ジャズ・ピアノの父の晩年ソロ
最近、歳を取ったせいか、ジャズに対する許容範囲が広くなったような気がする。若い頃は、ハードバップからモード・ジャズが全てで、スイングは古い、ビ・バップも古い、と渋々聴いていた様な気がする。エレクトリック・ジャズについては、もともと高校時代、ロックを聴きまくったくちなので、全く問題が無い。許容範囲が狭かったのは、アコースティック・ジャズのほう。
ただ、40歳を過ぎた頃から、スイングもビ・バップも好んで聴くようになり、フリー・ジャズも抵抗感無く、聴くようになった。「音楽」とはよく言ったもんで、ジャズについても、音を楽しむ様になった様に感じる。以前はスタイルとか奏法とか、オリジナリティとかを気にしていたが、最近はもっぱら「聴いて楽しめるかどうか」。そういう意味で、ジャズに対する許容範囲が広くなった、と感じる今日この頃。
最近「アール・ハインズ(Earl Hines)」を楽しんで聴いている。「ジャズ・ピアノの父」アール・ハインズの、スイング・ピアノが中心のオールドファッションなスタイルのピアノが、実に心地良く感じるのだ。ハインズは、スイング時代〜ビ・バップ時代にかけて、ピアノ演奏に新しい表現力をつけ加えた功績が大きく、「ジャズ・ピアノの父」と呼ばれる。そんなエピソードを実感出来るアルバムに出会った。
Earl Hines『In New Orleans』(写真左)。1977年の作品。ハインズは1903年生まれだから、この盤がリリースされた時は74歳。逝去したのが、1983年だから、ハインズにとって、晩年のピアノ・ソロ盤である。まさか1970年代のピアノ・ソロのブームにあやかった訳ではないだろうが、このハインズのソロ盤、聴けば判るんだが、ハインズのピアノの全てを理解するには格好の内容となっている。
基本はスウィング。シングルトーンの右手はよく唄い、ブロックコードの左手はニューオリンズ・マナーを彷彿とさせる。この両手を使ってのピアノの表現がハインズの真骨頂。ジャズ・ピアノの父と呼ばれる所以である。それまでのジャズにおけるピアノの役割は「リズム&ビート」の供給のみ。ブロックコードを叩き続けることで供給する「リズム&ビート」の担い手。それを開放したのが、このアール・ハインズだったのだ。
その「開放」の意味、このソロ・パフォーマンスを聴けば良く判る。マナーはスウィングだが、テクニックは優秀、当時74歳なのに、右手も左手も「よれる」ことは無い。速いパッセージもいとも容易く弾き上げる。全編に渡ってニューオリンズ・マナーが漂っていて、これがまた古き良きジャズを感じさせてくれる。現代ジャズにおけるピアノ・ソロと比べても、全く遜色の無いハインズのソロ・パフォーマンス。見事である。
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