活動前期の傑作『Consciousness』
最近やっと、パット・マルティーノ(Pat Martino)をしっかり聴き直している。しっかりディスコグラフィーのリストを作って、聴いたアルバム、未聴のアルバム、入手不可能なアルバムに分けて、聴いたアルバムについては、当ブログに記事化されていないものは順に記事化、未聴のアルバムは時間を見つけては聴き直している。
パット・マルティーノは、1944年8月生まれ。2021年11月、惜しくも77歳で逝去している。1967年の初リーダー作『El Hombre』から頭角を表し、1年に1枚のペースで順調にリーダー作をリリース、純ジャズ逆境の時代に、メインストリーム志向の「クロスオーバー・バップ」なエレギで、ジャズ・ギターの第一線を走っていた。
が、1976年、脳動静脈奇形による脳動脈瘤に倒れ、1980年に手術の結果、記憶を失う。しかし、家族の支え、コンピューターによる支援、自身のアルバムの聴取等、の努力で以前の記憶を回復。1987年の『The Return』で奇跡的にカムバックを果たす。以降、2004年には『ダウン・ビート』誌の「Guitar Player of the Year」を獲得するなど、第一線で活躍した。
Pat Martino『Consciousness』(写真左)。1974年10月7日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Pat Martino (g), Eddie Green (el-p, perc), Tyrone Brown (el-b), Sherman Ferguson (ds, perc)。ギターのマルティーノがリーダー&フロント、エレピ、エレベ、ドラムのエレ・リズム隊をバックにしたカルテット編成。
エレ・リズム隊のメンバー名には全く馴染みが無い。アルバム全体の雰囲気は、エレ・ジャズを基本に8ビートがメインの「クロスオーバー・バップ」な演奏の数々。
マルティーノのエレギ・フレーズには、サイケデリック・ロックな雰囲気や、プログレッシヴ・ロックな雰囲気が漂っていて、フレーズの雰囲気もアグレッシヴで切れ味良好。それまでにない、新しい響きのエレ・ジャズ・ギターであった。
収録曲を見渡すと、これが今の感覚からするとユニークで、コルトレーンのモード・ジャズ「Impressions」、ゴルソンのファンキー・ジャズの名曲「Along Came Betty」が収録されている。このモード・ジャズ、ファンキー・ジャズの名曲を、バリバリとバップなエレギで弾きまくっている。フレーズの雰囲気は明らかに「バップ」で、これがマルティーノのギターの最大の個性である。
特に、冒頭の「Impressions」と、6曲目のマルティーノ作の「On the Stairs」の弾きまくりは凄い。鬼気迫るが如く迫力満点、疾走感溢れる、かっ飛ぶが如くのフレーズで圧倒する。
3曲目のマルティーノの自作曲「Passata on Guitar」と、7曲目のジョニ・ミッチェルの名曲「Both Sides, Now(青春の光と影)」では、テクニックの確かさ、そして、従来の「バップ」とは異なる、1970年代にECMレーベルを中心に現れ出た「ニュー・ジャズ」志向のギターの響きと静寂で透明感のあるソロ・パフォーマンスが新鮮で個性的で絶品。
1970年代以降の「ニュー・ジャズ」志向のジャズ・ギタリストの中でも、先頭集団に位置するパット・マルティーノ。この『Consciousness』は、1976年、脳動脈瘤に倒れるまでの「マルティーノ活動前期」の傑作の一枚。とにかく、まあ、凄まじいテクニックと唯一無二のソロ・パフォーマンス、聴きどころ満載です。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて
★ まだまだロックキッズ 【New】 2024.01.07 更新
・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
記事をアップ。
★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新
・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
の記事をアップ。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から12年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
最近のコメント