2024年11月 2日 (土曜日)

「元曲」の良さで盤の魅力倍増

米国ウエストコースト・ジャズは「聴かせる」ジャズである。優れたアレンジをしっかり踏まえ、聴き味の良い、流麗な弾き回しとアンサンブル。クールで小粋なアドリブ・パフォーマンス、切れ味よく端正なリズム&ビート。このウエストコースト・ジャズは、例えば、優れたフレーズを持つミュージカル曲やドラマの挿入曲を「元曲」にジャズをすれば、その個性と特徴がさらに輝きを増す。

『Shelly Manne & His Men Play Peter Gunn』(写真左)。January 19 & 20, 1959年1月19, 20日の録音。ちなみにパーソネルは、Shelly Manne (ds), Conte Candoli (tp), Herb Geller (as), Victor Feldman (vib, marimba), Russ Freeman (p), Monty Budwig (b), Henry Mancini (arr)。

「Peter Gun」とは、アメリカの古いTV番組で、1958年から61年にかけて毎週月曜日の夜9時から放送されていた「探偵もの」のドラマ。ドラマの挿入音楽は有名なヘンリー・マンシーニが担当、内容は立派なジャズ・ベースな楽曲だったそうで、その楽曲を、シェリー・マン率いるヒズ・メンが、ウエストコースト・ジャズとしてカヴァーする企画盤がこの盤である。
 

Shelly-manne-his-men-play-peter-gunn

 
もともとマンシーニの作曲&編曲の「元曲」が、ジャズ志向の佳曲ばかりで、ジャズ志向の佳曲を、当時流行していたウエストコースト・ジャズ流のアレンジで、マンシーニ自身が再アレンジして、良好な内容のハードバップっぽい演奏に仕上げている。元曲の良さを活かしつつ、ウエストコースト・ジャズのアレンジの個性が、元曲の良さをさらに引き出している様な演奏は聴き応えがある。否、元曲を知らなくても大丈夫。純粋にウエストコースト・ジャズの好演として聴いても全く違和感は無い。

マンの、様々なニュアンスのリズム&ビートを叩き出しながら、しっかりフロントを引き立て、クールに鼓舞する、「聴かせる」ウエストコースト・ジャズに最適なドラミングは相変わらず。トランペットがコンテ・カンドリ、アルト・サックスがハーブ・ゲラー、ヴァイブがヴィクター・フェルドマン。その3人のフロントの演奏が、マンのドラミングに乗り、鼓舞されて、なかなか充実した、ウエストコースト・ジャズらしからぬ、ホットなアドリブを展開している。

「元曲」の良さがそうさせるのだろう。ウエストコースト・ジャズの個性と特徴はしっかり踏まえつつ、いつになく、ウエストコースト・ジャズらしからぬ、ちょっとホットな演奏は聴き応え十分。クールで端正で流麗、聴き心地の良いユニゾン&ハーモニーはそのままに、少し「熱い」インプロビゼーションを繰り広げる。モダン・ジャズの好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年11月 1日 (金曜日)

マンのドラミングが映える好盤

これまで我が国では、米国のウエストコースト・ジャズについては、正当に評価されてない様に感じる。大人しい、熱気がない、印象が薄い、など、東海岸ジャズとの比較に中で、東海岸ジャズの長所と「反対の特徴」を、西海岸ジャズの欠点として捉えて、低い評価を与えられている傾向が強い。しかし、その「反対の特徴」を、西海岸ジャズの長所として捉えれば、正当な評価につながっていくのだから面白い。

Shelly Manne and His Men『More Swinging Sounds』(写真左)。1956年7, 8月の録音。ちなみにパーソネルは、Shelly Manne (ds), Stu Williamson (tp, valve-tb), Charlie Mariano (as), Russ Freeman (p), Leroy Vinnegar (b)。ネコのイラスト・ジャケが印象的な、シェリー・マン主宰の「Shelly Manne and His Men」シリーズのVol.5。

1956年の録音。米国ウエストコースト・ジャズの全盛期の入り口、アルバム全体にウエストコースト・ジャズの良いところがギッシリ詰まった好盤。西海岸独特の、切れ味良く、端正で流麗なスイング感がたまらない。その魅力的で爽快なスイング感は、リーダーのシェリー・マンのドラミングが推進エンジンになっている。そして、そんなマンのドラミングの「底」を、レロイ・ヴィネガーの味わい深い、オーソドックスなベースがしっかりと支えている。
 

Shelly-manne-and-his-menmore-swinging-so

 
この西海岸独特の雰囲気は、この盤で唯一のスタンダード曲、チャーリー・パーカー作のミュージシャンズ・チューンの「Moose the Mooche」を聴けば良く判る。西海岸独特の洒落たアレンジで、このビ・バップの名曲を「聴かせる」ジャズに仕立て上げている。ウォームで軽快スインギーなリズム&ビートに乗って、流麗なアドリブ・フレーズを奏でるフロント2管。

ステュ・ウィリアムソンのトランペットの好演が光る。東海岸の様に熱気溢れる、迫力満点なブロウでは無いが、テクニックに優れ、流麗なフレーズは、これはこれで、優れたジャズ・トランペット。そして、マリアーノのアルト・サックスも健闘している。スチュのトランペットの向こうを張って、素敵なフロント2管を形成している。

リーダーのマンのドラミングが一番の聴きもの。テクニック抜群、様々なニュアンスのリズム&ビートを叩き出しながら、しっかりフロント2管を引き立て、クールに鼓舞する。「聴かせる」ウエストコースト・ジャズに最適なドラミング。優れた「モダン・ジャズ」がここにもある。ジャズの裾野の広さ、ジャズの深化、をバリバリに感じる、ウエストコースト・ジャズの好盤の一枚である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年9月 4日 (水曜日)

ポール・ウィナーズの第4弾です

昨日、ご紹介した、当時の楽器別ジャズ人気投票で1位(Poll Winner)を獲得した3人が、テンポラリーなトリオ、ポール・ウィナーズ・トリオ。

このトリオは、1957年から1960年の3年間で、全4枚のアルバムを出している。最初が『The Poll Winners』、2枚目が『The Poll Winners Ride Again!』、3枚目が昨日、ご紹介した『Poll Winners Three!』。せっかくなんで、最後の一枚を今日、取り上げる。

The Poll Winners『Exploring the Scene!』(写真)。1960年8,9月、ロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Barney Kessel (g), Ray Brown (b), Shelly Manne (ds)。楽器別ジャズ人気投票で1位を獲得した3人の「職人芸的トリオ演奏」の4作目。ポール・ウィナーズ・トリオとして、一旦、打ち止めのアルバムである。

冒頭の「Little Susie」を聴けば、演奏の洗練度合い、テクニックの精度とバリエーション、小粋なフレーズ回しなど、前3作に比べて、格段にレベルが上がっていて、もうこれ以上の演奏はないだろう、そして、この演奏レベルをコンスタントに維持し続けるのは難しい、との判断での「ポール・ウィナーズ・トリオとしての最終作」だと推察する。
 

The-poll-winnersexploring-the-scene

 
それほどまでに、トリオ演奏のレベルは高い。米国西海岸ジャズのレベルの高さ、テクニックの高さ、アレンジの優秀度の高さがこの盤を通して、ビンビンに感じる。東海岸ジャズとは趣きが異なる、西海岸ジャズ独特の個性が、この盤にギッシリ詰まっている。とにかく、米国西海岸ジャズを代表するジャズマン3人の演奏内容は、実にインクレディブルである。

選曲については、当時の「ミュージシャンズ・チューン」を中心に選んでいて、ファンキーな「Little Susie」や「Doodlin」「This Here」が、軽妙なアレンジで小粋に演奏されている。マイルスの「So What」のアレンジはいかにも西海岸ジャズらしい。こんなに小洒落て小粋で捻りの効いたアレンジの「So What」は聴いたことがない。

「The Golden Striker」のレイ・ブラウンのベースのボウイングによる旋律演奏も味がある。メインの演奏部の疾走感も半端ない。バラード曲「Misty」の味わい深い、耽美的かつリリカルな演奏には、思わずじっくり聴き入ってしまう。

米国東海岸ジャズには「無い」トリオ演奏。このポール・ウィナーズ・トリオの諸作は、洒脱で小粋で流麗な、「聴かせる」米国西海岸ジャズの特徴・特質がてんこ盛り。1980年代後半まで、我が国では、米国西海岸ジャズは過小評価されてきたが、このポール・ウィナーズ・トリオの演奏をしっかり聴けば、その過小評価は無くなるだろう。もっともっと広く聴かれるべきポール・ウィナーズ・トリオである。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年9月 3日 (火曜日)

ポール・ウィナーズの第3弾です

台風10号が迷走し、その影響が関東地方にまで及んで、天気が不安定なこと極まりない。天気を見ながら、散歩に行くことはあるが、雨模様の日は、一日、しっかり引き篭もり。猛暑が少しだけ和らいだと思ったら、天気不安定で、再び引き篭もりである。

引き篭もりの部屋で聴くのはジャズ。酷暑の夏にハードなジャズはしんどいので、軽妙なボサノバ・ジャズなんぞを聴き流していたのだが、気がつけば、なんと9月である。9月になれば、もはやボサノバ・ジャズも無いよな、ということで、ライトで小粋なジャズをということで、米国ウエストコースト・ジャズに走ることにする。

『Poll Winners Three!』(写真)。1959年11月2日、ロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Barney Kessel (g), Ray Brown (b), Shelly Manne (ds)。当時の楽器別ジャズ人気投票で1位(Poll Winner)を獲得した3人が、テンポラリーなトリオ、ポール・ウィナーズ・トリオを組んで録音した企画盤の第3弾。第3弾だからと言って、マンネリな雰囲気は全く無い。
 

Poll-winners-three

 
第1作、第2作と比べて、収録されたスタンダード曲が、一部を除いて、なかなか渋い、マニアックな選曲になっている。が、それがとても良い。この「隠れ名曲」っぽい、渋いスタンダード曲を、聴かせるアレンジを施しつつ、小粋に演奏する様は実に軽妙。加えて、3人それぞれのテクニックが途方もないレベルで、しかし、耳障りにならない流麗さで、歌心満点に演奏する様は実に爽快。

ジャジーによく唄うケッセルのギターには思わず聴き惚れる。唄うが如くの流麗なフレーズを弾きまくるブラウンのベースには思わず、そば耳を立ててしまう。そんな二人の弾き回しを鼓舞し、ブラウンのウォーキング・ベースと共に、演奏全体のリズム&ビートを仕切るマンのドラムには、思わず感嘆の声を上げる。ほんと、この3人、上手い、の一言。

米国ウエストコースト・ジャズの良いところがギッシリ詰まった、素晴らしいトリオ演奏。洗練された三人の絶妙なインタープレイ、効果的にアレンジされたユニゾン&ハーモニー、3者3様の途方もない演奏テクニック。どれをとっても、前の2作より、さらに深化したパフォーマンスがてんこ盛りの秀作。いいアルバムです。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年4月21日 (日曜日)

シェリー・マンの絶妙な職人芸

米国ウエストコースト・ジャズは「小粋に聴かせるジャズ」。演奏の基本はハードバップだが、優れたアレンジを施し、演奏テクニックは極上、個の演奏よりグループサウンズを優先。アンサンブルとインタープレイがメイン、聴き手にしっかりと訴求する、聴き応えがあって、聴き味の良いジャズ演奏を「聴かせる」。

そんなウエストコースト・ジャズにおいて、ドラマーの役割は重要。演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第なのがジャズ演奏であり、特に、グループサウンズ優先、アンサンブルとインタープレイがメインのウエストコースト・ジャズでは、アレンジから演奏全体の雰囲気や志向を把握し、リズム&ビートで的確に誘うドラマーの役割はとりわけ重要である。

Shelly Manne『2-3-4』(写真左)。1962年2月5, 8日の録音。Impulse!レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Coleman Hawkins (ts, tracks 1, 3, 5, 6 & 8), Hank Jones (p, tracks 1, 3, 5 & 8), Eddie Costa (p, vib, tracks 2, 4 & 7), George Duvivier (b, tracks 1–5, 7 & 8), Shelly Manne (ds)。

タイトルの「2-3-4」については、デュオ演奏(2人の演奏)、トリオ演奏(3人の演奏)、カルテット演奏(4人の演奏)を表している。

リーダーでドラマーのシェリー・マンは全ての演奏でドラマーを務めているが、コールマン・ホーキンスとのデュオ演奏、エディ・コスタのピアノ&ヴァイブ、ジョージ・デュビビエのベースとのトリオ演奏、コールマン・ホーキンスのテナー、ハンク・ジョーンズのピアノ、ジョージ・デュビビエのベースとのカルテット演奏と3つの演奏編成の演奏集になっている。
 

Shelly-manne234

 
デュオ、トリオ、クインテットという演奏編成ごと、演奏する曲の曲想&曲調ごと、演奏するメンバーの個性&特徴ごと、ドラミングの内容を自在に変化させ適応し、演奏志向をコントロールするシェリー・マンの絶妙な職人芸が堪能出来る。

とにかく、シェリー・マンのドラミングのテクニックがずば抜けている。絵に描いた様な「緩急自在、硬軟自在、変幻自在」なドラミング。このシェリー・マンのドラミングこそが、「緩急自在、硬軟自在、変幻自在」なドラミングの究極だろう。聴いていて、本当に上手いなあ、と感心する。

馬力だけのドラミングではない、繊細なシンバル・ワーク、瀟洒なブラシ・ワーク、躍動感と切れ味が同居した小粋なドラミングが、デュオ演奏、トリオ演奏、クインテット演奏の中で、効果的に適用される。そして、彼のドラミングには、ドラムで唄うが如くの「歌心」がしっかりと備わっている。そんなところにも、シェリー・マンのドラミングのセンスの良さが表れていて素晴らしい。

ウエストコースト・ジャズのドラマーの第一人者、シェリー・マンのドラミングの優秀性が如実に表れた、ジャズ・ドラミングの教科書の様なアルバムである。聴く度に、そのドラミングに感心する、シェリー・マンの名盤の一枚。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年10月25日 (火曜日)

ウエストコースト・ジャズの頂点

シェリー・マンは、米国ウエストコースト・ジャズの代表的ドラマーであったと同時に、ウエストコースト・サウンドの体現者でもあった。ドラマーとしても超一流だが、バンド・サウンドのプロデュース&コントロールについても優れた実績を残している。シェリー・マンのリーダー作を聴くと、米国ウェストコースト・ジャズの音が、たちどころに判る、と言っても良い。

Shelly Manne and His Men『Vol.4・Swinging Sounds』(写真左)。1956年1ー2月の録音。ちなみにパーソネルは、Shelly Manne (ds), Stu Williamson (tp, valve-tb), Charlie Mariano (as), Russ Freeman (p), Leroy Vinnegar (b)。ウィリアムソンのトランペット&トロンボーン、マリアーノのアルト・サックスのフロント2管、リーダーのマン、ピアノのフリーマン、ベースのヴィネガーのリズム・セクションのクインテット編成。

収録全曲、とてもウエストコースト・ジャズらしいアレンジが施されている。フロント2管のユニゾン&ハーモニーの響きだけで、この盤はウエストコースト・ジャズの盤だということが判るくらいの、典型的なウエストコースト・ジャズのアレンジ。この盤を聴くだけで、ウエストコースト・ジャズのアレンジの特徴と個性が把握できる。
 

Shelly-manne-and-his-menvol4swinging-sou

 
バド・パウエルのビ・バップの名曲「Un Poco Loco」まで、ウエストコースト・ジャズのアレンジで染められて、フロント2管のユニゾン&ハーモニーで「Un Poco Loco」のテーマを奏でると、「Un Poco Loco」の持つ素晴らしいフレーズがグッと浮き出てくる。「聴かせる」、さすが「聴いて楽しむ」、ウエストコースト・ジャズの面目躍如である。

演奏メンバーのパフォーマンスもそれぞれ好調で聴き応えがある。そんな中でも、やはり、リーダーのマンのドラミングが傑出している。相当に高いテクニックと「歌心」を感じさせるドラミングは、ジャズの歴代のドラマーの中でも「指折り」だろう。特に、この盤でのマンのドラミングは素晴らしい。

このマンのリーダー作を聴くと、録音年の1958年、ウエストコースト・ジャズは、更なる進化の「のりしろ」が見当たらないくらい、完全に成熟していたことが良く判る。ウエストコースト・ジャズのアーティステックな頂点を捉えた名盤だろう。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年10月13日 (木曜日)

米国西海岸ジャズのお手本

米国西海岸ジャズを代表するドラマーと言えば、シェリー・マン(Shelly Manne)。というか、シェリー・マンしか浮かばないほど、シェリー・マンのドラマーとしての存在は突出している。

Shelly Manne and His Men『Vol.1 : The West Coast Sound』(写真左)。1953年4月, 7月, 9月の3つのセッションの寄せ集め。シェリー・マンの2枚目のリーダー作。フロントは、トロンボーン、バリサク、テナー、アルトの4管フロント。リズム隊はスタンダードな「ピアノ・ベース・ドラム」。全部合わせて、セプテット(七重奏団)構成。米国西海岸ジャズお得意の「アレンジ」が映える大人数の編成である。

ちなみにパーソネルは、Shelly Manne (ds), Bob Enevoldsen (valve-tb), Jimmy Giuffre (bs) の3人は3つのセッションに全参加。セッション毎の参加については、1953年4月と7月の2セッション参加は、Bob Cooper (ts), Marty Paich (p)。1953年4月のみは、Art Pepper (as), Curtis Counce (b)。1953年7月のみは、Bud Shank (as), Joe Mondragon (b)。1953年9月はガラッと変わって、Joe Maini (as), Bill Holman (ts), Russ Freeman (p), Ralph Peña (b)。

米国西海岸ジャズらしく、アレンジは6人が分担して担当している。が、このシェリー・マンの3つのセッションについては。6人のアレンジ担当が分担しているにも関わらず、当時の米国西海岸ジャズの音の傾向をしっかり踏まえた、バラツキの無い、一貫性のあるアレンジになっているのには感心する。
 

Vol1-the-west-coast-sound

 
いわゆる、小粋で洒落たアレンジを施し、演奏者の高テクニックと豊かな歌心による、「聴かせる」ジャズ &「鑑賞する」ジャズ。そんな米国西海岸ジャズのお手本の様なジャズが、このアルバムの中にギッシリ詰まっている。

しかも「聴かせる」ジャズに必須アイテムのスタンダード曲が、アルバム全12曲中、半分の6曲。残りの6曲は、セッション参加メンバーのオリジナル曲なんだが、これがなかなかの出来。スタンダード曲の中に混じりながら、メンバーのオリジナル曲に違和感が無い。洒落たアレンジを施されて、スタンダード曲と並べて遜色の無い、メロディアスでキャッチャーなフレーズを持った佳曲の数々。

3セッションの参加メンバーは、何れも米国西海岸ジャズの名手揃い。この盤が録音されたのは1953年。この1953年で、米国西海岸ジャズの「音の志向」は確立されていたことが良く判る。「小粋で洒落たアレンジ」と「演奏者の高テクニックと豊かな歌心」。この2要素が、米国西海岸ジャズにおいて重要であることが、この盤を聴いていて良く判る。

名手シェリー・マンのドラミングについては申し分無い。米国西海岸ジャズにおける、ドラマーの第一人者であることが良く判る。演奏全体の出来も米国西海岸ジャズらしくて良し、リーダーのマンのドラミングも良し。申し分無い、マンの2枚目のリーダー作である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年10月 9日 (日曜日)

シェリー・マンの初リーダー作

最近、ドラマーがリーダーのアルバムを聴き直している。特に、エルヴィン・ジョーンズ、ロイ・ヘインズを中心に聴き直していて、今の耳で聴くと、以前、若かりし頃に聴いた印象とは異なる音、もしくは、若かりし頃には気が付かなかった音が聴けて面白い。

そんな中、まだ、有名なジャズ・ドラマーを忘れているぞ、と思って、ライブラリーを見渡したら、米国ウエストコースト・ジャズのレジェンド・ドラマーであるシェリー・マンのリーダー作をしばらく、聴き直していないのに気がついた。これはこれは、大物ドラマーを見落としていた。即、ライブラリーからリーダー作をチョイスして、聴き直しを始めた。

Shelly Manne『The Three & The Two』(写真左)。"The Three" が 1954年9月10日、"The Two" が 同年9月14日の録音。ちなみにパーソネルは、"The Three" が、Shelly Manne (ds), Jimmy Giuffre (cl, ts, bs), Shorty Rogers (tp)。"The Two" が、Shelly Manne (ds), Russ Freeman (p)。リリース順でいくと、シェリー・マンの初リーダー作になる。

かなり変則な編成である。"The Three" が、リーダーのドラムに、クラリネット&サックス、トランペットの変則トリオ。"The Two" が、リーダーのドラムにピアノのデュオ編成。メンバーそれぞれの演奏力がとても高く、アレンジが優れているので、各曲の演奏それぞれが凄く充実している。
 

Shelly-mannethe-three-the-two

 
演奏の密度、演奏の充実度、演奏のレベル、どれもがかなり「高い」。トリオ演奏、デュオ演奏とは思えないほどである。特に「Autumn in New York」や「Steeplechase」「Everything Happens to Me」「With A Song In My Heart」など、スタンダード曲に、そんな「演奏の妙」が炸裂している。

リーダーがドラマーである。そして、ウエストコース・ジャズ全盛期の録音である。当時のウエストコースト・ジャズの大きな特徴である「優れて洒落たアレンジ」が、シェリー・マンのドラミングを引き立たせ、シェリー・マンのドラミングの妙を前面に押し出している。そして、演奏メンバーそれぞれが、そんな「優れて洒落たアレンジ」に、余裕を持って応えている。

そんな演奏の中、シェリー・マンのドラミングのテクニックは素晴らしいものがある。硬軟自在、変幻自在、緩急自在、シンバルワークのテクニックから、叩き出すリズム&ビートの洗練度合いまで、ウエストコースト・ジャズ独特の個性を反映した「聴かせるドラミング」がアルバムにギッシリ詰まっている。

採用理由は判らないが、異色のペンギンのイラスト・ジャケットが印象深い。可愛いジャケットだが、中身は硬派なハードバップ。ベースレス&ピアノレスの変則トリオ編成とドラムとピアノという異質なデュオ編成。実験的アプローチ満載のシェリー・マンの、とってもウエストコースト・ジャズらしい初リーダー作。名盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2020年4月29日 (水曜日)

西海岸の「逆・ジャケ買い」盤 『Some Like It Hot』

さすがにこのジャケットでは「ジャケ買い」は無い。「ジャケ買い」とは、ジャケットがデザイン良く洒落ていて、リーダーや内容を確認せずに買うこと。ジャズにおいては「ジャケ買い」で好盤に当たる確率が高い、と言われる。まあ、このジャケットであれば「逆・ジャケ買い」盤と言えるかな。

Barney Kessel『Some Like It Hot』(写真左)。1959年3ー4月の録音。ちなみにパーソネルは、Barney Kessel (g), Joe Gordon (tp), Art Pepper (as, ts, cl), Jack Marshall (g), Jimmy Rowles (p), Monty Budwig (b), Shelly Manne (ds)。3曲目と11曲目が、ケッセルのギターとバドウイッグのベースのデュオで、他はケッセルをリーダーにしたセプテット構成。

この盤は、タイトルからピンときたら、あなたは米国コメディ映画マニア、ビリー・ワイルダー監督のコメディ映画「お熱いのがお好き」(マリリン・モンロー、トニー・カーティス、ジャック・レモン出演の有名コメディ映画)のタイトル曲をはじめ、この映画に使われた曲をピックアップして収録した企画盤である。
 
 
Some-like-it-hot  
 
 
パーソネルを見渡すと、さしずめ米国西海岸ジャズのオールスターズの面持ちで、これは内容的にかなり期待出来る。しかも、アルト・サックスに、アート・ペッパーが担当している。しかも、ペッパーはクラリネットも吹いていて、ペッパー・マニアには貴重な録音になる。ロウルズ、バドウイック、マンのリズム・セクションも玄人好みに粋な人選である。

内容と言えば、リーダーのバーニー・ケッセルをはじめ、各メンバーがとってもご機嫌な演奏を繰り広げている。スインギーで洒落ていて、米国西海岸ジャズのサウンドが盤全体に充満している。スインギーで洗練されたギタースタイルで鳴らしたケッセルが好調に弾きまくっている。ペッパーが舞い上がるようなアルト・ソロをとる「Runnin' Wild」と「By The Beautiful Sea」も聴きもの。

アレンジ良好、軽妙なスイング感が心地良く、さすが「聴き手」を意識した、聴き応えのあるジャズを展開している。この盤のジャケットは、どう見てもジャズ盤のジャケットには見えない。何かのミュージカルの楽曲集ぐらいにしか見えないのだが、これが、真っ当で内容確かなジャズ盤なのだから恐れ入る。
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況》
 

 ★ AORの風に吹かれて     【更新しました】2020.04.29更新。

  ・『Christopher Cross』 1979

 ★ まだまだロックキッズ       2020.04.19更新。

  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
Matsuwa_billboard  

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から9年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 

2015年1月19日 (月曜日)

ジャズ・ギターを愛でるには.. 『Poll Winners』

Charlie Christian(チャーリー・クリスチャン)は、モダン・ジャズ・ギターの祖とされる。しかし、ジャズ者初心者の方々に、チャーリー・クリスチャンの諸作を「モダン・ジャズ・ギターの祖とされる」理由が良く判るから聴け、というのはちょっと無理がある。

それでは、モダン・ジャズ・ギターを感じ、理解するにはどうしたら良いか。早い話、ジャズ者初心者の方々向けのモダン・ジャズ・ギターの入門盤はどれか、ということになる。ということで、さてさて、と思いを巡らせる。

まず浮かぶのが、Barney Kessel, Shelly Manne, Ray Brownのトリオ盤『Poll Winners』(写真左)。1956年度の『ダウンビート』、『メトロノーム』、『プレイボーイ』各誌における人気投票でポールウィナー(ナンバーワン)になったプレイヤーを集めた企画盤。ちなみにパーソネルは、Barney Kessel (g・写真右), Shelly Manne (ds), Ray Brown (b)。1957年3月の録音。

バーニー・ケッセルのギターは、チャーリー・クリスチャンを源とするビ・バップ・ギターを洗練させ、ビ・バップ・ギターの奏法を取りまとめて、ひとつのスタイルとして完成させたもの。コード弾きを織り交ぜたシングル・トーンの旋律弾き、伴奏に回った時のクールなコード弾きのカッティング、太いトーンでホーンライクに弾きまくるアドリブ・フレーズ。

バーニー・ケッセルのギター奏法は、源にチャーリー・クリスチャンのモダン・ジャズ・ギターが見え隠れする。このバーニー・ケッセルのギターは、モダン・ジャズ・ギターの原型のひとつだと感じる。

ベースのレイ・ブラウンのテクニックも凄まじいものがある。ブンブンと重低音を響かせつつ「のし歩く」、重戦車のようなウォーキング・ベース。ベースの胴鳴りを感じつつ、中高音を駆使して、ベースをしてホーンライクに弾きまくるアドリブ・フレーズ。
 

Poll_winners

 
ドラムのシェリー・マンも相当に多彩なドラミングを聴かせてくれる。さすが西海岸ジャズのドラムの雄、乾いたスネアの音、硬質なタムタムの音、響きがシャープなシンバル、タイトに響くバスドラ。西海岸ジャズ独特の多彩で豊かなドラミングを、テクニックを駆使して、これでもか、という感じで聴かせてくれる。

この『Poll Winners』というトリオ盤は、ジャズ者初心者の方々向けのモダン・ジャズ・ギターの入門盤として最適な盤である。が、このアルバムを愛でるには、まずまずの性能の再生装置で聴いて欲しい。

1950年代のジャズ・ギターの再生は苦労する。もともと音が細い。繊細といっても良い位の線の細さ。そんなジャズ・ギターのフレーズをしっかりと捉えるには、そこそこの性能の再生装置が必要と感じている。チープな再生装置だと、ギターの音が薄くなる。とても貧弱な音になるので、聴いていてつまらなくなる。それでは元も子もない。

レイ・ブラウンのベースもそうだ。チープな再生装置だと、重低音の部分、胴鳴りの部分、弦鳴りの部分が聴き分けられない。ギターとドラムの音にかき消されて、ベースの存在が無くなる。そうすると、トリオ演奏がスカスカになる。これはまずい。

シェリー・マンのドラムは、さすがにドラムなので、チープな再生装置でも埋もれることはないが、細かなニュアンスが伝わらない。ドラムの叩く部分しか響かず、マンの多彩なドラミングの違いとニュアンスを感じることが出来ない。アルバムを聴き進めるうちに、リズム&ビートに飽きが来る。

ジャズ者初心者とは言え、モダン・ジャズ・ギターを感じ、理解するには、そこそこの再生装置で聴くことをお勧めする。この『Poll Winners』という盤も、再生装置次第で、名盤にもなれば、スカスカ薄々の駄盤にもなる。

しかし、再生装置を選べば、モダン・ジャズ・ギターとはいかなるものか、を十分に感じることが出来る。ジャズ・ギターを愛でるには、アルバムの再生装置に気を遣う。
 
 
 
★震災から3年10ヶ月。決して忘れない。まだ3年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

その他のカテゴリー

A&Mレーベル AOR Bethlehemレーベル Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteの100枚 Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル ECMのアルバム45選 ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラウンド・マイルス アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テッド・カーソン テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フォープレイ フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー