2024年8月27日 (火曜日)

松岡 直也 ”Long for The East”

松岡 直也は、我が国におけるラテン・ジャズの第一人者。フュージョン・ブームの折には「ラテン・フュージョン」で一世を風靡した。聴けば直ぐに「松岡 直也のラテン・ジャズ」と判るくらい、松岡の個性溢れるアレンジが秀逸。コンテンポラリーな純ジャズ志向、フュージョン・ジャズ志向の「両刀使い」で、我々の耳を楽しませてくれた。惜しくも、2014年4月29日に76歳で逝去している。

松岡 直也『Long for The East』(写真)。1984年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、松岡 直也 (p, syn), 津垣 博通 (key), 和田アキラ (g), 高橋ゲタ夫 (b), 広瀬 徳志 (ds), ウィリー長崎, カルロス菅野 (perc), 久保田 利伸, 楠瀬 誠志郎 (vo)。和ラテン・ジャズの第一人者、松岡 直也の個人名義アルバムの16枚目。

アルバムの冒頭「The Latin Man」は、ボーカル入りラテン・フュージョン。ボーカルが入って、いよいよ、和フュージョンも、米国フュージョンの如く、俗っぽいポップス・ミュージック化するのか、と暗然たる思いで聴き始めたら、なかなかにスケールの広い、日本人離れしたブラコンっぽい歌唱に耳を奪われる。なんと、このボーカル、ソロ・デビュー前の「久保田利伸」とのこと。コーラスには楠瀬 誠志郎が参加して、これまた良い味を出している。
 

Long-for-the-east

 
松岡のピアノ、シンセが大活躍。ラテンのフレーズを散りばめたアドリブ・フレーズは見事。シンセの使い方はセンスがよくて、陳腐な音色になっていないところが、これまた見事。ピアノやシンセの音色を「映えさせる」アレンジが、これまた見事。フュージョンにおけるラテン・ジャズというと、ちょっと陳腐で俗っぽい内容に陥りそうなんですが、そうはならず、小粋で躍動感&爽快感溢れる、クールでスマートな「ラテン・フュージョン」となっているところが秀逸。

サイドマンでは、土方のギターが素晴らしいパフォーマンスを披露している。千変万化な「芳醇で切れ味の良い」音色。クールでスマートな「ジャズロック志向」フレーズ展開。聴く者を圧倒する「高テクニック」。松岡のピアノ&シンセと絡むh土方のギターは、とってもスリリング。5曲目「The End Of The Way」に参加している、当時、プリズムから復帰した和田のギターも印象的。

アルバム全体を覆う、メランコリックで叙情的な響きが印象的。アレンジが優秀なので、インスト曲に飽きがこない、リピートに耐える演奏の数々。アルバム全体にラテン・テイストで統一感を醸し出し、リズム&ビートは「ジャズ・ロック」。僕はこのアルバムについては、松岡直也の名盤の一枚、と評価している。ジャケも秀逸。
 
 

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2024年6月 7日 (金曜日)

和ラテン・フュージョンの名盤

月刊誌「レコード・コレクターズ」2024年6月号の特集、「フュージョン・ベスト100 邦楽編」に挙がったアルバムを聴き直している。当時、ヘビロテで聴いたアルバムも多くある。当ブログに記事としてアップしていないアルバムも結構ある。当時の耳で聴いた感覚と今の耳で聴いた感覚、意外と変わらないのが面白い。

松岡 直也 &ウィシング 『The Wind Whispers』(写真)。1979年の作品。ちなみにパーソネルは、Naoya Matsuoka (key), Kazumi Takeda, Kenji Nakazawa (tp), Tadanori Konakawa (tb), HidefumiI Toki (sax), Takeshii Itoh (ts,fl), Kenji Ohmura, MasayoshiTakana (g), Shuichi “PONTA” Murakami (ds), Osamu Nakajima, Pecker (perc)。

パーソネルを見渡すと、錚々たるメンバーである。当時の「和フュージョン」の名うての強者どもが大集合。ビッグ・ネームとして主だったところでは、ホーン・セクションにサックスの土岐 英史、ギターに大村 憲司&高中 正義、ドラムに村上 "ポンタ" 秀一、パーカッションにペッカー。今から振り返って見て、やっぱり、錚々たる面子である。

出てくる音は、一言で言うと「ラテン・フュージョン」。日本のラテン・ジャズ・フュージョンの「草分け」的名盤である。「ラテン」とは言っても、本場のこってこての「ラテン・ミュージック」では無く、「和」でリコンパイルした「ラテン」。よって、我々の耳にスッと馴染むフレーズとアレンジ。
 

The-wind-whispers

 
そんな「和ラテン・フュージョン」が、この盤にギッシリ。「ラテン」だからと言って、俗っぽくも無くチープでも無い。上質に洗練された「ラテン」が見事。

ホーン・セクションのアレンジとパフォーマンスが良い。この「和ラテン」なホーン・セクションの熱い活躍が、この盤の「キモ」。そして、大村&高中のギターの「和ラテン」なフレーズの嵐、ポンタ秀一が叩き出す「和ラテン」なリズム&ビート、がもう一つの「キモ」。

そして、やっぱり主役は、リーダーの松岡のパーカッシヴで切れ味抜群な「和ラテン」な熱気溢れるピアノ。爽快でシャープで、心地良い熱気溢れる「和ラテン・フュージョン」な名曲、名演がてんこ盛り。 タイトル曲「The Wind Whispers」が美しい。「A Season of Love」と「The Myth of Egypt」は、確か、ウルトラクイズのBGMに使われていたのではないだろうか。そんな記憶が蘇ってきて、懐かしいことしきり。

今の耳で聴いても、新鮮な響きが溢れている「和ラテン・フュージョン」の名盤。和フュージョン・ジャズの面目躍如の一枚。ちなみに高中の名盤『TAKANAKA II』で鮮烈な「和ラテン」なピアノを弾きまくっていたのは、他ならぬ、この「松岡 直也」。至極納得。
 
 

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2015年1月30日 (金曜日)

ラテン・フュージョンの草分け

今日はかなり冷え込んだ、我が千葉県北西部地方。家の周りは雪にはならなかったが、市川駅付近は雪になっていた。朝も夜も冷え込みは今年の冬一番。駅から家の間、歩いていると、急激に顔が冷たくなっていくのが判る。

これだけ冷え込んだ時には、聴いて気持ちが温かくなるジャズが良い。そういう訳で、今日、聴き込んだアルバムが、松岡直也&ウィシング『Fiesta Fiesta』(写真左)。ラテン・フュージョン・ジャズの草分け。底抜けに楽しい、エレクトリックなラテンのリズム&ビート、ラテンの調べをベースとしたエレクトリックなユニゾン&ハーモニー。

1979年リリース。松岡直也&Wesing名義の2ndアルバムになる。素晴らしいラテン・フュージョンな演奏であるが、その演奏のパーソネルが凄い。松岡直也 (key), 大村憲司 (g), 高橋ゲタ夫 (b), 村上秀一 (ds), ベッカー, 中島御, 横山達治 (per), 宮沢昭 (fl), 向井滋春, 粉川忠範 (tb), 武田和三,  中沢健二(tp), 士岐英史, 清水靖昇 EVE, 吉田美奈子, 榊チエコ (vo)。

曲によって入れ替わり立ち替わりなパーソネルではある(ベースはほぼ全曲が高橋ゲタ夫が担当)。パーマネントなバンドメンバーでは無いが、今から振り返ると、錚々たるメンバーではないか。1979年の時代の若手ジャズ・ミュージシャンの精鋭達がズラリ名を連ねる。
 

Fiesta_fiesta

 
そんな精鋭達が、松岡直也の下、エキサイトなラテン・ジャズを奏でる。圧倒的な迫力あるパフォーマンス。優れたテクニックとクールなインプロビゼーション。全編、結構硬派で熱い演奏が詰まっている。ラテンに加えて、レゲエ調あり、ディスコ調ありで、ヴァリエーション豊かな内容。1979年という時代の音のトレンドを感じる。

1979年と言えば、僕はジャズ者初心者2年生。この松岡直也&ウィシング『Fiesta Fiesta』はリアルタイムで聴きました。行きつけの喫茶店「みちくさ」で毎日、店内に流して貰っていました。朝、モーニング・セットをいただきながら、昼下がりにちょっと居眠りしながら、夕方、晩ご飯の前の憩いのひとときに、この『Fiesta Fiesta』が流れていました。

そんな松岡直也であるが、惜しくも昨年4月、前立腺癌の為、逝去。享年76歳。70歳を過ぎても精力的に活動を続けておられただけに残念な思いが募りました。まさに日本を代表するラテン・フュージョン・ミュージシャンでした。

 
 

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