1983年のスパイロ 『City Kids』
創り出す音世界は、フュージョン・ジャズの音世界の代表的イメージの一つで、フュージョン・ジャズを語る上で、スパイロ・ジャイラは避けては通れない存在。そんなスパイロ・ジャイラの1980年代のアルバムの一気聴きである。
フュージョン・ジャズ人気の後期は1980年代前半。それも大体、1982年くらいまでが、フュージョン・ジャズが「ウケていた」期間で、1983年以降、その人気はガタッと落ちていく。
Spyro Gyra『City Kids』(写真)。1983年のリリース。ちなみにパーソネルは、スパイロ・ジャイラとして、Jay Beckenstein (sax, Lyricon), Tom Schuman (el-p, syn), Jeremy Wall (ac-p, syn), Chet Catallo (g), Kim Stone (b), Eli Konikoff (ds), Gerardo Velez (perc), Dave Samuels (marimba, vib)。加えて、ゲスト・ミュージシャンを多数、招き入れている。
1983年リリースのスパイロ・ジャイラの7作目。先にも述べた様に、1983年といえば、フュージョン・ジャズ人気がガタッと落ちて下降線を辿り出した頃。そんな環境激変の中でも、スパイロ・ジャイラは、自らのオリジナルなサウンドをしっかり維持し、さらに洗練している。
冒頭のタイトル曲「City Kids」を聴くと、スパイロ・ジャイラも他の例に漏れず、デジタル録音の洗礼を受けて苦戦しているなあ、と感じる。音のエッジが必要以上に立っていて、ビートが鋭角で攻撃的。そんな平板傾向な音の広がり、奥行きの中で、精一杯、ダイナミックで洗練された、ソフト&メロウで、ファンキーなビートの効いた、スパイロ・サウンドを創造している。
ベッケンスタインのサックスとサミュエルズのマリンバが織りなすカリビアンなアンサンブル。スパイロ・ジャイラの音の特徴はしっかり引き継ぎ、ギターが効果的にリフを刻み、エレベとドラムのリズム隊がそこはかとなくファンキーなリズム&ビートを刻む。
この盤のサウンドの特徴は「ライヴ感」。アルバムのライナーを読むと、ベッケンスタインいわく「プロデュースを控えめにして、ライブ感を出すことに主眼をおいてこのアルバムを作った」とのこと。確かに、その雰囲気はしっかり感じ取ることが出来て、5曲目「Islands in the sky」、続く「Conversation」は、おそらく一発録りな雰囲気で、ベッケンスタインの狙いは十分、実現されているのではないか、と感じる。
当時、流行のレゲエ・テイストのトロピカル・ナンバー「Nightlife」など、アレンジの工夫もあって、サウンドのマンネリ感は無い。我が国ではあまり人気の無いアルバムだが、米国では、ビルボード誌では、トップ200アルバム・チャートで 66 位、同誌のジャズ・アルバム・チャートで2位に達した、とのこと。
確かに今の耳で聴くと、なかなかに内容充実、スパイロ・ジャイラの個性をしっかり出しつつ、上質なフュージョン・ジャズが展開されている、と再評価。好盤である。
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