ネイティブ・サンの傑作ライブ
ネイティブ・サン(Native Son)。日本発のフュージョン・バンド。日本発のフュージョンと言えば、渡辺貞夫が端緒をつけて「大ブレイク」。日野皓正が追従、その傍らで、渡辺香津美が頭角を現し、増尾好秋がマイペースで走る。それから出てくるわ出てくるわ、日本ジャズ界挙げてのフュージョン・ジャズの疾風怒濤である。
それでも、ミュージシャン個人としてのフュージョンへのチャレンジはあったが、グループとして頭角を現したバンドは無かった。が、突如出現。ブレイクの切っ掛けは、テレビCMとのタイアップ。そう、ネイティブ・サンである。
ネイティブ・サンについては、2010年7月5日のブログ(左をクリック)でファースト・アルバム『Native Son』を、2010年7月22日のブログ(左をクリック)でセカンドアルバムの『Savanna Hot-Line』をご紹介している。この2枚のスタジオ録音アルバムは、とにかく当時のフュージョン・ジャズとしては秀逸の出来であった。当時、聴きまくったのは言うまでもない。
そして、当時、ネイティブ・サンのサードアルバムは、米国のライブ盤となった。記録では、1980年9月に、LAのベイクド・ポテト、NYのボトム・ラインほかで録音されたライヴサクである。その名も『コースト・トウ・コースト~Native Son live in USA』(写真左)。ジャズとしては珍しいLPでは2枚組の重厚な内容。よって、当時のバイト代では、おいそれ買えない。でも、バイト代が入ったと当時に、思い切って、即購入したのを覚えている。
トロンボーンの福村博の参加を得て、フロント2管となって、音が分厚くなったネイティブ・サン。うねるようなグルーブ感を全面に押し出すようになり、テクニックとスピード優先の「バカテク・フュージョン」とは一線を画した、演奏の根底にジャジーな要素をしっかりと残した、かなり純ジャズ寄りのフュージョン・ジャズとなっている。
演奏全体の雰囲気は、フロントが2管となり、ボワンと角の取れた音が特徴のトロンボーンを参入させたことにより、アンサンブルやハーモニーに余裕が感じられ、演奏全体のテンポもミッド・テンポの大らかさが感じられるものとなった。
楽器のそれぞれの音は、NYのフュージョン・バンドと比べると、ちょっと切れ味に欠け、ライブ演奏の割に、ちょっと大人し目の音になっている。LPを購入した当時は「なんだかゆるいなあ」と感じ、先のスタジオ録音アルバムの方が良いと感じた。エッジが立ってタイトな音の輪郭がぼやけた感じがした。これは楽器のアタッチメントの選定や、ボワンと角の取れた音が特徴のトロンボーンの参入によるものだろう。演奏全体のクオリティは高い。
どの演奏をとっても素晴らしい出来である。ネイティブ・サンの傑作ライブと言って良いだろう。本当に良い内容だ。いつ聴いても良いし、いつ聴いても聴き込んでしまう。
タイトで重心の低い、リズムセクションのうねるようなグルーヴにのせて、フロント2管が歌心あふれるソロを取る「ウィンド・ジャマー」、ソプラノサックスの音色が爽やかな「サバンナ・ホットライン」、ヒット・チューンの「スーパー・サファリ」。しかし、僕は、トロンボーンの福村博作の、メロウな雰囲気が魅力的な「オータム・ドリームス」をベストプレイに挙げたい。
他の演奏も活き活きと躍動感が溢れていて、いずれもフュージョン界に十分通用する、ハイレベルなバンド・サウンドが素晴らしい。加えて、特筆したいのは、本田竹曠のフェンダー・ローズ。彼のフェンダー・ローズの音色には今でもワクワクする。実に美しく、実に躍動感溢れるローズの音色である。
最近、このライブ盤を聴いて面白いなあ、と思うのは、このライブ盤の演奏って、今の耳で聴くと、ちっともフュージョン・ジャズしていないこと。フュージョン・ジャズというよりは、今でいうコンテンポラリー・ジャズ。それも伝統の純ジャズの要素を全面に出したコンテンポラリー・ジャズ。
当時は、電気楽器を使用し、8ビートを中心のリズムを採用していたら、フュージョン・ジャズという安直なジャンル分けが適用されていたが、今の耳で聴くとそうでも無い。十分に純ジャズな雰囲気を湛えた、秀逸なコンテンポラリー・ジャズだと僕は評価している。実は、このライブ盤の良さは「そこ」にあったりする。
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