ビッグバンド・ジャズは楽し・19
ビッグバンド・ジャズの要はアレンジ。それもアンサンブルのアレンジ。そして、ユニゾン&ハーモニーのアレンジ。ソロイストのアドリブの自由度をしっかり確保しつつ、アンサンブルは心地良くアレンジされ、バシッと決まる。ビッグバンド・ジャズの快感である。
このアルバムを初めて聴いた時、アレンジって重要やなあ、思った。Manhattan Jazz Orchestra『Bach 2000』(写真左)。
我らがDavid Matthews(デビッド・マシューズ)率いるジャズ・オーケストラ、マンハッタン・ジャズ・オーケストラ。名うての腕利きジャズメン達が集う、どうしようもなく「上手い」ビッグバンド。そんな、どうしようもなく「上手い」ビッグバンドが、クラシックの「音楽の父」バッハの楽曲を演奏する。
クラシックのジャズ化は「諸刃の剣」。アレンジ次第で素晴らしい出来にもなるし、チープで平凡な出来にもなる。ジャズは即興の音楽。譜面通りに演奏するクラシックの楽曲を、どうやってジャズの楽曲に仕立て直して演奏するか。アレンジされたアンサンブルとソロイストが展開するアドリブとの組合せ。クラシックのジャズ化の成否は「アレンジ」が握る。
しかし、そこは我らがデビッド・マシューズ。マシューズは、どんなジャンルの音楽もビッグバンドの素材にしてしまう豪腕の持ち主である。
マシューズのアレンジの特徴は、クラシックをジャズ風にアレンジするのでは無く、クラシックの楽曲の素材を取り込んで、全くのジャズ曲にアレンジしてしまうところ。演奏を聴いて、クラシックの楽曲をベースにしたのが判らない曲もある位だ。
このアルバム『Bach 2000』には、全くのジャズ曲に変身したバッハの名曲がズラリ。ちなみに収録された曲は以下の通り。
1.Toccata And Fuge
2.Air On The G String
3.Invention No.4
4.Kyrie
5.Menuet (A Lover's Concerto)
6.Siciliano
7.Fuge No.2
冒頭の「トッカータとフーガ」を聴けば、マシューズのアレンジの素晴らしさとジャズ・オーケストラの上手さが良く判る。確かに「トッカータとフーガ」と言われればそうか、と思うが、アンサンブルの展開部のところなど、全くジャズ化されている。それでも、キーの進行や旋律の展開は「トッカータとフーガ」を上手く踏襲しているのだから、我らがマシューズ、凄い。
2曲目は、かの有名な「G線上のアリア」である。が、この曲だけはジャズ化に失敗しているなあ。この曲はジャズ化に全く向かないバッハだろう。この難曲のジャズ化アレンジに挑んだ、マシューズのチャレンジ精神には敬意を表するが、やっぱり、この曲はあかんやろう。この曲だけは、このアルバムの中で「ご愛嬌」(笑)。
2曲目の「G線上のアリア」を除いて(笑)、他の演奏については、それはそれは格好良い演奏に痺れます。ビッグバンド・ジャズの要であるアンサンブルのアレンジ、そして、ユニゾン&ハーモニーのアレンジ、そんな格好良いアレンジを心ゆくまで楽しめます。ジャズ・オーケストラのブラスの響きも素晴らしい。
ビッグバンド・ジャズの楽しさをリラックスして感じることが出来る佳作です。クラシックが素材だからと言って避けることなかれ、です。
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