2025年11月17日 (月曜日)

バトル・シリーズの3作目です。

相も変わらず、Smoke Sessions Records の新譜を聴く度に、まあ、よくこれだけコンスタントに、現代のネオ・ハードバップ、現代のコンテンポラリー・ジャズの好盤をリリースし続けているものだ、と感心する。しかも、ベテラン、中堅のジャズマンを登用して、時折、興味深いアレンジ、演奏編成を仕掛けるのだから、隅に置けない。

Eric Alexander & Vincent Herring『Split Decision』(写真左)。2024年7月4–6日の録音。ちなみにパーソネルは、Vincent Herring (as), Eric Alexander (ts), Mike LeDonne (p), John Webber (b), Lewis Nash (ds)。ヴィンセント・ハーリングのアルト・サックス、エリック・アレキサンダーのテナー・サックスの2サックスが2管フロントのクインテット編成。アレキサンダー&ハーリングのバトル・シリーズの3作目。

ジャズ界屈指のサックス奏者2人が、楽しくフレンドリーな「2管フロント」で、リラックスした、それでいて、大らかで力感溢れる2サックスのユニゾン&ハーモニー、時にサックスのバトル、時に、それぞれの歌心溢れるアドリブ・ソロを披露する。良い意味で競争力のある2人、活力のある、ハードバピッシュな演奏を競うが如く、時に、手を取り合って、展開する。
 

Eric-alexander-vincent-herringsplit-deci

 
この2管フロントのパフォーマンスを聴いて思うのだが、その2人の音には、もはやコルトレーンの影は無い。現代のネオ・ハードバックのサックスについては、コルトレーン・スタイルは「常識」となり、ジャズ・サックスの「基本」となった。コルトレーンの没後、約60年。ほぼ、そのサックス・スタイルの変遷をリアルタイムに感じてきたが、この盤の演奏を聴いていて、万感の想いがする。

名手2人のパフォーマンスである。悪かろう筈が無い。2人とも、それぞれの個性とテクニックのありったけを尽くして、サックスを吹きまくる。どこかで少しでもミスをしたら、相手に「切られる」、みたいな、心地良い集中を感じる良好なテンションと、和やかな熱気の中での素晴らしいパフォーマンス。Smoke Sessions Records の真骨頂である。

マイク ・ルドン、ジョン・ウェバー、ルイス・ナッシュのリズム・セクションも良好&好調。ルドンはマッコイ・タイナー張りのプレイで胸の空くようなプレイを展開、ウェバーのベースは堅実なビートを弾き出し、ナッシュのドラムが演奏全体のリズム&ビートをコントロールする。フロント2管を含めたクインテット、心地良いネオ・ハードバップを叩き出す。好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年1月 6日 (月曜日)

ハッピー・スイングなライヴ盤

ニューヨークはグリニッチ・ヴィレッジのジャズクラブ「Smalls Jazz Club」は、お馴染みの大御所から若手有望株まで、様々なミュージシャンが、夜毎ホットで多彩な演奏を繰り広げている、現代の名門ジャズ・クラブ。

2005年の再オープン後、2007年、ジャズ・ピアニストのスパイク・ウィルナーが音楽監督を務め、同クラブでのライヴ音源をアーカイブ化~CDリリースするために「Smalls Live」レーベルを設立、この「Smalls Jazz Club」でのライヴ音源を次々にリリースしている。

Harold Mabern『Live at Smalls』(写真左)。2012年6月22–23日、NYの「Smalls Jazz Club」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Harold Mabern (p), John Webber (b), Joe Farnsworth (ds)。多弁でR&B志向の「現代のファンキー・ピアニスト」のレジェンド、ハロルド・メイバーンのピアノ・トリオでのライヴ録音盤。

メイバーンのピアノは、ブルージーでゴスペルチックな和音の響きが特徴。その特徴を前提にバップなピアノをダイナミックに弾きこなす。米国ルーツ・ミュージックの響きがノスタルジックに響く。高速速弾きの演奏から、情感豊かなバラード演奏まで、幅広くバリバリと弾きこなす、高度なテクニシャンでもある。

メイバーンのピアノは、とにかく音数が多い。ブロックコードの応酬から、付帯音をあしらった、音数の多いテーマの装飾。バックのファンズワーズのドラミングは、「おかず多用」のファンキーなドラミング。
 

Harold-mabernlive-at-smalls

 
そして、音数の多いピアノとドラムが弾き進めるフレーズの「間」を埋める様な、ウェーバーのウォーキング・ベース。しかし、この音数の多さが、このトリオの演奏の、雰囲気良好な爽快感、疾走感につながるのだから、ジャズ演奏は面白い。

冒頭の「Alone Together」の導入部、最初の2分間のピアノ・ソロを聴けば、メイバーンのピアノの特徴が良く判る。手数の多い、装飾音の多い、それでいて、嫌味にならず耳障りにならない、高速バップなピアノ。

とにかく、メイバーンのピアノは「ご機嫌な」ピアノ。ゴスペルチックなハッピー・スインガー。そんなメイバーンのピアノがラストの「Afro Blue」まで、爽快感を振り撒いて疾走する。

特に5曲目「Boogie For Al McShann」から、続く「Sesame Street」(人気子供番組の曲で有名)の流れは聴きもの。ブギウギ調のピアノソロをガンガンに弾きまくり、「Sesame Street」をむっちゃ格好良い4ビート・ジャズに仕立て上げて、これまたガンガンに、ゴスペルチックでハッピー・スインギーなピアノで「キメまくる」。

良いライブ盤です。メイバーンは1936年3月生まれで、このライヴ演奏時は76歳。これだけの大ベテランの年齢なら、バップなフレーズにノスタルジックな雰囲気が漂いそうなものだが、このライヴ盤演奏では古さは全く感じない。

どころか、新しい響きに満ちている。アレンジが優れているのだろう。とにかく、メイバーンのライヴ・パフォーマンスは聴いていてとても楽しい。ハッピー・スインガーの面目躍如である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました! 

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年12月22日 (日曜日)

思索的で内省的な誠実テナー

優れた資質を持ちながら、今まで、マイナーな存在に甘んじていたり、なぜかメジャーにならないをジャズマンをスカウトするのに長けたレーベル「Smoke Sessions Records」。このレーベルのアルバムで、こんな優れたジャズマンいたんや、と、新しい優れたジャズマンに出会うことがよくある。ジャズはまだまだ深化し、まだまだ、その裾野は広い、ということを実感する。

Wayne Escoffery『Alone』(写真左)。2024年4月23日録音、NYの「Sear Sound Studio C」での録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Escoffery (ts), Gerald Clayton (p), Ron Carter (b), Carl Allen (ds)。エスコフェリーのテナー1管がフロントのワン・ホーン・カルテット。エスコフェリーの思索的で内省的なテナーがじっくりと味わえる。

ウェイン・エスコフェリー(Wayne Escoffery)は、米国のテナー・サックス奏者。1975年2月23日、英ロンドン生まれ。今年で49歳。高校3年の時に、ジャキー・マクリーンに出会い師事する。1997年にジャズパフォーマンスの学士号を首席で取得。1999年、NYに移り、2000年以来、彼はニューヨークでカール・アレン、エリック・リード、ミンガス・ビッグ・バンドと共に活動している。2001年に初リーダー作をリリース。以降、2年に一度の割合でリーダー作をコンスタントにリリースしている。
 

Wayne-escofferyalone

 
僕はこの盤を聴くまで、エスコフェリーのテナーに対峙したことが無かった。彼のテナーの音は「艶やか」。音は太く重心が低い。フレーズの運びは堅実、テクニックは確かで破綻がない。この盤での彼のテナーは、低音域の音を多く使いながらの、しっとりと落ち着いた吹き回しが歌心満点で、ついつい聴き込んでしまう。一言で言うと「とても良いテナー」。

そして、このエスコフェリーのテナーを支えるリズム・セクションが、クレイトンのピアノ、ロンのベース、アレンのドラムという、実に渋いハイセンスな人選。これが「Smoke Sessions Records」の良きプロデュースで、この上質なリズム・セクションに、エスコフェリーのテナーが映えに映える。ワンホーン・カルテットによる、フロント管の「映えさせ方」をよく心得た、心憎いリズム・セクションである。

じっくりしっとり艶やかに吹き上げられる「いそしぎ」や「星影のステラ」などスタンダード曲がとてもい良い雰囲気。思索的で内省的な誠実テナーの音色が、クールで落ち着いた雰囲気を増幅して、知らず知らずのうちに、スピーカーの前に陣取って、じっくりしっかり聴き込んでしまう。不思議な魅力のエスコフェリーのテナー盤。好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました! 

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年12月21日 (土曜日)

新鮮なバーンスタインの新盤

いつもいつも、Smoke Sessions Recordsからの新譜を聴く度に、まあ、よくこれだけコンスタントに、現代のネオ・ハードバップ、現代のコンテンポラリー・ジャズの好盤をリリースし続けているものだ、と感心する。

優れた資質を持ちながら、今まで、マイナーな存在に甘んじていたり、なぜかメジャーにならないをジャズマンをスカウトして、専属のリーダー人材とし、リーダー作を制作し、リリースする。そして、このリーダー作が、これがまあ、どれもが内容充実の好盤揃い。Smoke Sessions Recordsからは、まだまだ目が離せない。

Peter Bernstein『Better Angels』(写真左)。2024年4月1日、NYの「Power Station Studio A」での録音。ちなみにパーソネルは、Peter Bernstein (g), Brad Mehldau (p), Vicente Archer (b), Al Foster (ds)。人気ベテラン・ギタリスト、ピーター・バーンスタインの約4年ぶりのリーダーアルバムになる。

ピーター・バーンスタインは、1967年、NYの生まれ。今年で57歳。ブルース基調の正統派ジャズ・ギターの継承者、バーンスタインも完全に「大ベテラン」の仲間入り。

この盤でも、滋味溢れる、ブルース感覚溢れる、正統派の純ジャズ・ギターを聴かせてくれる。とにかく、ブルージーでジャジーでマイルドでスインギーな「バップ・ギター」が実に良い感じなのだ。
 

Peter-bernsteinbetter-angels

 
この盤では、バックのリズム・セクションが相当に充実している。ブラッド・メルドーのピアノ、ヴィセンテ・アーチャーのベース、アル・フォスターのドラム。一流ジャズマンが集う、オールスターのリズム隊。

このリズム隊の叩き出すリズム&ビートが、明らかに「新しい」響きを湛えていて、正統派なハードバップな演奏でありながら、古さを決して感じさせない。特に、メルドーの「バップなピアノ」が新鮮。スインギーにバップなドラムを叩きまくるフォスターも聴きもの。

「新しい」響きを宿したリズム隊をバックに、バースタインが、これまた「新しい」イメージのフレーズを弾きまくるのだから堪らない。演奏する内容は従来の王道ハードバップなのだが、響きとフレーズ、音の重なりが全く違う。

恐らく、モーダルなアドリブ展開が、弾き進めるフレーズのバリエーションを圧倒的に増やしている、と思われる。モーダルなジャズの恩恵を最大限に生かした「ネオ・ハードバップ」な正統派バップなジャズ・ギターが新鮮。

現代の正統派の純ジャズ・バップな演奏が新鮮。インプロビゼーションの展開のバリエーションが豊かで新鮮で、メインストリームなハードバップな演奏でありながら、古さ、懐かしさは全く感じない。新鮮で溌剌とした「ネオ・ハードバップ」な演奏は聴き始めると意外と「クセ」になる。現在、密かなヘビロテ盤になっている。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました! 

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年8月 4日 (日曜日)

初めて、エスコフェリーを聴く

Smoke Sessions Records は、コンスタントに、現代のネオ・ハードバップ、現代のコンテンポラリー・ジャズの好盤をリリースしている。今まで、影の存在に甘んじていた、優れた資質を持つジャズマンをスカウトして、専属のリーダー人材とするのに長けている。

今まで、Smoke Sessions Records からリリースされたアルバムのリーダーの中で、この人は誰、というジャズマンも多くいた。しかも、その、それまで無名に近かったジャズマンがリーダーを張ったアルバムについて、どれもが水準以上の優れた内容なのだから隅におけない。Smokeからの新盤については、折につけ、しっかりと内容確認をしている。

Wayne Escoffery『Like Minds』(写真左)。2022年3月31日、NYの「Sear Sound Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Escoffery (ts, ss), David Kikoski (p), Ugonna Okegwo (b), Mark Whitfield Jr (ds) のワンホーン・カルテットが基本。ゲストに、Gregory Porter (vo, on 4, 5), Tom Harrell (tp, on 2, 4),
Mike Moreno (g, on 1, 3, 8, 9), Daniel Sadownick (per, on 5), が入っている。
 
Wayne Escoffery(ウエイン・エスコフェリー)は、1975 年イギリスにて生まれ、後にアメリカに移住。
以降ニューヨークで活動し、グラミー賞受賞歴もあるサックス奏者/作曲家。リーダー作は、2001年の『Times Change』を手始めに、今回の2023年の『Like Minds』まで、11枚を世に出しているのだが、僕は彼のリーダー作に触れたことが無かった。
 

Wayne-escofferylike-minds

 
この新作『Like Minds』は、現代のネオ・ハードバップど真ん中な内容。非常に充実した、硬派で正統派な演奏内容は好感度アップ。リーダーのアルト・サックス担当のエスコフェリー、ピアニストとして評価の高いキコスギ、堅実ベースのウゴナ・オケゴ、躍動感溢れるドラミングで、演奏全体を鼓舞するマーク・ホワイトフィールドJr。まず、カルテットのメンバーが充実している。

エスコフェリーのアルト・サックスは、正統派でテクニック良好、突出した個性は無いが、総合力勝負の優れたもの。録音時47歳。テクニック優秀な中堅アルト・サックス奏者である。まず、このエスコフェリーのアルト・サックスが全編に渡って、良い味を出している。聴き応え十分のブリリアントで流麗で大らかなアルト・サックス。

キコスギのピアノが効いている。キコスギの柔軟度の高い、適応範囲の広い、現代のネオ・バップなピアノが良い。要所要所で、気の利いたフレーズを弾き回して、フロントのエスコフェリーのアルトを支え、オケゴのベース、ホワイトフィールドJrのドラムと共に、演奏全体のリズム&ビートを変幻自在に供給する。

ゲストの存在も良いアクセントになっている。現代のレジェンド級のバップ・トランペッターであるトム・ハレル、革新的なギタリストの マイク・モレノ、上質パーカッションの ダニエル・サドーニック、そして、 グラミー級ボーカリストの グレゴリー・ポーター。これらのゲストが、要所要所で極上にパフォーマンスを提供していて、このエスコフェリーのリーダー作の内容を更に充実させている。

4ビートを含むコンテンポラリ系の演奏がメインの、充実した内容のネオ・ハードバップ盤。特に現代のモード、ネオ・モーダルな演奏が秀逸です。破綻の無い、力感溢れ、流麗でコンテンポラリーな内容の演奏は、聴いていてとても心地の良いもの。本盤も、Smoke Sessions Recordsからの好盤の一枚です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年8月 3日 (土曜日)

ファンズワースのスモーク第3弾

Smoke Sessions Records。1999年、ニューヨークのアッパーウエストにオープンしたジャズクラブ「Smoke」のオーナーが2014年に設立したジャズ専門レーベル。

そのジャズクラブ「Smoke」に出演している人気アーティスト、特に、実績のある中堅〜ベテランのジャズマンをリーダーにしたアルバムをメインにリリースしているのだが、その内容は「昔の名前で出ています」的な旧来のハードバップな演奏を懐メロ風にやるのでは無く、しっかりと現代の「ネオ・ハードバップ」や「コンテンポラリーなメインストリーム系ジャズ」な演奏に果敢に取り組んでいる。

そんなSmoke Sessions Recordsの実績のある中堅〜ベテランのジャズマンの中に「Joe Farnsworth(ジョー・ファンズワース)」がいる。ファンズワースは、1968年マサチューセッツ州生まれの、今年で56歳になる中堅ドラマー。テナー・サックスのエリック・アレクサンダーのサイドマンとしての実績が主で、あまり目立った存在では無かったが、Smoke Sessions Records専属になってから、充実のリーダー作をリリースする様になり、サイドマンとしても充実のサポートを提供している。

Joe Farnsworth『In What Direction Are You Headed?』(写真左)。2022年8月31日、NYの「Sear Sound Studio C」での録音。ちなみにパーソネルは、Immanuel Wilkins (as), Kurt Rosenwinkel (g), Julius Rodriguez (ac-p, el-p), Robert Hurst (b), Joe Farnsworth (ds)。Smoke Sessions Recordsから放つ約1年半ぶりのリーダー3作目。

現代ジャズ・ギターの雄、カート・ローゼンウィンケルと切れ味良いアルト・サックスのイマニュエル・ウィルキンスがフロントを張るクインテット編成。この編成の顔ぶれを見れば、単純に現代のネオ・ハードバップはやらないよな、と思って、ワクワクしながらのアルバム鑑賞である。
 

Joe-farnsworthin-what-direction-are-you-

 
冒頭の「Terra Nova」から、非4ビートの現代のコンテンポラリー・ジャズ志向、アメリカーナ系の牧歌的フォーキーでリリカルで流麗な演奏が繰り広げられる。新しい感覚と新しい響き。良い。ネイチャーな音風景が心地良い。

2曲目「Filters」では、ローゼンウィンケルのギターがバリバリ、高速モダールなフレーズを吹きまくり、ウィルキンスのアルト・サックスが相対する。素晴らしいアドリブ・フレーズのバトル。そこに、ロドリゲスのアコピが高速な弾き回しで応戦する。この2曲だけで、このアルバムは隅に置けない、素晴らしい内容のアルバムであることを確信する。

現代版の「70年代ジャズ・ロック」な小粋でグルーヴィーな演奏もあれば、硬派で正統派な現代のネオ・ハードバップな演奏もあり、ダンディズム溢れる硬派なエレ・ジャズもありと、バラエティー溢れる内容だが、どの演奏も「現代のコンテンポラリー・ジャズ志向」で統一されている。とっ散らかった感は全く感じられないのが素晴らしい。

そんな「現代のコンテンポラリー・ジャズ志向」をガッチリ保持し、バンド全体に波及させ、フロントを鼓舞しているのは、リーダーのファンズワースのドラミングである。ファンズワースのドラミングは、コンテンポラリー感が半端無く、今までに聴いたことのない、アグレッシヴでポリリズミック、変幻自在で硬軟自在なドラミングで、現代のコンテンポラリー感を増幅している。

決して古さを感じさせない、現代のネオ・ハードバップの最先端の音の一つを聴かせてくれる充実した内容は見事。ローゼンウィンケルのギターとウィルキンスのアルト・サックス、そして、リーダーのファンズワースのドラムが、とりわけ「新しい」。このクインテット、パーマネント化されるのだろうか。僕はパーマネント化を望みたい。そして、同一メンバー、同一志向での次作を早く聴きたい。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2023年12月10日 (日曜日)

ヘンダーソンの円熟を聴く。

Smoke Sessions Records。コンスタントに良い内容のアルバムをリリースしていて、常々、感心している。

実績のある中堅〜ベテランのジャズマンをリーダーにしたアルバムをメインにリリースしているのだが、その内容は「昔の名前で出ています」的な旧来のハードバップな演奏を懐メロ風にやるのでは無く、しっかりと現在の「ネオ・ハードバップ」な演奏に果敢に取り組ませている。これが「当たり」で、あのベテランが、と感じる快作を多くリリースしている。

Eddie Henderson『Witness to History』(写真左)。2022年9月13日、NYの「Sear Sound Studio C」での録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Henderson (tp), Donald Harrison (as), George Cables (ac-p, el-p), Gerald Cannon (b), Lenny White (ds), Mike Clark (drums on 1)。

Eddie Henderson(エディ・ヘンダーゾン)は、エレ・ファンク出身のトランペット奏者。1970 年代初頭、ハービー・ハンコックの「ムワンディシ・バンド」のメンバーとして有名になり、その後、10年間を通じて、自身のエレクトリック・ジャズのグループを率いている。そして、ヘンダーソンは医学の学位を取得し、精神科医とミュージシャンとして並行してキャリアを積み、1990年代、アコースティック・ジャズに復帰している。
 

Eddie-hendersonwitness-to-history

 
エディ・ヘンダーソンのSmoke Sessions Records からの最新作、4枚目となるリーダーアルバム。冒頭「Scorpio Rising」は、エレ・マイルスを彷彿とさせる「エレ・ファンク」。ヘンダーソンのトランペットは、マイルスみたいなんだが、マイルスほど尖んがってはいない。エッジの丸い流麗なマイルス、って感じのトランペットが「今風」で良い。しっかり、現代のエレ・ジャズの雰囲気を醸し出す、なかなかのエレ・ファンク。

2局目「Why Not?」以降、エレ・ファンクから、ネオ・モードな演奏に変わるが、このモーダルな演奏の中で、ヘンダーソンのモーダルなトラペットが実に映える。流麗でドライなマイルスの様な、モーダルなヘンダーソンのトランペットが良い感じ。ただし、モーダルなフレーズはどれもが「今風」で、昔のモーダルなフレーズを模したりはしていない。この辺りに、ヘンダーソンの矜持を強く感じる。

マイルスのモード・ジャズからエレ・ファンクを踏襲しているが、マイルスのフレーズやアイデアを模すことなく、現代のエレ・ファンクやネオ・ハードバップの感覚をしっかりと踏まえて、ヘンダーソンなりのエレ・ファンク、ヘンダーソンなりのモード・ジャズを展開しているところに僕は感心する。今回のセッションに参加しているベテラン・ジャズマンも良い味を出している。

ヘンダーソンは1940年10月生まれ。録音時は83歳。もう大ベテランの域に達したヘンダーソン。今回のアルバムは「ヘンダーソンの円熟」を音に変えて我々に聴かせてくれた様な「快作」である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2023年5月 9日 (火曜日)

現代トロンボーン盤の優秀盤

毎月、ジャズの新盤については、まめにチェックしている。そんな新盤の中で、Smoke Sessions Recordsは、コンスタントに良い内容のアルバムをリリースしていて、常々、感心している。

我が国にはその名がなかなか伝わってこない、実績のある中堅〜ベテランのジャズマンをリーダーにしたアルバムをメインにリリースしている。が、その内容は「昔の名前で出ています」的な旧来のハードバップな演奏を懐メロ風にやるのでは無く、しっかりと現在の「ネオ・ハードバップ」な演奏に果敢に取り組んでいて頼もしい。

Steve Davis『Bluesthetic』(写真左)。2022年2月8日、NYの「Seer Sound Studio C」での録音。Smoke Sessions Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、Steve Davis (tb), Peter Bernstein (g), Steve Nelson (vib), Geoffrey Keezer (p), Christian McBride (b), Willie Jones III (ds)。トロンボーン奏者、スティーヴ・デイヴィスがリーダーの、ギター、ヴァイブ入りのセクステット編成。

リーダーのスティーヴ・デイヴィス(Steve Davis)は、1967年4月生まれ。今年で56歳。米国出身のジャズ・トロンボーン奏者。僕は、この人の名前をどこかで見たことがある、と思って調べたら「1989年にジャズ・メッセンジャーズに参加した」とある。

そうそう、ジャズ・メッセンジャーズにいたのね。思い出しました。そうそう、ワンフォーオールのメンバーでもあったのも、思い出しました。初リーダー作が1994年。これまでにリーダー作は20枚程度と、1.5年に1枚程度、コンスタントにリリースしているのも立派。

もともとトロンボーンという楽器の性格上、フロント管の一翼を担っているとは言え、ソロの「映え方」は、トランペットやサックスに比べると、どうしても劣る。速いフレーズが得意でないこと、ハイトーンが出ないこと、しかし、丸みのあるホンワカした独特の音色はトロンボーンならではのもので、一旦、填まると癖になる。
 

Steve-davisbluesthetic_20230509212701

 
この盤は、そんなトロンボーンをフロント管に「1管」としている潔さ。トロンボーンのワンホーン盤は、僕はあまり知らない。トロンボーンについては、先ほど上げた楽器の性格上の問題があるので、トランペットやサックスを加えて、主旋律のユニゾン&ハーモニーをクッキリ浮かび出させる工夫をするのだが、この盤ではそれはしない。トロンボーンの「聴かせる」テクニックがポイントになる。

そういう点では、この盤でのスティーヴ・デイヴィスは素晴らしいパフォーマンスで、フロント1管を吹き切っている。まず、テクニックが素晴らしい。ある程度の速いフレーズをしっかり吹き切り、様々なニュアンスの音色を吹き分け、切れ味の良い躍動感溢れる吹き回し。トロンボーンだけで、管楽器が請け負うニュアンスのフレーズを全て出し揃えている。ほんと上手い。

そんな優れたトロンボーンを引き立てる様に、ギターとヴァイブがしっかりと絡む。優れたスティーヴ・デイヴィスのトロンボーンを更に前面に押し出し、印象的に引き立たせる、そんな役割を持ったギターとヴァイブのブッキングが、この盤の成功の一番の仕掛けだろう。アレンジも優れているが、ギターとヴァイブをフロント・バックに据えることで、こんなにトロンボーンの音色が引き立つとは思わなかった。

バックのリズム・セクションも良好。ジェフ・キーザーのピアノがとりわけ良好で、印象的なフレーズをバンバン弾き回している。ベースのマクブライドは、フロント管が丸みのあるホンワカした独特の音色のトロンボーンなので、ブンブン、しなりのある重厚なベースラインはやらない。トロンボーンの音色を損なわない、優しくクッキリとしたウォーキング・ベースでしっかりと支える。これには感心することしきり、である。

トロンボーンがメインのネオ・ハードバップ盤として、白眉の出来です。久し振りに、爽快で心地良いジャズ・トロンボーンを聴かせて貰いました。現代ジャズにおけるトロンボーンがメインの優秀盤の1枚として良い内容だと思います。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2023年4月19日 (水曜日)

聴き直して「良いものは良い」

21世紀に入って、ジャズはまだまだ「深化」を続けている。20世紀、特に1950〜60年代の様に、ジャズの新しい演奏トレンド、例えば、モードやフリー、スピリチュアルなどの様な革新的な内容の演奏トレンドはもはや現れないとは思うが、これまでのジャズ演奏を彩った演奏トレンドを「深めていく」動きは衰えていない。

Bernstein, Goldings, Stewart『Perpetual Pendulum』(写真左)。2021年7月15ー16日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Larry Goldings (org), Peter Bernstein (g), Bill Stewart (ds)。ラリー・ゴールディングスのオルガン、ピーター・バーンスタインのギター、ビル・スチュワートのドラムで編成されたオルガン・ジャズ・トリオ。ジャケットを見ればすぐ判る「Smoke Sessions Records」からのリリース。改めての聴き直しである。

1980年代後半から、長年、セッションを重ねてきた3人のトリオ演奏。硬軟自在、緩急自在、変幻自在なスチュワートのドラミングが「肝」。そんな切れ味の良いドラミングに鼓舞されて、ゴールディングスがオルガンを、バーンスタインがギターを弾きまくる。魅力的なオルガンとギターのユニゾン&ハーモニー、そしてチェイス。曲毎に展開されるアドリブ合戦も聴いていて楽しいことこの上無い。
 

Perpetualpendulum_2  

 
演奏曲は全11曲。メンバーそれぞれの自作曲とスタンダード曲が上手く織り込まれていて、良い感じのアルバムに仕上がっている。それぞれのオリジナル曲の演奏も良い出来だが、とりわけ、スタンダード曲の解釈と演奏が白眉で、過去の演奏のコピーや焼き直しに陥っていないのには感心する。オルガン・ギター・ドラムのトリオ演奏は過去にごまんとあるんだが、この3人のスタンダード曲の解釈は新しい。

「Come Rain or Come Shine」は、オルガンの音色とギターの音色の特質を活かしたソロの受け渡しがユニーク。エリントンの「Reflections in D」は典雅なフレーズ、ロマン溢れる雰囲気が秀逸。バーンスタインの曲「Little Green Men」は劇的に突っ走る。タイトル曲「Perpetual Pendulum」は小粋な味のある演奏。いずれも、モーダルで理知的、それでいて、スインギーでブルージーな展開には感心させられる。

以前から「ごまんとある」オルガン・ジャズ・トリオだが、このバースタイン、ゴールディングス、スチュワートのトリオは、過去の音楽成果を焼き直したり、真似したりはしていない。紡ぎ出すフレーズの響きも新しいし、スタンダード曲の解釈も3人の個性を最大限に活かしたもので、他には無い響きがある。ネオ・ハードバップと一括りされそうな演奏であるが、実は内容的には「温故知新」。この現代ジャズにおける中核の3人、全く隅に置けない。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新。

  ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2023年4月17日 (月曜日)

ペイトンのマイルスへの捧げ物

1980年代半ば辺りから始まった「純ジャズ復古」のムーヴメント。ウィントン・マルサリスをリーダーとする「新伝承派」、ブルックリンを中心に、そのアンチテーゼなジャズを展開した「M-Base派」などが、新しいメンストリーム志向の純ジャズを展開した。そんな中、1990年代のジャズ・シーンに現れ出でたトランペッター、ニコラス・ペイトン。

ニコラス・ペイトンは、ウィントン・マルサリス、ウォレス・ルーニーらと共に、次世代のジャズを担うトランペッターとして、将来を嘱望された。21世紀に入って現時点では、ウィントンは目立った活動が聞こえてこなくなり、ルーニーは、2020年3月、コロナでの合併症で他界した。ニコラス・ペイトンも今年で50歳。ペイトンだけが、現時点で、コロナ禍にも負けず、コンスタントにリーダー作をリリースし続けている。

Nicholas Payton『The Couch Sessions』(写真左)。2022年7月12&13日、NYでの録音。Smoke Sessions Recordからのリリース。ちなみにパーソネルは、Nicholas Payton (tp, p, rhodes & clavinet), Buster Williams (b), Lenny White (ds)。リーダーのニコラス・ペイトンが、マルチ・プレイヤーとして、トラペットとキーボードを担当し、ベースにバスター・ウイリアムス、ドラムにレニー・ホワイトというレジェンド級のリズム隊を擁したトリオ編成。
 

Nicholas-paytonthe-couch-sessions

 
アルバム全体の雰囲気は「マイルス・トリビュート」。タイトル通り、居間で寛ぎながらのセッション風の演奏が心地良い。冒頭のジェリ・アレン作の「Feed the Fire」では、ペイトンのマイルス風のトランペットは勿論のこと、ハンコック風のキーボードにも良い味を出していて、特にエレピはとても良い雰囲気。マイルスのバンドに所属していた経験のある、ウィリアムスのベース、ホワイトのドラムも、そんな「マイルス・トリビュート」な演奏にしっかりと追従している。

4曲目のウェイン・ショーター作の有名曲「Pinocchio」では、冒頭、マイルスについて語っている(と思われる)ペイトンのトークには、ウィリアムスやホワイトも合いの手や笑い声で応じている様子が録音されている。そして、続く演奏は、もろマイルスのペイトントランペット、ロン・カーター的なウィリアムスのベース、トニー・ウィリアムス的なホワイトのドラムが、このモーダルな難曲をクールに格好良く解釈し、疾走感&爽快感溢れるパフォーマンスに展開する。

確かに「マイルス・トリビュート」な演奏ばかりなんだが、マイルス・ミュージックの物真似になっていないところが良い。マイルス・ミュージックの「肝」の部分はしっかり押さえているが、演奏全体の雰囲気はペイトンのオリジナル。ところどころに、トークやサンプリング的なヴォイスやヴォーカルが入っているところを問題視する向きもあるが、僕は気にならない。それだけ、3人のパフォーマンスの部分が優れていてクールで格好良い。好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新。

  ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

その他のカテゴリー

_Blue Noteの100枚 _ECMのアルバム45選 _この曲のドラムを聴け! _こんなアルバムあったんや _ながら聴きのジャズも良い _クリスマスにピッタリの盤 _ジャケ買い「海外女性編」 _ジャズ・ギターの名演 洋楽編 _ジャズ喫茶で流したい _トランペットの隠れ名盤 _ビートルズのカヴァー集 _ピアノ・トリオの代表的名盤 _フェンダー・ローズを愛でる _フュージョン・ジャズの優秀盤 _僕なりの超名盤研究 _和ジャズの優れもの _和フュージョンの優秀盤 _夜の静寂にクールなジャズ A&Mレーベル AOR Argo & Cadetレーベル Atlanticレーベル Bethlehemレーベル Blue Note 4000番台 Blue Note 4100番台 Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル DD・ブリッジウォーター ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・ゴールドバーグ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス イリノイ・ジャケー インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オズ・ノイ オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ サン・ラ・アーケストラ ザ・バンド シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジミー・ヒース ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ ジーン・アモンズ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・スティット ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャーリー・ヘイデン チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テッド・カーソン テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ドン・チェリー ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハワード・マギー ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・アップチャーチ フィル・ウッズ フォープレイ フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・アーヴィン ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ヘレン・メリル ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイク’・スターン マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マルグリュー・ミラー マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラリー・ヤング ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レス・マッキャン レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロベン・フォード ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 大村憲司 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー