2026年5月19日 (火曜日)

4300番台の純ジャズ志向な盤

リーダーはドラム担当のエルヴィン・ジョーンズ。ジョージ・コールマンとジョー・ファレル、ペッパー・アダムスがフロント3管のピアノレス、パーカッション入りセクステット編成。どちらかと言えば、ハードバップ寄りのメンバー編成だが、出てくる音は「ポスト・バップ」。典型的なモード・ジャズである。エルヴィンが敬愛するコルトレーンにやって欲しかったであろう、理路整然としたモード・ジャズである。

Elvin Jones『Poly-Currents』(写真左)。 September 26, 1969年9月26日、Van Gelder, Englewood Cliffs, NJでの録音。ブルーノートの4331番。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Fred Tompkins (fl :5), George Coleman (ts :1–4), Joe Farrell (ts, English horn, fl), Pepper Adams (bs :1–3), Wilbur Little (b), Candido Camero (congas :1–3)。

理路整然としたモード・ジャズではあるが、エルヴィンのリーダー作がゆえ、エルヴィンのポリリズミックな超人的ドラミングが基本、フィーチャーされている。演奏全体の雰囲気は明らかに「ポスト・バップ」。ただ、エルヴィンのドラミングをフィーチャーしているので、フロント3管のパフォーマンスは二の次、の様な、ちょっと未成熟で、ちょっととりとめのないアレンジなのが惜しい。
 

Elvin-jonespolycurrents

 
キューバ出身のパーカッション奏者キャンディド・カメロが参加。ドラムとコンガが激しく絡み合うことで、アルバムのタイトル(Poly-Currents=多層的な流れ)通りの、アフロ・カリビアン的な躍動感のあるグルーヴを生み出している。このドラムとパーカッションが絡む独特のグルーヴを損なわない為にピアノレスなんだろう。ここに、ピアノが打楽器として参加したら、折角の個性的なグルーヴが損なわれる。

冒頭「Agenda」は、アルバムの方向性を決定づける14分に及ぶ大作。冒頭からエルヴィンの重厚なドラムとキャンディドのコンガが火花を散らす様は見事。3曲目の「Mr. Jones」は、ケイコ・ジョーンズ(エルヴィンの妻でありマネージャー)の作曲。ポスト・バップの力強いグルーヴを持った、ストレート・アヘッドな名演。この曲でのフロント3管のパフォーマンスは、モーダルの響き芳しいパフォーマンスで聴き甲斐がある。

大手レコード会社の傘下に入って、売らんが為の「商業主義」に走った様なアレンジのアルバムが多い、ブルーノート4300番台の中で、このアルバムは、硬派でストレート・アヘッドで純ジャズ志向のアルバムとして、従来のブルーノートの矜持を反映した好盤だとは思う。アレンジがもう少し煮詰まっておれば、もっと凄いアルバムになっていただろうと、ちょっとだけ惜しい気持ちにさせる好盤である。
 
 

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2026年2月 5日 (木曜日)

ブルックリン派のドラミング

お気に入り盤で、結構、昔から聴いているのに、なかなか、当ブログで記事化されなかった盤が結構あることに気がついた。あれ〜、という感じなんだが、このブログ、ホームページ時代から数えると、27年間、運営しているのに、全く迂闊なことであった。今年は、そういう「記事化お蔵入り」盤をしっかり記事化しているのを目標のひとつにしている。

Ralph Peterson Quintet『V』(写真左)。1988年4月19-20日の録音。ちなみにパーソネルは、Ralph Peterson (ds), Terence Blanchard (tp), Steve Wilson (as, ss), Geri Allen (p), Phil Bowler (b)。当時のブルックリン派の代表的ドラマー、ラルフ・ピーターソンの初リーダー作である。

冒頭の「Enemy Within」を聴くと、当時、リアルタイムでジャズを聴いていたアドバンテージが発揮されて、ああこの音はブルックリン派の音やな、と懐かしくなる。従来の4ビートやバップの枠組みに捉われず、ロック、ポップス、電子音楽、現代音楽を融合させた、冷徹かつエモーショナルなサウンドが特徴。ジャズの最大の特徴である「即興性と非類似性」を徹底的に追求したジャズの演奏トレンドである。
 

Ralph-peterson-quintetv
 

演奏力が素晴らしい。変則拍子、変則コードチェンジ、モード、ややフリーな展開で、徹底的に「即興性と非類似性」を追求する。ブルックリン派の正反対のアプローチをしたのが、ウィントン・マルサリスが主宰する「新伝承派」で、これは、60年代のモード・ジャズが一番最高のジャズと定義して、この60年代モード・ジャズを徹底的にシェイプアップして即興性と非類似性」を追求する集団だったが、その真逆を行くのが、ブルックリン派だった。

そんなブルックリン派の代表的な音作り、音の展開がこの盤に詰まっている。特に、トランペットのテレンス・ブランチャードと、ピアノのジェリ・アレンのパフォーマンスが図抜けている。そして、そんなフロントのパフォーマンスを支え、導き、鼓舞するラルフ・ピーターソンのドラミングが、全編に渡って映えに映えている。切れ味良く、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミングは聴いていてスカッとする。

ブルックリン派の音の特性を把握して、それに適合したドラミングをするのは、結構、テクニック的に高いものが要求されるのだが、ピーターソンは何事も無い様に、疾走感溢れる、切れ味の良い、迫力あるドラムを叩きまくる。この盤だけ取ってみれば、ブルックリン派ジャズの特性を抑えた、ブルックリン派の良いところを体感出来る好盤だと思う。
 
 

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2025年2月14日 (金曜日)

ベイシー楽団のダイナミズム

レコード・コレクターズ 2025年2月号の特集は「この曲のドラムを聴け! ジャズ/フュージョン編」。これは実に興味深い特集だ、と思う。ジャズ/フュージョンにおけるドラムの位置付けは、リズム&ビートのキープ役が主だが、実は、このドラムの立ち回りによって、ジャズ/フュージョンの演奏内容がガラッと変わる。

一昨日、Benny Goodman & His Orchestra、いわゆるビッグバンドにおけるドラムについて、史上初の「スター・ドラマー」、ジーン・クルーパのドラミングについて語ったのだが、確かに、ビッグバンドのダイナミズムを支えるリズム&ビートは「ドラム」に依るところが大きい。

Count Basie『Basie Plays Hefti』(写真左)。1958年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Count Basie (p) がリーダーの "Cont Basie Orchestra" 。今回、注目のドラマーは、Sonny Payne (ds)。カウント・ベイシー楽団の二代目ドラマー。僕はこのソニー・ペインというドラマーを「ベイシー楽団の爆弾男」と呼んで敬愛している。

冒頭「Has Anyone Here Seen Basie」を聴けば、1曲目から「ベイシー楽団の爆弾男」の面目躍如。ホーン・セクションが一斉に吠えるテーマ部では、ペインは「爆弾を落とすが如く」叩きまくり、フロント管がソロを取ると、思いっきりバスドラを「爆弾を落とすが如く」踏み込んで、フロント管を鼓舞しまくる。
 

Count-basiebasie-plays-hefti

 
2曲目「Cute」では、ミッドテンポのゆったりした演奏の中、ペインは絶妙のブラッシュ・ワークを披露する。ほんと、これが「絶妙」で、フロント管のユニゾン&ハーモニーのバックで、キッチリとリズム&ビートをキープし、ミッドテンポの優しい演奏に効果的なアクセントを散りばめる。

繊細できめ細やかな「紳士的な」ブラッシュ・ワーク。「爆弾を落とす」だけがペインのドラミングではないことが良く判る。この辺りが、「ペインは、間違いなく最高のビッグバンド・ドラマーだ」とされる所以だろう。

以降、全編に渡って、爆弾男と紳士的な男、二つの顔で、ベイシー楽団のダイナミズムを支え、ダイナミズムをベイシー楽団の個性の一つに仕立てあげる。ベイシー楽団のダイナミズムは、このペインのドラミングに依るところが大きい。

時々、ブレイクにトリッキーなフィルインを入れて客を笑わせるユーモア溢れるドラミングもペインの個性。「爆弾を落とすが如く」叩きまくり、繊細できめ細やかな「紳士的な」ブラッシュ・ワークを披露しつつ、ベイシー楽団のダイナミズムを音にする。そういう意味で、ペインも「スター・ドラマー」だと言える。ビッグバンドには「スター・ドラマー」が不可欠である。
 
 

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2025年2月12日 (水曜日)

『Sing, Sing, Sing』のドラム

レコード・コレクターズ 2025年2月号の特集は「この曲のドラムを聴け! ジャズ/フュージョン編」。これは実に興味深い特集だ、と思う。ジャズ/フュージョンにおけるドラムの位置付けは、リズム&ビートのキープ役が主だが、実は、このドラムの立ち回りによって、ジャズ/フュージョンの演奏内容がガラッと変わる。

演奏の「音」を決める重要要素の一つを担っているのが「ドラム」。そんなャズ/フュージョンにおける「ドラム」にスポットを当てて、楽曲評論をする。これは僕もやったことが無い。ということで、僕もやってみることにした。

Benny Goodman & His Orchestra『Sing, Sing, Sing』(写真左)。1987年のリリース。演奏自体は1930年代後半の演奏。ちなみにパーソネルは、Benny Goodman (cl) がリーダーの "Benny Goodman & His Orchestra"。今回、注目のドラマーは、Gene Krupa (ds)。ベニー・グッドマン楽団の「要のドラマー」であり、史上初の「スター・ドラマー」である。

「King of Swing」、スイングの多様、ベニー・グッドマンと彼のオーケストラのオムニバス盤である。演奏の基本は「スイング」。迫力あるダイナミズム溢れる、高速にスイングするビッグバンドは圧巻。ムード満点に印象的にバラード展開するビッグバンドは流麗。そんなビッグバンド演奏のリズム&ビートをガッチリ支えているのが、ジーン・クルーパ(写真右)のドラム。
 

Benny-goodman-his-orchestrasing-sing-sin

 
通常はどの曲でも、ジーン・クルーパは演奏の基本である「リズム&ビート」をしっかりと支え、ソロイストのパフォーマンスを鼓舞する正確無比で判り易いドラミング。バンド全体にしっかりと「リズム&ビート」を供給し、その叩きっぷりで、バンド全体に「躍動感」を与えている。

そして、お目当ての「Sing, Sing, Sing」である。この曲だけは、ドラムのジーン・クルーパは、バンド演奏のリズム&ビートを支える役割を超えて、ソロイストとして、躍動感溢れるドラムを叩きまくる。

史上初の「スター・ドラマー」というが、確かに、ジャズの歴史を振り返って、ソロイストとして、ドラムという楽器をたたきまくり、ドラムという楽器の音を強烈にアピールする、というパフォーマンスは、クルーパが初めてではないか。演奏途中のドラムソロも躍動的でビートが効いて相当に印象的。史上初の「スター・ドラマー」の面目躍如である。

この「Sing, Sing, Sing」のジーン・クルーパのドラミングを聴くだけで、ドラムは、ジャズ/フュージョン演奏の「音」を決める重要要素の一つを担っていることが良く判る。

元々のオリジナルの演奏はボーカルがメインの大人しめの小曲だったらしいが、それをこんなに躍動感溢れるインスト・ナンバーに変身させ、ビッグバンドの演奏に耐えるリズム&ビートを供給する。ジャズ/フュージョンにおけるドラムの位置付けは、意外と奥が深い。
 
 

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