マイルスを愛でる『Amandla』
マイルス・デイヴィスは、1991年9月28日に鬼籍に入っている。65歳。ジャズマンとしては早すぎる逝去であった。
マイルスは、正式にリリースされた音源として、1991年2月までスタジオ録音を、1991年7月までライヴ録音を残している。1991年9月初旬、定期検査の為、サンタモニカの自宅近くのセントジョンズ病院に入院。入院時に脳内出血を引き起こし昏睡状態になり、その後、1991年9月28日午前10時40分、肺炎と呼吸不全などの合併症の為、逝去している。
逝去直前まで、意外と元気に演奏していたんやなあ、と改めて感心するやら無念やら。マイルス本人もこんなに早く鬼籍に入るとは思ってもみなかったのでしょうね。
Miles Davis『Amandla』(写真左)。1988年12月から1989年初旬での録音。本作は、マーカス・ミラー、ジョージ・デューク、ジョン・ビグハムというマルチ・ミュージシャン3名が、トラックを打ち込み作成、マイルスが、そのトラックをバックにトランペットを吹きまくるという内容のアルバム。参加ミュージシャンは多数におよぶので、詳細は割愛する。
このアルバム、内容的には前々作『Tutu』、前作『Music from Siesta』の流れを汲む、兄弟盤の様な内容。この前の2作はマーカス・ミラーべったり、マーカスがトラックを作成し、マイルスがトランペットを吹く、そんな二人三脚な作品だったが、今回は3人がバック・トラックを作成している。さすが、マーカスのみ3連発はマンネリ化、平凡化が懸念されるので、この今回の「3人がかり」は正解だったと思う。
この盤でもマイルスは「トランペッター」に専念している。三者三様に用意されたバック・トラックの印象を基に、イマージネーション豊かでクールでブリリアントなトランペットを吹き上げている。即興性溢れるアドリブ・ソロの嵐。緩急自在、硬軟自在、変幻自在、流れる様に叫ぶ様に、唄う様に囁く様に、マイルスはクールでヒップなトランペットを吹き続ける。
これって、1950年代後半、マイルスが大手コロンビア・レコードに移籍して直ぐ、ギル・エヴァンスとのコラボに似ている、と思った。ギル・エヴァンスがアレンジした、ギルならではのジャズ・オケをバックに、マイルスというトランペッターが、緩急自在、硬軟自在、変幻自在、流れる様に叫ぶ様に、唄う様に囁く様に、マイルスはクールでヒップなトランペットを吹きまくった、そんなギルとの共同創作を想起した。
この時期、マイルスは自らがイノベーターとして、クリエーターとして、先頭を切って新しい音を創作するのではなく、一人のトランペッターとして、トランペット吹きに専念したかったのではないか。トランペッター・マイルスを表現したかったのではないか、と思うのだ。別に死期を悟っての仕業ではないだろう。
この『Amandla』こそ、メインテーマが「マイルスを聴け」。三者三様の印象的なトラックをバックに、マイルスが「マイルスしか吹けない」トランペットを吹く。トランペッター・マイルスの面目躍如。この盤にはトランペッター・マイルスだけがいる。この盤はトランペッター・マイルスだけを愛でる。
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