コズミックな「融合」ファンク
レコード・コレクターズ 2024年5月号の「【特集】フュージョン・ベスト100 洋楽編」を読んでいて、しばらくその名前に触れることの無かった、お気に入りのジャズマンの幾人かを思い出した。感謝である。
Lonnie Liston Smith(ロニー・リストン・スミス)。米国リッチモンド出身のピアニスト&キーボーディスト。大学卒業後、プロの道を進み、サンダースやブレイキー、カーク、バルビエリ、マイルス等と共演。1973年にロニー・リストン・スミス&ザ・コズミック・エコーズを結成し、1973年、ロニー・リストン・スミスとしての初リーダー作をリリース。83歳になった今でも、未だ現役である。
演奏内容の範疇としては、ソウル・ジャズ、ジャズ・ファンク、クロスオーバー&フュージョンだが、その音世界は独特。コズミック・ファンクとでも形容できる、宇宙の広がり&浮遊感を反映した様な、切れ味良く粘りのない、シュッとしてクールでグルーヴィーな「融合」ファンク・サウンドが基本。そのコズミックでクロスオーバー&フュージョン・ファンクなサウンドに、ソウルフルなローズやエレピの音が絡む。
Lonnie Liston Smith『Expansions』(写真左)。1974年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Lonnie Liston Smith (p, el-p, Rhodes, el-key-textures), Donald Smith (fl, vo, vo-textures), Dave Hubbard (ss, ts, alto-fl), Cecil McBee (b), Art Gore (ds), Michael Carvin (perc, clavinet, ds), Leopoldo Fleming (bongos, perc), Lawrence Killian (congas, perc)。「Lonnie Liston Smith and the Cosmic Echoes」名義の3枚目のアルバム。
ロニー・リストン・スミスの「コズミックでクロスオーバー&フュージョン・ファンク」なキーボード、セシル・マクビーのファンキーでグルーヴィーなベース、スミスの弟のドナルド・スミスの幽玄なフルートとソウルフルなヴォーカル、そして、バックのリズム&ビートに、アフリカンなパーカッションを融合した、スピリチュアルな「コズミックでクロスオーバー&フュージョン・ファンク」の傑作盤である。
宇宙の広がり&浮遊感を反映した様な、切れ味良く粘りのない、シュッとしてクールでグルーヴィーなロニー・リストン・スミスのエレピ&ローズの音がこのバンドの音世界を決定づけている。
バックのリズム&ビートは、マクビーのサラッとした粘らないファンクネスを宿したベースがソウルフルな雰囲気を増強し、ゴアの切れ味の良い、躍動感溢れるシンプルなドラミングがバンド独特のグルーヴ感を醸成する。
コズミックなサウンド志向とは言いながら、不思議と牧歌的でフォーキーなビート&サウンドの広がりもあって、それまでのソウル濃厚、精神的な響き優先のスピリチュアルなジャズとは音の雰囲気が全く異なる。どちらかと言えば、現代の「静的なスピリチュアル・ジャズ」のサウンドに繋がる、先進的な音の雰囲気を感じる。
冒頭のタイトル曲「Expansions」はジャズ・ファンクの名曲。宇宙の広がり&浮遊感を反映した様な、切れ味良く粘りのない、シュッとしてクールでグルーヴィーな「融合」ファンク・サウンドがこの曲に詰まっている。2曲目「Desert Nights」と4曲目「Voodoo Woman」はモーダルなアドリブ展開がユニークな、意外とメインストリーム系のジャズ・ファンク。
3曲目「Summer Days」と7曲目「My Love」はアフリカンなリズムにラテンのリズムを融合したブラジリアン・ジャズ志向のフォーキーなサウンド。そして、5曲目「Peace」は、コズミック・サウンド志向が似通った、ホレス・シルヴァー作のミュージシャンズ・チューンのカバー。
この盤に詰まっているサウンド十把一絡げにフュージョン・ジャズとするには、ちょっと短絡的かと思う。ソウル・ジャズ、ジャズ・ファンクを源とし、コズミックなサウンドを独特な個性とした、切れ味良く粘りのない、シュッとしてクールでグルーヴィーな「クロスオーバー&フュージョン・ファンク」と形容したら良いだろうか。
この盤の冒頭のタイトル曲「Expansions」をはじめ、レア・グルーヴ~アシッズ・ジャズ・ムーヴメントに多大な影響を与え、今なおヒップホップのサンプリング・ソースやダンス・フロアーを盛り上げる「ネタ」となっている「Lonnie Liston Smith and the Cosmic Echoes」の音が、このアルバム『Expansions』に詰まっている。傑作です。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて
★ まだまだロックキッズ 【New】 2024.01.07 更新
・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
記事をアップ。
★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新
・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
の記事をアップ。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から13年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
最近のコメント