記念すべき E.S.T.のデビュー盤
現代北欧ピアノ・トリオの草分けであるE.S.T.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)は、スウェーデン出身。メンバーは、リーダーでピアノ担当のエスビョルン・スヴェンソン、ベースのダン・ベルグルンド、ドラムのマグヌス・オストロムで、1993年結成。
トリオ演奏の基本は、北欧ジャズの伝統的なピアノ・トリオの個性。耽美的でリリカル、クールな熱気、透明度の高い流麗なフレーズ、現代音楽を踏襲した硬質で前衛的な展開を、E.S.T.は、しっかりと踏襲している。
Esbjörn Svensson Trio『When Everyone Has Gone』(写真左)。1993年の録音。ちなみにパーソネルは、Esbjörn Svensson (ac-p, el-p, syn, Rhodes), Dan Berglund (b), Magnus Öström (ds)。記念すべき E.S.T.のデビュー盤。
ピアノ・トリオの個性は、基本的にピアノの個性に大凡は決定される。E.S.T.は、当然、リーダーのスヴェンソンのピアノの個性がポイント。スヴェンソンのピアノは、北欧ジャズの伝統的なピアノの個性をしっかりと踏襲している。弾きっぷり、弾き回し、音の響き、どれもが北欧ジャズの伝統的雰囲気をしっかりと保持している。
ただし、耽美的な度合いは軽い。カラッとしている。アドリブ展開では、米国ジャズのモード・ジャズ、1960年代から1970年代の新主流派のモード・ジャズの様な弾き回しが興味深い。
つまり、どっぷり北欧ジャズのピアノ・トリオ化はしていないところが、このデビュー盤の面白いところ。ただ、モーダルな展開なところも、米国ジャズよりタッチの透明度が高く、響きはリリカル。聴いていて、米国ジャズと間違うことは無い。
耽美的でリリカルな弾き回しは、ドライな「キース・ジャレット」。高速モードの弾き回しは軽めの「マッコイ・タイナー」。現代音楽を踏襲した硬質で前衛的な弾き回しは、ちょっと優しめの「チック・コリア」。そんな3人の先達ピアニストに影響を受けているところは感じるが、それぞれのエッセンスを吸収して、自らの個性に反映しているので、決して物真似には聴こえない。
北欧ジャズのコンテンポラリーな純ジャズ・トリオ。北欧ジャズの個性である「耽美的でリリカルな面」を強調すること無く、ドライに北欧ジャズの個性を下敷きにして、モーダルなジャズを展開する。演奏自体の精度はかなり高い。ベースのダン・ベルグルンド、ドラムのマグヌス・オストロムのリズム隊の息もピッタリ、静的に熱いリズム&ビートでスヴェンソンのピアノを鼓舞し、引き立てる。
デビュー盤にして、完成していた感のある E.S.T.。このデビュー盤における「スヴェンソンの北欧ピアノ・トリオ」をアルバムを重ねる毎に深化させていくことになる。しかし、その深化は、スヴェンソンがスキューバダイビング中の不慮の事故で亡くなる2008年6月14日で停止する。
このデビュー盤には、E.S.T.の原点の響きが溢れている。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて
★ まだまだロックキッズ 【New】 2022.12.06 更新
・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。
★ 松和の「青春のかけら達」
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から12年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
最近のコメント