初めて、エスコフェリーを聴く
Smoke Sessions Records は、コンスタントに、現代のネオ・ハードバップ、現代のコンテンポラリー・ジャズの好盤をリリースしている。今まで、影の存在に甘んじていた、優れた資質を持つジャズマンをスカウトして、専属のリーダー人材とするのに長けている。
今まで、Smoke Sessions Records からリリースされたアルバムのリーダーの中で、この人は誰、というジャズマンも多くいた。しかも、その、それまで無名に近かったジャズマンがリーダーを張ったアルバムについて、どれもが水準以上の優れた内容なのだから隅におけない。Smokeからの新盤については、折につけ、しっかりと内容確認をしている。
Wayne Escoffery『Like Minds』(写真左)。2022年3月31日、NYの「Sear Sound Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Escoffery (ts, ss), David Kikoski (p), Ugonna Okegwo (b), Mark Whitfield Jr (ds) のワンホーン・カルテットが基本。ゲストに、Gregory Porter (vo, on 4, 5), Tom Harrell (tp, on 2, 4),
Mike Moreno (g, on 1, 3, 8, 9), Daniel Sadownick (per, on 5), が入っている。
Wayne Escoffery(ウエイン・エスコフェリー)は、1975 年イギリスにて生まれ、後にアメリカに移住。
以降ニューヨークで活動し、グラミー賞受賞歴もあるサックス奏者/作曲家。リーダー作は、2001年の『Times Change』を手始めに、今回の2023年の『Like Minds』まで、11枚を世に出しているのだが、僕は彼のリーダー作に触れたことが無かった。
この新作『Like Minds』は、現代のネオ・ハードバップど真ん中な内容。非常に充実した、硬派で正統派な演奏内容は好感度アップ。リーダーのアルト・サックス担当のエスコフェリー、ピアニストとして評価の高いキコスギ、堅実ベースのウゴナ・オケゴ、躍動感溢れるドラミングで、演奏全体を鼓舞するマーク・ホワイトフィールドJr。まず、カルテットのメンバーが充実している。
エスコフェリーのアルト・サックスは、正統派でテクニック良好、突出した個性は無いが、総合力勝負の優れたもの。録音時47歳。テクニック優秀な中堅アルト・サックス奏者である。まず、このエスコフェリーのアルト・サックスが全編に渡って、良い味を出している。聴き応え十分のブリリアントで流麗で大らかなアルト・サックス。
キコスギのピアノが効いている。キコスギの柔軟度の高い、適応範囲の広い、現代のネオ・バップなピアノが良い。要所要所で、気の利いたフレーズを弾き回して、フロントのエスコフェリーのアルトを支え、オケゴのベース、ホワイトフィールドJrのドラムと共に、演奏全体のリズム&ビートを変幻自在に供給する。
ゲストの存在も良いアクセントになっている。現代のレジェンド級のバップ・トランペッターであるトム・ハレル、革新的なギタリストの マイク・モレノ、上質パーカッションの ダニエル・サドーニック、そして、 グラミー級ボーカリストの グレゴリー・ポーター。これらのゲストが、要所要所で極上にパフォーマンスを提供していて、このエスコフェリーのリーダー作の内容を更に充実させている。
4ビートを含むコンテンポラリ系の演奏がメインの、充実した内容のネオ・ハードバップ盤。特に現代のモード、ネオ・モーダルな演奏が秀逸です。破綻の無い、力感溢れ、流麗でコンテンポラリーな内容の演奏は、聴いていてとても心地の良いもの。本盤も、Smoke Sessions Recordsからの好盤の一枚です。
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