのアントニオ・サンチェス、ピアノ&キーボードにジム・ベアード、あと、目立つところとして、ベース&ボーカル担当にリチャード・ボナ、ドラム担当に、デニス・チェンバース。
目新しいところでは、ドイツの女性ギタリストのレニ・スターンが「ngon (ンゴニ)」を弾いている。ちなみに「ngon (ンゴニ)」は、アフリカの西部に伝わる伝統的な弦楽器の名前。アルメニア系アメリカ人[のアルト・ツンチボヤジヤン(Arto Tunçboyacia)がパーカッションを担当している。
この2人とリチャード・ボナの存在で、このアルバムには、例えば、パット・メセニー・グループ(以下PMG)の音世界に代表される、エレクトリックな「ワールド・ミュージック」志向のネイチャー・ジャズ、が入っていると想像する。
それがズバリ「当たり」で、冒頭の「Connections」のイントロのアコギの響きが既に「ワールド・ミュージック」志向。そこに、骨太テナー・サックスがメインストリームなフレーズを連発し、スターンのエレギがそれに追従し、ユニゾンで絡む。筋金入りフュージョンなスターンのギターが乱舞する。
続く「Echoes」「Stuff Happens」「Space Bar」は、一転、アーバンなコンテンポラリーな純ジャズな演奏だが、フレーズの響きがジャジーでは無い、「ワールド・ミュージック」志向っぽく、魅力的な演奏に仕上がっている。この3曲、いずれもスターンのエレギがバッチリ、キマっている。
5曲目「I Hope So」から、一転、エレクトリックな「ワールド・ミュージック」志向のジャズに立ち戻る。ボナのボーカルが凄く効果的。どっぷり「ワールド・ミュージック」志向のネイチャー・ジャズの雰囲気が蔓延する。そこに、スターンのギターが滑り込んでくる。ニュー・ジャズ的なフレーズは、どこか郷愁を感じさせる、センチメンタルで耽美的な、それでいて、エネルギッシュなフレーズの連発。名演である。
6曲目「Where's Leo?」は、アーバンなコンテンポラリーな純ジャズな演奏に立ち戻るが、出てくるフレーズが、どこか「ワールド・ミュージック」志向にねじれているところが面白い。スターンのエレギのパフォーマンスが素晴らしい。
7曲目「Gospel Song」は、ゴスペルチックな敬虔な響きが印象的な演奏。だが、ファンクネスを極力排除して、演奏のテンポをスローに落とし、「ワールド・ミュージック」志向のネイチャー・ジャズな雰囲気の「ゴスペル・ソング」に仕立て上げている。アレンジが優秀。
8曲目「Crumbles」は、ECMレーベルのニュー・ジャズを彷彿とさせる、ニュー・ジャズな即興演奏とフリー・ジャズ、破調のモードを上手くミックスさせた、アーバンなコンテンポラリーな純ジャズな演奏。それぞれの演奏力が問われる難曲だが、皆、いとも容易く対応している。
9曲目「Curtis」から、再び、エレクトリックな「ワールド・ミュージック」志向のネイチャー・ジャズに立ち返る。ここでも、ボナのボーカルが凄く効果的。どっぷり「ワールド・ミュージック」志向のネイチャー・ジャズの雰囲気が蔓延する。続く10曲目「Could Be」も、アーバンよりだが、リズム&ビートが「ワールド・ミュージック」志向。面白い曲。
で、ラストの11曲目「Could Be」は、まるで、セロニアス・モンクのオリジナルの様な、どこから聴いても「モンク・ミュージック」な演奏。思わず、ニンマリしてしまう。リズム&ビートが「ワールド・ミュージック」志向で、ワールド・ミュージックなビートで奏でられる「モンク・ミュージック」の様な演奏で、実にユニーク。
2016年7月、自宅周辺で転倒し、右腕の自由を失う大怪我をしたという報に接した時には、もうギタリストとしては活動できないのでは、と懸念したが、必死でリハビリを続け、ピックを指に貼り付けるなどして、ついに復帰を果たした。執念の現役復帰、その努力が今回の好盤を生んだ。良いアルバムです。
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