2024年2月 4日 (日曜日)

『Eastern Rebellion 4』を聴け

シダー・ウォルトンが率いる「イースタン・リベリオン」。第1作が、1975年12月の録音。第1作から第4作まで、スタジオ録音のみで全4作。1975年から1983年までの8年間。基本的には、1970年代のモード・ジャズの進化形のパフォーマンスの記録で、これがなかなか見事な内容で残っている(我が国では取り上げられることは殆ど無いが....)。

Cedar Walton『Eastern Rebellion 4』(写真左)。1983年5月25日の録音。オランダの「Timeless label」からのリリース。ちなみにパーソネルは、Cedar Walton (p), Curtis Fuller (tb), Bob Berg (ts), Alfredo "Chocolate" Armenteros (tp), David Williams (b), Billy Higgins (ds)。シダー・ウォルトン率いる名コンボ「イースタン・リベリオン」最終作。

ベースが、サム・ジョーンズから、デヴィッド・ウィリアムスに交代。フロント管に、キューバの英雄、アルフレッド “チョコラーテ” アルメンテロスのトランペットが加わって、3管フロントのセクセット編成。キューバのアルメンテロスが参加して、この『Eastern Rebellion 4』は、アフロ・キューバン・ジャズの1980年代版。
 

Cedar-waltoneastern-rebellion-4

 
この時期に、どうして「純ジャズ志向のアフロ・キューバン・ジャズ」をやったのか、ウォルトンの真意は判らないが、1950年代から60年代のアフロ・キューバンを下敷きにしながら、1970年代後半に全盛を極めたフュージョン・ジャズからの影響か、ソフト&メロウな「温和な」側面も見え隠れする、以前の熱狂的な「熱い」アフロ・キューバン・ジャズでは無い、聴きやすさ満点の「軽快な」アフロ・キューバン・ジャズが展開される。

演奏全体の曲想が「アフロ・キューバン・ジャズ」になっても、ウォルトンのそこはかとなくファンキーでバップな「情熱&躍動ピアノ」は変わらない。というか、ウォルトンのバップな「情熱&躍動ピアノ」が、アフロ・キューバンにぴったりで、モーダルなウォルトンのピアノが、「アフロ・キューバン」をやっていても違和感が無い。ウォルトンのピアノの適応力の広さが窺い知れる。

ただ、この時期にイースタン・リベリオンが「アフロ・キューバン」をやる必然性を見出せることが出来ないので、この盤でのイースタン・リベリオンは異質で、この盤の唐突感は否めない。1983年の録音、フュージョン・ジャズが勢いを失い、1980年代半ばの「純ジャズ復古」前夜の時期。「イースタン・リベリオン」は進む方向性を見出せず、この4作目でその活動を終結した。致し方ない。
 
 

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2024年2月 3日 (土曜日)

『Eastern Rebellion 3』を聴け

そこはかとなくファンキーでバップな「情熱&躍動ピアノ」。テクニックは確か、端正で正確なタッチ。両手を一杯に使って、ダイナミックにスケールの大きいバップ・ピアノを弾きまくる。そんな「シダー・ウォルトン」のリーダー作の聴き直し。1970年代の純ジャズ。これが意外と興味深い。

Cedar Walton『Eastern Rebellion 3』(写真左)。1979年12月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Cedar Walton (p), Curtis Fuller (tb), Bob Berg (ts), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。今回の第3弾では、ボブ・バーグのテナーはそのままに、カーティス・フラーのトロンボーンが加わったクインテット編成。

シダー・ウォルトンが率いる「イースタン・リベリオン」の第3弾。「イースタン・リベリオン」のサウンドは、基本的には、1960年代モード・ジャズの進化形、1970年代のモード・ジャズだと思うのだが、今回、フラーのトロンボーンが加わっただけで、イースタン・リベリオンのサウンドは、1960年代、ウォルトンが在籍した頃の「ジャズ・メッセーンジャーズ」のモード・ジャズの進化形の様なサウンドにガラッと変化している。
 

Cedar-waltoneastern-rebellion-3

 
ほんわかホノボノ、音のふくよかさ、フレーズの聴き心地の良さを前面に押し出した、安定したフラーのトロンボーンが、唯我独尊、自分の吹きたい様に吹く、バーグのテナーと好対照で、意外と相性の良いフロント2管になっているのが面白い。お互いのアドリブ・ソロが、お互いの個性を引き立たせている。

フロント2管のバックで、トリオ率いてリズム・セクションを司るシダー・ウォルトンのピアノは、この「イースタン・リベリオン」の第3弾でも絶好調。前々作、前作での「ウォルトンの音を敷き詰めた様なモーダルなフレーズ、躍動感を生む弾むようなコード弾き。そこに骨太なサム・ジョーンズがガッチリと音の底を支え、ビリー・ヒギンスの柔軟なドラミングが、グループ全体のスインギーなグルーヴを堅実にキープする」は変わらない。

イースタン・リベリオンの提示する「1960年代、ウォルトンが在籍した頃の、ジャズ・メッセーンジャーズのモード・ジャズの進化形」は内容が濃い。クロスオーバー&フュージョン・ジャズ隆盛の1970年代に入っても、しっかりと1960年代のモード・ジャズを進化させている。決して「懐メロ」に走らないウォルトン。硬派なジャズマンである。
 
 

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2024年1月20日 (土曜日)

『Eastern Rebellion 2』を聴け

Cedar Walton(シダー・ウォルトン)のリーダー作を追いかけている。存在はジャズを聴き始めた頃から知っていた。が、ビッグネームから追いかけていって、ウォルトンに辿り着くのに30年かかった。そして、今、記事を書く為に聴き直しを進めている。順にウォルトンのリーダー作を聴いていると、やはり、ウォルトンは優れたジャズ・ピアニストの一人だった、と再認識させられる。

Cedar Walton『Eastern Rebellion 2』(写真)。1977年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Cedar Walton (p), Bob Berg (ts), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。ピアノのシダー・ウォルトンのリーダー作。ボブ・バーグのテナーがフロント1管のカルテット編成。

ユニット名「Eastern Rebellion」名義のセカンド盤。フロント1管がボブ・バーグに代わっている(前任は、ジョージ・コールマン)。フロントのテナーは交代したが、リーダーのウォルトン率いるトリオは変わらない。グループ・サウンドについても、ファースト盤(2016年7月20日の記事参照)と変化は無い。1960年代のモード・ジャズの「進化形」。

当時、流行っていた「V.S.O.P」や「Great Jazz Trio」は、1960年代のモード・ジャズの「マイナー・チェンジ」のイメージ。1960年代のモードを振り返って、そこにちょっと新しい要素を加えて、1960年代のモード・ジャズの完成形イメージを提示する。それが、当時「バカうけ」。
 

Cedar-waltoneastern-rebellion-2

 
しかし、このウォルトンの「Eastern Rebellion」のモード・ジャズは、明らかに1960年代のモード・ジャズの「先にある」イメージで、モーダルな展開やモーダルなアドリブなど、1960年代のものとは明らかに響きやアプローチが違う。1960年代のモード・ジャズの連続した延長線上にある「進化形」だと理解している。当時、ウケなかったけどね(笑)。

この『2』は、ボブ・バーグの存在が面白い。唯我独尊、バックのスインギーでグルーヴィーなトリオの音など関係なく、自分の吹きたい様に吹いている。コルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」の様に音符を敷き詰めた速吹きを披露したり、ちょっとフリーに吹いてみたり、スイングっぽく吹いてみたり、やりたい放題である。これが良い。バックのウォルトン率いるトリオの「端正さ」との対比が面白い。

この『2』でも、ウォルトンは好調を維持。ウォルトンの音を敷き詰めた様なモーダルなフレーズ、躍動感を生む弾むようなコード弾き。そこに骨太なサム・ジョーンズがガッチリと音の底を支え、ビリー・ヒギンスの柔軟なドラミングが、グループ全体のスインギーなグルーヴを堅実にキープする。

端正でスインギーでグルーヴィーなピアノ・トリオをバックに、自由闊達に独りよがりに、独特なモーダル・フレーズを吹きまくるボブ・バーグ。1960年代には無かったモーダルな音世界。今の耳で聴き直してみて、意外と個性的なモード演奏に、ふと嬉しくなったりする。

今の耳で聴くと、改めて「Eastern Rebellion」のモード・ジャズは良い感じ。思わず「再評価」である。
 
 

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2023年12月30日 (土曜日)

Walton, Carter & DeJohnette

シダー・ウォルトン(Cedar Walton)。1934年1月、米国テキサス州ダラスの生まれ。アート・ブレイキーのバンド、ジャズ・メッセンジャーズのメンバーとして有名になり、その後バンドリーダーおよび作曲家として長いキャリアを確立。2013年8月に惜しくも鬼籍に入っている。

ウォルトンのピアノはメインストリーム志向の正統派ジャズ・ピアノ。見事なバップ・ピアノで、ハートバップ志向もいけるが、モーダルなジャズもいける。端正で正確なタッチの「情熱&躍動バップ・ピアノ」。テクニックが確かで破綻が無い。多弁で躍動感溢れるバップ・ピアノが魅力的。

『Walton, Carter & DeJohnette』(写真左)。別タイトル『The All American Trio』(写真右)。邦題は『素晴らしき仲間たち/ オールアメリカントリオ』。1983年12月22 & 23日の録音。日本のベイステート・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Cedar Walton (p), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds)。

「情熱&躍動バップ・ピアノ」のシダー・ウォルトンと、職人ベースのロン・カーター、ポリリズミックなドラマー、ジャック・デジョネットのトリオ演奏。
 

Walton-carter-dejohnette

 
この録音時、ウォルトンは49歳。脂の乗り切った、バリバリ中堅の余裕綽々「情熱&躍動バップ・ピアノ」が聴きもの。ハメを外さず、粛々とひき進めるバップ・ピアノは一流品。スタンダード曲とオリジナル曲を織り交ぜて、スインギーでバップ一直線のピアノ・トリオは聴いていて気持ちが良い。

バックを支えるロンのベースは、懐かしいブヨンブヨンなベースだけれど、捻らずシンプルにベースラインを押さえていて、演奏の底をガッチリ支えている。

デジョネットのドラミングは、多弁で躍動感溢れるウォルトンのピアノと被ることを避けて、いつもよりシンプルでストレートなバップ・ドラムを聴かせてくれる。隙間無く音を埋めて疾走するウォルトンのピアノには、「間」を活かした展開は無いので、隙間を埋める様な、ポリリズムミックなドラミングは意識的に避けている様だ。

バックのベースとドラムのシンプルなサポートを得て、ウォルトンは必要以上に多弁になること無く、自然体でシンプルな「情熱&躍動バップ・ピアノ」を弾きまくる。職人的リズム隊が控えているので、コードもモードも自由に弾きまくることができるウォルトンはストレスレス。自由に思うがままに、クールに「情熱&躍動バップ・ピアノ」を弾きまくる。
 
 

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2023年12月26日 (火曜日)

シダー・ウォルトンを聴き直す。

Cedar Walton(シダー・ウォルトン)が気になってきた。エディ・ハリスのリーダー作を聴いていて、バリバリとピアノを弾きまくるシダー・ウォルトンに耳を奪われた。そこはかとなくファンキーでバップな「情熱&躍動ピアノ」。テクニックは確か、端正で正確なタッチ。両手を一杯に使って、ダイナミックにスケールの大きいバップ・ピアノを弾きまくる。

実は僕はウォルトンのピアノが好きだ。アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに在籍時のアルバムのウォルトンのピアノは見事なバップ・ピアノ。しかも、ハートバップ志向もいけるが、モーダルなジャズもいける。端正で正確なタッチの「情熱&躍動ピアノ」。しかし、ウォルトン個人のリーダー作になると、意外と決定打に欠ける。

最初の活躍の時期が、1960年代後半から1970年代にかけてで、いわゆる「純ジャズの暗黒時代」に、メインストリーム志向の正統派ジャズ・ピアノで勝負していたからだろう。意外とウォルトンって正当に評価されていない様に感じるのだ。次の活躍の時期が、1980年代半ばから1990年代にかけて。ここでは、トリオの快作が多くリリースされている。ウォルトンを聴き直すには、まずはここからだろう。
 

Cedar-waltonthe-trio-vol-1

 
Cedar Walton『The Trio, Vol. 1』(写真左)。1985年3月28日、イタリアのボローニャ「Sala Europa」でのライヴ録音。イタリアン・レッド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Cedar Walton (p), David Williams (b), Billy Higgins (ds)。録音状態は中の上。あまりクリアでは無いが、ウォルトンの「情熱&躍動ピアノ」を的確に捉えている。

冒頭は、ウォルトンが力強くコードを連打しつつ、ダイナミックでスケールの広い「情熱&躍動ピアノ」を弾きまくる「My Ship」。迫力満点。テクニックが確かで破綻が無いので、多弁で躍動感溢れるバップ・ピアノがスッと耳に入ってくる。決して、耳障りにはならない。これがウォルトンのピアノの一番の長所。

「Voices Deep Within Me」でのシングルトーンでの弾き回しも良い。疾走感溢れるシングルトーン。思わず、喝采である。トリオのライヴらしく、ベースの印象的なソロもあり、ドラムの情熱的なソロもあり、ピアノ・トリオのライヴ音源としても純粋に楽しめる。ウォルトンのピアノを体験するには、このライヴ盤は良い内容。ウォルトンの「情熱&躍動ピアノ」を浴びるように体感できる。
 
 

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2016年7月20日 (水曜日)

『Eastern Rebellion』を聴け

昨日、George Coleman(ジョージ・コールマン)の最新作をご紹介しながら、そう言えば、以前からジョージ・コールマンのテナーを定期的に聴いていたような、と思い立ったが、そのアルバムの名前が思い出せない。歳はとりたくないなあ(笑)。うんうん唸りながら、Apple Musicを検索していて「思い出した」。

これだこれ。Cedar Walton『Eastern Rebellion』(写真左)。1975年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Cedar Walton (p), George Coleman (ts), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。

Cedar Walton(シダー・ウォルトン)名義ではあるが、ジャケットではカルテットの4人の名前が並列で並んでいる。四人が並列になって、モーダルなジャズをこれでもか、という位に演奏しまくっている。明らかに、1960年代のモード・ジャズの焼き直しなんだが、焼き直しというレベルでは無い。「進化形」とでも形容しようか。

シダー・ウォルトンの書く曲が良いのだろう。非常に聴き易くて、耳当たりが良い。1960年代のモード・ジャズは、ちょっと難解な展開が玉に瑕だったのだが、この1970年代半ばのモード・ジャズはその様相が明らかに異なる。聴き易くて判り易いのだ。ということで、当時の評論家筋からはウケがよろしく無かった。まあ、その評論を鵜呑みにはしなかったのではあるが・・・。
 

Eastern_rebellion1

 
さて、このアルバムについて、まずはシダー・ウォルトンのピアノが良い。ウォルトンのピアノの個性の全てが判る位、ウォルトンは喜々として弾きまくる。そこにサム・ジョーンズのベースが絡む。これがまた端正で野太いジョーンズのベースは堅実でかつ堅牢。そして、味のあるドラミングのビリー・ヒギンスがこのバックの演奏をしっかりと支える。

そして、ジョージ・コールマンのテナーである。コールマンのテナーはユニークと言えばユニーク。モードなジャズを吹いているのだが、その展開にはコード感がそこはかとなく漂う。モードでありながら、とっても聴き易いアドリブ・フレーズ。加えて、楽器の鳴りが良い。耳当たりが良く、違和感無く聴き易い。そんなコールマンが徹底的に吹きまくる。

このコールマンのテナーが良いのだ。楽器も良く鳴っているし、大向こうを張った派手なテクニックや吹き回し、フリーキーな雄叫びは全く無い。逆に、淡々と判り易く聴き易いフレーズを淀みなく紡ぎ上げていく。しかも、そのフレーズは明るい。

カルテットの4人の演奏がどれも優れたもので、1970年代のメインストリーム・ジャズを代表するアルバムの一枚だと思います。この「Eastern Rebellion」はシリーズ物で、Vol.1〜4まであるのだが、コールマンが参加したのは、この「Ⅰ」だけ。コールマンのテナーの良さを再認識できる好盤です。
 
 
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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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