フュージョン・ジャズの完成形 『Ivory Pyramid』
米国シカゴ出身のピアニストのレジェンド、ラムゼイ・ルイス(Ramsey Lewis)。2018年、音楽界からの引退を表明した。う〜ん、惜しいなあ。でも、引退の記事を読むと、83歳となった今「移動が前に比べて困難になってしまった」とのこと。寄る年波には勝てない、ということだが、ジャズ者初心者の頃からお世話になったレジェンドの1人なので、この引退の報には万感の想いがあった。
ラムゼイ・ルイスと言えば、1965年の『The 'In' Crowd』。このファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズの究極形ライヴ盤は、ジャズ者初心者の頃、良く聴いた。そして、フュージョン・ファンク、R&B系フュージョンに転身して、アース・ウインド & ファイアーのモーリス・ホワイトとともに制作『Sun Goddess(太陽の女神)』や『Salongo』『Tequila Mockingbird』は学生時代に良く聴いた盤である。
Ramsey Lewis『Ivory Pyramid』(写真左)。1992年の作品。GRPレーベル移籍第一弾。ちなみにパーソネルは、Ramsey Lewis (ac-p). Mike Logan (el-p), Charles Webb (b), Steve Cobb (ds, perc), Henry Johnson (g)。フュージョン・ジャズの完成形を思わせる、演奏良し、曲良し、録音良し、の3拍子揃った好盤である。
まず、とにかく音が抜群に良い。オーディオのリファレンス盤として、活用している方々がかなりいるという話も頷ける。まず、重低音で腹を揺さぶる様なベースの音が生々しい。ピアノの音の鮮度の良さと響きの豊かさが極上で、ドラムの臨場感が半端ない。ギターのサスティーンの伸びとボーカル・コーラスの倍音の響きが心地良い。
当然、それぞれの曲の演奏も素晴らしい。1992年の作品なので、一聴した時点での演奏のテイストは、深いエコーのかかり方と併せて「スムース・ジャズ」かな、と思うのだが、聴き進めて行くうちに、リズム&ビートのファンクネス、エレギのアドリブ・フレーズの作り方、ラムゼイ・ルイスのアコピのテイスト、どれもがしっかり「フュージョン・ジャズ」していることに気が付いて、何だか嬉しくなる。
心地良さを前面に押し出したスムース・ジャズでは無い、楽器それぞれの演奏テクニックと「音」、そして、アドリブ・パートの展開の「妙」が聴きどころの「フュージョン・ジャズ」の完成形がこの盤に詰まっている。ラムゼイ・ルイスの音の基本である「ファンクネス&ソウルフル」な要素もしっかりと織り込まれていて、なかなか聴き応えのある、1990年代のフュージョン好盤である。
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