第2期RTF 『銀河の輝映』再び
チック・コリアは「リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return to Forever・以降、RTFと略)」を結成、それまでのジャズのトレンドを集約し、最先端のコンテンポラリーなメインストリーム志向の純ジャズを実現した。いわゆる「第1期RTF」である。
そして、チックは次の展開として「エレ・ジャズ」を選択。親分マイルスは、ファンクなエレ・ジャズでブイブイ言わせている。チックは「ハードなインスト・ロック」との融合を選択、ロックの象徴であるエレギを導入。ロック色を強めて、バンドのサウンド志向を「ハードなジャズ・ロック」に定める。第2期RTF である。
ハードな演奏内容ではあるが、収録されている演奏の旋律は「キャッチャーでメロディアス」。これがこのバンド独特の個性となって、このチック率いる第2期RTFは、当時最高の部類の「ジャズロック」バンドとして人気を獲得する。その最初の成果が『Hymn of the Seventh Galaxy』(1973年)であった。
Return To Forever『Where Have I Known You Before』(写真左)。邦題『銀河の輝映』。1974年の作品。改めてパーソネルは、Chick Corea (p, key, syn, perc), Al Di Meola (g), Stanley Clarke (b, key, electric chimes), Lenny White (ds, congas, bongos, perc)。ギターが、ビル・コナーズに代わって、アル・ディ・メオラ(以降、ディメオラと略)にチェンジ。「ハードなジャズ・ロック」志向がさらに濃厚になっている。
ジャジーで超絶技巧&正統派な、クロスオーバー&フュージョン志向のギタリストのディメオラに代わったおかげで、ガッチリと硬派でハードで超絶技巧な「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」な雰囲気濃厚。コナーズの時は、どこか「プログレ的な演奏」が見え隠れしていたが、この盤では、どこから聴いても、ジャズに軸足がしっかり残っている。聴き応えのある、硬派エレ・ジャズの傑作である。
チック御大のキーボードは、それはそれは見事なもの。シンセサイザーの使い方、テクニック、共に最高。とにかく超絶技巧。フェンダー・ローズ、ホーナー・クラヴィネット、ヤマハ・電子オルガン、アープ・オデッセイ、ミニムーグ等々。これだけ、電子キーボードを弾きこなせるジャズ・キーボーダーはいないだろう。
ジョー・ザビヌルもハービー・ハンコックも、もはや敵では無い(笑)。そして、この盤では、アコースティック・ピアノの音色も美しい。ジャズ界最高のマルチ・キーボーダーの面目躍如である。見事である。
第2期RTFの2作目だけあって、スタンリー・クラーク(以降、スタンと略)のベースとレニー・ホワイトのドラム、共に充実したリズム・セクションに仕上がっている。特に、叩きまくるレニー・ホワイトのグルーヴ感は素晴らしい。ホワイトのドラミングが、この第2期RTFの「ハードなジャズ・ロック」志向のグルーヴとなり、推進力となっている。
スタンのエレベも見事。大向こう張って前に出しゃばるのでは無く、バックに回って、しっかりとジャジーなビートを押さえており、このアルバムについて、ジャズ・ロックな雰囲気を濃厚にしている。スタンのエレベが、このアルバムをジャズ・ロックたらしめている。
そんなメンバー4人の個性が結集して、第2期RTFの「ハードなジャズ・ロック」を現出しているのが、ラストの演奏時間14分25秒の大曲「Song to the Pharoah Kings」。聴いていて「仰け反るほど」に素晴らしい。ディメオラの超絶技巧エレギが炸裂し、チックのシンセが唸りを上げる。スタンのエレベはジャジーなビートを繰り出し、ホワイトは独特のジャズ・ロックなグルーヴ感を振り撒きながら叩きまくる。凄まじい第2期RTFの「ハードなジャズ・ロック」。
この第2期RTFの2作目『銀河の輝映』は傑作。アグレッシブなパワー、シャープでスピーディーな展開、超絶技巧なテクニカルさが全編に溢れていて、第2期RTFの音世界、ここに完成、である。
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