2024年11月13日 (水曜日)

Chris Potter『Eagle’s Point』

2024年、コロナ禍も下火になり、コロナ前の日常が戻ってきた中、ジャズも完全復活みたいで、コロナ禍の折には、編成を縮小したりして、振り返れば、抑制的、内省的、思索的な内容のアルバムがメインにリリースされていた印象があるが、2024年に入ってからは、以前の勢いあるジャズが戻ってきている印象が強い。そして、内容的にも、将来の名盤、そのジャズマンの代表作になるであろう、内容良好なアルバムが出てきているから、ジャズ盤鑑賞はやめられない。

現代のジャズ・サックス奏者の代表格の一人、クリス・ポッター(Chris Potter)。米国シカゴ出身、1971年1月1日生まれ。今年で53歳。ジャズ・サックス奏者の中堅。純ジャズのみならず、フュージョン、ファンク的なアプローチにも長ける、オールマイティーなサックス奏者。が、メインストリーム系の純ジャズを吹かせたら、現代ジャズ・サックス奏者の先頭集団に値するパフォーマンスを披露してくれる。

Chris Potter『Eagle's Point』(写真左)。2024年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Chris Potter (ts, ss, b-cl), Brad Mehldau (p), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)。メルドー、パティトゥッチ、そしてブライアン・ブレイドという説明不要な、現代の現役ビッグネームを迎えた、ポッターのワンホーン・カルテット。

そんなクリス・ポッターの新作であるが、これがまあ、素晴らしい出来で、驚くやら嬉しいやら。少しだけ、ところどころでアウトするところが、まるで、ジャキー・マクリーン。しかし、マクリーンより遥に端正。余裕のある力感溢れるブロウ。力の入れ具合は8割程度、という感じが。バリバリ吹くというよりは、滑らかなフレージングでポジティヴに吹き進める、という感じ。テクニックは優秀だが、テクニックをひけらかすことはない。
 

Chris-pottereagles-point

 
とりわけ、ミッドテンポで、地に足をしっかり落としてテナーを吹き進めるポッターは実に良い。アブストラクトにちょっとフリーキーに吹き上げる瞬間がいくつかあるが、ポッターは変に「羽目を外す」ことは無い。この盤では、ポッターはテナーのみならず、ソプラノ・サックス、そして、バス・クラリネットも吹いている。特にバスクラが印象的。次作以降、もっとバスクラを吹いて欲しい。そんな正な期待を持たせてくれる、ポッターのバスクラ。

この盤の演奏が、一段の高みを実現しているのは、リズム・セクションのメンバーが相当に優秀だから。ピアノにメルドー、ベースにパティトゥッチ、そして、ドラムに我がジャズ・ヒーローの一人、ブライアン・ブレイド。

名前を見ただけで、出てくる音の期待だけで「クラクラ」するほどの、有名、かつ力量のあるリズム・セクションがバックに控えているのだから、ポッターが、何の気兼ねもせず、ただひたすら、ポッターのサックスをバスクラを吹きまくるのは、当たり前と言えば当たり前。ポッターのサックス&バスクラは当然のことながら、このバックのリズム・セクションを聴くだけでも、「おかわり」したくなる様な、素晴らしいパフォーマンス。

この盤は、ポッターの代表作に、また、現代のサックスの名盤に、将来、なっていくであろう、クールでヒップでエクセレントな、内容の充実度の高さ。ポッターのワンホーン・カルテットという編成もグッド。いやはや、とんでもないサックス名盤候補がリリースされたもんだ。
 
 

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2024年4月11日 (木曜日)

名手ブレイドの初リーダー作です

現代のファースト・コール・ドラマーの一人、アントニオ・サンチェスのリーダー作を聴いていて、他のファースト・コール・ドラマーのリーダー作を聴き直してみたくなった。まずは「ブライアン・ブレイド(Brian Blade)」。1970年生まれだから、今年54歳。ジャズ界では引っ張りだこのドラマーの一人である。

ブレイドのドラムは、多彩かつ大胆かつ繊細。非常に味のあるドラミングを披露してくれる。聴いていて惚れ惚れするくらい耳に心地良い、小粋なドラミング。シンバルをパルシヴに小刻みに刻んで、ビートの波を叩き出すのが最大の特徴。このブレイドのシンバル・ワークが秀逸。このシンバル・ワークをベースに、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミングを披露する。

『Brian Blade Fellowship』(写真左)。1998年の作品。ブルーノート・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Brian Blade (ds), Melvin Butler (sax), Jon Cowherd (ac-p, el-p), Dave Easley (pedal steel g), Daniel Lanois (mando-g), Jeff Parker (ac-g, el-g), Christopher Thomas (ac-b), Myron Walden (as)。ブライアン・ブレイドの初リーダー作になる。

ブライアン・ブレイド・フェローシップ(以降、BBF)、1997年、ブライアン・ブレイドをリーダーとして結成されたバンド。楽器構成がユニークで、ペダル・スチール・ギターやマンドギター、ウーリッツァー・エレクトロニック・ピアノなどのジャズには珍しいエレ楽器も入れての8人編成。言い換えると「ブライアン・ブレイド・オクテット」である。
 

Brian-blade-fellowship
 

出てくる音は、コンテンポラリー・ジャズ、いわゆる「ニュー・ジャズ」である。即興演奏をメインに、それぞれの楽器がモーダルにフリーにスピリチュアルにインタープレイを展開しつつ、フュージョン、フォーク、ゴスペルな音要素をも包含して、21世紀に通じる「ニュー・ジャズ」を展開。様々な表現を反映して楽曲がバリエーション豊かに収録されている。

そんなバリエーション豊かな内容の楽曲の中で、ブライアン・ブレイドのドラミングは白眉の出来。「シンバルをパルシヴに小刻みに刻んで、ビートの波を叩き出し、このシンバル・ワークをベースに、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミング」というブレイドのドラミングの個性がこの盤の中に溢れている。

ブレイドの多彩なドラミングが推進エンジンとなって、様々なニュアンスの即興演奏&インタープレイが展開される。どの楽器も音は好調。4ビート・ジャズとは全く正反対の、エモーショナルでクールな「ニュー・ジャズ」志向のパフォーマンスは、このBBFの最大の個性。エレ楽器を包含しているが、このバンドの音はあくまで「純ジャズ」の範疇に軸足がしっかりある。

ジャズの世界で「初リーダー作」は、そのリーダーのジャズマンの個性が明確に出る、というが、このブレイドの初リーダー作はその例に漏れない。ブレイドのドラミングを理解する上で、必聴のリーダー作だと言える。21世紀の「ニュー・ジャズ」としても聴き応え十分。好盤です。
 
 

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2024年1月31日 (水曜日)

ECMのギター・トリオの秀作

3日ほど前まで、しばらくの間、冷たい北西の季節風が吹き荒れ、外出するのが憚られた。とにかく冷える。気温は上がらない。そんな日に外出〜散歩なんて、とんでもない。風邪をひいたらどうするんだ、ということで、暖房の効いた室内で、終日、読書とジャズ鑑賞に勤しむことになる。

こんな真冬の冷え冷えした日の昼下がり、暖かい室内で聴くジャズは、意外とECMレコードの「耽美的で静的でクリスタルでリリカル」な即興演奏メインの欧州風ニュージャズのアルバムが良い。真冬の寒い昼下がり、そんなECMの現代の欧州風ニュー・ジャズにじっくりと聴き耳を立てるのが僕の好み。

Wolfgang Muthspiel, Scott Colleyf & Brian Blade『Dance of the Elders』(写真左)。2022年2月、米国オークランドでの録音。ちなみにパーソネルは、Wolfgang Muthspiel (g), Scott Colley (b), Brian Blade (ds)。ヴォルフガング・ムースピールのギター、 スコット・コリーのベース、ブライアン・ブレイドのドラム、ピアノレスのギター・トリオ編成の演奏。

以前より聴いたことの無い、初聴きのアルバムに出会った時、聴く前にする幾つかの見極めポイントがあるんだが、その見極めポイントの一つに「ブライアン・ブレイドがドラムを担当するアルバムに駄盤はない」というのがある。このムースピール、コリー 、ブレイドの3者共同リーダーの新盤についても、ドラムにブレイドの名前を見つけて、これは聴いて大丈夫、と踏んで、初聴きと相成った。

ヴォルフガング・ムースピールは、オーストリア出身のギタリスト。1965年生まれなので、今年で59歳、還暦一歩手前のベテラン・ギタリスト。1989年に初リーダー作をリリースして以来、1〜2年に一枚のペースでリーダー作をコンスタントにリリース、特に、2014年の『Driftwood』から、ECMお抱えのギタリストとして、今回のアルバム含めて、5枚のリーダー作をECMからリリースしている。
 

Wolfgang-muthspiel-scott-colleyf-brian-b

 
ムースピールの名前を真っ先に挙げたのは他でもない、この3者共同リーダーの新盤については、共同リーダー作でありながらも、ムーズピールのギターが全面に押し出されていて、このムースピールのギターを心ゆくまで堪能できるアルバムとして仕上がっている。

少しくぐもった、ストレートな伸びの素性の良いギター。明らかに欧州風でECM好みの「耽美的で静的でクリスタルでリリカル」なギターの音世界。冒頭の1曲目「Invocation」から、明らかにECMレコードの音の傾向をしっかり踏まえていて、録音も含め、ECMレコードの音世界を堪能できる。

フォーキーで耽美的なムースピールのギターが心地良い響き。今回の新盤ではクラシックな響きも見え隠れする。そんなムースピールの魅惑的なギターを、コリーのソリッドで重量感溢れるベースと、ブレイドの変幻自在、硬軟自在、緩急自在でポリリズミックなドラムがしっかりサポートしている。

そして、このムーズピールのギター、コリーのベース、ブレイドのドラムの3者一体となった、濃密なインタープレイな展開も聴き応え満点。よくよく聴けば、コリーのベースもかなりゴリゴリアコベの低音を轟かせ、ブレイドのドラムもかなりダイナミックでスケールの大きいドラミングを披露している。それでいて、ダイナミックな展開の傍で、繊細でスリリングな表現も抜群。

なるほど「3者共同リーダー」なのも納得、3者均等の素晴らしいパフォーマンスである。ECMの音世界、欧州的な響きが芳しい。即興演奏が基本のギター・トリオのパフォーマンス。そんなECMの現代の欧州風ニュー・ジャズは聴き応え十分。
 
 

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2024年1月25日 (木曜日)

John Patitucci Trio の秀作です

ジャズ盤の鑑賞については、昔のハードバップやモードを聴くこともあるが、最近の、現代のジャズの新盤も努めて聴く様にしている。1970年代においては「ジャズは死んだ」として、現代のジャズはジャズで無い、とし、コルトレーン逝去前のジャズをジャズとして、1950〜60年代のジャズしか聴かないジャズ者の方々もいたみたいだが、それはかなり極端な見解だろう。

21世紀に入った現在から以前のジャズを聴き直すと、コルトレーン逝去後もジャズは「進化」、やっと1980年代に入って、さすがにジャズの世界では「イノベート」な何かは生まれ出なくなった。

しかし、それまでのジャズのトレンドやスタイルを捉え直して、現代のジャズは「深化」している。以前のトレンドやスタイルをグイグイ掘り下げて、完成度を高め洗練し、新しい解釈を添加する。そんな「深化」は未だに途絶えることは無い。

『John Patitucci Trio: Live in Italy』(写真左)。2022年の夏、イタリアツアーでのライヴ録音。なみにパーソネルは、John Patitucci (b), Chris Potter (sax), Brian Blade (ds)。現代のジャズ・ベースのヴァーチュオーゾの一人、ジョン・パティトゥッチのリーダー作。パーソネルを見れば、フロント一管・サックス、ベース、ドラムのピアノレス・トリオ。

もともと、ジャズ・ベーシストのリーダー作はその数が少ない。もともとリズム・セクションで、バンドの演奏の「ベースライン」を守る楽器。フロント楽器の様な旋律楽器では無いので、バンド演奏の前面に押し出たリーダーとしては振る舞い難い。そんな、数が少ないベーシストのリーダー作であるが、そのリーダー作の内容的傾向は幾つかに分かれる。

リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケース。もう一つは、ベーシストとしてのテクニックの高さを全面的に披露するケース。そして、リーダーとして、グループ・サウンズを統率する役割に徹するケース。
 

John-patitucci-trio-live-in-italy

 
今回のパティトゥッチのリーダー作は、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケースと、ベーシストとしてのテクニックの高さを全面的に披露するケースのハイブリッド。

ピアノレス・トリオの特性を最大限活かした、ネオ・ハードバップ&ネオ・モード。決して、1950年代から60年代のハードバップやモード・ジャズの焼き直しでは無い。

このピアノレス・トリオの演奏は、基本はモードだが、出てくるフレーズはどれもが新鮮。ベースもドラムもサックスも、躍動感が溢れ、変幻自在、活き活きしたパフォーマンスが全編に渡って繰り広げられている。

パティトゥッチのベースが凄く良い。ジャズの歴代のレジェンド・ベースマンのパフォーマンスに匹敵する素晴らしいウォーキング・ベース、そして、ベースソロ。タイトでソリッドでメロディアスなアコベ。バンド全体の一体感を醸し出す説得力あるアコベ。

ブライアン・ブレイドのドラムがこれまた凄く良い。ブレイドの変幻自在、緩急自在、硬軟自在のドラミングが映えに映える。このピアノレス・トリオの躍動感を一手に引き受けている様な、ポジティヴでアグレッシブで「小粋な」ドラミング。

そして、そんなパティトゥッチのベースとブレイドのドラムをバックに、クリス・ポッターのサックスが飛翔する。これだけレベルの高い、味のあるリズム隊をバックに吹くのだ。イマージネーション豊かに、バリエーション豊かに、自由自在に、在らん限りの様々なフレーズを吹き上げる。

ライヴ音源だけに演奏の躍動感もビンビンに伝わってくる。録音当時、63歳の大ベテランの域に達したパティトゥッチの成熟した、新鮮な響きに満ち溢れた好盤。現代のモダン・ジャズ、現代のネオ・モーダルなジャズが単純に楽しめる秀作。
 
 

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2023年11月 6日 (月曜日)

フェローシップ・バンドの新作

現代のジャズ・ドラマーのお気に入りの一人に「ブライアン・ブレイド(Brian Blade)」がいる。米国のジャズ・ドラマーで、1970年7月生まれなので、今年で53歳になる。自身が運営するグループ「フェローシップ・バンド」にて、初リーダー作をリリースして以降、ずっと、この「ザ・フェローシップ・バンド」で自身のリーダー作を発表し続けている。

ブライアン・ブレイドと言えば、サイドマンとしての活動にも優れた実績を残していて、チック・コリア、ケニー・ギャレット、ジョシュア・レッドマン、ウェイン・ショーター、ノラ・ジョーンズ、そして、ボブ・ディラン、ジョニ・ミッチェルなど、ジャズがメインではあるが、ジャンルの垣根を超えて、ロック畑の一流ミュージシャンとの共演が目を引く。ジャンル問わずのオールマイティーなドラマーでもある。

僕は「ブライアン・ブレイドがドラマーとして参加するアルバムに駄盤無し」と常々感じていて、ブレイドのサイドマンとしてのドラミングは適応力、応用力、説得力が抜群。ブレイドのドラミングの個性&特徴はそのままに、それぞれのリーダーに合ったリズム&ビートを的確に提供している。しばらく聴いていると、これってブレイドかな、と判るくらい、個性と特徴のあるドラミングで、お気に入りになると「クセになる」ドラミングである。

Brian Blade & The Fellowship Band『Kings Highway』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Brian Blade (ds), Melvin Butler (ts, ss), Jon Cowherd (p, org), Kurt Rosenwinkel (g), Christopher Thomas (b, c.t. synth), Myron Walden (as, b-cl)。2017年『Body And Shadow』以来の、ブライアン・ブレイド率いる「ザ・フェローシップ・バンド」としての7枚目のスタジオ盤になる。
 

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内容的には従来からの「ザ・フェローシップ・バンド」の音世界を踏襲している。1970年代、ECMレーベルがメインにリリースしてきた「ニュー・ジャズ」、いわゆる現代のコンテンポラリー・ジャズ。ハードバップの様な4ビートの旧来のジャズではなく、モーダルな展開をメインに、リズム&ビートはジャジー、即興演奏を旨として、自由度の高い、それでいて流麗〜メロディアスでキャッチャーなフレーズ展開がメインの音世界。

冒頭、ブレイド作の「Until We Meet Again」のフェローシップらしい分厚いハーモニーが「らしくて」良い。続くカワード曲「Catalysts」は、柔軟でしなやか、力強くて切れ味抜群のブレイドのドラムと、ローゼンウィンケルの高速テクニカルで浮遊感のあるエレギが印象的。3曲目の、これまたカワード曲「People’s Park」、サックスとギターのアンサンブルが美しい。

以降、ブレイド作が続いて「Kings Highway」、ドラマチックな展開にワクワクする。ハイレベルなソロ・パフォーマンスも聴き応え十分。「Look to The Hills」の高揚感が印象的で、「Migration」は15分超えの大作だが、この大作をフェローシップはダイナミックにリリカルに演奏しきってしまう。展開のバリエーション豊かで、マンネリに陥るところは皆無。創造力豊かなフェローシップ・バンドの面目躍如。ラストは讃美歌「「God Be with You」の厳かで敬虔な演奏で幕を閉じる。

ブレイドの硬軟自在、変幻自在、緩急自在な、説得力のあるドラミングは素晴らしいの一言。そして、ギターのローゼンウィンケルが大活躍。他のフェローシップのメンバーの演奏も充実の一言。この盤、ブライアン・ブレイド率いる「ザ・フェローシップ・バンド」として、現時点での最高の内容を誇る好盤だと思う。コンテンポラリー・ジャズ者には堪らない内容。良いアルバムです。
 
 

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2023年7月30日 (日曜日)

今を行く硬派なギター・トリオ

当代のジャズ・ドラマーで、信頼して聴くことが出来るドラマーが幾人かいる。 ブライアン・ブレイド(Brian Blade)は、そんな「当代の信頼出来るジャズ・ドラマー」の1人。この人のドラミングは、初リーダー作『Brian Blade Fellowship』(1998年)から、ずっと聴いているが、リーダー、サイドマンどちらのドラミングも見事なもので、僕は「ブレイドがドラムを担当するアルバムに駄盤は無い」と思っているくらいである。

Jeff Denson, Romain Pilon, Brian Blade『Finding Light』(写真左)。2022年1月17日,18日の録音。ちなみにパーソネルは、Jeff Denson (b), Romain Pilon (g), Brian Blade (ds)。米国中堅ベーシストのデンソン、フランス出身の才人ギターのピロン、そして、僕が信頼する当代きってのジャズ・ドラマーのブレイド、の3人が邂逅したギター・トリオ。

トリオの3名、並列の共同リーダー作。確かに、3人3様、それぞれがリーダーシップを取り合いながら、素晴らしいパフォーマンスを披露している。オーソドックスなスイング志向あり、変拍子な演奏あり、ジャズ・ファンクあり、ストイックで硬派なインプロビゼーションありで、それぞれのインタープレイの応酬が見事。
 

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コロナ禍で収録スケジュールを3度、変更せざるを得なかったらしいが、間延びせず、鮮度の高いパフォーマンスを繰り広げている。演奏の基本はモード。現代の最先端の「ネオ・モード」な音が実に良い。何気なく、弾き流している様に感じるが、どうして、適度なテンションを張りつつ、かなりマニアックな、かなり難度の高いパフォーマンスが凄い。特に、ピロンのギターが流麗かつ耽美的、そしてリリカル。それでいて、ジャジーな雰囲気をしっかり湛えていて、かなり聴き応えのあるギターが印象的。

ベースとドラムのリズム隊は「素晴らしい」の一言。デンソンのベースは、トリオ演奏の「底」をしっかりと押さえて、他の2人が安心してパフォーマンス出来るベースラインを供給する。ブレイドのドラムは緩急自在、硬軟自在、変幻自在。ポリリズミックな展開も芳しく、トリオというシンプルな演奏の中、リズム&ビートに、ブレイドならはの「彩り」を添えていて、トリオ演奏をバラエティー豊かなものにしている。

現代のコンテンポラリー・ジャズ、「今」を行く硬派なギター・トリオとして、内容ある好盤だと思います。トリオ演奏として、音数は決して多くはないが、それぞれの「間」を上手く活かした、流麗でクールでエモーショナな演奏に、思わず聴き込んでしまう。ブレイドがドラムを担当するアルバムに駄盤は無い」と感じて久しいが、この盤もブレイドがドラムを担当していて、その内容に「間違いは無い」。
 
 

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2022年12月11日 (日曜日)

「キング・オブ・カルテット」である

コロナ禍でどうなることかと思ったが、現代ジャズはコロナ禍に負けること無く、その活動と深化を継続している。コロナ禍当初は、スタジオ録音が出来なかったり、ライヴ演奏が出来なかったりで、ジャズのみならず、音楽活動というものが潰えてしまうのでは無いか、と不安になったが、何とか厳しい時期を乗り越えた様だ。

その現代ジャズであるが、深化は脈々と続いている。21世紀に入って、ネオ・ハードバップの成熟、クールで静的なスピリチュアル・ジャズ、21世紀版フュージョン&スムース・ジャズの充実など、1950年年代〜1960年代のジャズに回帰すること無く、モダン・ジャズの「クラシック化」は進んでいない。

Redman Mehldau McBride Blade『LongGone』(写真左)。2019年9月10–12日の録音。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (ts, ss), Brad Mehldau (p), Christian McBride (b), Brian Blade (ds)。現代ジャズのおける「若きレジェンド」が集結した、レッドマンのサックスが1管のワンホーン・カルテットの編成。

2020年リリースの前作『RoundAgain』は強烈だった(2020年10月8日のブログ参照)。モーダルで自由度と柔軟度の高い演奏あり、アーシーでちょっとゴスペルチックでファンキーな演奏あり、コルトレーン・ライクなスピリチュアルな演奏あり、現代のネオ・ハードバップをより洗練し、より深化させた演奏内容となっていた。振り返って見ると、2020年までのモダン・ジャズの総括的な内容だった気がしている。

今回のアルバムは、その先を行くものと認識した。落ち着いた、クールで静的なネオ・ハードバップ。しかし、録音年月日を見てみると、前作『RoundAgain』と同一録音ではないか。そして、ラストに「2007年のSFJAZZの25周年記念のライブ演奏」から1曲追加して、今回の新作となっている。う〜ん、前作と同じ録音なのか〜。
 

Redman-mehldau-mcbride-bladelonggone

 
今回の新作と前作と基本的な雰囲気が全く違う。前作はエネルギッシュに、2020年までのモダン・ジャズの総括し、今回の新作は、これからのモダン・ジャズをクールに静的に落ち着いた雰囲気で披露する。

しかも、今回はラストのライヴ音源以外、全6曲がジョシュア・レッドマンのオリジナルで固められている。そういう意味では、このカルテット、ジョシュアがリーダー的立場なんだろうな。

この新作を聴いて、痛く感心したのが、モーダルで自由度と柔軟度の高い演奏がメインなんだが、フレーズや音の響きの新鮮さ。決して、過去のジャズの焼き直しでは無い、「どこかで聴いたことがある」感が無い、鮮烈で機微に富むモーダルなフレーズがこれでもか、と出てくる。

前作でもそう感じたが、この新作では更に、フレーズや音の響きの新鮮さが増している。さすが、現代ジャズにおける「キング・オブ・カルテット」である。

アルバム全体の雰囲気が「落ち着いた、クールで静的」な演奏がメインだったので、ちょっと地味ではないのか、と感じたのは最初だけ。聴き込めば聴きこむほど、このカルテットの演奏は滋味深い。

このカルテットの演奏、しばらく、続けて欲しいなあ。聴く度に、現代のモダン・ジャズの到達点のひとつを確認出来る。現代のモダン・ジャズ、現代のネオ・ハードバップの最高レベルの演奏のひとつである。
 
 

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2022年7月 9日 (土曜日)

ダニロ・ペレスのピアノを愛でる

ダニロ・ペレス(Danilo Pérez)は、パナマ出身のジャズ・ピアニスト。1965年12月29日生まれなので、現在56歳。耽美的でリリカルな現代ジャズ・ピアニストの中堅的存在。リーダー作は、1993年以降、現在まで10数枚。どちらかと言えば、サイドマンとしての客演アルバムが多い。ウェイン・ショーターとの共演を始め、レジェンド級のジャズマンとの共演も多い。僕は、ショーターのリーダー作でペレスの名を知った。

Danilo Pérez『...Till Then』(写真左)。2003年2月24-26日、NYの「Avatar Studio」での録音。Verveレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Danilo Pérez (p), Lizz Wright (vo), Donny McCaslin (ss), John Patitucci (b), Ben Street (b), Brian Blade (ds), Adam Cruz (ds, steel pan, perc)。録音当時、ペレス37歳。当時の現代ジャズにおける「腕に覚えのある」中堅どころが集結。リズ・ライトがボーカルとして参加。

ダニロ・ペレスのピアノは、耽美的でリリカルで流麗。その特徴が強く出ていて、この盤を聴いて思うのは、このピアニストは「総合力で勝負する」タイプでは無いということ。どこか、チック・コリア、ブラッド・メルドーの影が漂うが、彼らほど尖ってはいない。柔和で優しい、しっかりとした耽美的でリリカルなタッチがペレスの個性だろう。
 

Danilo-pereztill-then

 
テクニックは優秀で、その弾き回しは流麗そのもの。シンプルだけど、テクニックのある弾き回しがゆえ、フレーズがマンネリに陥ることは無く、逆に、シンプルではあるが、多彩でバリエーション溢れる展開が素敵なピアノである。聴いていてホッとするし、聴いていて和やかになる。モーダルなフレーズもその流麗さ故に、難解に響かないところがとても良い。

テクニックに優れたピアニストである所以は、リズ・ライトのボーカルの「歌伴」にも聴くことが出来る。3曲目「....Till Then」と、9曲目「Fiddle and Drum」の2曲にリズ・ライトのボーカルを聴くことが出来るが、この2曲でのペレスのピアノ伴奏がとても良い雰囲気。伴奏上手は「名盤請負人」でもある。ペレスには、どこかトミー・フラナガンの影も感じるのだ。確かに、ペレスはサイドマンでの客演がかなり多い。

現代ジャズ・ピアノの環境の中では、ちょっと地味な存在のペレスではあるが、このリーダー作については、ペレスのピアノの個性を確認するに打って付けのアルバムだと思います。意外と難しいことをやっているんですが、テクニックがあるピアニストなので、難解にならずに、逆に流麗で奥が深い、アーティステックな内容が魅力的なアルバムに仕上がっています。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

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  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2021年12月 7日 (火曜日)

ノラ・ジョーンズ、初のライブ盤

以前より、ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)のボーカルが気に入っている。デビュー当時からずっとアルバムを追いかけているが、声そのものも良いが、ノラの唄う音世界が良い。

最初はコンテンポラリー・ジャズっぽい音世界だったが、少しずつ幅を拡げて、米国ルーツ・ミュージックをベースとしたものになり、加えて、米国ルーツ・ロックの要素も交えて、現代のフュージョン・ジャズっぽい、1970年代であれば、アダルト・オリエンテッド・ロック(AOR)ぽい音世界にもなっていて、これはこれで「クールじゃないか」という感じで、愛でている。

Norah Jones『'Til We Meet Again』(写真左)。今年4月、ブルーノート・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、
基本セットとして、Norah Jones (vo, key, g), Pete Remm (org), Christopher Thomas, Jesse Murphy (b), Brian Blade (ds), Jesse Harris (g),Jorge Continentino (fl), Marcelo Costa (perc) という感じ 。

このライヴ盤の選曲については、ノラ・ジョーンズのキャリア初となるライヴ・アルバムである。2017~19年に行ったライヴから、ノラ自身の手で「お気に入りのテイク」が選ばれている。選曲を見れば、オールタイム・ベスト的なラインナップになっている。これが実に良い。ベスト・アルバムというよりは、充実のライブ盤という趣。
 

Til-we-meet-again

 
2002年のデビュー作『Come Away With Me』以来、ライヴ盤が無かったというのは意外だったが、素晴らしい内容のライヴ盤に気分は「ウハウハ」である(笑)。冒頭、ハンク・ウィリアムス作の名曲「Cold, Cold, Heart」のカヴァーから始まり、基本的に音楽仲間との共作も含むノラ自身のオリジナル曲で占められている。

ラストに(日本盤には、大阪城ホールで録音された「サンライズ」が追加されているが)、もう一曲カヴァー曲「Black Hole Sun」が入っている。2017年に亡くなったクリス・コーネルへの追悼として、コーネルがサウンドガーデンとして最後にライヴを行なった会場、米ミシガン州デトロイトのフォックス・シアターで録音された音源。これが実に良い。いやいや、ノラってカヴァーが上手い。原曲の良さを更に引き出して、しみじみと聴かせてくれる。

バンド・サウンドとしては、まず、ノラのキーボードが上手い。改めて「こんなに上手かったんだ」と感心した。そして、リズム&ビートをグッと占めているのが、僕の最近のお気に入りのドラマー、ブライアン・ブレイド。曲によって、ジャジーに、ブルージーに、そして、ファンキーに、変幻自在のリズム&ビートを供給して、ノラのボーカルを引き立てている。

このライヴ盤のタイトルが『'Til We Meet Again』。訳せば「また会える日まで」。コロナ禍の現在において、実に心に響くタイトルだ。ライヴを容易に開催することができない時代に、ノラからの臨場感溢れる、優れた内容のライヴ盤である。
 
 
 
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  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

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2020年10月 8日 (木曜日)

ジョシュアの最強カルテット盤

ジョシュア・レッドマンが好調である。1992年にメジャー・デビューして以来、コンスタントに、ほぼ1年に1作のペースでリーダー作を出し続けている。特にこの4〜5年は、ブラッド・メルドーやバッド・プラスと共同名義のアルバムを出したり、ネオ・ハードバップを掘り下げた、硬派でアーティスティックなメインストリームな純ジャズを展開したり、実に意欲的な活動を継続している。

Joshua Redman『RoundAgain』(写真)。今年7月のリリース。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (ts, ss), Brad Mehldau (p), Christian McBride (b), Brian Blade (ds)。どこかで見たことのあるパーソネルだなあ、と思って資料を見たら、ジョシュアのリーダー作『Moodswing』のパーソネルがそのまま、26年振りに再集結したとのこと。なるほど納得。

さて、その内容であるが、モーダルで自由度と柔軟度の高い演奏あり、アーシーでちょっとゴスペルチックでファンキーな演奏あり、コルトレーン・ライクなスピリチュアルな演奏あり、現代のネオ・ハードバップをより洗練し、より深化させた演奏内容となっている。モーダルな演奏なんて、出現して以来、50年以上が経過しているので、もはや手垢がついて、どこかで聴いたことのある展開に陥りそうなのだが、ジョシュアのフレーズは決してそうはならない。
  
 
Roundagain-redman  
 
 
冒頭の「Undertow」が、モーダルで自由度と柔軟度の高い演奏で、ジョシュアの思索的なテナー・サックスが深みのあるフレーズを吹き上げている。特に低音が魅力的。続く2曲目の「Moe Honk」は、コルトレーン・ライクな疾走感溢れる、ややフリー気味な演奏。カルテットのメンバーそれぞれのテクニックが凄い。聴き込んでいるとあっと言う間に終わってしまうくらい、テンションの高い演奏。

3曲目の「Silly Little Love Song」は、アーシーでちょっとゴスペルチックでファンキーな演奏。素朴でフォーキーなメロディーが良い。米国ルーツ音楽的な響きが愛おしい。5曲目の「Floppy Diss」は、ブルージーでエネルギッシュな演奏ではあるが、どこか明るいユニークな演奏。この曲もメンバー4人のテクニックが凄まじい。特に、メルドー・マクブライド・ブレイドのリズム隊が凄い。

さすがにこれだけのメンバーが再集結しているのだ。今までのジャズの焼き直しにはならないし、過去の演奏スタイルをなぞることもしない。あくまで、現代の現時点でのメインストリームな純ジャズについて、これからの行く末を示唆する、含蓄に富んだ内容になっていると僕は思う。この盤を聴いて思う。まだまだジャズには、表現における「のりしろ」がまだまだあるなあ、と。
 
 
 

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  ・『Middle Man』 1980
 
 ★ まだまだロックキッズ    【更新しました】 2020.10.07 更新。
  
  ・The Band の「最高傑作」盤
 
★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.10.07 更新。
 
  ・僕達はタツローの源へ遡った


 
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