2024年10月12日 (土曜日)

「Jay&Kai」のColumbia好盤

ジャズの演奏で大切なものは色々あるが、リーダーのフロント楽器の特性に応じた「アレンジ」は特に重要な要素。そして、その「アレンジ」に適したリズム・セクションの手配。この「アレンジ」と「適したリズム・セクション」がバッチリ合ったセッションは優れた結果になる。

J.J. Johnson and Kai Winding『Jay & Kai + 6: The Jay and Kai Trombone Octet』(写真左)。1956年4月の録音。ちなみにパーソネルは、J.J. Johnson, Kai Winding (tb, arr), Hank Jones (p), Milt Hinton, Ray Brown (b), Osie Johnson (ds), Candido Camero (conga, bongo) and The Six Trombonists (Urbie Green, Bob Alexander, Eddie Bert, Jimmy Cleveland (tb), Tom Mitchell, Bart Varsalona (b-tb))。

3日前のブログで、「トロンボーンはスライドを出し入れして音程を出すので、とにかく演奏するのが難しい楽器。まず、カイのテクニックは抜群なので、その最低要件は満たしているが、そんなハイ・テクニックを持ってしても、その曲毎に、スタートするキーや、スライド幅を出来るだけ少なくする様なアレンジが非常に重要になる。」と書いた。

この盤は「Jay & Kai」のColumbiaリリースの好盤。楽曲のアレンジを、トロンボーンの名手二人「Jay & Kai」自らが担当している。これって「無敵」に近いことで、トロンボーンの演奏を熟知した名手二人が、それぞれのトロンボーンの特性を踏まえて、それぞれのトロンボーンが映えるアレンジを施すのだ。確かに、この盤のアレンジはバッチリはまっていて、「Jay & Kai」のトロンボーンが映えに映えている。
 

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アレンジの「キモ」は、The Six Trombonistsの存在。この6人のトロンボーンが効果的にバッキングし、「Jay & Kai」のトロンボーンを前面に押し出し、引き立てる。このトロンボーンのユニゾン&ハーモニーのアレンジも「Jay & Kai」が担当している様で、さすが、トロンボーンをどうやったら、トロンボーンで引き立てることが出来るか、を熟知している名手二人のアレンジである。

そして、もう一つの「キモ」である「適したリズム・セクション」については、小粋で味のある伴奏上手のピアニスト、ハンク・ジョーンズのピアノが要所要所で効いている。

ハンクの趣味の良い流麗な、バップなバッキングのリズム&ビートの躍動感が、「Jay & Kai」のトロンボーンを支え、鼓舞する。「Jay & Kai」のトロンボーンの特性を見抜いた、見事なバッキング。ヒントンとブラウンのベースは堅実、ドラムとコンガ、ボンゴのリズム隊も堅実に、躍動感溢れるリズム&ビートを供給する。

トロンボーンがフロントを担うセッションにおいて重要なファクターである「アレンジ」と「適したリズム・セクション」がバッチリ合った、「Jay & Kai」のセッションの記録。秋のこの季節にピッタリの、爽快でブリリアントなトロンボーンが主役の好盤です。
 
 
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2024年10月 8日 (火曜日)

A&Mでの ”Jey & Kai” の復活

「A&Mレコード」が牽引役を担ったのが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。そのカラクリは「聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合」と考えると、A&Mの諸作は実に興味深く聴くことが出来る。

J. J. Johnson & Kai Winding『J&K: Stonebone』(写真左)。1969年9月の録音。1970年、日本限定のリリース。ちなみにパーソネルは、J. J. Johnson, Kai Winding (tb), Herbie Hancock, Bob James, Ross Tompkins (key), George Benson (g), Ron Carter (b), Grady Tate (ds)。すべてのA&M / CTIリリースの中で最も希少な作品。

1950年代に活躍した、2人のトロンボーン・ユニット「Jey & Kai」を、約20年の時を経て、A&Mレコードのクリード・テイラーが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」にて復活させた、エレクトリックなソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク。

ルディ・スティーブンソンの「Dontcha Hear Me Callin' To Ya?」のエレ・ファンクなカヴァー。イージーリスニングなエレ・ジャズ風にアレンジされた、ジョー・ザヴィヌルの典型的なフュージョン曲「Recollections」。そして、ジョンソン作の魅力的な2曲「Musing」と「Mojo」の全4曲。
 

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聴き易さと判り易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合の中で、収録された曲の全てに、トロンボーン・ユニット「Jey & Kai」のトロンボーンの響きと音色が映える、素敵なアレンジが施されている。 バックの演奏トーンは、エレクトリックがメインではあるが、旧来のハードバップな8ビートを採用していて、基本的に耳に馴染む。

電子キーボードは「ハンコック」がメイン(「Recollections」ではボブ・ジェームスとロス・トンプキンスが加わる)。ファンキーなフレーズを弾き始めている様子がよく判る。ギター参加の若き日のジョージ・ベンソンが、ロックっぽいジャジーなフレーズを弾きまくっている。ロン・カーターのベース、グラディ・テイトのドラムのリズム隊は、エレ・ファンクな8ビートに難なく対応、エモーショナルでファンキーなリズム&ビートを叩き出している。

ジェイジェイとカイのトロンボーンはファンキー。肉声のボーカルの如く、トロンボーンを吹き上げる。ブリリアントでエッジが丸い、柔らかだが芯の入った音色。そう、ジェイジェイとカイのトロンボーンは、ロックやポップスのボーカルの様に、トロンボーンを響かせている。

明らかに、ジェイジェイとカイのトロンボーンのフレーズは、ロック&ポップスの様に、シンプルで分かり易いキャッチャーなフレーズになっている。そして、エレピ・ベース・ドラムのリズム&ビートが、従来のジャズ風の8ビートでは無く、ロック&ポップス風の8ビートなリズム&ビートになっている。

A&Mレコードの音作りの「キモ」である、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合、がとてもよく判る優秀盤です。1970年の初出以来、CDやストリーミングでの発売もなかったというレアな作品でしたが、今では、音楽のサブスク・サイトに音源がアップされていて、気軽に聴くことが出来る様になりました。
 
 

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2024年5月17日 (金曜日)

A&Mの ”カイとJ.J.” の名演

「K. and J.J. 」とは、ジャズ・トロンボーンの名手の二人、J.J.ジョンソンとカイ・ウィンディング。ハードバップ時代には「KAI & J.J.」というユニットを組んで、聴き心地の良いファンキー・ジャズの好盤を連発していた。その「KAI & J.J.」の再結成風のA&M盤。単なる「懐メロ同窓会」的雰囲気で終わるのではないか、という危惧を覚える。

K. and J.J. 『Israel』(写真左)。1968年2, 3, 4月の録音。A&Mレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、J. J. Johnson, Kai Winding (tb), Herbie Hancock (p), Ross Tompkins (p, harpsichord), Eric Gale, Bucky Pizzarelli (g), Ron Carter, Richard Davis (b), Grady Tate (ds) がメイン・メンバー。ここにハープ入りの管楽器メインのジャズオケがバックに入っている。

が、聴いてみると、まず、カイとJ.J.のトロンボーンが「イケる」。しっかりとしたテクニックで、しっかりとしたブロウで、しっかりとしたピッチでトロンボーンを吹きまくっている。トロンボーンのブラスの鳴りがスピーカーから伝わってくるほどのブリリアントなトロンボーンの響き。このカイとJ.J.の好調な「本気トロンボーン」の吹奏を聴くだけで、この盤は「懐メロ同窓会」的な企画盤で無いことが判る。

もともと、A&Mレコードの音作りが「上質なイージーリスニング志向のジャズ」を目指しているだけあって、この盤でも、特に、ハープ入りの管楽器メインのジャズオケのアレンジが優れている。陳腐なところは全く無い。とても良く練られた、ドン・セベスキーのアレンジである。
 

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演奏自体のアレンジも良い。収録曲を見渡せば、「"My Funny Valentine」「Django」などの人気スタンダード曲あり、「Israel」「Am I Blue」「St. James Infirmary」などの渋いスタンダード曲あり、どちらも、一捻りしたアレンジが優秀で、「上質なイージーリスニング志向のジャズ」として、絶大な効果を発揮している。

「上質なイージーリスニング志向のジャズ」を目指しているからと言って、演奏自体が聴き心地優先の甘々な演奏では全く無い。それぞれの楽器のパフォーマンスは、とても充実している。それぞれの楽器担当の「本気」を感じる。

カイとJ.J.のトロンボーンのユニゾン&ハーモニー、そして、チェイス。これが、どの曲でもバッチリ効いている。とにかく、トロンボーン独特のユニゾン&ハーモニーが前面に出てくる。これがどれもが印象的に耳に響く。カイとJ.J.のトロンボーンのソロも良い。充実した本気な吹き回しで、ダレたところは微塵も無い。本気で聴かせるジャズ・トロンボーン。

ハンコックのピアノもそこはかとなくファンキーで、カイとJ.J.のトロンボーンを引き立てる。伴奏上手のハンコックの面目躍如。ゲイルとピザレリのギター隊のリフ、カッティング、バッキングが小粋でこれまたファンキー。トロンボーンの柔らかな音色との対比が良い。

ロン、ディヴィスのベースはハードパップなウォーキング・ベースで、テイトの小粋で趣味の良いドラミングで、「上質なイージーリスニング志向のジャズ」のリズム&ビート支えている。

ハードバップ時代の「KAI & J.J.」の再結成盤。どうなることやら、と思いきや、当時の流行のど真ん中、ハードバップでファンキーでモダン、ジャズオケ+エレ楽器入りの「上質なイージーリスニング志向のジャズ」が展開されていて立派。とりわけ、カイとJ.J.のトロンボーンの、新鮮な「ハードバップ志向の力演」が印象に残る。
 
 

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2023年5月23日 (火曜日)

不思議なトロンボーンの企画盤 『Trombone By Three』

プレスティッジ・レーベルは、アルバムの編集方針が曖昧というか、気分次第でアルバム化している様で、同一セッションの演奏でも、切り売りして、あっちこっちのアルバムに雰囲気で入れたりして、1つのアルバムに複数のセッションが入っているなんてザラである。それぞれのジャズマンの力量や進化を推し量る上で、時系列で演奏が並んでいないのはちょっと困る。プレスティッジのアルバムを聴く時は、そのアルバムの「録音情報」は絶対に欠かせない。

J J Johnson, Kai Winding, Benny Green『Trombone By Three』(写真左)。 プレスティッジのPRLP 7023番。タイトル通り、3人のトンボーン奏者がリーダーを務めるセッションをそれぞれ収録している。異なるセッションを1つのアルバムに収録するという、プレスティッジの荒技なんだが、何故、この様なカップリングにしたのか判らない。が、3人それぞれのトロンボーンの特性を一気に比較出来て、それそれのトロンボーンの個性が良く判る。

まずは、J J Johnson(JJ・ジョンソン、以降、略して「JJ」)。1949年5月26日の録音。ちなみにパーソネルは、J J Johnson (tb), Kenny Dorham (tp), Sonny Rollins (ts), John Lewis (p), Leonard Gaskin (b), Max Roach (ds)。JJのトロンボーンとドーハムのトランペット、そして、ロリンズのテナーの3管フロント。リズム隊は、ピアノにジョン・ルイス、ベースのガスキン、ドラムにマックス・ローチ。収録された演奏曲は「Elysee」「Opus V」「Hilo」「Fox Hunt」。CDでの1〜4曲目になる。

続いて、Kai Winding(カイ・ウインディング、以降、略して「カイ」)。1949年8月23日の録音。ちなみにパーソネルは、Kai Winding (tb), Brew Moore (ts), Gerry Mulligan (bs), George Wallington (p), Curly Russell (b), Roy Haynes (ds)。カイのトロンボーンとムーアのテナー、マリガンのバリサクの3管フロント。リズム隊は、ピアノにウォリントン、ベースにラッセル、ドラムにヘインズ。収録された演奏曲は「A Night On Bop Mountain」「Waterworks」「Broadway」「Sid's Bounce」CDでの7〜10曲目になる。

最後は、Benny Green(ベニー・グリーン、以降、略して「ベニグリ」)。1951年10月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb), Eddie Davis, "Big Nick" (ts), Rudy Williams (bs), Teddy Brannon (p), Tommy Potter (b), Art Blakey (ds)。ベニグリのトロンボーン、デイヴィスのテナー、ウィリアムスのバリサクの3管フロント。リズム隊は、ピアノにブラノン、ベースにポッター、ドラムにブレイキー。収録された演奏曲は「Green Junction」「Flowing River」「Whirl-A-Licks」「Pennies From Heaven」。CDでの5,6,11,12曲目になる。
 

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録音年月日もバラバラ、録音は辛うじてNYでの録音だが、パーソネルは全て総替え。ただし、フロント3管+リズム・セクションのセクステット編成は3セッション共通。収録された演奏曲も平等に4曲ずつを収録。演奏編成と演奏曲が平等に割り当てられているので、不思議とアルバム全体で統一感がある。まるで、事前に周到に計画され実現した「3トロンボーンの比較盤」の様に聴こえるから、これまた不思議。

演奏編成が一緒なので、それぞれのトロンボーンの個性の比較がし易い。録音当時、1949年〜1951年は「ビ・バップ」の最終期であり、中間派と呼ばれるスイング・ジャズの発展形が流行していた時代。アレンジはシンプルで、フロント楽器のソロのスペースは平等に与えられておる。ビ・バップ、またはスイングのアレンジを基本的に踏襲しているので、アーティスティックな捻りは無い。トロンボーンのパフォーマンスに耳を傾けやすい演奏編成である。

ビ・バップ仕込みの切れ味の良い、テクニック確かなトロンボーンはJJ。バルブ・トロンボーンを駆使して、流麗なフレーズを吹き上げるカイ。そして、ゆったりとしたスイング・マナーで、ぼのぼのとしたトロンボーンが心地良いベニグリ。それぞれ4曲のみの収録だが、どの曲のトンボーン演奏も良好。個性豊かなトロンボーン3態である。

そして、それぞれ3セッションのサイドマンを見渡せば、当時のジャズ・シーンで活躍していた、錚々たるメンバーがバックを務めている。超有名どころとしては、トラペットのケニー・ドーハム、テナーのソニー・ロリンス、バリサクのジェリー・マリガン、ピアノのジョン・ルイス・ジョージ・ウォリントン、ドラムのマックス・ローチ・ロイ・ヘインズ・アート・ブレイキー等が名を連ねている。道理で、結構、ダイナミックで締まった演奏に仕上がっているのはその為か、と改めて感心する。

アルバムの編集方針もトロンボーン奏者のカップリングも、全く要領を得ない、プレスティッジの悪しき企画盤ではある。が、3人のトロンボーンのそれぞれの個性を楽しむことが出来ること。また、それぞれのセッションのサイドマンの演奏が好調で、それぞれ、ビ・バップ最後期、もしくは中間派の流行期のジャズ演奏として、意外と内容が充実していること。この2点から、このプレスティッジの不思議な企画盤は、意外とトロンボーンを楽しめる好盤として成立している。プレスティッジのアルバム編集方針の不思議である(笑)。
 
 
 
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2023年2月25日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・259

「小粋なジャズ」の探求は続く。20世紀のネット時代以前とは違って、現代ではネットを通じて、ジャズ盤の情報が結構、潤沢に入手出来る。「小粋なジャズ」の探索も、ジャズ盤紹介本からネットにシフトして、「これは聴いたことが無いなあ」と感じて即聴きして、これは「小粋なジャズやねえ」と感心する盤に出会うことが多くなった。

『Jay Jay Johnson Quintet / Live at Café Bohemia, 1957』(写真)。1957年2月、NYのカフェ・ボヘミアでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、J.J. Johnson (tb), Bobby Jaspar (ts, fl), Tommy Flanagan (p), Wilbur Little (b), Elvin Jones (ds)。パーソネルを見れば、1957年の『Dial J.J.5』と同一メンバー。内容はこのパーソネルを見るだけで期待出来ることが判る。

1957年は、J.J.にとっては素晴らしい年で、『Dial J.J.5』(1957年1月29, 31日 & 3月14日録音)、『First Place』(1957年4月11,12 & 26日録音)、『Blue Trombone』(1957年4月26日録音)と立て続けに、後世に残る、優れた内容のリーダー作を録音している。そして、このカフェ・ボヘミアでのライヴは『Dial J.J.5』と同一パーソネルでのパフォーマンスになる。
 

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この『Dial J.J.5』のパーソネルの中の、フラナガン・リトル・エルヴィンのピアノ・トリオは、北欧ツアー中にピアノ・トリオの名盤、Tommy Flanagan『Overseas』を録音している。このピアノ・トリオがリズム・セクションを務めているのだ。さぞかし、J.J.とジャスパーのフロント2管は吹きやすかっただろう、このカフェ・ボヘミアのライヴでも、J.J.とジャスパーは、ベストに近い吹きまくりで迫力がある。

そして、このバックを務めるフラナガン・リトル・エルヴィンのリズム・セクションが、小粋で充実したリズム&ビートを叩きだし、フロント2管を完璧にサポートする。フラガナンのバップな弾き回し、リトルの個性的なベースライン、エルヴィンの繊細でダイナミックなブラシワーク。この上質でダイナミックで職人的なリズム・セクションが、このライヴ盤の聴きものにひとつ。

内容充実のハードバップな演奏にグイグイ引き込まれる。1978年に限定LPとして発売以来、一度、小ロットでCDリイシューされただけの「幻の名盤」級のライヴ盤が、今では、サブスク・サイトでダウンロードして、『Dial J.J.5』のパーソネルでのライヴ・パフォーマンスを聴くことが出来る。これは実に有り難いことである。
 
 

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2022年12月12日 (月曜日)

ベツレヘム・レーベルの特色

ジャズの有名レーベルのひとつに「ベツレヘム・レーベル」がある。カタログを見渡すと、他の有名レーベル、ブルーノートやプレスティッジ、ヴァーヴ、インパルス、リヴァーサイドなどとはちょっと異なる、ユニークなラインナップが面白いレーベルである。

ベツレヘムは1953年、株のディーラーだったガス・ウィルディという人物とプロ・ドラマーだったジェームズ・クライドがNYにて設立した「ポップスのシングルを扱うレーベル」。しかし、設立の翌年、1954年には早々にジャズ専門レーベルへと衣替え。

このレーベルの一番の特色は、米国の東海岸と西海岸の両方にオフィスを構え、偏ること無く、双方のジャズマンのリーダー作をリリースしたこと。ハードバップ期の黒人中心の東海岸ジャズと、白人中心の西海岸ジャズを偏ること無くピックアップし、記録していった珍しいジャズ・レーベルといえます。カタログを見渡せばそれがハッキリ判る。

活動期間は1953~61年と短いのだが、ちょうど、ハードバップ初期から60年代のハードバップ多様化が始まった頃まで、ハードバップ期をほぼ網羅した活動期間なのも興味深い。今回、このベツレヘム・レーベルのアルバムを「Bethlehem 6000 series (12 inch LP)」のカタログから、カタログ番号順に聴き直していこう、と思い立った。

K+ J.J.『East Coast Jazz/7』(写真)。1955年1月26日、NYでの録音。ベツレヘムのBCP-6001番。ちなみにパーソネルは、J.J. Johnson, Kai Winding (tb), Dick Katz (p), Wendell Marshall (b), Al Harewood (ds)。2人の名ジャズ・トロンボーン奏者、カイ・ウィンディングとJ.J.ジョンソンとの最初期の双頭リーダー・アルバム。パーソネルを見渡すと、東海岸でも西海岸でも無い。東と西のハイブリット的なメンバーチョイスである。
 

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この双頭リーダーの2人、2人ともトロンボーン奏者であり、それぞれ黒人と白人である。当時のジャズ・シーンの中では、ベツレヘム・レーベルならではと言える、実にユニークな取り合わせ。

ボワンとしたトロンボーン独特な音色が作り出すユニゾン&ハーモニーが、実にほのぼのとした心地よさ。双方のアドリブの、かたやファンクネス濃厚で黒い雰囲気、かたやスマートでシュッとした小粋な雰囲気、正反対の個性も楽しい響き。

タイトルが「East Coast Jazz」なんだが、出てくる演奏は東と西のハイブリット的な音の志向。しっかりアレンジが施され、2本のトロンボーンのフロントに立てた「ユニークなフレーズとアドリブ」を前面に押し出す思慮深いプロデュース。この音の傾向は「ウエストコースト・ジャズ」。しかし、演奏される音色と雰囲気にはファンクネスが漂い、音はアーバンで黒い。この音の傾向は「イーストコースト・ジャズ」。

いみじくも「Bethlehem 6000 series (12 inch LP)」のカタログの最初の1枚目のこのK+ J.J.の双頭リーダー作が、ベツレヘム・レーベルの特色を具体的に音にしているなあ、と感じる。

ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のアルバム紹介に、まず、そのタイトルが上がることを見たことが無い地味なアルバムだが、聴けば、そのユニークな内容に思わず、一気に聴き込んでしまう。この盤を聴くだけでも、ベツレヘム・レーベルは侮れない、と思わず構えてしまう(笑)。
 
 

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2020年8月13日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・133

酷暑である。午前中でも外を歩くのが憚られる暑さ。午後などは、外を歩くなんてとんでもない。ジリジリと肌を焼くような陽射しとムッとするような湿気。数分外に出るだけで、着ている服やズボンがモワーッと生暖かくなるのだから、酷い暑さだ。こんな酷暑の日にはエアコンは欠かせない。今日もエアコンの効いた部屋の中に引きこもってジャズを聴いている。

J.J.Johnson & Milt Jackson『A Date In New York』(写真左)。1954年の録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), J. J. Johnson (tb), Al Cohn (ts), Henri Renaud (p), Percy Heath (b), Charlie Smith (ds)。トロンボーンの名手J.J.ジョンソンとヴァイブの名手ミルト・ジャクソンの双頭リーダー盤。ピアノに仏のピアニスト、アンリ・ルノーが参加している。

不思議なパーソネル構成のアルバム。何故、フランスのジャズ・ピアニスト、アンリ・ルノー(写真右)がこのコッテコテな米国東海岸ハードバッパーの中に入っているのか不思議だった。調べてみたら、アンリ・ルノーが単身NYに渡ってきて、当時最先端のビバップを演奏する若手ミュージシャンとセッションした、とのこと。なるほど。
 

A-date-in-new-york  

 
ということならば、まず仏出身のアンリ・ルノーのピアノに着目したい訳だが、何だか、J.J.ジョンソンとミルト・ジャクソンの2人がやけに元気で、ソロ演奏についても前に前に出てくる。特にJ.J.ジョンソンのトロンボーンが元気溌剌で、いつもはビバップよろしく短時間ソロをバシッと決めるJ.J.が、こんなにハードバップな長く印象的なソロを取る人だったけ、と改めてビックリ。

故に、仏からわざわざ渡米してきたアンリ・ルノーが目立ってこない。それでも、この目立ちたがり屋の米国ジャズマンのバックで、端正で明確なタッチの伴奏ピアノを聴かせてくれる。ソロも端正、癖が無くややクラシックっぽい、破綻の無い無難なソロ。それでも一生懸命ソロを弾いている感じがビンビンに伝わってくる。

まあ、そりゃそうで、ジャズの本場、米国はNYでの、当時最先端をいく一流ジャズマン達とセッションする訳だから、気合いも入るし緊張もするよな。それでも、演奏全体の雰囲気は、仏出身のピアニスト、アンリ・ルノーも健闘していて、「スイング感良好な良質なハードバップ」に仕上がっている。昼下がりのジャズ喫茶でノンビリ聴きたい。
 
 
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2019年5月10日 (金曜日)

ジャズ・トロンボーンの第一人者

初夏の季節にジャズ・トロンボーンの音が良く似合う。ということで、この初夏の季節にジャズ・トロンボーン盤を聴きまくっている私こと「松和のマスター」。ホンワカ、ホノボノなトロンボーンの音色。それでいて、速いアドリブ・フレーズもいける。しかも魅惑的な低音の響きが堪らない。

そんなジャズ・トロンボーン、ジャズ入門書やジャズ盤紹介本で真っ先に出てくるジャズマンの名前が「J.J.Johnson(略してJ.J.)」。ジャズ・トロンボーンと言えば「J.J.ジョンソン」が最高のトロンボーン奏者と言うのが定番。J.J.は1924年生まれ。2001年に77歳で他界。スイング時代から頭角を現し、特に1950年代、ビ・バップ〜ハードバップ期に活躍。その「光速フレージング」がJ.J.の代名詞で、わざわざジャケット上に「バルブトロンボーンに非ず」との注記まで付けられた位である。

活動期間は1966年から77年までの11年間のブランクを挟んで、大きく前後半の2つに分かれる。しかし、前後半どちらの活動時期でも、J.J.のブロウ・スタイルは「ビ・バップ」。速いフレーズも緩やかなフレーズも、どちらも明かな「ビ・バップ」の音色がする。J.J.はバップなトロンボーンから発展することも、変化することも無かった。J.J.は、バップなトロボーンを深く深く掘り下げた。そして、トロボーン奏者の第一人者となった。
 

Quintergy-jj

 
J.J.Johnson『Quintergy』(写真左)。1988年7月、NYのVillage Vanguardでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、J. J. Johnson (tb), Ralph Moore (ts), Stanley Cowell (p), Rufus Reid (b), Victor Lewis (ds)。20年以上も西海岸でスタジオ・ワークに勤しんでいたJ.J.が、久々にVillage Vanguardに出演、本格的なジャズ活動を再開した瞬間を捉えたライブ盤である。

J.J.のトロンボーンとムーアのテナーの2管フロント。バックはカウエルのピアノにリードのベース、ルイスのドラムという、ネオ・ハードバップの音色が芳しい、職人芸なリズム・セクション。J.J.以外はネオ・ハードバップ期に現れた、次世代を担うであろう若手ジャズメンで、そんな新しい響きのするリズム・セクションを従えながら、J.J.は明らかに「バップ」なトロンボーンを吹きまくっている。

このジャズ・トロンボーン盤はアレンジやアンサンブルを楽しむものでは無く、明らかにJ.J.のトロボーンだけを可能な限り堪能することがメインの「J.J.のJ.J.によるJ.J.の為の」ライブ盤である。マイルスのモードな名曲「Nefertiti」などもピックアップ、モーダルな音色にチャレンジしている。当時64歳とは思えない、新しい感覚のジャズ・トロンボーンにも取り組んでいて立派だ。
 
 
 
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2016年10月25日 (火曜日)

インパルス!の最初の一枚目

若い頃、ジャズ者初心者の頃から、インパルス!レコード(Impulse! Records)がなんとなく好きである。このレーベルは、かのフュージョン・ジャズの仕掛け人の一人、クリード・テイラーによって1960年に設立されたジャズレーベルである。

まず、ジャケットが良い。見開きのジャケットで、黒とオレンジ色で統一されたデザインが特徴的。紙の厚みもあって重厚、コーティングも上等で、その光沢がお洒落。そして音が良い。ブルーノート・レーベルの録音技師で有名な、ルディ・ヴァン・ゲルダーがサウンド・エンジニアをしている。インパルス!レコードの音には独特の個性がある。聴いていて「あっこれは、インパルス!やな」と判る。

アルバムの内容には、しっかりとした統一感がある。ジャズのその時点でのトレンドをしっかりと押さえ、旬の音を捉える。インパルス!のジャズの音はどれもが新しい。プロデュースがしっかりしているのだ。多くのアルバムはボブ・シールによりプロデュースされている。なるほど、ボブ・シールの仕業か。納得。

そんなインパルス!レコードのアルバムをカタログの順に聴き直している。まずは、Impulse! 9000 seriesからだろう。最初の1枚目(A-1)は、Kai Winding & J.J. Johnson『The Great Kai And J.J.』(写真左)。1960年10月、11月の録音になる。

ちなみにパーソネルは、J.J.Johnson, Kai Winding (tb), Bill Evans (p), Paul Chambers (tracks 1, 3, 6, 7) ; Tommy Williams (tracks 2, 4, 5 & 8-11) - (b), Roy Haynes (tracks 1, 3, 6, 7) ; Art Taylor (tracks 2, 4, 5 & 8-11) - (ds)。当時として、なかなか充実の布陣である。パーソネルの選定にも気を配っていることが感じ取れる。
 

The_great_kai_jj

 
カイ・ウィンディングとJ.J.ジョンソン、二人の一流トロンボーン奏者の双頭リーダー盤である。二人の一流トロンボーン奏者の双頭リーダー盤なので、競演バトルが繰り広げられるのか、と思いきや、そうはならない。録音年は1960年。ジャズが鑑賞音楽としてのポジションを獲得しつつある時代である。

この盤の音世界は、一言で言うと「お洒落で聴き流しに最適」。ほどよくアレンジされて、カイ・ウィンディングとJ.J.ジョンソン、二人の一流トロンボーン奏者のユニゾン&ハーモニー、チェイス、アドリブ交換、どれもがとても心地良い響きを持って展開される。アドリブ・フレーズですら流麗で、これも事前にアレンジされているのでは、と勘ぐってしまう位な「お洒落度合いの高さ」。

曲によっては、その流麗さにブレーキがかかって「オヨヨ」と前のめりになるが、これはアレンジ・ミスが原因で、二人の一流トロンボーン奏者の問題では無い。二人の一流トロンボーン奏者はどちらも、この盤ではご機嫌なプレイを聴かせてくれる。

ピアノにビル・エバンスの名が見えるが、この盤では特に目立ったプレイを展開している訳では無い。あまり個性を前面に押し出しておらず、平均点なピアノに落ち着く。逆に、ベース、ドラムは、曲によってそれぞれ二人のプレーヤーが分担しているが、いずれもなかなか粋なサポートを繰り出していて、聴いていて楽しい。

お洒落な聴き流しが最適なトロンボーン盤である。トロンボーンのほのぼのとした、伸びやかなトーンをベースに、聴いていて、なんか優しい、聴いていて、なんか心温まる音世界が実に心地良い。とにかく、当時としてアレンジが新しい。鑑賞音楽としてのジャズが根付いてきたんやなあ、ということが追体験できる好盤である。

 
 

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2016年2月10日 (水曜日)

トロンボーンなジャズを愛でる

トロンボーンの音が好きである。ちょっとのんびりしたような丸みを帯びた音。意外と高い音から低い音までをカバーする幅広い音程。トロンボーン2本以上でのユニゾン&ハーモニーなぞ、ファンクネス濃厚に漂い、耳に柔らかく至福の時である。

そんなトロンボーン、ジャズの世界ではちょっとマイナーな楽器ではある。スライド管を動かして音程をとるので、速いパッセージが苦手。ビ・バップなど、速さとテクニックを誇る向きには、この楽器はちょっと向かない。しかし、どの楽器にも才人というのはいるもので、この難しい楽器をいともたやすく吹きこなす強者もいるのだ。

そんなジャズ・トロンボーンの強者二人が組んだデュオ・グループがある。「J&K」である。J.J.Johnson,とKai Windingという二人のジャズ・トロンボーン奏者がガッチリと組んだグループである。とにかく、この二人のトロンボーンは天才的である。トランペットやサックスの様にトロンボーンを吹き上げる。 

そんなジャズ・トロンボーンのデュオ・グループの先駆け「J&K」 の記念すべき初セッション盤がこれ。J.J.Johnson & Kai Winding『Jay & Kai』(写真左)。1947,1952,1954年と3つの時期の録音を集めたもの。全10曲のうち、1954年の録音によるもので、「J&K」がフロントでデュオ演奏しているのは8曲。残りの2曲はJ.J.とカイが1曲ずつコンボで演奏しています。
 

Jay_kai

 
J.J.Johnsonは1924年生まれなので、1954年を基準とすると30歳。Kai Windingは1922年生まれなので32歳。ジャズでいうとまだまだ若手のレベル。やんちゃで溌剌として尖った、若々しいジャズ・トロンボーンを聴くことが出来ます。

このアルバムを聴き通すと判るんですが、この二人のデュオ・グループ、とってもクオリティが高い。アンサンブルも優秀、アレンジが良いのでしょうね。とにかく天才的なジャズ・トロンボーン奏者が二人、フロントをとって吹きまくるですから、それはそれは、スリリングな展開がそこかしこに現れます。

1947,1952,1954年という、かなり年代物の録音なんですが、さすがサボイ・レーベル、中音域を前面に押し出した、厚みのあるジャジーな音が心地良く、この録音の個性が「J&K」のトロンボーンの音色を惹き立たせています。ライブ感を感じさせてくれる適度なテンションが良いですね。

収録曲を見渡すと、収録されている楽曲はほぼJ.J.の代表的なオリジナルで埋め尽くされていて圧巻です。聴き応え満点。このアルバムは「J&K」のアルバムの中でも上位に位置する好盤だと思います。ジャズ・トロンボーンを感じる入門盤としても良いですね。ジャズ・トロンボーンを愛でたくなると、この盤は必ず登場します。
 
 
 
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