エスペランザのボーカルの扱い
エスペランザ・スポルディングのデビューは、結構、衝撃的だった、と記憶している。ベーシストとしてのデビューだったので、女性でありながら、骨太でソリッドで切れ味の良いアコースティック・ベース、繰り出すフレーズが新鮮だった。デビュー盤ではスキャット中心のボーカルで、ベースを弾く傍らでの「彩り」だと感じていた。
しかし、1曲だけ、『Cantora De Yala』は、 エスペランザのベースのみの弾き語りによる、暖かな日だまりの様な、ほんのり暖かで、芯はしっかりと通った、意外と硬派な内容で、ベーシストの弾き語りというのは、このスポルディングの初リーダー作で、初めて聴いた。ベーシストのスキャットについては、ジャコ・パストリアス御大の前例があるんですが、本格的に唄うのは、エスペランザが初めてだった。
Esperanza Spalding『Esperanza』(写真左)。2008年の作品。ちなみにパーソネルは、Esperanza Spalding (b, vo), Leo Genovese (ac-p, el-p :track 7, Rhodes :track 10), Jamey Haddad (perc), Otis Brown (ds), Horacio Hernandez (ds, tracks 4 and 8), Ambrose Akinmusire (tp, tracks 8 and 11), Donald Harrison (sax, tracks 6 and 11), Gretchen Parlato (back-vo, tracks 1 and 4)。
エスペランザの2枚目のリーダー作。この盤で、エスペランザは本格的に唄う様になっている。ベースもしっかり弾いているが、とにかく唄う唄う。しかも、過去の女性ジャズ・ボーカルのイメージに全く囚われない、エスペランザ独特のキュートでエレガントで、ワールド・ミュージック志向のボーカルは唯一無二。エスペランザのボーカルを聴いていると、ボーカルって「楽器」として捉えても違和感が無い、ということを再認識できる。
アルバム全体の音志向は「ブラジリアン・ミュージック」な志向が強いが、旧来の4ビート・ジャズの欠片も無い、ワールド・ミュージック志向の様々な音楽要素が融合した、コンテンポラリーなニュー・ジャズ風のボーカル・アルバムという風情が新鮮。
同じ志向に「ミルトン・ナシメント」がいると思うが、ナシメントよりもエスペランザの方が確実に「ジャズ寄り」。おそらく、エスペランザの弾き出すベースラインがジャジーなので、それが、アルバム全体の雰囲気を「ジャズ寄り」にしているのだろう。
ベースとユニゾンでスキャットする様を聴いていると、やっぱり、エスペランザはボーカルを「楽器」として扱おうとしている様に感じる。ベースや既成の楽器では表現出来ない、微妙なニュアンスや節回し、フレーズの飛びを、ボーカルでは比較的自由に表現できるので、それを見越して、スポルディングは唄っている様な気がする。
エスペランザのボーカルを、旧来からの本格的な女性ジャズ・ボーカルとして捉えると、違和感を感じる瞬間があるんだが、楽器の一つとして捉えると、全く違和感が無い、どころか、新しいジャズの響きを獲得している、そんな化学反応をこの盤で感じることが出来る。エスペランザのボーカルは「楽器」。そう捉えることで、違和感無く、エスペランザならではの音楽性を正確に捉えることが出来る。そんな想いを持たせてくれる、この2枚目のリーダー作『Esperanza』である。
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