ブルーノートの ”先取気質” を聴く
ブルーノートの、創立以降、ジャズの潮流が変わりつつあった1968年までにリリースされたアルバムから、レココレ誌の執筆陣が選んだ「ベスト100」。ブルーノートらしい内容、音、響き。そんな三拍子揃ったブルーノート盤の「ベスト100」。今日はその「第7位」。
Thelonious Monk 『Genius of Modern Music Vol.1』。1947年10月15日、1947年10月24日、1947年11月21日、1948年7月2日の4セッションからのピックアップ。パーソネルは以下の通り。
1947年10月15日は、Thelonious Monk (p), Idrees Sulieman (tp), Danny Quebec West (as), Billy Smith (ts), Gene Ramey (b), Art Blakey (ds)。演奏曲は、7曲目「Thelonious」、12曲目 「Humph」。
1947年10月24日は、Thelonious Monk (p), Gene Ramey (b), Art Blakey (ds)。演奏曲は、2曲目「Off Minor」、3曲目「Ruby My Dear」、5曲目「April In Paris」、10曲目「Well You Needn't」、11曲目「Introspection」。
1947年11月21日は、Thelonious Monk (p), George Taitt (tp), Sahib Shihab (as), Bob Paige (b), Art Blakey (ds)。演奏曲は、1曲目「 'Round About Midnight」、6曲目「 In Walked Bud」。
1948年7月2日は、Milt Jackson (vib), Thelonious Monk (p), John Simmons (b), Shadow Wilson (ds)。演奏曲は、4曲目「I Mean You」、8曲目「Epistrophy」、9曲目「Misterioso」。
セロニアス・モンクのピアノの強烈な個性をいち早く見出し、録音したブルーノート・レーベル。初録音は1947年に遡る。ブルーノート・レーベルの設立が1939年だから、設立後8年でモンクの音を記録している。
1947年と言えば、ビ・バップ創生期。そんな時代にあまりに個性的なモンクのピアノ。まだ、レーベル経営が軌道に乗っていない時期に、そんな「個性的でユニーク過ぎる」モンクの音を記録しているのだから、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼と判断力&行動力「恐るべし」である。
モダン・ジャズの最高の奇才、セロニアス・モンク。モンクのピアノの個性は強烈かつユニーク。スクエアにスイングし、フレーズは幾何学的に飛ぶ。そして、独特のタイム感覚。休符の置き方、テンポ、どれもがユニーク。クラシックの理路整然とした音とは「正反対の音」。クラシックからの影響は微塵も無い。ジャズだけ、から生まれた、モダン・ジャズの最高の個性。
このブルーノート盤では、そんなモンクの強烈かつユニークな個性のピアノを確実に誠実に記録している。一曲一曲の収録時間は短い。しかし、モンクのピアノは既にその個性を確立していることが直ぐに判る。
4つのセッションの寄せ集めだが、この盤は「モンクのピアノだけを聴くべき」アルバムである。そういう意味では、どのセッションでも、モンクの個性は平準化されているので、セッション毎について、セッション間についての違和感は全く無い。モンクの強烈かつユニークな個性のピアノで、アルバム全体の統一感をバッチリ出している。
収録曲はモンクの自作曲で統一され、モンク独特のアレンジで統一されている。このモンクの自作曲が実に個性的で、ジャズ的に「美しい」。収録された自作曲を見渡すと、後のミュージシャンズ・チューンとなって、最終的にはスタンダード曲化する。この盤では、モンクの自作曲の中でも特に有名となる曲が軒並みチョイスされている。
そして、モンクの独特かつユニークな個性のピアノには、やはり、モンク自身のアレンジが一番映える。モンク自身が、自身の個性を理解しつつ、その個性を際立たせる、自身によるアレンジ。この盤は「モンクの作曲力とアレンジ力を聴くべき」アルバムでもある。
ただし、この盤に記録された、モンクの独特かつユニークな個性のピアノは、その出来栄えとしては「原石レベル」であり、これから磨きがかかってさらに輝きを増す直前の「原石レベル」の音の個性。モンクの決定的名演は、のちのリヴァーサイド・レーベルの諸作を待たなければならない。
セロニアス・モンクの最初期の名盤である。セロニアス・モンクの個性の原石を強烈に感じること出来る、ブルーノートの素晴らしい「お仕事」。この盤は、ブルーノート・レーベルが持つ、独特の「先取気質」を強烈に感じ取ることが出来る盤と言える。
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