Glassmenagerie名義のコブハム
ドラマー、トニー・ウィリアムスが率いる「ライフタイム」、クロスオーバー・エレギのレジェンド、ジョン・マクラフリンが率いる「マハヴィシュヌ・オーケストラ」。そして、ヴァイオリンを活かしたクロスオーバー・ジャズなんてことを書いていたら、ふとこのアルバムを思い出して、思わす再聴。
Billy Cobham's Glassmenagerie『Stratus』(写真左)。1981年3月18日、ロンドンでの録音。ちなみにパーソネルは、Billy Cobham (ds), Gil Goldstein (key), Tim Landers (el-b), Mike Stern (el-g), Michal Urbaniak (el-vln, Lyricon)。マイク・スターンのエレギとマイケル・ウルバニアクの電気バイオリンがフロントの、カルテット編成。
千手観音ドラマーのビリー・コブハムがリーダー。これは、トニー・ウィリアムスが率いる「ライフタイム」に通じる。電気バイオリンを活かしたエレ・ジャズ。これは、ジョン・マクラフリンが率いる「マハヴィシュヌ・オーケストラ」に通じる。しかし、このコブハム・バンドの音志向は「クロスオーバー・ファンク」。
ロンドンの録音とあって、ファンキーな音志向とは言え、この盤でのファンクネスは「乾いて粘りの無いシンプル」なファンクネス。1981年の録音なので、マハビシュヌの様に、1970年代の英国プログレとの融合は無い。
逆に、R&Bやソウルなど、ブラック・ファンクとの融合がそこかしこに感じられる。が、粘りが無い分、こってこてなファンクネスは感じられず、リズム&ビートは、コブハムの千手観音ドラミングがリードしていて、コンテンポラリーでジャジーなファンクネスが強く感じられるユニークなもの。
演奏自体は「クロスオーバー・ファンク」だが、R&Bな要素のみならず、ロックな要素、フュージョンな要素、クラシックな要素もしっかり反映されていて、なかなか興味深い、コブハム・バンドならではの音世界はユニークであり、しっかりと聴き応えがある。
マイク・スターンのエレギは「ジャズっぽいが基本はロック」なエレギを弾きまくる。マイケル・ウルバニアクの電気バイオリンとリリコン(シンセ・サックス/ウインド・シンセサイザー)のフロントのフレーズが印象的。ギル・ゴールドスタインのキーボードは意外と正統派ジャズな音を出していて、フロントのエレギと電気バイオリン、そして、リリコンとの対比が面白い効果を生み出している。
コブハムの「千手観音ドラミング」は絶好調。というか、1970年代よりも、良い意味で落ち着きがあって、的確でブレの無い、爽快で乾いたファンキー・グルーヴを叩き出している。そして、ティム・ランダースのベースは、正統派クロスオーバー&フュージョン・ジャズなベースラインを供給して、このバンドの音の底をガッチリと支えている。
当時のクロスオーバー&フュージョン・ジャズの好盤として、コブハムの代表的好盤として、このアルバムのタイトルが上がることは無い。実際、僕は目にしたことが無い。以前、たまたま、コブハムのディスコグラフィーを整理していて、この盤の存在に気がついたくらいである。
しかし、中身は素性確かな、コブハムならではの「クロスオーバー・ファンク」な音世界がてんこ盛り。なかなか良い内容のアルバムだと思います。
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