2025年7月30日 (水曜日)

多国籍な変則トリオの化学反応『Folk Songs』

ジャズ・ベースのチャーリー・ヘイデン。彼のベースは変幻自在。モード・ジャズ、フリー・ジャズ、は、もとより、ジャズの即興演奏をメインとした「ニュー・ジャズ」と、完全適応する演奏トレンド&フォーマットは多岐に渡る。しかし、面白いのは、ヘイデンは自分の奏法と音を、演奏トレンド&フォーマットによって、変えることは無い。

Charlie Haden, Jan Garbarek, Egberto Gismonti『Folk Songs』(写真左)。1979年11月、ノルウェー、オスロの「Talent Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Haden (b), Jan Garbarek (ss, ts), Egberto Gismonti (g, p)。ECMの1170番。ドラムレスの変則トリオ編成。ECMの「ニュー・ジャズ」である。

ジャズとワールド・ミュージックを融合させた即興演奏。4ビートがメインの、ハードバップでもなければ、モード・ジャズでも無い、非4ビートの即興演奏をメインとしたジャズ。僕はそれを「ニュー・ジャズ」と呼んでいる。この盤は、そんなECMの典型的なニュー・ジャズ。ECM独特の音世界の中、雰囲気のあるアンサンブルが満載。

ガルバルクのサックスがアルバム全体の「基本の音世界」を提示する。透明度の高い、力感溢れる、ストレートな「欧州サックス」。そこに、ジスモンチのギターとピアノが、ワールド・ミュージック的彩りを添える。
 
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ガルバレクのサックスの音がアルバム全体に響き渡る。欧州のサックスの音そのもの。そこに、ジスモンチのアコギが入る。米国フォーキーなネイチャーなアコギの響き。少し、PMGでのパット・メセニーのアコギを彷彿とさせる。そして、ジスモンチの十八番、ブラジリアン・フレーバーなアコギの響き。ガルバレクがセットアップした欧州の響きをガラリと「ブラジル」に変える。

面白いのは、ジスモンチのピアノ。ジスモンチのピアノは、良い意味で「無国籍」な響き。欧州でもなければ、米国でもなければ、ブラジルでも無い。透明度の高い無垢な響きのピアノ。ジスモンチのピアノをバックにガルバレクがサックスを吹くと、そこは「欧州の音世界」にガラリと変わる。

そんなガルバレクとジスモンチの二人の即興演奏の「底」を、ヘイデンの骨太でソリッドで「思索的」なベースが支え、ジャズとワールド・ミュージックを融合させた即興演奏のど真ん中を、明確で切れ味の良いベース・ラインで貫く。ヘイデンのベースが、このセッションのリズム&ビートをコントロールし、ガルバレクとジスモンチのパフォーマンスを鼓舞し、さらなる高みのパフォーマンスを引き出している様に聴こえる。

ECMのアイヒヤーだから為し得た多国籍な変則トリオ。ドラムレスだからこそ、ヘイデンのベースの自由度が増し、それに呼応する様に、ガルバレクとジスモンチのパフォーマンスの自由度が更に高まっている。ECMマジックによる、3者の化学反応が堪能出来る。
 
 

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2024年11月15日 (金曜日)

ECMの個性は「ニュー・ジャズ」『Sol Do Meio Dia』

ECMレコードの個性は「ニュー・ジャズ」。従来の4ビートがメインのモダン・ジャズではない、即興演奏と他のジャンルの音楽との融合をメインとした新しいジャズ。クラシック音楽や現代音楽を育み、国々での個性的な民族音楽が存在する欧州だからこそ生まれた「ニュー・ジャズ」。

Egberto Gismonti『Sol Do Meio Dia』(写真左)。1977年11月、オスロの「Talent Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Egberto Gismonti (8-string g, kalimba, p, wood-fl, voice, bottle), Naná Vasconcelos (perc, berimbau, tama, corpo, voice, bottle : tracks 2, 3 & 5), Ralph Towner (12-string g : tracks 1 & 5), Collin Walcott (tabla, bottle : track 2), Jan Garbarek (ss : track 5)。

タイトル『ソル・ド・メイオ・ディア』は、ポルトガル語で「真昼の太陽」。ブラジルの作曲家、ギタリスト、ピアニストのエグベルト・ジスモンチのアルバム。その内容は、典型的な「ECMのニュー・ジャズ」。楽曲はすべてジスモンチのオリジナル。出てくる音は、ワールドミュージック志向の静的な即興演奏。どこか現代音楽にも通じるクールで透明度の高い即興演奏。
 

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ECMでのジスモンチは「ジャズ的な奏者」に軸足を置いている。ギターやピアノを抜群のテクニックで奏でるジスモンチが、たっぷり記録されている。ジスモンチの曲も個性的で良いが、各曲、静的でスピリチュアルな即興演奏が聴きもの。曲ごとに、ECMの「ハウス・ミュージシャン」的ミュージシャンが充てられ、スリリングで耽美的なインタープレイが繰り広げられる。

ナナ・ヴァスコンセロスのパーカッションが静的なインタープレイに躍動感を与え、ラルフ・タウナーの12弦とヤン・ガルバレクのソプラノ・サックスがスピリチュアルな響きを増強し、コリン・ウォルコットのタブラがワールド・ミュージックな音要素を強調する。そこに、ジスモンチのギターやピアノが絡み、対話し、対峙する。

このアルバムは、エグベルトがアマゾンのシングー族と過ごした時間にインスピレーションを受けており、アルバムはシングー族に捧げられている、とのこと。確かに、ジスモンチのピアノやギターのフレーズが入ってくると、そこに「ブラジリアン・ミュージック」の響きが、ワールドミュージック志向の静的な即興演奏に滲み出てくる。ECMレコードならでは、のワールドミュージック志向の「ニュー・ジャズ」である。
 
 

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