2025年11月18日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・308

スチュ・ウィリアムソン(1933年5月14日 - 1991年10月1日)。米国のジャズ・トランペット奏者、バルブ・トロンボーン奏者。ジャズ・ピアニストのクロード・ウィリアムソンの弟。

スタン・ケントン楽団出身のトランぺッターであり、ウッディ・ハーマン、ビリー・メイ、チャーリー・バーネット、シェリー・マンらと共演。ウエストコースト・ジャズを代表するトランペッターの1人。1968年以降、薬物使用と健康問題により、彼は音楽界から姿を消した。

Stu Williamson『Stu Williamson Plays』(写真左)。1955年の録音。ベツレヘム・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Stu Williamson (tp), Charlie Mariano (as), Claude Williamson (p), Max Bennett (b), Stan Levey (ds)。

リーダーを務めたセッションは比較的少ないが、ウエストコースト・ジャズを代表するトランペッターの1人、スチュ・ウイリアムソンの初リーダー作。スチュのトランペットとマリアーノのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。

そんなスチュ・ウィリアムソンの落ち着いた明るいトーンの素直で端正なトランペット。癖のない、破綻の無いトStu Williamson Discography: Vinyl, CDs, & More | Discogsランペットだが、音の質が良い。聴いていて心地良いのだ。荒削りでダイナミックな個性的なトランペットでは無いが、安心して聴ける、良質なトランペットである。ウエストコースト・ジャズらしい、そのテクニックの確かさも好感度良好。
 

Stu-williamsonstu-williamson-plays

 
そんなトランペットが、ジャズ・スタンダード曲で映える。特に、ウエストコースト・ジャズの良好なアレンジの下、「聴かせるジャズ」「聴いて心地の良いジャズ」にピッタリなのだ。「There Will Be Another You」の真っ正直なフレーズや「The Things We Did Last Summer」の素直でストレートな吹きっぷりを聴いていると、このシンプルさが、たまらなく良く聴こえてくる。

チャーリー・マリアーノのアルト・サックス、クロード・ウイリアムソンのピアノ、マックス・ベネットのベース、スタン・レヴィーのドラムと、ウエストコースト・ジャズの一流どころをズラリ取り揃えたバックも良い。さすが、ベツレヘム・レコードの感性と寒心することしきり。

マリアーノのアルト・サックスが、心地良い力強さで歌心満点のソロを聞かせてくれる。兄のクロード・ウイリアムソンが、ウエストコースト・ジャズ志向のバップ・ピアノで、スチュをサポートし鼓舞する。マックス・ベネットのベースは「堅実、安定」のベースで演奏の底を支え、スタン・レヴィーが「聴かせる」「聴いて心地良い」リズム&ビートを供給する。

温もりある音色で朗々と素直に吹き上げていくスチュ・ウイリアムソンのトランペット。そして、ウエストコースト・ジャズの「聴かせる」アルチザンが集結したアルト・サックス+リズム・セクション。ヘビー・ローテーションに耐える、いかにもウエストコースト・ジャズらしい好盤です。
 
 

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2025年11月10日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・306

このレーベルの一番の特色は、米国の東海岸と西海岸の両方にオフィスを構え、偏ること無く、双方のジャズマンのリーダー作をリリースしたこと。ハードバップ期の黒人中心の東海岸ジャズと、白人中心の西海岸ジャズを偏ること無くピックアップし、記録していった珍しいジャズ・レーベル。音作りも、東西混成のユニークなハードバップが散見されるところがこのレーベルの個性でもある。

Jimmy Knepper『A Swinging Introduction to Jimmy Knepper』(写真左)。1957年9月の録音。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jimmy Knepper (tb), Gene Roland (tp, vo), Gene Quill (as), Bill Evans (p), Teddy Kotick (b), Dannie Richmond (ds)。ミンガスのコンボで頭角を表したジャズ・トロンボーンの名手の二枚目のリーダー作。

白人らしい、あっけらかんとしたトロンボーンの響き。トロンボーン独特の「茫洋とした響き」を上手く活かして、印象的なフレーズを紡ぎ上げていく。こういうところ、ニッパーはとても上手い。「茫洋とした響き」のトロンボーンを印象的に聴かせるテクニック。それがこの盤の一番の「聴きどころ」。荒削りながら快活なソロには、思わず耳を傾ける。
 

Jimmy-kneppera-swinging-introduction-to-

 
サイドメンは、ビル・エバンス、ジーン・クイル、ジーン・ローランド、テデイ・コテック、ダニー・リッチモンド、と東西の一流どころがズラリ。バックのリズム・セクションがしっかりしているのも、この盤の良いところ。リズム・セクションがしっかりしていると、フロント管も吹きやすい。ニッパー、ローランド、クイルのフロント3管は、いずれも、リラックスして伸び伸びと吹きまくる。ローランドはボーカルまで披露している。

冒頭の「Love Letters」を聴けば、このアルバムの特徴が良く判る。メンバーは米国西海岸ジャズからがメイン。イントロは、ほど良くアレンジされ、西海岸ジャズらしい「聴かせるジャズ」かな、と思うんだが、アドリブ部に入ると、それぞれのメンバーが、個人のスキルを活かして、バリバリのソロを聴かせてくれる。このアドリブ・ソロの響きは、東海岸ジャズの雰囲気に近い。ビル・エヴァンスのピアノ・ソロなど、東海岸でのプレイそのもの。

このアルバムは、西海岸ジャズの良さと、東海岸ジャズの良さが、ハイブリッドに交わって、東西混成のハードバップ・ジャズが展開されている。良きアレンジと、熱いソロ・パフォーマンス。これは、ベツレヘム・レーベルならではの成果では無いか。僕はそう睨んでいる。
  
 

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2025年11月 8日 (土曜日)

ベツレヘムの異色”ビッグバンド”

カタログを眺めていると、あれっ、と思うんだが、他のジャズ・レーベルに比べて、ボーカルものが多い。なんと、カタログ全体の4分の1がボ-カル盤。つまりは、ベツレヘム・レーベルは「ジャズ・ボーカルの宝庫」。しかし、ビッグバンド・サウンドにも手を出しているのにはビックリした。ベツレヘムのビッグサウンドとはどんなものなのか。興味津々である。

『Art Blakey Big Band』(写真左)。1957年12月、NYでの録音。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Ray Copeland, Bill Hardman, Idrees Sulieman, Donald Byrd (tp), Frank Rehak, Jimmy Cleveland, Melba Liston (tb), Bill Graham, Sahib Shihab (as), Al Cohn, John Coltrane (ts), Bill Slapin (bs), Walter Bishop, Jr. (p), Wendell Marshall (b)。

端正な、お手本の様なビッグバンド・サウンド。パーソネルを見渡すと、ビッグネームがズラリ。リーダーでドラムのアート・ブレイキー。そして、トランペットにドナルド・バード、トロンボーンのジミー・クリーブランド、アルト・サックスにサヒブ・シハブ、テナーには、アル・コーンとジョン・コルトレーン、ピアノに、ウォルター・ビショップ・ジュニア、ベースにウエンデル・マーシャル。
 

Art-blakey-big-band

 
ビッグバンド・サウンドとして、この盤の面白いところは、「Tippin」と「Pristine」では、アート・ブレイキー率いるクインテット( Art Blakey (ds), feature a quintet of Donald Byrd (tp),, John Coltrane (ts), Walter Bishop Jr.(p), Wendell Marshall (b)) のパフォーマンスがフィーチャーされるアレンジで演奏されていること。これ、聴いていて意外と面白い。

急造のビッグバンドなので、パーマネントなビッグバンドの様な、突出した個性や特色があるという訳では無いが、ビッグネームのソロ・パフォーマンスについては、それぞれの個性をしっかり出して吹きまくるので、それはそれで楽しめる。ブレイキーのドラミングだって、メッセンジャーズでの「ナイアガラ・ロール」よろしく、ブレイキー独特の個性で叩きまくる。これが、また良い。

これだけ、ビッグネームが集まってのビッグバンド演奏である。もちろん、パーマネントなビッグバンドでは無い。このレコーディングの為に集められた急造ビッグバンドである。まとまらなくて当たり前なのだが、これがまあ、端正で迫力満点、テクニック極上のビッグバンド・サウンドに仕上がっているのだから、大したものである。プロデューサーのリー・クラフトと、リーダーのアート・ブレイキーの大手柄だろう。
 
 

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2025年10月19日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・302

フランク・ロソリーノは、ケントン楽団、ライトハウス・オールスターズなどで活躍した実力派トロンボーン奏者。テクニック優秀、豪快で端正で破綻が無い。フレーズの歌心満点。そして、ロソリーノのソロは結構、自由度が高い。凄まじいテクニックで自由度の高いアドリブを繰り広げる。そんなロソリーノのソロが映え、個性が良く判る、ロソニーノのトロンボーンを知る上で、真っ先に聴きたいのがこのアルバムである。

Frank Rosolino『I Play Trombone』(写真左)。1956年5月、ハリウッドでの録音。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Frank Rosolino (tb), Sonny Clark (p), Wilfred Middlebrooks (b), Stan Levey (ds)。

西海岸を代表するジャズ・トロンボーンの名手、フランク・ロソリーノが、ソニー・クラーク(以降、ソニクラ)を含むトリオをリズム・セクションに従えた、ロソニーノのトロンボーン1管の、いわゆつ「ワン・ホーン・カルテット」。

それほど、この盤は、ロソニーノの個性と実力を知る上での重要作&代表作である。まず、トロンボーン1管のワンホーン・カルテットである。ワンホーンが「こけたら」終わりである。しかも、演奏難度の高いトロンボーンである。しかし、ロソニーノはそんなこと気にすること微塵も無いか如く、テクニック優秀、端正で破綻が無い、自由度が高い。凄まじいテクニックで自由度の高いパフォーマンスを繰り広げていく。圧巻である。
 

Frank-rosolinoi-play-trombone

 
収録曲については「I May Be Wrong (But I Think You're Wonderful)」「The Things We Did Last Summer」「Flamingo」のスタンダード曲3曲と、ソニー・ロリンズ作「Doxy」、ここまでのスタンダード4曲のロソニーノは、ミュートを活用したりの「抑制の美」。逆に、ロソリーノ作の「Frieda」「My Delux」、2作の自作曲のロソリーノは、パワフルに豪快に、凄まじいテクニックで自由度の高いアドリブ吹きまくる。

「My Delux」を除きテンポはミッドテンポ。これは「速いフレーズが不得手」というトロンボーンという楽器の性格上、仕方のないこと。それでも、トロンボーンとして驚くほど速くて正確な、そして、トロンボーンの音の特性を活かした、大らかでほのぼのした演奏は、ロソリーノならではのもの。

バックのリズム・セクションも聴きもの。西海岸における、ソニクラの「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」の、タッチは強くて深く、独特な打鍵のタイミング、そして、テクニックは端正という、ソニクラの伴奏上手な、サポート上手なグルーヴィーなピアノを堪能することが出来る。レヴィーのシャープなドラミング、ミルドブルックスの堅実ベースも良い出来。

ジャズ・トロンボーンと言えば、我が国は東海岸ジャズ偏重だったが故、J.J.ジョンソン、カーティス・フラー以上、な状態だったが、1980年代、西海岸ジャズの音源が、我が国でも紹介されるようになって、このフランク・ロソニーノのトロンボーンが’注目される様になった、と記憶する。特に、このベツレヘム・レーベルでのこのリーダー作がリイシューされて以降だろう。良いアルバムです。
 
 

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2025年10月15日 (水曜日)

クリス・コナー, 傑作の1枚です

ベツレヘム・レーベル。カタログを見渡すと、ジャズ・ボーカルのアルバムが散見される、というか、資料によると、全カタログの4分の1がジャズ・ボーカルのアルバムとのこと。つまりは「ジャズ・ボーカルの宝庫」。女性ボーカルのラインナップも充実していて、クリス・コナーを擁しているところなどは、「ボーカルに強いベツレヘム」の面目躍如。今日はそんなクリス・コナーの好盤の1枚をご紹介。

Chris Connor『Chris - The Rich Sound Of Chris Connor』(写真)。1953年12月 (#2- 4), 1954年8月 (#1, 5- 8), 1955年4月 (#9- 12) の3セッションの寄せ集め。当時の未発表曲の寄せ集めである。が、内容は充実している。

ちなみにパーソネルは、 Sy Oliver And His Orchestra (#2- 4), The Ellis Larkins Trio (#1, 5, 6), そして、#9- 12が、J.J. Johnson (tb), Herbie Mann (fl), Joe Puma (g), Ralph Sharon (p: cond), Milt Hinton (b), Osie Johnson (ds)。

ベツレヘムのクリス・コナーの1枚。彼女の一番の特徴はそのクールな歌唱。それまでの「オールド・スタイル」の女性ボーカルでは無く、ストレートでスマートな、聴き心地の良いボーカルにある。そして、歌が上手い、巧みである。抜群の表現力とテクニック。

そういう歌手には、往々にして「歌心に欠ける」という欠点がついて回るのだが、クリスは歌心抜群。声の質も「軽いハスキー・ヴォイス」で、ベトつかず、適度にドライ。
 

Chris-the-rich-sound-of-chris-connor

 
そんなモダンな女性ボーカルが、このアルバムに詰まっている。初期ベツレヘム時代の傑作。ジャズ・スタンダード曲中心の好盤。冒頭の「All About Ronnie」から「Lush Life」「From This Moment On」「In Other Words (Fly Me to the Moon)」など、ナポリ民謡「Come Back To Sorrento」(帰れソレントへ)はユニークな選曲。クリスがクールに見事に唄い上げていく。「軽いハスキー・ヴォイス」がライトにしみじみ染みわたる。

特に、スタンダード曲の歌唱に、クリス・コナーの個性とテクニックが浮き彫りになる。まず、俗っぽくない。正統なジャズ・ボーカルの雰囲気を踏襲していて、洗練されていて典雅。そして、リズム&ビートへの「ノリ」が抜群。スインギーかつ、グルーヴィー。「軽いハスキー・ヴォイス」に、しっとり色気も漂わせた、ストレートでスマートな、聴き心地の良いボーカルが大活躍。

収録された12曲とも、他のアルバムに収録されたセッションの未発表曲を集めたものだが、もともと、収録されたそれぞれのセッションが、クリス・コナー初期の名セッションばかりなので、捨て曲は無し。

ちなみに、ベツレヘムからのリリース当初のタイトルは『Chris』で、クリス・コナーがアトランティックに移籍して、出したアルバムが、同じ『Chris』。ベツレヘムは混同を避ける為にタイトルを『The Rich Sound Of Chris Connor』に変更しているみたいです。なにはともあれ、この盤もクリス・コナーの傑作の1枚。良いボーカル盤です。
 
 

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2025年10月13日 (月曜日)

サル・サルバドールの代表的好盤

映画「真夏の夜のジャズ」でもお馴染み、チャーリー・クリスチャン直系のギタリスト、サル・サルバドール、と言うが、我が国では、かなりマイナーな存在。

リーダー作も、1953年から1963年までの10年で9枚。1978年から1989年の間に5枚。計14枚のリーダー作しかリリースしていないのと、半数はマイナーなレーベルからのリリースなので、マイナーな存在なのも仕方の無いことかもしれない。

Sal Salvador『Frivolous Sal』(写真左)。1956年2月の録音。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Sal Salvador (g), Eddie Costa (p, vib), George Roumanis (b), Jimmy Campbell (ds)。映画「真夏の夜のジャズ」でもお馴染み、チャーリークリスチャン直系のギタリスト、サル・サルバドールがリーダーのカルテット編成。

さて、サル・サルバドールは、チャーリー・クリスチャン直系の、ウェストコースト派白人ギタリスト。サルバドールのギターの音の雰囲気は、アーバンでミッドナイトな雰囲気の、漆黒ジャジーでブルージーなギター。当時のジャズ・ギターとして、かなり個性的な音色。この個性的な音色のサルバドールのギターは、十分にフロントを張れるもの。
 
まだギタリストがリーダー作を出すことが珍しかった時代に、フロントを張ることのできる、力感溢れる、ソリッドで音の芯が太いギターでリーダーを務めるサルバドールは、現代に通じる、モダン・ジャズ・ギターの先駆的存在。
 

Sal-salvadorfrivolous-sal

 
このアルバムでも、そんなクリスチャンの「アーバンでミッドナイトな雰囲気の、漆黒ジャジーでブルージーな」ギターが大活躍。聴き応え満点のパフォーマンスを披露している。

スタンダード曲「All The Things You Are」「I'll Remember April」では、そんなチャーリークリスチャン直系のバップ・ギターがダイナミックに展開される。テクニックは確か、爽快感抜群。ウエストコースト・ジャズのほど良くアレンジされた端正なリズム隊をバックに、漆黒ジャジーでブルージーなギターが疾走する。

バックはエディ・コスタがピアノを担当する、端正でバップなリズム・セクション。このリズム・セクションの安定したパフォーマンスが、サルバドールの上質なバップ・ギターの弾き回しを引き出している。コスタの硬質なピアノが、サルバドールの漆黒ジャジーでブルージーなギターに合う。相性抜群である。

ベツレヘム・レーベルには、こういった米国ウエストコースト・ジャズのアルバムも多数リリースされていて、加えて、個性的なのは、西海岸ジャズ志向の演奏の中に、このサルバドールのギター盤の様に、まるで東海岸ジャズの様な「漆黒ジャジーでブルージーな」音作りがされている点。

米国の東西を股に掛け、東海岸ジャズ、西海岸ジャズ双方に対して、拘り無い音作りが個性のベツレヘム・レーベル。このサルバドールのアルバムはそんなベツレヘムの個性が反映された好盤です。どっちつかず、というなかれ。これが、ベツレヘム・レーベルの個性の一つです。
 
 

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2025年9月 5日 (金曜日)

エリントン楽団の異色盤です。

ベツレヘムのデューク・エリントン作品の人気盤である。この盤では、エリントン楽団としては珍しい、デュークのオリジナル曲だけでなく、ジャズ・スタンダード曲を演奏している。ジャズ・スタンダード曲をエリントン楽団が演奏すると「こうなる」が明快に理解出来る貴重盤でもある。

『Duke Ellington Presents..』(写真左)。1956年2月の録音。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは以下の通り。元メンバーが再集結、往年のエリントン・サウンドの再演という様なパーソネルである。

Duke Ellington (p), Cat Anderson, Willie Cook, Ray Nance, Clark Terry (tp), Quentin Jackson, Britt Woodman (tb), John Sanders (valve-tb), Jimmy Hamilton (cl, ts), Johnny Hodges (as), Russell Procope (as, cl), Paul Gonsalves (ts), Harry Carney (bs), Jimmy Woode (b), Sam Woodyard (ds), Ray Nance (vin, vo), Jimmy Grissom (vo)。

1曲目「Summertime」(George Gershwin, Ira Gershwin, Dubose Heyward)
2曲目「Laura」 (Johnny Mercer, David Raksin)
3曲目「I Can't Get Started」 (Vernon Duke, Ira Gershwin)
4曲目「My Funny Valentine」 (Lorenz Hart, Richard Rodgers)
(この間はデューク曲が続く)
9曲目「Deep Purple」 (Peter DeRose, Mitchell Parish)
10曲目「Indian Summer」 (Al Dubin, Victor Herbert) 
 

Duke-ellington-presents

 
ジャズ・スタンダード曲が、エリントン・アレンジに染まっていく、濃密で幻想的なエリントン・サウンドで演奏されるジャズ・スタンダード曲は、アーバンでブルージーでジャジー。エリントン楽団ならではの、スタンダード曲の解釈が、この盤の最大の聴きものである。

聴いていると気がつくが、個性のあるメンバー達をフューチャーした音作りも、この盤のユニークなところ。キャット・アンダーソンのトランペットが見事な「Summertime」、ポール・ゴンザルベスのテナー・サックスが印象的な「Laura」「Cotton Tail」。

ハリー・カーネーのバリトンが熱い「Frustration」、ジョニー・ホッジスのアルト・サックスに惚れ惚れする「Day Dream」。ジミー・ハミルトンのクラリネットが楽しい「Deep Purple」。ラッセル・プロコープのアルト・サックス・ソロが美しい「Indian Summer」。エリントン楽団の面目躍如。

ネットを眺めてたら、このアルバムを「エリントニアンのショーケース」とする記事があって、なるほど、っと納得。個性のあるメンバー達をフューチャーするところは確かに「エリントニアンのショーケース」。そして、エリントン・バンドっぽくないところが魅力の「エリントン楽団が考えるジャズ・スタンダード集」。この盤、エリントン楽団の異色盤。意外と面白い内容です。
 
 

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2025年9月 4日 (木曜日)

良い感じで脱力した独特の歌唱

ジャズ・ボーカルの宝庫と言われる「ベツレヘム・レーベル」。カタログ全体の4分の1がボ-カル盤というから恐れ入る。確かに、ベツレヘム・レーベルのカタログを見渡すと、キラ星の如く、これは名盤だ、とか、これ聴いてみたい、とか、触手が伸びるボーカリストとタイトルばかり。ジャズ・ボーカルを極めるには、ベツレヘムから入るのが良いのかもしれない。

Bob Dorough『Devil May Car』(写真左)。1956年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Bob Dorough (p, vo), Warren Fitzgerald (tp), Jack Hitchcock (vib), Bill Takus (b), Jack Segal (ds)。才能豊かなソングライターであり、優れたピアニスト&ボーカリストでもあったボブ・ドローのデビュー盤。

ボーカルについては、さえずるような高音の声で「良い感じで脱力した独特の歌唱」が特徴。スウィング・ジャズとユーモラスなスキャットがセンスの良くミックスされた、お洒落で粋なジャズ・ヴォーカル。彼の歌声には、彼独特のユーモアと遊び心が感じられ、ジャズのスタンダード曲に、新しい魅力を添加している。
 

Bob-doroughdevil-may-car

 
ホーギー・カーマイケルの美しい「 Baltimore Oriole」、ディジー・ガレスピーの「Ow!」、チャーリー・パーカーの「 Yardbird Suite」といったバップ曲で、ドロー自身の印象的な歌詞と共に、ドローの歌唱が際立つ。そして、彼のピアノは「軽妙」。この軽妙なピアノが、ドローの歌声にピッタリとマッチして、ドローの歌唱を引き立てている。

バックに控える、ウォーレン・フィッツジェラルドのトランペット、ジャック・ヒッチコックのヴァイブも素晴らしい演奏を披露。ざっとパーソネルを見渡すと、馴染みの無いジャズマンばかりが並んでいるが、このバックの演奏の充実が、この個性的なドローの歌声をさらに引き立てている。

ちなみに、本作でも際立っているが、タイトル曲「Devil May Care」は、ダイアナ・クラールやクレア・マーティンらによってカヴァーされている。マイルス・デイヴィスが曲としてカヴァーした事でも有名。また、ボブ・ドローは、マイルスをバックに唄を歌った(「Nothing Like You」)唯一のジャズ・シンガーでもある(『Sorcerer』に収録)。
 
 

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2025年8月21日 (木曜日)

悲劇&幻の女性ボーカルの2nd.盤

ヘレン・カー(1922-1960)は、米国ユタ州ソルトレイク・シティ生まれ。1940年代後半、バディ・モロウ楽団やチャーリー・バーネット楽団などの専属シンガーを務め、1955年、ソロ・シンガーとしてベツレヘム・レコードと契約。2作のアルバムを残したものの、その後、1960年になんと38歳で、自動車事故により逝去した悲劇の歌姫である。

Helen Carr『Why Do I Love You?』(写真左)。1955年11月11日、ロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Helen Carr (vc), Cappy Lewis (tp), Howard Roberts (g), Red Mitchell (b),。トランペット、ギター、ベースという変則トリオをバックにした、幻の女性ボーカリスト、ヘレン・カーのアルバム。

ベツレヘムに2枚のアルバムを残し、ジャズ・シーンから姿を消した、幻の女性ヴォーカリスト、ヘレン・カーのセカンド盤。ロスでの録音なので、パーソネルは、米国ウエストコースト・ジャズの強者が名前を連ねる。まず、このウエストコースト・ジャズの一流どころがバックを固めているので、まず、内容的に「悪い」はずがない。
 

Helen-carrwhy-do-i-love-you  

 
爽やかな健康的な色気が魅力的な、キュートな女性ヴォーカル。音程はシッカリしていて、テクニックも優秀、確かに「可愛らしい」自然なボーカルで、聴き心地が抜群に良い。本格的な女性ボーカルとは一線を画する、ポップで聴き心地の良い女性ボーカルで、とにかく個性的。これだけ、キュートでハートウォーミングな女性ボーカルは、なかなか他にはない。

品の良いボーカルで、押し付けがましさは皆無。とにかく、聴き心地が良くて、ながら聴きに最適なボーカル。ベツレヘムのヴォーカル・アルバムには、独特なベツレヘム・カラーがあるのだが、この盤もその例に漏れない。トランペット、ギター、ベースの変則トリオのバッキングは、小粋なアレンジが施され、ウエストコースト・ジャズの雰囲気を色濃く宿している。

ベツレヘム・レーベルは「ジャズ・ボーカルの宝庫」。しかも、大手のレーベルでは無い、中堅ジャズ・レーベルのベツレヘム。商業主義に走らない、硬派な内容のジャズ・ボーカル盤を量産している。女性ボーカルのラインナップも充実していて、ヘレン・カーの様に、稀少で魅力的な女性ボーカルもしっかりと残している。ベツレヘム・レーベルは決して侮れない。
 
 

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2025年8月20日 (水曜日)

女性ボーカル名盤 ”This Is Chris”

ベツレヘム・レーベルは「ジャズ・ボーカルの宝庫」。しかも、大手のレーベルでは無い、中堅ジャズ・レーベルのベツレヘム。商業主義に走らない、硬派な内容のジャズ・ボーカル盤を量産している。女性ボーカルのラインナップも充実していて、クリス・コナーを擁しているところなどは、「ボーカルに強いベツレヘム」の面目躍如。今回はその「クリス・コナー」の名盤に迫る。

Chris Connor『This Is Chris』(写真左)。1956年4ー5月、NYでの録音。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Chris Connor (vo), Herbie Mann (fl), Ralph Sharon (p), Joe Puma (g), Milt Hinton (b), Osie Johnson (ds), J. J. Johnson, Kai Winding(tb : A3, B1,2,4)。クリス・コナー、29歳のアルバム。ベツレヘム3部作の2作品目。

彼女の一番の特徴はそのクールな歌唱。それまでの「オールド・スタイル」の女性ボーカルでは無く、ストレートでスマートな、聴き心地の良いボーカルにある。そして、歌が上手い、巧みである。抜群の表現力とテクニック。そういう歌手には、往々にして「歌心に欠ける」という欠点がついて回るのだが、クリスは歌心抜群。声の質も「軽いハスキー・ヴァイス」で、ベトつかず、適度にドライ。
 

Chris-connorthis-is-chris
 

聴き手として「聴き易くスッキリ」としてクリスのボーカルは、ジャズ者万人向け。コナーの落ち着いたトーン、繊細で感情豊かな表現、そして心に残る歌声。ジャズ者初心者の方々での「ジャズ女性ボーカルの入門盤」として、内容が判り易く充実した内容。スタンダード曲を中心にスローバラードからアップテンポまで、爽やかに唄い上げる、若き日のクリスのパフォーマンスの初々しさも魅力。

フルートとテナーの二刀流のハービー・マン、ピアニストのラルフ・シャロン、ギタリストのジョー・ピューマ、ベーシストのミルト・ヒントン、そしてドラマーのオジー・ジョンソンといった素晴らしいサイドマンがバックに控えて、若きクリスの歌唱を支え、鼓舞する。このどちらかと言えば、米国ウエストコースト・ジャズ志向の、優れたアレンジでの「聴かせるジャズ・ボーカル」といった面持ちが実に良い。

良い女性ジャズ・ボーカル盤。ジャズ・ボーカルに強いベツレヘム・レーベルの面目躍如。収録された全10曲全てが、聴き応えのある名唱・名演。クリス・コナーの歌唱のみならず、米国ウエストコースト・ジャズ志向の聴かせるバッキングも充実した、女性ジャズ・ボーカルの名盤。
 
 

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