独の女性ジャズ・オルガニスト
オルガン・ジャズが好きである。もともと、幼稚園の頃から、オルガンか、ピアノか、で悩んだクチである。とにかく、オルガンの音自体が好き。そして、その音で、オフビートでジャジーなフレーズを弾きまくられると、もう「堪らない」。
が、オルガン・ジャズの担い手となると奥が深い。そもそも、我が国では、1960年代から70年代、オルガン・ジャズは「俗っぽさの極み」として軽視されていた。よって、オルガン・ジャズ盤の情報が無い。アルバムも人気が無いので、レコード屋には無い。オルガン・ジャズの情報が入手出来る様になったのは、1990年代、ファンキー・ジャズが再評価されて、こってこてファンキーなジャズが市民権を得てからである。
『Barbara Dennerlein Plays Classics』(写真左)。1988年11月28, 29日の録音。ちなみにパーソネルは、Barbara Dennerlein (org,footbass), Christoph Widmoser (g), Andreas Witte (ds)。独の女性オルガニスト、バーバラ・ディナーリンのジャズ・スタンダード集。オルガンがベースを兼ねる、ベースレスのギター入りトリオ。
シンプルな編成だが、オルガンの音に厚みがあるので、意外と充実したアンサンブルが見事。ディナーリンは、硬派でプログレッシブな弾き回しが個性の、ドイツでは人気のオルガニスト。ファンクネスは希薄だが、オフビートを強調した弾き回しはとてもジャジー。欧州ジャズ的なオルガンだなあ、と痛く感心する音である。
そんなプログレッシヴ&ジャジーなオルガンで、ジャズ・スタンダード曲をバシバシ弾いて行くのだから堪らない。よくよく聴いていると、オルガンの音が「映える」スタンダード曲を選曲していることに気付く。「Georgia On My Mind」「Satin Doll」「Take the a Train」など、それまでの著名なオルガニストが演奏してきた「オルガン・ジャズ曲」だが、ディナーリンは、プログレッシヴな「尖った」フレーズを連発して、有名スタンダード曲を新鮮な印象で聴かせてくれる。
ストイックで、しっかりとエッジが立っていて、音の粒立ちは良く、切れ味良く爽快感のあるオルガンは、米国ジャズには無い音で、実に欧州らしいジャズ・オルガンである。スタンダード曲が、これだけスッキリ爽快に聴けるオルガンは、結構、病みつきになる。バーバラ・ディナーリン、我が国では全く無名に近いオルガニストであるが、このジャズ・オルガンの素姓は確かである。
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