1980年代のタウナー・サウンド
月刊誌レココレの2024年11月号の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この特集のアルバム・セレクトが興味深く、掲載されているアルバムを順番に聴き直し&初聴きをしている。どの盤にも新しい発見があって、実に楽しい。今回の盤は「1980年代のタウナー・サウンド」の最初の成果。
Ralph Towner『Blue Sun』(写真左)。1982年12月の録音。翌年のリリース。ECMの1250番。ちなみにパーソネルは、Ralph Towner (12-string guitar, classical-g, p, Prophet 5 syn, French Horn, cornet, perc)。ECMのハウス・ギタリスト、ラルフ・タウナーのソロ・アルバム。
ECMのニュー・ジャズの具現化の筆頭。ECMの音志向である「耽美的で、音の「間」と「拡がり」を活かした、即興演奏をメインとした、限りなく自由度の高いインタープレイ」の担い手の一人。欧州ギターの吟遊詩人、ラルフ・タウナーのソロ・アルバム。1980年代仕様のラルフ・タウナーがここにある。
1970年代の「硬質でシャープで耽美的で、少しマイナー志向の思索的なアコギ」がトレード・マークだったタウナー。そう、2枚目のリーダー作『Diary』のジャケット写真の様な、明るい鉛色の、どこか硬質でシャープな、海の風景の様なギター。そんなタウナーのギターが、このアルバムでは、少し明るく、温かみのあるメジャーな響きが加わって、とてもカラフルな、ポジティヴでバリエーション豊かな音に変化している。
しかも、このアルバムでは、マルチ・プレイヤーとして、お得意の12弦ギターに加え、クラシック・ギター、ピアノ、プロフェット5・シンセ、フレンチ・ホルン、コルネット、パーカッションを、一人でこなしている。そして、それぞれの楽器の演奏を多重録音にて、一つの作品に仕立て上げている。
タウナーのギターの音は「硬質でシャープで耽美的で、少しマイナー志向の思索的なアコギ」。1970年代の音と変わらない。しかし、そこにメジャーな響きのピアノの音やシンセの音が絡んで、硬質でシャープなギターの音を少しラウンドさせ柔和な雰囲気を醸し出し、フレンチ・ホルンとコルネットの管楽器が硬質なギターの音を包みこみ、1970年代のタイナー・サウンドに、明るさと温かみを加味している。
タウナーは「OREGON」というグループの一員として活動していたが、オレゴンの音志向は「実生活と音楽を切り離すのではなくて、あくまで自然の=海、川、風=リズムを基盤にしたアース・ミュージックの具現化」。このOREGONが志向する「アース・ミュージック」の音要素を、効果的に、自らのソロ・アルバムの音世界に反映している様に感じる。それが「少し明るく、温かみのあるメジャーな響き」なのだろう。
ラルフ・タウナーのディスコグラフィーの中で、ほとんど話題に上がらないアルバムなので、内容はイマイチなのかな、と思って敬遠した時期もあったが、初聴してビックリ。1980年代のタイナー・サウンドの最初の成果がこの盤に詰まっている。マイナーな存在のアルバムだが、これはタイナーの傑作、ECM名盤の一枚だと僕は思う。
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