2022年8月29日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・248

「小粋なジャズ」盤を探索していたら、アーネット・コブ(Arnett Cobb)の名にぶち当たった。久しく、このテナーマンの名前を忘れていた。コブは1918年8月生まれ、米国テキサス州出身のテナーマン。1989年3月、70歳で鬼籍に入っている。ファンキーで渋い、スイング・スタイルがメインの、歌心溢れるモダンなテナーを吹くところが個性。その存在は地味ではあるが、聴けば「ファンネス溢れる、スインギーで小粋な」優れたテナーであることがよく判る。

Arnett Cobb『Smooth Sailing』(写真左)。1959年2月27日、Hackensack, NJの「Van Gelder Studio」での録音。プレスティッジ・レーベルからのリリースで、PRLP 7184番。ちなみにパーソネルは、Arnett Cobb (ts), Buster Cooper (tb), Austin Mitchell (org), George Duvivier (b), Osie Johnson (ds)。

リーダーのコブのテナーとクーパーのトロンボーンがフロント2管、ピアノの代わりにオルガンを採用、ここではオルガンがベースも兼ねず、オルガン+ベース+ドラムがリズム・セクションのクインテット編成になる。テナーのフロント管のパートナーがトロンボーン、そして、リズム・セクションには、ピアノの代わりにオルガンが入るという、こってこてファンクネス滴るクインテット編成になっている。
 

Arnett-cobbsmooth-sailing

 
フロント管にトロンボーン、ピアノの代わりにオルガン、なので、こってこてファンキーなジャズが展開されることが想像に難くない訳だが、この盤はその期待通り、こってこてファンキーな、少しスイングが入った、オールドスタイルなハードバップが展開されている。情感溢れるスインギーでグルーヴィーなコブのテナーのフレーズが絶品である。

特にバラードやスロー&ミッドテンポなブルースのコブのテナーの吹き回しが実に「小粋」。特に突出したテクニックがある訳では無く、速吹きやフリーキーな、当時流行の吹き回しについては「まったく無縁」。悠然と朗々と、スインギーでグルーヴィーなテナーを吹いていくコブは魅力満点。ああ、これがジャズなんやな〜、なんて、しみじみ思ってしまうブルージーでジャジーなフレーズにドップリ填まってしまう。

ファンキーでスインギーでオールドスタイルなテナーにはオルガンが良く似合う。この盤、このオルガンが入っているところが「ミソ」で、独特のファンクネスとグルーヴ感を醸し出している。何故か程良く抑制されたテナーとトロンボーンに、オルガンの音色がよく合う。プレスティッジには珍しく、丁寧な仕上がりになっていて、聴き応えがある。録音もヴァンゲルダー印でグッド。隠れ名盤です。
 
 

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2016年8月 9日 (火曜日)

コブのテナーが悠然と吹き進む

8月3日のブログ(左をクリック)で、恐らく、このブログでは初めて「アーネット・コブ(Arnett Cobb)」をご紹介した。豪快で悠然として歌心のある骨太のテナー。テナーのレジェンドとして紹介されることは殆ど無いんだが、僕はこのコブのテナーが好きだ。

そんなコブの素敵なテナーを聴くことが出来るアルバムがもう一枚ある。Arnett Cobb『Sizzlin'』(写真左)。1960年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Arnett Cobb (ts), Red Garland (p), George Tucker (b),  J. C. Heard (ds)。アーネット・コブに、レッド・ガーランド・トリオがバックを務める。

まず、レッド・ガーランドのピアノが良い味を出している。さすがにバックを務めるリズム・セクションの名手である。コブのテナーをシッカリと支え、しっかりと鼓舞する。決して前に出ない。それでいて、しっかりと主張するとことは主張する。コブのテナーと相乗効果を醸し出す「主張」。ガーランドのピアノの趣味の良さと個性の豊かさが故である。
 

Sizzlin

 
そんなガーランドのピアノをバックに、コブのテナーが悠然と朗々と吹き進む。コブのテナーはサラッとしている。ネバネバ、ベトベトしていない。そこが良い。サラッとした音でファンキーなフレーズを朗々と吹き上げる。ブルージーな雰囲気が実に魅力的。ああ、ジャズを聴いているんやな〜、と改めてしみじみと感じてしまう。

加えて、コブのテナーは抑制が効いている。決して破綻することなく、決して逸脱することなく、優しくて温かみのあるアドリブ・フレーズを吹き進めていく。これがまた良い。変にベタベタすること無く、変にネバネバすること無く、シンプルなアドリブ・フレーズを吹き進めていく。これがまた良い。

派手では無い。複雑では無い。難しく無い。判り易いシンプルな、それでいて、しっかりとジャジーでファンキーなテナー。アーネット・コブのテナーはそんなテナーだ。スッキリしている分、酷暑の夏に聴くに最適なテナーである。
 
 
 
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2016年8月 3日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・85

我が千葉県北西部地方の今年の夏は不安定。その原因は例年に無いオホーツク海高気圧の勢力の強さにあるのだが、気温の高さはそこそこなんだが湿度が高い。とにかく、この湿気の高さが知らず知らずのうちに体力を奪っていく。

そんな夏にはシンプルなジャズが良い。軽快で爽快、判り易くて聴き心地の良いジャズが良い。そんなジャズって、例えば「ワンホーン・カルテット」の作品なんかが該当する。フロントはワンホーン、つまりホーン楽器一本。バックは、リズム・セクションとして最小単位のピアノ・トリオ。

ということで、軽快で爽快、判り易くて聴き心地の良い「ワンホーン・カルテット」の作品を探す。そして、このアルバムを思い出した。Arnett Cobb『Party Time』(写真左)。1959年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Arnett Cobb (ts), Ray Bryant (p), Wendell Marshall (b), Art Taylor (ds), Ray Barretto (conga)。テナーのワンホーン・カルテットにコンガが加わる。

このコンガの参加が効果的。軽快なコンガの響き。このコンガの響きとゆったりとした歩く位のリズムの演奏が、実に良い感じなのだ。ゆったりとしていて聴き心地良し。そして、ワンホーン・カルテットの「ワンホーン」のテナーが判り易くて爽快なのだ。
 

Arnett_cobb_party_time

 
アーネット・コブのテナーが良い味を出している。余裕のあるシンプルなブロウ。時に悠然と、時に雄々しくテナーを吹き上げる。特にバラード演奏は特筆に値する。こんなに心地良いテナーってなかなか無い。実に心地良い、ハードバップなテナーの響き。良い味だしているなあ。

加えて、バックのピアノ・トリオが良い響き。そこはかとなく漂うファンクネスが芳しいレイ・ブライアントのピアノ。堅実にベースラインを紡ぎ出すワンデル・マーシャルのベース、フロントのテナーを鼓舞するアート・テイラーの燻し銀ドラム。伴奏に長けた、軽快で爽快、判り易くて聴き心地の良いピアノ・トリオ。

良き響き、良きフレーズ、良きリズム&ビートが詰まった好盤です。軽快で爽快、判り易くて聴き心地の良い、湿度の高い、不快指数の高い夏に最適なメインストリーム・ジャズ。メインストリーム・ジャズの中にも夏向きのアルバムもあるんですね。この盤を聴いて改めて再認識しました。

 
 

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    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
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