2024年12月 8日 (日曜日)

テクノ+ジャズ+ロックな成果

今日も、メインストリームなジャズから外れて、1970年代後半から80年代前半の「日本のフュージョン」の話。今日のアルバムは、恐らく、我が国でしか成し得なかったであろう、真の「フュージョン(融合)」なアルバム。融合という表現が適切なのか、「異種格闘技」と表現したら良いか。とにかく、ユニークなクロスオーバー&フュージョン盤。今日も「大村憲司」がその主役である。

大村憲司。ロック〜クロスオーバー〜フュージョン系のギタリスト。大村憲司のデビューは、1971年の赤い鳥での初録音。 その後、YMOのサポート・ギタリストで活躍するなど、日本のポピュラー音楽を陰で支えた名ギタリストである。1998年11月18日、49歳で惜しくも他界。彼のリーダー作はたった4枚。そのうちこれは1981年に発表した3枚目のリーダー作。

大村憲司『春がいっぱい』(写真左)。1981年の作品。ちなみにパーソネルは、大村憲司 (g), 細野晴臣 (b), 高橋幸宏 (ds, perc, computer manipulate・back- vo), 坂本龍一 (key, perc), 矢野顕子 (p, back- vo), 岡田徹 (key), 清水靖晃 (ts), 羽山伸也 (perc), 松武秀樹 (computer programming)。細野、高橋、坂本、矢野、松武と当時、圧倒的支持を誇ったテクノ・ポップ・バンド「YMO」のメンバーが全面的にサポートに入っている。

サポート・メンバー8人のうち、5人が「YMO」関係者。加えて、大村自身も「YMO」のサポート・メンバーなので、よくよく見てみると、YMOのメンバー全員で、大村憲司がリーダーのアルバムを作った、といった方が早いかもしれない。そう、このアルバムは「ジャズ」と「ロック」と「テクノ・ポップ」が融合した、実にユニークなアルバムなのだ。
 

Photo_20241208200701

 
大村憲司のギターについては全く変わりが無い。ファンクネス希薄、テクニックに頼らない流麗でキャッチャーなフレーズ、マイナーに偏らずポップでポジティヴな弾き回し。いわゆる、和クロスオーバー&フュージョンなギターの音で弾きまくっている。が、サポート部隊のバック・バンドの演奏がユニーク。

サポート・メンバーそれぞれ、演奏者としての技量が飛び抜けていて、異種格闘技な他流試合についても全く厭わない。このアルバムでも、クロスオーバー・ジャズっぽいところ、ジャズロックっぽいところ、完全ロックなところ、そして、テクノ・ポップなところ、それぞれ、リズム&ビートも含めて、異なる音楽ジャンルの音が、坩堝の如く、融合し、有機結合している。テクノ・ポップとジャズとロックの融合。テクノ・ポップとの融合は、我が国以外、見当たらないのでは無いか。

テクノ・ポップと融合した、クロスオーバー&フュージョン・ジャズであるが、決して「際もの」な音では無い。テクノ・ポップと8ビートなクロスオーバー&フュージョンは「水と油」かと思ったが、意外とすんなり融合していて、違和感は全く感じない。

大村の「ファンクネス希薄、テクニックに頼らない流麗でキャッチャーなフレーズ、マイナーに偏らずポップでポジティヴ」なギターはブレが無くて、このアルバムの様々な音の要素が融合されているパフォーマンスを、しっかりと統一統率しているところは見事。

テクノ・ポップとジャズとロックの融合といったクロスオーバー&フュージョンなアルバム成果は、他の国では見当たらない。我が国独特の「異種格闘技」的な音楽成果である。我が国のクロスオーバー&フュージョンの音世界は実にユニークである。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年12月 7日 (土曜日)

この盤聴いて ”ケンジ・ショック”

少し、メインストリームなジャズから外れて、1970年代後半から80年代前半の「日本のフュージョン」の話をしようと思う。人気の高かったフュージョン盤ではなく、ちょっとマニアックな玄人好みのアルバムに目を向けてみる。

大村憲司『Kenji Shock』(写真左)。1978年作品。LA録音。ちなみにパーソネルは、大村 憲司 (g), Steve Lukather (g), Greg Mathieson, David Paich (key), Mike Porcaro, Alphonso Johnson (b), Jeff Porcaro (ds) etc.。伝説の「和クロスオーバー&フュージョン・ギタリスト」大村憲司の2nd.アルバム。

プロデュースはハービー・メイソン(Harvey Mason)。大村憲司の1st.アルバム『First Step』のリリースを待たずに、急遽、LAで録音。その為、全8曲中、1st.アルバム『First Step』と重なる曲が3曲、それ以外でも深町純のアルバムで演奏したものが2曲収録されている。純粋にこの2nd.アルバムの為に用意されたのは残りの3曲のみ。

急造感は否めないが、演奏メンバーは異なるので、演奏のテイストも当然異なる。流石にこちらは「LAフュージョン寄り」といった雰囲気で、これはこれで名演。

演奏メンバーについては、パーソネルを見渡すと、クロスオーバー&フュージョン+AOR畑の名うてのミュージシャンがズラリと名を連ねている。名を連ねているだけでなく、相当ハイテクでエグい演奏を繰り広げていて、聴いていて思わず「仰け反る」箇所がいくつもある。
 

Kenji-shock  

 
そんな中、大村憲司のギターは突出して絶品で個性的。演奏自体は、クロスオーバー&フュージョンのテイストだが、LAで録音しているにも関わらず、米国西海岸フュージョンの雰囲気に染まらず、あくまで、ファンクネス希薄、テクニックに頼らない流麗でキャッチャーなフレーズ、マイナーに偏らずポップでポジティヴな弾き回し。いわゆる、和クロスオーバー&フュージョンなギターの音がたまらなく良い。

そして、プロデューサーは、さすがの「ハービー・メイソン」。米国西海岸フュージョン風にアルバムをアレンジするのは容易かったのだろうが、大村憲司の、和クロスオーバー&フュージョンなギターの音を活かすべく、和クロスオーバー&フュージョンな音作りに舵を切っている。そして、それにバッチリ応えるバックバンドの名うてのミュージシャン達。全8曲、全て、素晴らしい演奏、和クロスオーバー&フュージョンなグルーヴで埋め尽くされている。

実は僕は「大村憲司」というギタリストの名前を、FMを通じて、この盤で知った。聴いてビックリ、タイトル通り「ケンジ・ショック」である(笑)。

最初は、米国西海岸フュージョンに新しいギタリストが出現したと思った。しかし、音のテイストが違う。ファンクネス希薄、テクニックに頼らない流麗でキャッチャーなフレーズ、マイナーに偏らずポップでポジティヴな弾き回し。そして、FMでギタリストの名前を聞いて二度ビックリ「知らん名前や」(笑)。

かなりマイナーな存在で、以前は音源入手が非常に困難な時期がありました、が、今では、音楽のサブスクサイトからダウンロードして聴くことのできる環境になりました。大袈裟ではなく、このアルバムは、日本のクロスオーバー&フュージョンの名盤の一枚でしょう。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年11月19日 (火曜日)

好盤・八木のぶお ”Mi Mi Africa”

日本のクロスオーバー&フュージョン・ジャズは、米国や欧州とは異なる独自の深化を遂げてきた様に思う。まず、ファンクネスは皆無、もしくは、我が国独自の乾いた爽やかなファンクネス。演奏テクニックは高度。R&B志向、ソウル志向はほとんど無く、ジャズとロックとのクロスオーバー、ジャズとAORとのクロスオーバーがメイン。そこに、ソフト&メロウ&スムースが添加されると「和フュージョン」。

八木のぶお『Mi Mi Africa』(写真左)。1979年の作品。ちなみにパーソネルは、八木のぶお (harmonica), 村上ポンタ秀一 (ds), 高橋ゲタ夫 (b), 安川ひろし (g), 倉田 信雄, 小笠原 寛 (key), ペッカー (perc), Rockwell Allstars (cho)。我が国を代表するハーモニカ奏者「八木のぶお」の初リーダー作。

よく見れば、兵士が肩から掛けているベルトリンクには弾薬ではなく、タイプの異なるハープ各種。そんなジャケットを見たら、何を狙ったクロスオーバー・ジャズなのか、皆目、見当がつかない。タイトルを見れば、いわゆるアフロ志向のクロスオーバー・ジャズなのかな、と思う。アフロ志向のクロスオーバー・ジャズといえば、渡辺貞夫『Kenya Ya Africa』を想起する。あの頃の渡辺貞夫は、アフリカ音楽志向だったなあ、とぼんやり思ったりする。

さて、この盤、ネットでの紹介キャッチが「母なる大地アフリカをテーマにミュージシャンそれぞれが想うアフリカを表現した企画盤」とあるように、確かに、基本、アフロ志向のクロスオーバー・ジャズの好盤である。
 

Mi-mi-africa

 
出だしは、アフリカンなグルーヴ溢れるパーカッションが出てきて、「いかにも」って感じになるのだが、すぐに、和ジャズ独特の乾いた爽やかなファンクネスと、現代のアフリカのイメージなのか、どこかアーバンな洗練されたグルーヴに乗ったリズム&ビートに変わって、それをバックに、八木のハーモニカが入ってくる。演奏全体のイメージは、やはり「アフロ志向のクロスオーバー・ジャズ」。

この冒頭のタイトル曲「Mi Mi Africa」のアフロな躍動感溢れるリズム&ビートが、アルバム全体の音志向を決定つけている。全編に渡って、情熱的な八木のハーモニカが秀逸。印象的なベースのイントロから入る、メロウ・グルーヴの「愛のテーマ」などは「アフロ志向のフュージョン」と言った趣き。

村上ポンタ秀一 (ds), 高橋ゲタ夫 (b), ペッカー (perc) からなるリズム隊が効いている。よくよく聴き耳を立てると、アフロなリズムだけでなく、ラテンのリズム、サンバのリズムが織り交ぜられている。これが、このアルバムの音世界が、どっぷり、ありがちな「アフロなクロスオーバー」に浸りきることを押し留め、あくまで、フラットな和製クロスオーバー&フュージョンのパフォーマンスに仕立て上げている。

アフロは演奏への「色づけ」にとどめ、芯は「フラットな和製クロスオーバー&フュージョン」。こんな、内容の濃い、洒落たクロスオーバー&フュージョン盤が、1979年にリリースされていたとは改めて驚く。日本のクロスオーバー&フュージョン・ジャズは全く隅におけない。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年11月 3日 (日曜日)

聴くべきは古澤のドラミング

1970年代後半から80年代前半にかけて、我が国のジャズ・シーンは、フュージョン・ジャズの大流行に並行して、メインストリームな和ジャズが、クロスオーバー志向を強めた異種格闘技な演奏展開や、フリー&スピリチュアル・ジャズの強化、という、米国や欧州とは異なる、独自の深化と分化を遂げていたように思う。

『12,617.4km 古澤良治郎の世界ライヴ』(写真左)。1980年の作品。ちなみにパーソネルは、古澤良治郎 (ds), 高橋知己 (ts), 廣木光一 (g), 大口純一郎 (p), 望月英明 (b) のレギュラー・バンドに、ゲストとして、山下洋輔 (p), 森山威男 (ds), 川端民生 (b), 大徳俊幸 (p), 向井滋春 (tb), 渡辺香津美 (g), 本多俊之 (as), 明田川荘之 (p), 三上寛 (vo, g) が入るという、錚々たるメンバーでのライヴである。

不思議な音世界のライヴである。ジャズを中心に置いてはいるが、他のジャンルの音と積極的にクロスオーバーした「異種格闘技」風の中身の濃い演奏がてんこ盛り。広い意味で「クロスオーバーな純ジャズ」だが、正当な内容の厚い、完全フリーな演奏もあって、ここまでくると、クロスオーバーというよりは、純ジャズをベースにした異種格闘技なジャム・セッションと形容して良いかもしれない。
 

126174km

 
ロックと融合したクロスオーバー・ジャズな展開もあれば、モーダルなジャズの展開もあり、どフリーでスピリチュアルな演奏もあれば、グルーヴィーな響きもあり、遂には、フォーク界の人と思われる三上寛が参加して、エモーショナルなボーカルで叫ぶ。一体何なんだ、この音世界は。ただ、演奏するミュージシャンが一流どころばかりなので、破綻がない。自らの得意とするジャンルの音をバンバン出しているのだから、悪かろうはずがない。

一番感心するのは、純ジャズをベースにした異種格闘技なジャム・セッションの中、様々なジャンル、様々な演奏トレンドの、それぞれ全く異なる内容にも関わらず、古澤のドラミングは揺るがないこと。どころか、その様々なジャンル、様々な演奏トレンドに適したドラミングを叩き出し、演奏全体のリズム&ビートをコントロールし、フロント楽器を鼓舞する。そして、この古澤の揺るぎないドラミングのお陰で、様々なジャンル、様々な演奏トレンドが詰まったライヴながら、アルバム全体に統一感が充満している。

古澤の柔軟で適応力抜群な、それでいて、個性はしっかりキープした、揺るぎのないドラミングは見事。このライヴは確かに、異種格闘技風のバラエティー溢れるゲストのパフォーマンスも魅力だが、やはり、聴くべきは古澤良治郎の見事なドラミングだろう。和ジャズに古澤あり。このライヴ盤を聴きながら、そんなことを強烈に再認識した。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 

2024年10月16日 (水曜日)

古澤良治郎 ”キジムナ” を聴く

まだまだ夏日が顔を出す、暖かいというか、蒸し暑い日が続く10月だが、真夏日以上という「酷暑」は去ったので、様々な類のジャズを聴く時間が増えた。特に、この10月は、何故だか判らないが、和フュージョンと合わせて、和ジャズの名盤・好盤を探索したり、聴き直したり。特に、学生時代から、若き社会人時代に聴きまくった盤を聴くことが多い。

古澤良治郎『キジムナ』(写真左)。1979年10月16~20日、東京、日本コロムビア第1スタジオでの録音。BETTER DAYSレーベルからのリリース。

ちなみにパーソネルは、古澤良治郎 (ds), 高橋知己 (ts, ss)、大口純一郎 (p), 廣木光一(g), 望月英明 (b) が、当時のレギュラー・クインテット。ここに、向井滋春 (tb), ペッカー (perc) らがゲスト参加している。

演奏全体の雰囲気は、メインストリーム志向のフュージョン・テイストな純ジャズ。もともと、リーダーでドラマーの古澤が、ジャンルの枠を超えて活動した、幅広い音楽センスの持ち主だったので、あまり、純ジャズとか、フュージョンとかに拘らず、当時、やりたい雰囲気のジャズをレギュラー・クインテットをメインに演奏した、という感じの「古澤印のコンテンポラリー・ジャズ」といったテイストだろうか。
 

Photo_20241016195001

 
冒頭のボッサ・リズムに乗った「エミ(あなたへ)」の洗練された演奏が心地良い。洗練された古澤のリズム&ビートに乗って、高橋のサックスがいい音出して、大口のシンセが官能的フレーズを連発し、廣木のエレギのストロークがボッサなリズム&ビートを増幅する。この冒頭の1曲を聴いただけで、この盤は「隅におけない」と思わず構える。

2曲目のタイトル曲「キジムナ」は、望月の旋律を担う流麗なベース・ソロが素晴らしく、大口のリリカルのアコピが、静的なスピリチュアルな雰囲気を醸し出し、そこに、高橋のテナーとゲストの向井滋春のトロンボーンが、エモーショナルなソロを展開する。そんなフロントのパフォーマンスをガッチリ支える古澤のドラムは見事。

3曲目の「青い種族トゥアレグ」は、タイトでエモーショナルな古澤のドラムが大活躍する、「和製スピリチュアル・ジャズ」な名演。続く「ビーバー」は、和ジャズ独特の「乾いたファンクネス」漂う、ダンサフルでクール&ファンキーなグルーヴ満載のジャズ・ファンク。そして、ラストの「暖かな午後」は、コンテンポラリーで高速&爽快なカリプソ・チューン。

フュージョン全盛期における、我が国のコンテンポラリー・ジャズの名盤だと思います。久しぶりに聴き直したのですが、やっぱり「良い」。リリース当時、カセットにダビングして、折につけ、聴き流していたのを思い出しました。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
  ★ AORの風に吹かれて 

   ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新
 
   ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
         エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

   ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 
東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 
 

2024年10月15日 (火曜日)

ゼロ戦『アスファルト』を語る

フュージョン・ジャズ時代、そのアルバムの成り立ちが変わっている例として、高中正義『オン・ギター』をご紹介した(2024年10月10日 のブログ記事・左をクリック)。この『オン・ギター』は、ギター教則本の付属レコードとして発表されたものだった。

ゼロ戦『アスファルト』(写真左)。1976年の作品。ちなみにパーソネルは、大谷和夫 (key), 長岡道夫 (b), 鈴木正夫 (ds), 佐野光利 (g), 菜花敦 (perc) 花野裕子 (vo)。バンド名が「ゼロ戦」。ユニークなバンド名なので、今でも記憶にある。なんせ、この「ゼロ戦」というバンド、そもそもが、オーディオ・システム・チェック・レコード向けに組まれた特殊プロジェクトである。

帯紙のキャッチが「録音、演奏技術の粋を集めた音高質を誇るアルバムついに完成 !!」。アルバムの頭に「オーディオ・コンポ・チェック・シリーズ」とある。そう、このアルバム、「いしだかつのり」を中心としたプロジェクト「ゼロ戦」の '76オーディオ・コンポ・チェック・レコード第一弾である。

この「ゼロ戦」のファースト盤は、友人が持っていた。「オーディオ・コンポ・チェック・シリーズ」だから。お前に貸すから、自前のオーディオ・システムをチェックしろ、と言う。学生時代、貧乏だったので、必要最低限のシステム・コンポだったが、この盤をかけてみたら良い音がした。そのまま、レコードを返すのは惜しいので、上等なカセットにダビングして返した。よって、この盤、フュージョン全盛期にリアルタイムで聴いている。
 

Photo_20241015224701

 
オーディオ・システムのチェック用のアルバムとはいえ、内容は一級品。今回、CDで初めて復刻されたが、復刻のきっかけが「いわゆるクラブDJたちによって再評価が進んだ、レア・グルーヴ系フュージョン作品」の一部だったこと。確かに、この盤の音は、1976年当時に流行っていた、クロスオーバー&フュージョンとはちょっと違う、グルーヴ感豊かな、後のレア・グルーヴ志向の音をしていたように思う。

曲の冒頭から、タイトなドラム・ブレイク炸裂のジャズ・ファンク「サーキット」、叩きまくるドラム、ブンブン・ベースのラインが格好良いジャズ・ファンク「"スクランブル」、ミッド・テンポが心地よいフュージョン・チューン「スパニッシュ・フライ」、オーディオ・チェック用であろう、中盤のパーカッション・ブレイクが爽快な「ハンド・スラップ」、途中リズムがラテン調に変わる変則ラテン・フュージョンの「ペーパー・ドライバー」などなど。

サウンド的に、当時の和クロスオーバー&フュージョンとは一線を画した、ソフト&メロウとは全く無縁の、グルーヴ感溢れる強烈なサウンド。オーディオ・チェック用であろう、タイトで強靭なリズム&ビートが飛んだり跳ねたりのジャズ・ファンクがメインの音作りだが、ファンクネスが希薄な、乾いた切れ味の良いオフビートが、いかにも「和フュージョン」らしい。

「オーディオ・コンポ・チェック・レコード」ではあるが、単体のアルバムとして、十分に評価できる「和フュージョン」の好盤です。2017年にCDリイシューされた時はビックリしました。そして、今では、音楽のサブスク・サイトにも音源アップされているみたいで、良い時代になったもんです(笑)。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
  ★ AORの風に吹かれて 

   ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新
 
   ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
         エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

   ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 

Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 
東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 
 

2024年10月14日 (月曜日)

阿川の ”フュージョン・ボーカル”

フュージョン・ジャズの時代、インスト中心のアルバム作りが主流で、ボーカルがメインのアルバムは少なかった。ボーカル入りのアルバムはあったが、どちらかと言えば、ファンクネスな要素の彩りが欲しい時の「ソウル、R&B志向のボーカル」で、フュージョン・ジャズとして、「ボーカリストの歌を聴かせる」盤は希少だった。

阿川泰子『Lady September』(写真左)。1985年6~7月、東京での録音。ちなみにパーソネルは、バック・バンドとして、当時の阿川泰子のレギュラーバンドだった「松木恒秀グループ」、ブラジルから迎えたグループ「カメラータ・カリオカ」、吉田和雄率いる「スピック&スパン」が分担して担当している。

ボーカルはもちろん、阿川泰子。アレンジは野力奏一、吉田和雄、小林修が担当。このアルバムのメイン・コンセプトは「ノスタルジックなボサノバ」をメインとした、ブラジリアン・フュージョン。

バック・バンドの演奏は、フュージョン・ジャズど真ん中な演奏で、完璧フュージョンなバック・バンドのサポートを得て、阿川泰子が気持ちよさそうに、ボサノバ曲を唄い上げていく。

耽美的で流麗なシンセの前奏が、いかにも1980年代半ばの「フュージョン・ジャズ」という雰囲気がとても良い、アコギやベースを従えての、冒頭のイヴァン・リンスの「Velas(September)」が、このアルバム全体の雰囲気を代表している。
 

Lady-september

 
2曲目「When You Smiled At Me」は、8ビートな爽快感溢れるボサノバ&サンバなグルーヴが心地良いアップ系だが、ファンクネスはほとんど感じられない、それでいて、小気味の良いオフビートが、演奏全体の疾走感をさらに増幅させる。典型的な「和フュージョン」な音作りで耳に馴染む。

3曲目の「Voo Doo」は、どこかディスコ・フュージョンっぽいアレンジがユニーク。4曲目「If You Never Come To Me」は、スローなボサノバ曲で、アコギの伴奏が。アコギのソロが沁みる。8曲目の「I’m Waiting」でも、松木恒秀の印象的なアコギ・ソロが聴ける。この盤の伴奏、アコギの音色が実に印象的。

フュージョンど真ん中のバック・バンドの演奏だが、テクニックに優れ、内容は濃い。伴奏だけに耳を傾けても、十分にその伴奏テクニックを堪能できる優れもの。そこに、ライトな正統派ボーカルの阿川泰子がしっとりと力強く唄い上げていく。聴き応え良好。収録されたどの曲でも、阿川のボーカルが映えに映える。アレンジ担当の面々の面目躍如であろう。

阿川のライトなジャズ・ボーカルの質、バックバンドの演奏の質、そして、その二つを効果的に結びつけるアレンジの質。この「3つの質」がバッチリ揃った、フュージョン志向の「ボーカリストの歌を聴かせる」盤として、優秀なアルバムだと僕は評価してます。

バブル全盛時代にリリースされた、美人シンガーの「フュージョン・ボーカル」盤なので、何かと「色眼鏡」で見られるが、内容はしっかりとしている。ながらジャズに最適かな。いやいや、対峙してジックリ聴いても、聴き応えのある好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
  ★ AORの風に吹かれて 

   ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

  ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と、
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 
 
Matsuwa_billboard
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4 
 

2024年10月13日 (日曜日)

野呂一生のファースト・ソロ盤

我が国を代表するクロスオーバー&フュージョン・バンドである「カシオペア」。意外と超ストイックなバンドで、結成時(1976年)から1989年までの野呂一生・櫻井哲夫・向谷実・神保彰によるメンバーでの第1期の活動の中で、10年以上、常にカシオペアはグループとしての活動を優先、ソロ活動は一切御法度という厳しい規律の上でバンド運営されていた。

1985年〜1986年、当初から期間を厳格に定めてソロ活動を容認したが、そのソロ活動も各自のソロアルバムを制作するだけに留める厳しいもの。しかし、その最初のソロ活動の中で、当時の我が国のフュージョン事情をよく反映させた、優れたソロ・アルバムが各メンバーからリリースされたのだから「さあ大変」(笑)。

野呂一生『Sweet Sphere』(写真左)。1985年5月のリリース。カシオペアのギタリスト野呂一生のファースト・ソロ・アルバム。パトリース・ラッシェンをはじめ、ネイザン・イースト、ジョン・ロビンソン、ポウリーニョ・ダ・コスタ、シーウインド・ホーンズといった一流ミュージシャンが参加したLA録音作。

1985年3月、野呂はロスの「スタジオ・サウンド」でレコーディングを開始。コーディネーターとして松居和が全面協力。またエンジニアは『EYES OF THE MIND』(1980年)でエンジニアを務めたピーター・チェイキンが担当。アルバムの音全体の「キメ」については、野呂とチェイキンのコラボでバッチリ決まっている。
 
Sweet-sphere
 
レコーディング方式としては、野呂が独りで作ってきた多重録音のデモ・テープとスコア譜を基に、演奏については、参加ミュージシャンの技量に任せる方法をとっている。これが正解だったみたいで、アルバム全体の雰囲気が、ハリのある爽快感溢れる西海岸フュージョン志向の「和フュージョン」なサウンドに仕上がっている。これが実に心地良い。

「和フュージョン」と言っても、野呂が所属するカシオペア・サウンドを前提としているのでは無く、あくまで、野呂オリジナルの「少しラフで、スムースで、爽快感&疾走感溢れる」L.A.テイストな「和フュージョン」なのが良い。それでないと、わざわざ、LAまで出向いて、ソロ・アルバムを制作する意味が無い。

演奏全体の雰囲気は、カシオペアの時の様に、アドリブ・ソロを弾きまくる展開はかなり少なく、バンド演奏全体のアンサンブル重視なのも、ソロ・アルバムならではの面白い変化。米国フュージョンっぽい、ボーカル入り曲や女性コーラスをあしらった曲もあって、1980年代前半の米国フュージョン・シーンの音をダイレクトに反映している。

アルバムの内容は、極上の「1980年代前半のフュージョン・ジャズ」。ファンクネスが希薄で乾いているところが、いかにも「和フュージョン」のテイストで、このアルバムを通して聴くと、1980年代前半の米国フュージョン盤そのものとは思えない。しっかりと、野呂オリジナルの「和フュージョン」のテイストが織り込まれていて、これが実に効いている。1980年代の「和フュージョン」の傑作の一枚でしょう。好盤です。
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました。
 
  ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』の
   記事をアップ。
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2024年10月11日 (金曜日)

高中の名盤『Brasilian Skies』

ここヴァーチャル音楽喫茶「松和」では、「夏だ、海だ、高中だ」ではなく、「秋だ、爽快だ、高中だ」というキャッチが蔓延している(笑)。とにかく、この2〜3日前から、ググッと涼しくなった関東地方。涼しくなって、空気が爽快になって、高中正義のアルバムの聞き直しの続きである。

高中正義『Brasilian Skies』(写真左)。1978年のリリース。リオデジャネイロの「PolyGram Studios」と、ロスの「Westlake Studios」での録音。さすが、フュージョン・ジャズ全盛時代、エレギのインスト盤は受けに受け、セールスも好調だったと聞く。この高中のアルバムもその例に漏れず、ブラジルと米国での「海外録音」。

パーソネルについては、曲毎に様々なミュージシャンを招聘していて、のべ人数にすると30名以上にあるので、ここでは割愛する。主だったところでは、日本人ミュージッシャンとして、坂本龍一、高橋ゲタ夫、浜口茂外也の名前が目を引く。後は、米国西海岸系とブラジル系のフュージョンのミュージシャンで固められている。
 

Brasilian-skies  

 
我が国を代表するスーパー・ギタリスト高中正義の4枚目のソロアルバム。タイトルを見ると、聴く前は、ブラジリアン・ミュージック志向のギター・フュージョンで固められていると思っていたが、意外と様々な傾向の演奏がごった煮で入っている。

初めてブラジルで本場のミュージシャンとプレイした曲たちも素晴らしいが、面白いのは、サンバ・アレンジを施された「スターウォーズのテーマ」や、ジャズの有名なスタンダード曲「I Remenber Clifford(クリフォードの思い出)」、高中オリジナルのディスコ曲「DISCO "B"」、高中節満載のしっとりした「伊豆甘夏納豆売り」など、とにかくごった煮(笑)。

しかし、ごった煮ではあるが、高中のギターの音は明らかに「高中の音」で、ごった煮の収録曲の曲想の中で、この高中のギターの音で、しっかり筋を通していて、この盤は意外と一貫性があって、高中のギターの音だけを愛でることができる様にプロデュースされている。高中正義の初期の名盤の一枚だろう。聴き直してみて、この高中のギターの「爽快感」が堪らない。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2024年10月10日 (木曜日)

異色の 高中正義 「オン・ギター」

この2〜3日、関東地方では気温がグッと下がって、昨日などは、11月中旬の陽気になって、ちょっと寒いくらい。慌てて、合物の服を出して、夏物のほとんどを衣替えである。これだけ涼しくなると、音楽を聴くのにも良い環境になって、夏には聴くのを憚られたハードなジャズやロックなども聴くことが出来る。

高中正義『オン・ギター』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、高中正義 (g), 石川清澄 (key), 細野晴臣, 高橋ゲタ夫 (b), 高橋ユキヒロ, Robert Bril (ds), ペッカー. 浜口茂外也 (perc)。イエロー・マジック・オーケストラから、細野晴臣と高橋ユキヒロが参加しているのが目を引く。

「夏だ、海だ、高中だ」と言われるくらい、高中のインスト作品って「夏向き」だと思うんだが、その演奏が持つ「切れ味の良い爽快感」がゆえ、僕は秋の真っ只中に、高中作品を聴くことが多い。今年の秋も、涼しくなってきたなあ、と思った瞬間から、「高中が聴きたい」となって、このアルバムをチョイスした。

このアルバム、ちょっとその成り立ちが変わっていて、高中正義のオリジナル作品として発表されたわけではなく、教則本の付属レコードとして発表されたもの。ちなみに、この「オン・ギター」は高中正義、「オン・・ベース」が後藤次利、「オン・ドラムス」が つのだひろ、だった。実は、僕はこの教則本の付属レコード・シリーズをリアルタイムで体験している(笑)。

教則本を読みつつ、この付属アルバムの演奏テクニックを聴いて、自分でも演奏してみる、ということだが、この『オン・ギター』に収録されている高中のギター・テクニックは、その水準が抜群に高くて、その様に弾きたくても弾けない(笑)。この教則本って、ギター初心者ではなく、ギター上級者向けだったんやな、と改めて思った次第。
 

Photo_20241010203101

 
実は、この教則本の付属アルバム、単体のオリジナル作品としても、十分に楽しめる内容になっている。収録曲は以下全8曲。高中オリジナルは1曲のみ。あとは、ロック&ポップスの名曲のカヴァー。

1.「Breezin'」~ ジョージ・ベンソン
2.「Blue Curaçaõ」~ サディスティックス
3.「Just The Way You Are」~ ビリー・ジョエル
4.「Mambo Jambo」~ Pérez Prado
5.「Samba Pati」~ サンタナ
6.「Rainbow」~ オリジナル
7.「That's The Way Of The World」~ EW&F
8.「We're All Alone」~ ボズ・スギャッグス

冒頭「Breezin'」から、もう悶絶もの。高中のギターが素敵に爽快に響く。流麗でキャッチャーなフレーズ。3曲目の「Just The Way You Are(素顔のままで)」は原曲は印象的なバラード曲だが、ここでは、ファンキー・シャッフルなアレンジでカヴァる。原曲がテーマの旋律がしっかりしているので、ファンキーなアレンジにも耐えるのだから面白い。

エンディングの8曲目、ボズ・スキャッグスの名唱で誉高い「We're All Alone」。これは名演。高中の「泣きのギター」全開。思わすしみじみしてしまうくらいの「説得力」。この演奏こそ、秋の真っ只中で聴く「高中ギター」である。

ちょっと、その成り立ちが変わっているアルバムなので、ジャケ写とともに、ちょっと触手が伸びにくいのですが、内容は一級品。躊躇わず手にして良い秀作です。音楽のサブスクサイトにもアップされているみたいなので、今では意外と気軽に聴くことが出来る環境にあるみたいですね。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.08.24 更新

    ・イタリアン・プログレの雄「PFM」のアルバム紹介と
   エリック・クラプトンの一部のアルバム紹介を移行しました。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

A&Mレーベル AOR Bethlehemレーベル Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteの100枚 Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル ECMのアルバム45選 ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラウンド・マイルス アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テッド・カーソン テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フォープレイ フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大村憲司 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー