アストラッドの70年代の傑作
CTIレーベルのアルバムは、イージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョン・ジャズが多いが、ハードバップ期からのベテラン・ジャズマンを重用して、CTIオリジナルなエレ・ジャズに、純ジャズ志向の音をアクセントに置いて、ジャジーな雰囲気を増幅するアレンジが得意。
Astrud Gilberto & Stanley Turrentine『Gilberto With Turrentine』(写真左)。ちなみにパーソネルは、以下の通り。どうも、当時のクロスオーバー&フュージョンのアルバムは、登場人物が多くて困る。
Astrud Gilberto (vo), Stanley Turrentine (ts), Eumir Deodato (el-p, arr, cond), Emanuel Green, George Marge, Hubert Laws, Romeo Penque (fl), Gene Bertoncini, Sivuca (g), Sam Brown, Bob Mann (el-g), Toots Thielemans (harmonica), Ron Carter, Russell George (b), Denny Seiwell, Dom Um Romão, João Palma (ds), Airto Moreira (perc), with strings。
「ボサノバの歌姫」アストラッド・ジルベルトが、デオダートの素晴らしいアレンジとジャズオケをバックに唄い上げたアルバム。彼女のポップで囁く様な、アンニュイでウォームな歌声は健在。このアストラッドの歌声と、ダンディズム溢れるファンキー・テナーの雄、スタンリー・タレンタインとの共演。この組み合わせ、明らかに『ゲッツ/ジルベルト』を想起させる。
が、この盤、「ボサノバの歌姫」アストラッドのアルバムだが、ボサノヴァの往年の名曲は採用されていない。というか、純粋なボサノヴァ曲は皆無で、当時のポップスのヒット曲やバカラック・チューンをカヴァーしている。
もちろん、アレンジは、ボサノヴァやサンバに通じるブラジル音楽志向のアレンジを採用している。しかし、これが絶妙なアレンジで、どの曲もボサノヴァの名曲に聴こえたりするのだから、デオダートのアレンジ、秀逸である。
当時のポップスのヒット曲も、ボサノヴァ風のアレンジに乗って、軽妙で洒脱なカヴァーに仕上がっていて、アストラッドのポップで囁く様な、アンニュイでウォームな歌声が、さらに映える様になっている。アストラッドの歌声の特性を十分に活かした、デオダートのアレンジが冴え渡っている。
そんな軽妙で洒脱なボーカルに相対して、タレンタインのファンキー・テナーが炸裂する。タレンタインのテナーが出てくると、演奏の音の雰囲気がガラッと「ジャジー」に変わる。どっぷりファンクネスに浸ったボサノヴァ志向のアレンジがユニークで心地良い。
アストラッドのポップで囁く様な、アンニュイでウォームな歌声を活かしつつ、タレンタインのファンキー・テナーでジャジーな雰囲気を増幅する。そういう観点では、この盤はボサノヴァ・ジャズの名盤『ゲッツ/ジルベルト』を凌駕する出来だと僕は評価している。1970年代のイージーリスニング志向のクロスオーバー&フュージョン・ジャズの傑作の一枚でしょう。
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