ジャズ喫茶で流したい・320
フランク・シナトラとカウント・ベイシー楽団の共演ライヴ・アルバム。シナトラの歌唱力素晴らしさとカウントベイシーの演奏力の素晴らしさが、確実に「化学反応」を起こしている、見事な内容のジャズ・ボーカル盤である。シナトラにとって初のライブ・アルバムであり、その後、シナトラと最も強く結びつく楽曲の決定的な演奏が数多く収録されている。聴き応え抜群である。
Frank Sinatra『Sinatra At the Sands』(写真左)。1966年1月と2月、ラスベガスのザ・サンズ・ホテル&カジノのコパ・ルームでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Frank Sinatra (vo), Count Basie (p), Bill Miller (p), and The Count Basie Orchestra、そして、Quincy Jones (arr, cond)。
シナトラの歌唱が絶品。ダンディズム溢れる、魅力的でセクシーな中低音ボーカル。ポジティヴに語りかける様に、耳元で囁きかける様に、硬軟自在、緩急自在、変幻自在にシナトラはボーカルをコントロールする。そう、シナトラはボーカルを「支配」している。クールにジェントルにダイナミックに唄いまくる様は見事である。
冒頭「Come Fly with Me」から始まり「I've Got a Crush on You」「I've Got You Under My Skin」「The Shadow of Your Smile」「Street of Dreams」「One for My Baby」と続く熱唱に次ぐ熱唱。そして、7曲目「Fly Me to the Moon」。僕はこのシナトラの「Fly Me to the Moon」が大好き。何回何十回聴いても良い。シナトラのこの曲の歌唱が好きで、遂には曲自体までもが好きになってしまった。
バックを司るカウント・ベイシー楽団の演奏も素晴らしい。加えて、アレンジがクインシー・ジョーンズ(略して「Q」)。この「Q」のアレンジに乗って演奏するカウント・ベイシー楽団、アーバンで洒落て、良い意味でポップなビッグバンド・サウンドに変化していて、シナトラの歌唱を効果的にバッキングし、シナトラの歌唱の個性を映えに映えさせる。これだけ、フロントのボーカルにぴったりあったビッグバンドのバッキングも珍しい。
ライヴ録音としての臨場感も良い。聴き始めると、自宅のリスニング・ルームが、たちどころに、ラスベガスの「ザ・サンズ・ホテル&カジノのコパ・ルーム」に変わるような、そんな臨場感が心地良い。これぞ、ライヴ盤という雰囲気は、シナトラのボーカルとカウント・ベイシー楽団の演奏に思わず集中してしまうほどの臨場感。
シナトラのしゃべりをそのまま収録しているところが凄い。これがまた、長々しゃべってるんですが、シナトラはMCの名手で、観客は笑いっぱなし。シナトラは早口でペラペラまくしたてるんで、何を言っているか、ほとんど判らないんですが、観客の洒落た笑いと楽しそうな雰囲気がダイレクトに伝わってきて、思わず、こちらも口元を緩めながら聞いてしまう。
シナトラは、僕が小学五年生、親父のラジオをくすねて、NHK第一放送の『夜のしらべ』で、シナトラの歌唱を聴いて以来、ずっとお気に入りの男性ボーカルである。シナトラは、1998年5月に亡くなっているのだが、つまりは、僕は1970年代から亡くなるまで、シナトラをリアルタイムで聴いていたことになる。これは、実に光栄なことであった。この『Sinatra At the Sands』を聴く度に、そんなことをつらつらと思い出す。
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