テイラー良好、リズム隊が平凡
プレスティッジ・レーベル(Prestige Label)は、 1949 年、ニューヨークでボブ・ウェインストック(Bob Weinstock)によって設立されたジャズ・レーベル。モダン・ジャズ全盛期を記録したハードバップの宝庫であるが、その内容は、録音姿勢の問題もあって、玉石混交とている。
売れそうなジャズマン、暇そうなジャズマンをパッと集めて、殆どまともなリハーサル無しにパッと録音させる。そして、録音した音源は大した理由も無く、複数のアルバムに分断されることが多く、セッションとしての統一感に欠ける盤が多い。それでも、ハードバップ全盛期の録音なので、ジャズマンの力量は並外れていて、場当たり的なセッションでも、当たればその内容は素晴らしいものになっていた。故に、モダン・ジャズの名盤も多く存在する。
Billy Taylor『A Touch of Taylor』(写真左)。1955年4月10日、Van Gelder Studioでの録音。プレスティッジのPRLP 7001番。ちなみにパーソネルは、Billy Taylor (p), Earl May (b), Percy Brice (ds)。知性派バップ・ピアニスト、ビリー・テイラーがリーダー、アール・メイ、パーシー・ブライスとの、当時のレギュラー・トリオによる録音。ハードバップ名盤の宝庫であるプレスティッジの7000シリーズ(12"LP)第一弾。以前、一度、当ブログで扱っているが、今の耳で聴いた印象が当時と変わっているので再掲である。
ビリー・テイラーは、ディジー・ガレスピーやリー・コーニッツのグループで活躍、DJやテレビ番組の司会にも活躍、ジャズ・ピアノのみならず、多彩な活躍をした知性派ピアニスト。高等教育を受け、ダウンビート誌に寄稿したり、ロングアイランド大学で教鞭をとったり、エール大学のデューク・エリントン特別研究員でもあったり。アメリカ国内では、「Dr. Taylor(テイラー博士)」と呼ばれている。
我が国では全く人気が無く、米国ですら「過小評価されている最たるジャズメンの一人」などという評価に甘んじている。それでも、リーダー作は結構な数を出している、という不思議なジャズ・ピアニストである。
このトリオ盤を聴くと、左手のブロックコード、右手のシングルトーンが個性。テクニックは上等、小気味好く端正でリリカルな弾き回し。でも、歌心溢れるバラードな展開や上品で端正なインテリジェンス溢れる展開は一目置ける個性。
我が国のベテラン・ジャズ者の方々が、ジャズに求める「崩れた魅力」は皆無で、耽美的でリリカルな弾き回しや、黒いファンクネス溢れる弾き回しとは無縁。どうも、この辺が、我が国で受けの悪いところなんだろう。
それでも、今の耳で聴くと、テイラーのピアノは意外と内容充実で聴き応えがある。どうも、この盤の物足りない点は、無名に近いベースとドラムのリズム隊にあるのだろう。聴いていて破綻は無いのだが、意外と平凡で単調。このリズム隊が充実しておれば、この盤、意外と名盤扱いされてたのでは無いか、と感じる。
この辺が、プレスティッジ・レーベルの残念なところで、ブルーノート・レーベルに比べて、プロデュース力に問題がある。ビリー・テイラーのピアノは申し分無い。このテイラーのピアノの個性を活かしきれない、リズム隊のブッキングがこの盤に最大の弱点だろう。実に惜しいプレスティッジ・レーベルの7000シリーズ(12"LP)第一弾である。
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