ピアノ・トリオの代表的名盤 116
当時、バリー・ハリスは65歳。円熟の境地、大ベテランの域に達した「バップ・ピアノの職人」の、成熟した味わい深いバップ・ピアノを聴くことが出来る。硬質でハッキリしたタッチの右手の弾き回しのリズム&ビートを、左手のコード弾きが押さえていく。左手のリズム&ビートに乗った、雄弁で流麗でバップな右手が唄いまくる。
『Barry Harris Live At "Dug"』(写真左)。1995年5月29日、東京新宿のバー「Dug」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Barry Harris (p), Kunimitsu Inaba (b), Fumio Watanabe (ds)。バップ・ピアノの職人、バリー・ハリスの、ベーシストの稲葉邦光とドラマーの渡辺文夫とのトリオでの東京におけるライヴ録音。
このライヴ盤では、硬質でハッキリしたタッチの右手の弾き回しが「心地良く丸くなった」。左手のコード弾きが「深遠な響きになった」。歳を取って衰えたわけでは無い。
バップ・ピアノとしての表現が「深くなった、深化した」と表現した方が適切だろう。指の弾き回しも衰えていない、リズム感は淀むことは皆無。バップ・ピアノの「正しく成熟した音」の好例の一つ。
収録曲は全10曲。2曲はバリー・ハリスの自作曲。残り8曲はスタンダード曲。有名どころから、渋い選曲まで、なかなか考えた選曲で、バリー・ハリスのバップ・ピアノが映える寸法。「Somebody Loves Me」「It Could Happen to You」「Cherokee」そして「On Green Dolphin Street」等々、絶品のスタンダード解釈とパフォーマンス。
バックを務めるリズム隊、ベーシストの稲葉邦光とドラマーの渡辺文夫も、バップなリズム隊を好演。出過ぎず、控えすぎず、バリー・ハリスの弾く曲想によって、自在にリズム&ビートをチェンジ・オブ・ペースし、適度にハリスのピアノの支え、鼓舞する。まるで、レギュラー・バンドの仲であるかのように。
『バリー・ハリス/ライヴ・アット・ダグ 完全版』(写真右)が、2014年6月にCD2枚組でリイシューされている。オリジナル盤とは当然曲順も違うので、聴いてみても、どうもしっくり来ない(笑)。僕はどうも、このオリジナル盤の方がしっくりくるみたい。
ハリスは、1993年に脳梗塞になり、復帰が危ぶまれたが、再起を果たした後の来日でのライヴ録音だったとか。そんなことを微塵も感じさせない、バリー・ハリスの快作である。
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