バートンの”新しい” ジャズロック
ゲイリー・バートン(Gary Burton)は、レッド・ノーヴォが始めた4本マレット奏法をより高度に開拓・確立させた、現代ジャズ・ヴァイブのイノヴェーター。純ジャズやニュー・ジャズ、フリー・ジャズと様々なジャズの演奏トレンドに対応するが、ジャズ、カントリー、ロックをミックスした、クロスオーバー・ジャズ志向のジャズロックなサウンドで最初の人気を確立している。
Gary Burton『Lofty Fake Anagram』(写真左)。1967年8月15–17日の録音。邦題は『サイケデリック・ワールド』。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Larry Coryell (g), Steve Swallow (b), Bob Moses (ds)。ジャズロック路線を確立したアルバム『Duster』から、ドラムが、ロイ・ヘインズからボブ・モーゼスに代わってはいるが、アルバム全体の演奏の雰囲気は「ジャズロック」。
改めて聴き直してみて思うのは、このゲイリー・バートンのジャスロックは「新しい」。それまでのジャズロックへのアプローチは、あくまで、ジャズからロックへの一方通行的アプローチで、フロントにもリズム隊にも「ジャズ臭さ」が残っている。が、この バートンのジャズロックへのアプローチは、ジャズとロック、双方向からのアプローチで「ジャズ臭さ」がほとんど感じられない。
リーダーのバートンのヴァイブは意外と「我が道を行く」。ジャズロックやクロスオーバー、ニュー・ジャズ、はたまた純ジャズと、様々なジャズ演奏のトレンドに対応するが、バートンのヴァイブの音自体はあまり「変わらない」。
この盤を「ジャズロック」たらしめているのは、まずはエレギのコリエルだろう。エレギのコリエルの音が、明らかに「ロック寄り」なのだ。
ロック、と言ってしまえば、あまりにギターテクニックが高度すぎるので「違うだろう」と指摘される懸念があるが、明かな「ロック寄りのジャズ・エレギ」とすれば、とても座りが良くなる。
ラストの「General Mojo Cuts Up」のフリーなインプロビゼーションにしても、コリエルのエレギをメインに聴いたら、このまま、プログレッシブ・ロックのジャンルに持っていっても違和感が無い。
フリーなインプロとしても、プログレの雄、フリーなインプロも得意とする「キング・クリムゾン」のそれより、内容は高度で内容があってハイテクニック。やっぱり、この「General Mojo Cuts Up」の演奏は、ジャズをベースに持った優れたミュージシャンだけが成せる技なんだろうな、と感心しながら、耳を傾ける。
従来の「ジャズ臭さ」が希薄なスワローのベースとモーゼスの、ニュー・ジャズ的グルーヴ感溢れるリズム&ビートも貢献度が高い。やはり、この盤が「新しい」ジャズロックの響きを色濃く宿しているのは、コリエル=スワロー=モーゼスのリズム・セクションの個性が故であろう。そこに、普遍的なバートンのヴァイブが乱舞する。
別に、バートンは「サイケデリックなジャズロック」にフォーカスを当てている訳では無いので、邦題の『サイケデリック・ワールド』という表現はちょっと偏っていて誤解を生みやすい。「新しい」響きのジャズロックの音を「サイケデリック」の一言で括ってしまうことに無理がある。
ジャズとロックの融合、クロスオーバー志向の「新しい」響きのジャズロックの出現、と僕は解釈している。僕はこの盤を「新しい」ジャズロックの好盤の1枚と位置づけている。
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