2024年5月28日 (火曜日)

”TRIO GRANDE” ver.2.0 の音

コロナ禍をやり過ごし、現代のジャズについては、順調にニューリリースを継続している。安堵である。この5年ほどの傾向として、今までなら中堅どころだった、40〜50歳代の「ニューフェース」の好盤リリースが目につく。

そんな「遅れてきた」ニューフェースなジャズマン達は、20歳代後半から30歳台にも、コンスタントにリーダー作をリリースしたりと、ジャズの第一線で活動していた。が、その情報が何故か埋もれていたみたいで、最近、やっとサブスク・サイト等で積極的に紹介されるようになって、やっと陽の当たるところに出てきた格好である。

Will Vinson, Gilad Hekselman & Nate Wood『Trio Grande: Urban Myth』(写真左)。2023年1月27-28日、NYブルックリンの「Figure Eight Recording」での録音。ちなみにパーソネルは、Will Vinson (as), Gilad Hekselman (g), Nate Wood (ds)。イギリス生まれのサックス奏者、ウィル・ビンソン、イスラエル出身のギタリスト、ギラド・ヘクセルマン、米国出身のドラマー&マルチ・インストゥルメンタリスト、ネイト・ウッドの「TRIO GRANDE」の新作。

これまでの「TRIO GRANDE」のドラムはアントニオ・サンチェスだったけど、本作ではドラムとベースを同時演奏しながらシンセまで操作できるネイト・ウッドに代わっている。このウッドの存在が、「TRIO GRANDE」の音を大きく変化させている。
 

Will-vinson-gilad-hekselman-nate-woodtri

 
「TRIO GRANDE」の音は、創造的で柔軟で情緒豊かなコンテンポラリー・ジャズ。サウンド的には、ギラッド・ヘクセルマンのギターがリードしている感が強い。サウンドの基本は「イスラエル・ジャズ」。クールで躍動感溢れる、ちょっとくすんで捻れたヘクセルマンのギターが演奏全体をリードしていく。この「TRIO GRANDE」の音の基本は変わらない。

しかし、冒頭の「Urban Myth」で、ガツンとやられる。ベースの重低音とシンセの太いプログレッシヴな音色のアンサンブルが、独特なグルーヴ感を生み出し、ヘクセルマンのくすんで捻れたエレギの音と混じり合う。従来の「TRIO GRANDE」のイスラエル・ジャズ風であり欧州ジャズ風な従来の音世界に、最先端のコンンテンポラリーなエレ・ジャズ、そして、プログレッシヴ・ロックに至るまでの、新しい音世界との融合を実現、バンド独自のゴージャズな音世界を創造している。

2曲目「Ministry of Love」以降の音世界も、そんな現代の最先端のコンテンポラリーなエレ・ジャズ志向は変わらない。特にネイト・ウッドの参加、特に、ベースとシンセの音は、「TRIO GRANDE」のオーケストレーションを大きく進化させている。しっかりと地に足のついたスローな演奏から、弾けるダンサフルな演奏まで、幅広でバリエーション溢れる音世界は前作を上回る。

アントニオ・サンチェスがネイト・ウッドに代わった「TRIO GRANDE」。「TRIO GRANDE」の音世界は確実に進化していて、「TRIO GRANDE」ver. 2.0 と呼んで良い、そのバージョン・アップした、現代の最先端のコンテンポラリーなエレ・ジャズは、迫力満点、創造的で柔軟、情緒豊かでボーダーレス。我がヴァーチャル音楽喫茶『松和』ではヘビロテ盤になっている。好盤です。
 
 

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2022年6月 7日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・237

Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)。ヘクセルマンはイスラエル出身のジャズ・ギタリスト。ファンクネスやスイング感は皆無。リリカルで情緒豊かでネイチャー風、少し捻れていてエキゾチック。ちょっとパット・メセニーを想起する面はあるが、基本的に、今までの米国のジャズ・ギターには無い個性である。

Gilad Hekselman『Far Star』(写真左)。2020年3月〜12月にテルアビブ、2020年12月〜2021年6月にNY、2020年9月にフランス、3ヶ所での録音。ちなみにパーソネルは、Gilad Hekselman(g, key, b, whistle, tambourine, body percussion, voice), Eric Harland (ds), Shai Maestro (key), Ziv Ravitz (ds), Amir Bresler (do-production, ds, perc), Nomok (do-production & key), Nathan Schram (viola, violin), Alon Benjamini (ds, perc), Oren Hardy (b)。

ギラッド・ヘクセルマンの新盤になる。冒頭、口笛で始まる「Long Way From Home」から、哀愁感&寂寞感溢れる、マイナー調のリリカルで情緒豊か、エキゾチックな響き濃厚なサウンドに思わず耳を奪われる。今回の新盤では、ネイチャーな響きは薄れ、エキゾチック&エスニックなマイナー調の、不思議な浮遊感が際立つ哀愁フレーズがメインになっている。
 

Gilad-hekselmanfar-star

 
演奏の大本は、エキゾチック&エスニックなマイナー調の哀愁フレーズをベースにしたニュー・ジャズ風の展開だが、ところどころにフリーに傾いたり、アバンギャルドに走ったりと、意外と硬派でシビアな純ジャズ。過去のジャズの遺産の継承はあまり感じられない、プログレッシヴな、今まで聴いたことの無いフレーズがてんこ盛り。イスラエル・ジャズの個性である「音の広がりと間を活かした耽美的でリリカルな音世界」はしっかりと押さえられている。

3曲目の「I Didn’t Know」ではアコースティックギターを弾いているが、どこかノスタルジックでネーチャーな音世界が実に良い。この音の雰囲気は今までに聴いたことが無い。5曲目「Magic Chord」は奇妙なヴォイシングのコードの連続だが、耽美的で哀愁感溢れる雰囲気が独特。ラストの「Rebirth」は変拍子に乗って、耽美的でポジティヴな響きのエレギが芳しい。逆回転風の効果音も散りばめられ、実にミステリアスでプログレッシヴな音世界だ。

ギラッド・ヘクセルマンいわく「パンデミックに見舞われ、突然、この音楽を実現するために残されたのは、楽器とマイクとコンピューターだけだった」。コロナ禍によって、自室に閉じ込められたヘクセルマンが、先行きが見通せないまま、作り続けてきた音楽。様々な想いが交錯し、様々な想いが込められた楽曲。どこか敬虔でスピリチュアルな響きがするのは、そういう背景があったからなのだろう。現代ジャズの秀作の一枚である。
 
 

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2021年3月 8日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・200

何時の頃からか、イスラエル出身のジャズマン達による「イスラエル・ジャズ」が出現した。最初は不思議な響きのする名前のジャズマンやな、なんてボンヤリ感じていたが、最近では、イスラエル・ジャズは、ジャズのサブ・ジャンルとして定着した感があり、コンテンポラリーな純ジャズ志向の中で、着々と成果を上げ、着々と深化を続けている。

Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)。ヘクセルマンはイスラエル出身のジャズ・ギタリスト。ファンクネスやスイング感は皆無。リリカルで情緒豊かでネイチャー風、少し捻れていてエキゾチック。ちょっとパット・メセニーを想起する面はあるが、基本的に、今までの米国のジャズ・ギターには無い個性である。

Will Vinson, Antonio Sanchez & Gilad Hekselman『Trio Grande』(写真左)。2019年4月18ー19日、NY、クイーンズの「Samurai Hotel」での録音。ちなみにパーソネルは、Will Vinson (sax, key), Antonio Sanchez (ds), Gilad Hekselman (g)。3人のメンバーの共同リーダー名義。ベースがいない、サックス+キーボード、ドラム、ギターの変則トリオ編成。

作品のキャッチコピーが「ニューヨークの現代ジャズシーンで最も独創的でエキサイティングなミュージシャン3人によるトリオ”TRIO GRANDE”のデビュー作品」。
 

Trio-grande-album

 
創造的で柔軟で情緒豊かなコンテンポラリー・ジャズ。3人の共同リーダーな作品ではあるが、サウンド的には、ギラッド・ヘクセルマンのギターがリードしている感が強い。サウンドの基本は「イスラエル・ジャズ」。クールで躍動感溢れる、ちょっとくすんで捻れたヘクセルマンのギターが演奏全体をリードしていく。

ヴィンソンのサックスも切れ味良く、スピリチュアルな響きがヘクセルマンのギターに効果的に絡む。このサックスとギターのアンサンブルの好調さが、この盤の即興パフォーマンスを引き締めている。

そして、リズムの要はサンチェスのドラム。フロントのギター、サックスの変幻自在なパフォーマンスをしっかりグリップし、リズム面ではしっかりとリードしている。このサンチェスのドラミング、聴きものである。

ヴィンソンは英国、ヘクセルマンはイスラエル、サンチェスはメキシコ系米国人。NYのクイーズで録音されているが、音の雰囲気は「イスラエル・ジャズ」であり欧州ジャズ風。多国籍でボーダーレスな、現在進行形のNYジャズの1形態がこの盤に記録されている。好盤である。
 
 
 

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  ・Journey『Infinity』1978

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  ・Yes Songs Side C & Side D
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  ・浪花ロック『ぼちぼちいこか』
 
 
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2019年7月16日 (火曜日)

「ヒーリング・ジャズ」の12ヶ月

激情に走らず、穏やかでモーダルな「印象的フレーズ」を展開しながら、時にフリーに傾くが、それは演奏の中のアクセントとしてアレンジされ、音の響きとフレーズからスピリチュアルな面を増幅させ「聴く者に訴求する」という最近のスピリチュアル・ジャズ。その「聴く者に精神的に訴求する、心を揺さぶる」スピリチュアル・ジャズとは違って、聴く者を気持ち良くさせ、心地良くさせ、心を癒す「ヒーリング・ジャズ」なるものも存在する。

Ben Wendel『Seasons』(写真左)。2018年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Ben Wendel (ts, ss, Bassoon), Aaron Parks (p), Gilad Hekselman (g), Matt Brewer (b), Eric Harland (ds)。リーダーのベン・ウェンデルはサックス奏者。テクニック良く、ブラスの輝きを振り撒きながら、透明感のある音でしっかりとサックスを鳴らす。ECMレーベルの御用達、ヤン・ガルバレクのサックスの音階を低くした様な音。

収録された曲名を見ると1月から12月まで、それぞれの月の名前を命名した曲が12曲続く。ベン・ウェンデルはカナダ出身、米国ニューヨーク在住なので、日本の様に明確に四季があって、その月毎に個性的な気候がある訳では無い。12の月の名前の曲それぞれに明確な違いがあるわけでは無いのだが、それはご愛嬌。「1月」から「12月」まで、一貫して、聴く者を気持ち良くさせ、心地良くさせ、心を癒す「ヒーリング・ジャズ」が展開されている。
 
 
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エリック・ハーランドのドラム、マット・ブリューワーのベース、それにアーロン・パークスのピアノ。このバックを司るリズム・セクションが良い。フロントのテナーとギターの様々なニュアンスに繊細に反応するリズム・セクション。見事である。しなやかで流麗な、それでいて様々なニュアンスに即興で反応する、実にジャズらしい自由な音空間が「ヒーリング効果」を醸し出す。とにかく聴いていて心地良いのだ。「ながら聴き」に最適である。

ウェンデルのサックスの官能的で心を心地良く揺さぶる音が良い。キレ味良く透明感豊か。様々な音の表情が豊かで、強めなリバーブをかけた幻想的なサウンドはヒーリング効果抜群の音。ギターのギラッド・ヘクセルマンもいい音出している。ウェンデルのサックスとの相性抜群で、ちょっとくすんだ拡がりのある個性的な音はウェンデルのサックスの音の傾向とは正反対。この正反対な音同士がフロントで絶妙なユニゾン&ハーモニーを奏でるのだ。堪らない。

資料にはチャイコフスキーの「四季」にインスパイアされた、とある。確かにコンセプトは同じ。チャイコフスキーは四季、ウェンデルは12ヶ月。コンテンポラリーなジャズ・サウンドで月々のそれぞれの「月の個性」を表現する。明確にそれぞれの「月の個性」が強く表現されているとは言い難い部分はあるが、1年の月の流れをトータルな「ヒーリング・ジャズ」として表現するという企画は一応の成功を収めている、と評価して良いのではないかと思います。
 
 
 
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2019年6月17日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・150

1960年代の終わり、マイルス・デイヴィスが創造したエレクトリック・ジャズ。今の耳で聴けば、旧来の純ジャズと新しいエレクトリック・ジャズとのバランスが絶妙。今の耳にも古さをあまり感じさせない所以である。最近のエレクトリック・ジャズは、全てが現在の新しい響きのみが満ちていて、旧来のジャズの要素の欠片もない。そういう意味では、旧来からの大ベテランのジャズ者の方々からすると馴染めないものかもしれない。
 
Gilad Hekselman『Further Chaos』(写真左)。今年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Gilad Hekselman (g, b), Rick Rosato (b), Jonathan Pinson (ds) の「gHex Trio」と Gilad Hekselman (g, b), Aaron Parks (syn,rhodes, p), Kush Abadey (ds) の「ZuperOctave」の2セットの使い分け。リーダーの「ギラッド・ヘクセルマン」は、イスラエル生まれ、NYでの活動がメイン、現在、注目を集めるジャズ・ギタリストの一人である。
 
少しノイジーで芯のあるエレギの音が個性。テクニックは抜群、アドリブ・フレーズはちょっとエスニックで流麗。くすんだエレギの音が独特な、どこか「パット・メセニー」を感じさせる音世界。僕はこのヘクセルマンのエレギが大好きだ。この新盤は全編トータルで40分程度。いわゆるCDサイズの「EP」になる。が、元々、40年ほど前、LP全盛の時代、LPの全編トータルの所要時間は40〜45分程度だったので、このCD-EP盤のトータル40分程度って、馴染みがあって違和感は無い。
 
 
Futher-chaos-gilad-hekselman  
 
 
このアルバムは、リズム&ビートを重要視しているようで、リズム&ビートに新しい響きが充満している。ジャズの命のひとつである「リズム&ビート」。この{リズム&ビート」に相当なレベルの意識を集中していることが聴いていて良く判る。この最新の響きを宿した「リズム&ビート」に乗って、ヘクセルマンのギターが乱舞する。限りなく自由度の高い、整ったフリー・ジャズの様な自由なフレーズの連続。
 
明かな新しい現代の「エレクトリック・ジャズ」である。自作曲はどれも秀逸な内容。これだけ個性の強いギターでありバンドである。自作曲が一番その個性が活きる。個性が手に取るように判る自作曲は楽しい。しかし、この2曲の存在にはビックリした。Weather Reportでのジャコの名演で名高い「Teen Town」のカヴァーが秀逸。エレクトリック・ジャズの楽しさが伝わってくる。
 
そしてラストの「Body and Soul」。この有名なジャズ・スタンダード曲が「ギラッド・ヘクセルマン」の手にかかると、こんなにコンテンポラリーで先鋭的な響きを持つ、現代のエレジャズ曲に変身するとは。驚きである。僅か40分のEPであるが、その内容の濃さはフルサイズのCDアルバムを凌駕する。現代の最先端を行く「エレギがメインのエレクトリック・ジャズ」。いやはや、素晴らしい新盤が出たもんだ。
 
 
 
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2019年3月23日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・143

久し振りに良い雰囲気のジャズ・ギターを聴いた気がする。Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)。ヘクセルマンはイスラエル出身のジャズギタリスト。今、NYで最も注目される若手ギタリストの一人。情緒豊かでネイチャー風、少し捻れていてエキゾチック。今までの米国のジャズ・ギターには無い個性である。
  
現代のNYのジャズのトレンドの1つに「イスラエル出身のジャズ・ミュージシャンの台頭」がある。アヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)、オマー・アヴィタル(Omer Avital)、エリ・デジブリ(Eli Degibri)、オズ・ノイ(Oz Noy)、サム・ヤエル(Sam Yahel)等々、優れた新しい個性のジャズメンがどんどん出てきた。今回のギラッド・ヘクセルマンもそんな中の一人である。
  
Gilad Hekselman『Ask for Chaos』(写真左)。昨年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Gilad Hekselman (g)をメインに、Rick Rosato (b), Jonathan Pinson (ds) ="gHex Trio"と、Aaron Parks (p,keys), Kush Abadeyb (ds, pads)="ZuperOctave" の2つのユニットを曲によって使い分けている。
  
 
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ヘクセルマンが自分のレーベルを立ち上げ、リリースした意欲作、3年振り、6作目のリーダー盤である。この最新盤は自らのレーベルからのリリースである。自分の表現したいジャズを存分に展開している様に感じる。彼のエレギの音を聴いての印象は「パット・メセニーとジョンスコを足して2で割った様な」個性に、端正なアドリブ・フレーズとほんのり明るく「くすんだ」トーン。
  
2つのユニットの使い分けが功を奏している。"gHex Trio"の演奏はシンプルで瑞々しく豊かな色彩感と情緒豊かでネイチャー風。心地良い透明感溢れる演奏は明らかに新しいイメージ。"ZuperOctave"での演奏は先鋭的な、現代ジャズの最先端な切れ味の良い演奏が展開される。ヘクセルマンは切れ味良く、少し捻れた浮遊感溢れるギターを弾きまくる。しかし、この2つの全く異なる個性的な演奏をヘクセルマンのギターがしっかりと統括する。 
 
2つのユニットの混在でありながら、アルバム全体に溢れる統一感。ECMレーベルの音世界に通じるものはあるが、欧州ジャズのウェット感は皆無で、乾いたクリスタルなトーンは新しい米国のコンテンポラリー・ジャズの音世界を感じる。ヘクセルマンのお陰で、久し振りに新しいジャズ・ギターに出会った気分。現在、僕がカート・ローゼンウィンケルと併せて、興味を持って聴いている、お気に入りのギタリストです。
 
 
 
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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

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