2024年4月27日 (土曜日)

コブハムが目指す「融合」ジャズ

『A Funky Thide of Sings』(1975)のリリース後、ブレッカー兄弟が抜けて、エレクトリックなジャズ・ファンクの橋頭堡が不在となったビリー・コブハムのバンド。クロスオーバーなエレ・ジャズ・ファンクを捨てて、次作では、いきなりハードで硬派なクロスオーバー・ジャズに転身した。

Billy Cobham『Life & Times』(写真左)。1976年の作品。ちなみにパーソネルは、Billy Cobham (ds, perc, syn), Dawilli Gonga (key), John Scofield (g), Doug Rauch (b)。コブハムのアトランティック・レコードでの最後のスタジオ盤になる。

パーソネルの中の「Dawilli Gonga」は、George Duke (key) の契約上の理由からの変装名。ギターのジョンスコはそのままに、新たに加わったキーボードのジョージ・デューク、エレベの元サンタナのダグ・ロウチと、リーダーのコブハムのドラムを交えたカルテット編成のクロスオーバー・ジャズである。

前作『A Funky Thide of Sings』までのホーン・セクションを配した、分厚いジャズ・ファンクな演奏をガラッと変えて、リズム&ビートを主体とする、コンパクトなメンバーでの、ジャズとロックの融合がメインのハードなクロスオーバーなエレ・ジャズを展開している。
 

Billy-cobhamlife-times

 
1970年代前半、マイルスが推し進めていたジャズ・ファンクなエレ・ジャズからファンクネスを差し引いて、ポップでキャッチーな音作りを加味したクロスオーバーなエレ・ジャズ。

シンセが唸りを上げ、エレギが捻れ響くインスト中心の演奏。まるで「プログレ」な雰囲気だが、ジャジーなビートと途方も無い演奏テクニックが、この演奏は「ジャズ」に軸足をしっかり置いていることを確信させてくれる。

コブハムのドラムは、徹底して「千手観音ドラミング」で叩きまくり。ジョンスコのギターは、意外とストレートな伸びのロック・ギターの様な迫力と疾走感溢れる骨太なフレーズを聴かせてくれる。

冒頭のタイトル曲「Life & Times」など、やたらハードでアクセル全開なナンバーが印象に残るが、爽やかでクールなファンクネスを忍ばせた4曲目の「East Bay」のヒップで小粋な演奏など、この盤のリリース後、すぐに結成された「The Billy Cobham - George Duke Band」の音世界がこの盤で確立されている。

ちなみに、ジャケの写真はコブハムの幼少期。それを持っている手は、アルバム制作当時のコブハムの手。このジャケが何を意味するのか、コブハムの真意は測りかねるが、時代はソフト&メロウをメインとしたフュージョン・ジャズの入り口の時代。この盤に詰め込まれた演奏は、エレクトリックなクロスオーバー・ジャズの成熟形と捉えることも出来る。
 
 

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2020年12月27日 (日曜日)

クロスオーバー・ジャズの成熟形 『"Live" On Tour In Europe』

1960年代後半、マイルスがエレ・ジャズをやり始めて、1960年代の終わりには、ジャズとロックの融合形であるクロスオーバー・ジャズが出現。エレクトリック楽器の飛躍的な進化と共に、ジャズのエレキ化が進み、クロスオーバー・ジャズもその内容は日進月歩で充実していった。そして、1970年代半ばでクロスオーバー・ジャズは、一旦、ほぼ成熟したイメージがある。

The Billy Cobham - George Duke Band『"Live" On Tour In Europe』(写真)。1976年7月27-29日ロンドンと7月6日モントルーでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Billy Cobham (ds, perc), George Duke (key), Alphonso Johnson (el-b), John Scofield (el-g)。たった4人で織りなす、重厚で8ビートなクロスオーバー・ジャズ。

コブハムの繰り出す8ビート、唸りを上げるデュークのシンセ、重低音を響かせグルーヴ感を生み出すアルフォンソのエレベ、ロックなフレーズを繰り出すジョンスコの捻れエレギ。時は1976年、フュージョン・ブームの入口。演奏内容はジャズとロックの融合、クロスオーバー・ジャズ。マイルスから始まったエレ・ジャズのバリエーション。
 
 
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たった4人でこの重厚でスピード感溢れるエレ・ジャズ。とにかく、4人とも上手い。4人とも上手すぎる。めくるめく超絶技巧の世界。70年代半ばのクロスオーバー・ジャズの成熟した音。純ジャズ畑からクロスオーバーなエレ・ジャズに転身したジャズマン達独特の「純ジャズ的クロスオーバー感覚」が溢れている。ロックなビートを採用してはいるが、演奏の雰囲気は明らかにジャズ。

1970年代前半、マイルスが推し進めていたエレ・ジャズからファンクネスを大きく差し引いて、ポップな音作りを加味したクロスオーバーなエレ・ジャズ。シンセが唸りを上げ、エレギが捻れ響くインスト中心の演奏。まるで「プログレッシブ・ロック」な雰囲気だが、ジャジーなビートと途方も無い演奏テクニックが、これはクロスオーバー・ジャズだ、ということを確信させる。

ジョージ・デュークの弾き語り(?)にはドン引き、長いコブハムのドラムソロにはちょっと戸惑うが、演奏全体としては、クロスオーバー・ジャズの成熟形と言える演奏。それぞれのミュージシャンのコテコテの個性と、他を寄せ付けない筋金入りのテクニックが実に魅力的。とにかく凄い迫力のエレ・ジャズです。生で聴いてみたかったなあ。
 
 
 

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2019年9月15日 (日曜日)

George Dukeのカラフルな個性

マイルス・デイヴィスのバンドには、かなりのジャズメンが参加した。マイルスは優秀な若手のスカウトが上手かった。参加して即クビになった者、そのままバンドに残ってマイルスとレコーディングをして、活動を共にした者、それぞれだったが、マイルスはまた、優秀な若手のメンバーを育てるのも上手かった。マイルスのバンドで、マイルスと演奏を共にしたメンバーは「卒業」後、皆、何らかの形で活躍した。

そんな「マイルス・スクールの門下生」の中には、このジャズマンも門下生だったのか、と意外に思う名前に出くわすことがある。例えば、僕が「へ〜」とちょっとビックリしたのが「ジョージ・デューク(George Duke)」。ポップなジャズ・ファンクの人気キーボード奏者なのだが、その「ポップで、過剰にソウルフル」なフュージョン・ファンクが得意ジャンルが故、マイルス・スクールの門下生というイメージに合わないと感じていたのだ。

George Duke『Faces in Reflection』(写真左)。1974年の作品。MPS-Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、George Duke (key), John Heard (b), Leon Ndugu Chancler (ds)。シンプルなトリオ編成。しかし、出てくる音は結構重厚なクロスオーバー・ジャズな音。のっけからデュークのエレピとシンセが飛び交うハード・クロスオーバーである。
 
 
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アルバム全体を聴き通すと、ジャズ・ファンクから、サイケデリックなジャズ、メロウなクロスオーバーまで、カラフルな音世界。ジャズ・ファンクからサイケデリックなジャズについては、明らかに「マイルス・スクールの門下生」やなあ、という印象を受けるが、メロウな雰囲気のクロスオーバー辺りがジョージ・デュークの「個性」になる。この個性が、1970年代後半の「ポップで、過剰にソウルフル」なフュージョン・ファンクに繋がっていく。

しかし「マイルス・スクールの門下生」とは言え、実際には、1971年「俺のバンドに入れ。また後で電話する」と伝えたまま音沙汰なしの状態が続き、実際には14年後の1985年に再びマイルスはジョージ・デュークに勧誘の電話を再び入れた後、実際にジョージ・デュークはマイルス・バンドに関わっていく。恐らく、マイルスは、この盤で聴かれるジャズ・ファンクから、サイケデリックなジャズを奏でる、ジョージ・デュークの隠れた「個性」の部分に着目したのではないか、僕はと睨んでいる。

ナット・アダレイに提供した「Capricorn」のセルフカバーでのアレンジがニクい。ドラムは当然として、ベースがアコベなところも、クロスオーバー・ジャズとしてはユニーク。当時のクロスオーバー・ジャズの「常識」に囚われない、自らの個性を表現しているところが、ジョージ・デュークの隅に置けないところ。単に「フュージョン・ファンク」なジャズマンで無いところが、この盤を聴くと良く判る。
 
 
 
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2018年4月14日 (土曜日)

クロスオーバー者には堪らない

クロスオーバー・ジャズの面白いところは、ジャズとロックの融合をベースとしているところ。ビートは8ビート、アドリブ展開を旨とするインプロビゼーションのテイストはジャズ志向、エレギやシンセなど、当時の最先端をゆく電気楽器の使用方法や音色はロック志向。このジャズとロックの志向を織り交ぜたところに、独特の音のニュアンスが広がる。

これが、我々「クロスオーバー者」には堪らない。この独特のニュアンスが堪らない。フュージョン・ジャズとは一線を画する「クロスオーバー・ジャズ」独特の響き。この独特の響きのクロスオーバー・ジャズは、1960年代の終わりから、1970年代中盤の間に集中している。我々「クロスオーバー者」は、これらを聴くのが至上の喜びである。

George Duke『The Aura Will Prevail』(写真左)。1975年の作品。このアルバムも聴けば明確に「クロスオーバー・ジャズ」。冒頭のシンセサイザーの音色とフレーズが、実にクロスオーバーっぽい。シンセの使い方はロックなんだけど、フレーズはジャズ。そして、出てくる演奏が8ビート。電気楽器中心。うほ〜、コッテコテのクロスオーバー・テイスト。
 

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そう、この盤の1曲目は「Dawn」。懐かしい響き、音が太くてウネウネしたアナログ・シンセの音。この神秘的なアナログ・シンセの響きとうねりまくるエレベの音、スペイシーな雰囲気が心地良い。演奏のメインでは、エレピ、シンセ、エレベの絡みが絶妙で官能的。これぞクロスオーバー・ジャズ、って感じの演奏にご満悦。

思いっきりテンポを落として、タメの聴いたビートがとってもクールな、3曲目の「Foosh」も聴きもの。思いっきりテンポを落としてバラードか、と思いきや、ファンクネス溢れるR&Bな演奏に思わずハッとする。それでも、後のフュージョン・ジャズの様にソフト&メロウに傾かず、しっかりと「エレ・ジャズ」に軸足を残しているところが、クロスオーバー・ジャズたる所以。

そして、最後を飾るのは亜アルフォンス・ジョンソンのベースがうねりまくる、デュークお得意のブラジル・チューン「The Aura」。無茶苦茶、格好良い。ということで、この『The Aura Will Prevail』、魅力的なイラスト・ジャケットも併せて、クロスオーバー・ジャズの好盤である。

 
 

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2018年4月13日 (金曜日)

Jean-Luc Pontyって誰?

バイオリンと言えば「クラシック」を連想する。しかし、ジャズは吸収力が大変高い音楽ジャンル。クラシックの代表楽器である「バイオリン」もジャズに活用する。クラシックの代表楽器だから、結構、ムーディーでメロディアスなジャズを奏でるのであろう、と思うのだが、これが違う。バイオリンはメロディアスな楽器ではあるが、結構、エモーショナルな音も出るし、結構、アグレッシブで激しい音も出る。

基本的に弦楽器なので、エレギの出来る表現の殆どがバイオリンで出来る。つまりは、バイオリンでジャズをやる場合、意外と先進的なフリージャズやモードジャズが主流となるケースが多いのだ。そうなれば、数が少ないとはいえ、バイオリンのジャズでの活用は、意外と先進的なシーンが多い。時代は、1960年代末、クロスオーバー・ジャズがトレンドになり始めた頃。数少ないジャズ・バイオリンの名手が一人、現れ出でる。フランス出身のJean-Luc Ponty=ジャン・リュック・ポンディである。

『King Kong : Jean-Luc Ponty Plays the Music of Frank Zappa』(写真左)。1969年10月の録音。パーソネルについては、曲によって、様々なゲスト・ミュージシャンを呼んでの録音であったが、主だったところでは、George Duke (p, key), iano, Ernie Watts (sax), Wilton Felder (b) 等々。録音時期のジャズの最先端のトレンドは「クロスオーバー・ジャズ」。
 

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この盤、明らかに「クロスオーバー・ジャズ」である。ジャズとロックとクラシックの融合と表現したら良いのか、ビートは「エイト・ビート」がメイン。電気楽器の活用やバイオリンの音へのイコライジングなど、明らかにエレクトリックなジャズであり、アプローチと音の音色は、クロスオーバー・ジャズ。聴きようによっては「プログレッシブ・ロック」の様でもある。

ポンティのバイオリンは、限りなくアグレッシブでプログレッシブ。テクニックも優秀、攻撃的なフレーズもあれば、メロディアスなフレーズもある。バイオリンという楽器の出せる音色、テクニックのほぼ全てを総動員して、ポンティはバイオリンをとっても気持ちよさそうに弾きまくっている。

クロスオーバー・ジャズの初期の傑作の一枚です。リズム&ビートも明確に「クロスオーバー」していて、これを聴くだけで懐かしい。電気楽器の音がちょっと時代がかっていますが、これは仕方が無い。しかし、この発展途上のエレジャズの電気楽器の音って、何か人間っぽくてとっても良い感じです。アナログ時代の手作りな「プログレッシブなクロスオーバー」。好盤です。

 
 

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2011年10月31日 (月曜日)

演奏の切れ味良く、俗っぽく・・・

一昨日、ハービー・ハンコックの『Lite Me Up』をご紹介した。その時、アルバムの演奏全体を通じて、「演奏の切れ味」と「アレンジの妙」という点では、クインシー・ジョーンズの諸作にはかないません、と書いた。

ここに、George Dukeの『Dream On』(写真左)というアルバムがある。1982年リリースのジョージ・デュークのブラコン・フュージョンの傑作である。このアルバムは、ブラコン・フュージョンとして、なかなかの内容を誇る、素晴らしい出来のアルバムである。

ハンコックの『Lite Me Up』と比べると、演奏全体の切れ味は、こちらのジョージ・デュークの方が圧倒的に上。リズム&ビートのメリハリもジョージ・デュークの方が上。エレピの腕も、総合的に見て、ジョージ・デュークの方が上。

ということは、このジョージ・デュークの『Dream On』は、ブラコン・フュージョンとして、クインシー・ジョーンズの諸作と肩を並べるほどの内容か、と問えば、答は「否」。「アレンジの妙」という観点で、どうしてもクインシーの極みには達していない。

ジャジーな要素が薄れているというか、ファンクなビートが前面に押し出されて、ディスコ・ミュージックなリズム&ビートに聴き間違いそうなほど。基本のリズム&ビートはジャジーなんだけどなあ。

ブラコン・フュージョンという音作りで難しいのは、演奏の切れ味が良ければ良いほど、リズム&ビートのメリハリが効けば効くほど、ディスコ・ミュージックに近づいていく。つまり、演奏の内容が俗っぽくなっていく。しかし、大衆には大受けに受けるんだけど・・・。
 

Dream_on

 
このGeorge Dukeの『Dream On』は、ブラコン・フュージョンという音作りではあるが、音楽ジャンルの括りとしては「ディスコ・ミュージック」に分類されることが多い。僕からすれば、とんでもない聴き違いだ、と思うんだが、この演奏の切れ味とリズム&ビートのメリハリの効き具合が良ければ良いほど、ディスコ・ミュージックに近づいていく。

ブラコン・フュージョンの「アレンジの妙」のさじ加減の難しさを感じる。つまりは、クインシー・ジョーンズの諸作は、「演奏の切れ味」と「アレンジの妙」のバランスが如何に絶妙か、ということを教えてくれる。クインシー・ジョーンズのブラコン・フュージョンは決して、ディスコ・ミュージックの括りにはならない(適当に「括る」人もいるけど・・・)。

とは言え、このジョージ・デュークの『Dream On』は、ブラコン・フュージョンの傑作。ハンコックの『Lite Me Up』の上を行く出来だと言って良いだろう。優れたクインシー・ジョーンズの正統派フォロワーである。

ハンコックは「このままでは駄目だ」と思ったのかどうか、ハンコックは『Lite Me Up』の次作で、とんでもない飛び道具を携えて「一発逆転」を試みる。その「とんでもない飛び道具」とは何か。それは後日、また、このブログで語るとしよう・・・。
 
 
 
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2008年11月17日 (月曜日)

ブラジル・テイスト満載 『A Brazilian Love Affair』

このところ、ジャズのジャンルでは、フュージョンを聴くことが多い。晩秋から初冬にかけて、なんとなく「うら寂しくなる」季節。どうしても、景気付けに、電気楽器中心のノリノリの音楽が聴きたくなる。これって、ジャズを聴き始めた大学時代から、ず〜っと同じ傾向なのだから仕方が無い。

今日は、George Duke(ジョージ・デューク)の『A Brazilian Love Affair』(写真左)でノリノリである。このアルバム、ブラジリアン・フュージョンの傑作の一枚。好きなんだな〜これが。確か1979年のリリース。1979年と言えば、フュージョンは最盛期から成熟期に至る頃で、フュージョン演奏のバリエーションも徐々に煮詰まってきた頃である。

フュージョンと言えば「融合」という意味。最初は、ジャズとポップス、ジャズとロックの融合をフュージョンと呼んだが、1970年代の終わり、最盛期から成熟期に至る頃は、ボサノバやサンバなどの他国の民族音楽、今で言うワールド系ミュージックの要素を大胆に採り入れるアプローチが出てきて、これぞ本当のフュージョン、って感じで、もうフュージョンというジャンルの音は、純ジャズの雰囲気は跡形も無くなっていた。
 

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このワールド系ミュージックの要素を大胆に採り入れるアプローチって、アレンジと演奏が良くないと、何が何だか判らない音になってしまうのだが、この『A Brazilian Love Affair』は、そこのところを上手く処理している。ボーカルが下手に入ると、ちょっと「イモ」っぽくなってしまうのだが、このアルバムでは格好良く収まっており、そういう意味でも、このアルバムはアレンジが秀逸。

ブラジリアン・ミュージックのエッセンスをしっかり取り込みながらも、そのエッセンスに飲み込まれていないのは、ジョージ・デュークの圧倒的なファンクネスの賜だろう。ジョージ・デュークの持つ圧倒的なファンクネスとブラジリアン・ミュージックが巧く融合(フュージョン)して、素晴らしいブラジリアン・フュージョンが展開されている。

良いアルバムです。1970年代後半から1980年代前半にかけての「コテコテのフュージョン」のファンの方々にお勧めのアルバムです。ジョージ・デュークのシンセをはじめとするキーボード・テクニックも非常に優れたモノがあるので、フュージョン・キーボードのファンにもお勧めですね。ジョージ・デュークのアルバムの中でも代表作の一枚に数えられる佳作です。
 
 
 
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2007年9月 6日 (木曜日)

フュージョンの標準パターン 『Live on Tour In Europe』

台風来る。今、東の窓に、凄い風と雨が吹き付けて、ゴウゴウと音を立てている。まだ、伊豆半島辺りにいるはずなんだが、この激しい風雨はなんなんだ。おかげで、通勤の帰りは相当に疲れた。レインコートと登山用スパッツを用意していったので、さすがに上着とズボンの下の部分はまあまあ救われたが、ズボンの腿の部分はベトベト。台風は今日の夜中に、我が千葉県北西部地方に再接近する。我が家に被害の無いように祈るだけ。

純ジャズの話題が続いたので、今日はフュージョン。ちょっとスカッとするフュージョンが聴きたくて、iPodのジョグ・ダイヤルをグルグルしていたら、 Billy Cobham & George Duke Band 『Live on Tour In Europe』(写真左)に気がついた。今日の通勤音楽はこれである。

Billy Cobham(ds)、George Duke(key・写真右)の双頭バンドによる、76年のヨーロッパツアーの様子を収録したアルバムです。フュージョン・ファンの中では有名なアルバムですよね。他のミュージシャンを見渡すと、ジョン・スコフィールド(g)、にアルフォンソ・ジョンソン(bs)が参加。4人とも、超絶技巧な野郎ばかり。演奏のテクニックと精度には比類無きものがあります。
 

Billy-cobham-george-duke-band-live-on-to

 
2曲目の「Ivory Tattoo」のGeorge Dukeの弾き語り(?)には、ドン引きしますが、これ以外は、フュージョン演奏のスタンダードと言える演奏が続きます。とにかく、4人とも上手い。めくるめく超絶技巧の世界。70年代後半のフュージョンならではの、ジャズ畑からフュージョンに転身したミュージシャン達独特の「純ジャズ的フュージョン感覚」。

テクニック優先のペラペラ・フュージョンと比較すると、とにかく、ミュージシャンのコテコテの個性と、他を寄せ付けない筋金入りのテクニックが、実に魅力的です。

とにかく、難しいことを何も考えずに、フュージョンの優秀なライブを楽しむことができます。70年代フュージョン・ファンにはお勧めです。フュージョン初心者には、2曲目の「Ivory Tattoo」のGeorge Dukeの弾き語り(?)が鬼門ですかね。

しかし、このアルバムのジャケット、改めて眺めてみると、気色悪いですね〜。このジャケット・デザインが、このアルバムの有名度合いを阻害しているのかもしれんなあ。確かに、今見ても気色悪い。誰がこんなデザインを採用したんだろう。
 
 
 
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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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