2014年10月 3日 (金曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・34

ビッグバンド・ジャズのアレンジャーとして有名どころの一人に「この人」がいる。「この人」とは、Bob Brookmeyer(ボブ・ブルックマイヤー)。本名Robert Edward Brookmeyer。1929年12月生まれで、2011年12月に鬼籍に入った。

ブルックマイヤーはトロンボーン奏者である。ビッグバンドのアレンジャーとしても有名で、特に、その編曲能力は独特の個性がある。

音の重ね方が独特。聴いて耳に心地良い響きとして残る和音の重ね方が独特。一聴するだけで「これはブルックマイヤーか」と判る。ユニゾン&ハーモニーが明るくポジティブな響きで、いきなり大音量でぶりぶりっとフォルテッシモをかまされても、耳に響かない、理路整然とした響き。

そんなボブ・ブルックマイヤーのビッグバンドもので、僕が愛聴している一枚がこのアルバム。Bob Brookmeyer futuring Eliane Elias 『Impulsive!』(写真左)。1997年2月の録音。

Danish Radio Jazz Orchestraに、ボブ・ブルックマイヤーと、なんと、あのブラジル系美人ピアニスト、Eliane Elias(イリアーヌ・イリアス)が参加した形のセッション。ボブ・ブルックマイヤーはコンダクターとしても活躍している。トロンボーン奏者とコンダクター。二足のわらじがはける有能なジャズメンである。

収録されたどの曲にも、ブルックマイヤーの個性的なアレンジが煌めいている。とにかく、音の重ね方が独特で、暫く聴いていると、ブルックマイヤーのアレンジが噛んでいることが直ぐに判る、
 

Bob_eliane_impulsive

 
それ位、個性的なアレンジである。加えて、ユニゾン&ハーモニーも個性的。これだけポジティブで明るい響きのユニゾン&ハーモニーもなかなか他にあるわけでは無い。

そして、そこにピアニストとして、イリアーヌ・イリアスが加わる。今では、このイリアーヌは、唄える女性ジャズ・ピアニストとして有名になり、その唄声は正調ボサノバ。ボサノバ・ボーカルの正統な後継者として、イリアーヌは評価が高い。

しかし、ここでのイリアーヌは純粋ジャズ・ピアニストのイリアーヌである。イリアーヌは、エバンス派ピアニストとして一派一絡げで語られるが、大本のビル・エバンスとは、そのピアノの弾き方、響きについては、若干、趣が異なる。

エバンスより繊細、そして、エバンスよりリリカル。女性ならではの優しいタッチで、本家ビル・エバンスより繊細でリリカルな、そしてクールでジャジーなピアノが、ブルックマイヤーにアレンジされたビッグバンドをバックに、淡々と弾き継がれていく。

一粒で二度美味しい。まるで「グリコ・キャラメル」の様なアルバムである。ブルックマイヤーにアレンジされたビッグバンド・ジャズと、それをバックにしたイリアーヌのピアノの両方が楽しめる。

全6曲、全く飽きが来ない。冒頭の「Just Kiddin'」を聴き始めれば、ラストのタイトル曲「Impulsive!」まで一気に聴いてしまう。なかなかビッグバンド・ジャズの紹介にも出てこないアルバムですが、ビッグバンド者の方々には是非ともお勧めの一枚です。

 
 

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2011年8月18日 (木曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その3 『Eliane Elias Plays Jobim』

ブラジルの血が流れる、美貌のピアニスト(最近はボーカリストとしての比重が高いけど・・・)であるイリアーヌ。僕にとって、意外とお気に入りの女性ピアニストで、彼女のリーダーアルバムは、今でも時々、我がバーチャル音楽喫茶『松和』で流れています。

改めて、イリアーヌとは、正式な名前は「イリアーヌ・イリアス(Eliane Elias)」。1960年3月生まれなので、今年で51歳。ブラジル出身の女性ジャズ・ピアニスト、ヴォーカリストである。純ジャズから正統なボサノバまで幅広いジャンルをカバーする、マルチ・タレントなミュージシャンである。

そのイリアーヌのピアノ・トリオ盤で、初のボサノバ盤。タイトルは『Eliane Elias Plays Jobim』(写真左)。1989年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Eliane Elias (p)、Eddie Gomez (b)、Jack DeJohnette (ds)、Nana Vasconcelos (perc)。

邦題は『風はジョビンのように』。邦題を見ると「ああ、これは日本制作盤にありがちな企画盤やなあ」と思う。そう思いながら、全編ボサノバ一色な選曲を見ると、なんだか日本制作盤によくありがちな「企画臭さ」が鼻につく。が、肩の力を抜いた、リラックスしたイリアーヌの、エバンスライクなピアノと趣味の良いアレンジが「企画臭さ」をグッと薄めてくれる。

そして、バックでは、ベースのエディ・ゴメスが特徴のあるアコースティック・ベースでガッチリとサポートし、ドラムのジャック・デジョネットは硬軟自由自在にリズムをキープする。また、パット・メセニーのグループで有名になった、ナナ・バスコンセロスが表現豊かなパーカッションで、ボサノバ色を彩っていく。
 

Plays_jobim

 
こうやって改めて、バックのメンバーを眺めなおしてみると、凄いメンバーにサポートされて、イリアーヌはボサノバ・ジャズをやっているんだなあ、と、ちょっとビックリ。そして、このアルバムを通して聴くと、このボサノバ・アルバム、意外と実に硬派な内容なのだ。

本場のボサノバと言えば、ちょっとメロウで、ちょっと気怠く、ちょっと怪しい感じが良いんだが、このアルバムのボサノバ・ジャズは、そんなボサノバらしさが全く無い。「全編、ボサノバを題材にしているんですよ」と言われなければ気がつかないほど、硬派でストレート・アヘッドな内容なのだ。立派な純ジャズ系のピアノ・トリオの佳作といえる。

このアルバムを聴き通すと、メロウで、倦怠感溢れる、ちょっと怪しげなボサノバを、このように硬派にジャズするアルバムがあってもいいな、と思います。なにも、ちょっとメロウで、ポップで、聴き易いボサノバ・ジャズだけが全てでは無いでしょう。このアルバムを聴いて、ボサノバの名曲はどれもが美しい、ということを改めて再認識してしまいます。良いアルバムだと思います。

そうそう、最後に、このイリアーヌ、ブレッカー・ブラザースで名を馳せたトランペット奏者のランディ・ブレッカーの嫁はんでもありました(ちなみに、現在の夫であるベーシストのマーク・ジョンソン)。現在では、娘がジャズ・ボーカリストとしてデビューしています。

 

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