フュージョンでのドラムの重要性
演奏の「音」を決める重要要素の一つを担っているのが「ドラム」。そんなャズ/フュージョンにおける「ドラム」にスポットを当てて、楽曲評論をする。レコード・コレクターズ 2025年2月号の特集は「この曲のドラムを聴け! ジャズ/フュージョン編」。これは実に興味深い特集。
ジャズ/フュージョンにおけるドラムの位置付けは、リズム&ビートのキープ役が主だが、実は、このドラムの立ち回りによって、ジャズ/フュージョンの演奏内容がガラッと変わるのだ。これは、フュージョン・ジャズでも明確に言えること。
George Duke『Reach for It』(写真左)。1977年の作品。ちなみにパーソネルは、George Duke (key, vo), Charles "Icarus" Johnson (g, vo), Michael Sembello (g), Byron Miller, Stanley Clarke (b), Leon "Ndugu" Chancler (ds, rototoms, timbales, vo), Manolo Badrena (congas, bongos, perc), Raul De Souza (tb), Dee Henrichs, Sybil Thomas, Deborah Thomas (vo)。
今回、注目のドラマーは、Leon "Ndugu" Chancler(レオン・ンドゥグ・チャンクラー)。1952年7月1日、米国ルイジアナ州生まれ、2018年2月3日、65歳で逝去。一流のスタジオ・ミュージシャンとしてジャズに留まらず、ポップ、ブルースなど、音楽ジャンルの垣根を超えて活躍。特に、マイケル・ジャクソンやウエザーリポートのアルバムへの参加が有名。録音当時、フュージョン界のファースト・コール・ドラマーの一人である。
巷では「ジョージ・デュークの鍵盤が冴え渡るブラジリアン・フュージョン」盤とされる。確かに、3曲目「Hot Fire」は、トロピカルなラテン・ディスコティック・フュージョン、5曲目「Searchin' My Mind」のボーカルはどこかブラジリアン、7曲目の「Diamonds」は、明らかなブラジリアン・フュージョンではある。
合間合間にブラジリアン・ミュージック志向のクロスオーバー・ジャズが入るので、判りにくくなるが、全体の雰囲気は、あっけらかんとした「インストメインのプログレッシヴ・ロックとジャズとの融合」を基本とした、クロスオーバー・ジャズだろう。ジョージ・デュークは、決して「ブラジリアン・ミュージック」を標榜してはいないだろう。ブラジリアン・ミュージック志向は、彼の創り出す楽曲の「色付け」に活用しているに過ぎない。
それは、この盤のバックの演奏のリズム&ビートを司るリズム隊のイメージが、ブラジリアン・ミュージックでは無い、しっかりとした米国東海岸フュージョンのリズム&ビートなのだ。その米国東海岸フュージョンのリズム&ビートを供給している「要」が、レオン・ンドゥグ・チャンクラーのドラムである。
この盤はジョージ・デュークのリーダー作なので、ジョージ・デュークの音志向に従うべきなのだが、チャンクラーは忠実に、ジョージ・デュークの音志向に則ったリズム&ビートを供給する。
つまりは、しっかりとした米国東海岸フュージョンのリズム&ビートの供給であり、このチャンクラーの供給するリズム&ビートによって、この盤の「ブラジリアン・ミュージック」志向は、志向に留められ、あくまで、ジージ・デュークが志向する「インストメインのプログレッシヴ・ロックとジャズとの融合」を基本とした、上質のクロスオーバー・ジャズがこの盤に蔓延している。
ラテンでトロピカルな曲が入っているから「ブラジリアン・フュージョン」盤と決めつけるのはちょっと早計がすぎる。アルバム全体では、ファンクネスはそんなに濃厚ではないし、ソウル・ジャズの要素も軽度に留まる。ジャズロックと評するには、ジャジーな要素が希薄。これはジョージ・デューク独特の、あっけらかんとした「インストメインのプログレッシヴ・ロックとジャズとの融合」を基本とした、クロスオーバー・ジャズ、とするのが一番座りが良い。
この "あっけらかんとした「インストメインのプログレッシヴ・ロックとジャズとの融合」を基本とした、クロスオーバー・ジャズ" というところが「胡散臭い」とされる所以だと思っている。まあ、最初、プログレ志向のジャズロックか、と思って聴いていたら、いきなりブラジリアン・ミュージック志向が現れ、ラテン・ディスコが現れ、プログレ志向のクロスオーバー・ジャズが展開される。
確かに「胡散臭い」訳で(笑)、それでも、リーダーのジョージ・デュークが大真面目に、"あっけらかんとした「インストメインのプログレッシヴ・ロックとジャズとの融合」を基本とした、クロスオーバー・ジャズ" をやっている。
この大真面目のところが僕には「ツボ」で、あくまで、ワールド・ミュージック志向に魂を売らない、あくまで、米国クロスオーバー&フュージョン・ジャズに軸足をしっかり残しているところに、ジョージ・デュークの矜持を感じる。こういう潔いところが、「ジョージ・デューク愛すべし」と強く思うポイントで、僕は、そんなジョージ・デュークがお気に入りだ。
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