2020年3月13日 (金曜日)

パチモン盤では無い Cornell Dupree『Saturday Night Fever』

フュージョン・ジャズと言っても、後のスムース・ジャズの様に「ソフト&メロウ」を前面に押し出した、聴き心地重視のものより、純ジャズやR&B寄りの、ファンキーでグルーヴ感濃厚なものの方が好みである。バンドで言えば「スタッフ(Stuff)」や「クルセイダーズ(The Crusaders)」そして「ブレッカー・ブラザース(Brecker Brothers)」あたりが好みである。

Cornell Dupree『Saturday Night Fever』(写真左)。1977年の作品。ちなみにパーソネルは、Cornell Dupree (el-g), Buster Williams (b), Doug Wilson (ds), Mario E. Sprouse (key), Alex Foster (sax), Kiane Zawadi (tb), Earl Gardner (tp), Sally Rosoff (cello), Elliot Rosoff, Irving Spice (vln)。伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」のギタリスト、コーネル・デュプリーのリーダー作になる。

実はこの盤、タイトルを見れば、僕達の世代の人達は直ぐに判ると思うが、当時のソウル・ヒットのギター・インスト・カヴァーを多数収録〜カヴァーした企画盤なのだ。なんせタイトルが「サタデー・ナイト・フィーバー」である。あのジョン・トラボルタの映画で有名な「それ」である。僕はこの盤については、端っから「パチモン」と決めてかかっていた。
 
 
Saturday-night-fever_20200313195201
 
 
これが、である。フュージョン・ファンクの味付け濃厚な、秀逸なカヴァーになっているのだから、やはり、アルバムっていうのは、聴かなければ「判らない」(笑)。「パチモン」カヴァーとして危惧したのは「Stayin' Alive(Saturday Night Feverのテーマ曲)」「Slip Slidin' Away(Simon&Garfunkelのヒット曲)」そして「It's So Easy(Linda Ronstadtのヒット曲)」。この曲のタイトル見れば、フュージョン・ジャズの味付けのイージーリスニングか、って思いますよね。

が、これがそうはならない。コーネル・デュプリーの「ファンクネス濃厚でグルーヴ感溢れる」エレギのノリで、原曲の良いフレーズをファンキーに崩して、原曲のイメージを仄かに感じる位にデフォルメしている。このデュプリーのデフォルメが実に絶妙なのだ。これは譜面に書けるものではない。デュプリーの天性の「どファンキーなノリ」の成せる技である。「Slip Slidin' Away」なんて原曲のイメージはほとんど崩されているし、「It's So Easy」は力業での崩しで思わず納得。それでも原曲のフレーズはちゃんと残っているのだから隅に置けない。

この盤、「パチモン」盤だなんてとんでもない。コーネル・デュプリーの「ファンクネス濃厚でグルーヴ感溢れる」エレギを体感するのに、また、コーネル・デュプリーの「どファンキーなノリ」による崩し方を体感するのに適した盤だと思う。一部、弦が入ってポップなアレンジも見え隠れするが、コーネル・デュプリーのファンキーなエレギが入ってきたら、途端にそこは「ファンキーでグルーヴ感濃厚」なフュージョン・ファンクの音世界。素敵です。
 
 
 

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2017年2月 1日 (水曜日)

R&B系のフュージョンもう一丁

R&B系のフュージョン・ジャズと言えば、やはり僕にとっては、伝説のフュージョン・バンド「Stuff」そして、フュージョン・ジャズの筆頭ドラマー、スティーブ・ガッド率いる「The Gadd Gang」、この2つのグループが決定的存在である。

この「Stuff」と「The Gadd Gang」共通のギタリストといえば、コーネル・デュプリー(Cornell Dupree)である。デュプリーのエレギは明らかにファンキー、そしてR&Bなリズム感、いわゆる「ファンキー&ソウルフル」なフュージョン・エレギである。

「Stuff」にしたって「The Gadd Gang」にしたって、醸し出すR&B系のフュージョン・ジャズな雰囲気は、このデュプリーのエレギが決め手の一つである。デュプリーの「ファンキー&ソウルフル」なフュージョン・エレギがあってこそ、「Stuff」にしたって「The Gadd Gang」にしたって、R&B系のフュージョン・ジャズの代表的バンドとして君臨できるのである。

そんなデュプリーの晩年のアルバムがこれ。Cornell Dupree『Doin' Alright』(写真左)。2011年のリリース。「ファンキー&ソウルフル」なR&B系のフュージョン・ジャズの代表的ギタリスト、デュプリーの個性全開。「デュプリーならではの魅力満載なアルバム」である。とにかくご機嫌なR&B基調の演奏がズラリ。
 

Doin_alright_cornell_dupree

 
収録曲はオリジナル楽曲の他、レイ・チャールズ、ジミー・リード、ジミー・マクグリフ、キング・カーティス&キングピンズ、ハンク・クロフォード、ブルック・ベントン…等。R&B系のフュージョン・ジャズ好きにとっては笑いが止まらない。

もうたまらん内容である。やれ歳をとった老齢のプレイだの、フレーズが出てこないだの、ピッキングがいまいちだの、調子最悪だの、内容的に何かと揶揄されているみたいだけれど、いいじゃないか、とにかくデュプリーがデュプリーらしい盤である。それで良いではないか。

テキサス・ファンク&ブルース・グルーヴの極みである。細かいことを言わずに、盤全体の「デュプリーならではの魅力」をバクッと感じ取り楽しむアルバムだと思います。バリバリのデュプリーが聴きたければ、若い頃の好盤に耳を傾ければ良い。僕はデュプリーが楽しそうに「ファンキー&ソウルフル」なフュージョン・エレギを弾き楽しんでいる、この盤の雰囲気が大好きである。

ちなみに本作はコーネルが亡くなる2ヵ月前、テキサス州オースティンで録音された正真正銘のラスト・アルバム。2011年5月8日、肺気腫の為、鬼籍に入る。合掌。
 
 
 
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2012年8月10日 (金曜日)

よくぞリリースしてくれました

いきなり、唐突に発売されたライブ音源。1992年10月28日東京でのライブを収録したもの。あの伝説のフュージョン・バンド「Stuff(スタッフ)」のキーボード担当、Richard Tee(リチャード・ティー)の『Real Time Live In Concert 1992 - In Memory Of Richard Tee』(写真左)。

このライブ音源とはいかなるものか。ネットで調べると、ティーのラストアルバムとなった『リアル・タイム』の発売記念コンサートが、1992年10月28日に新宿のジャズ・クラブ「インディゴ・ブルー」で開かれたのだが、その時の録音テープが発見され、今回のCD化となった、とのこと。それにしては意外と音が良い。録音も下手に「デッド」にならず、良い感じのスペース感が魅力的。

冒頭の「That's The Way Of The World」から、こってこてにファンキーなティーのアコピが炸裂。粘りに粘るが疾走感抜群、こってこてにファンキーな割に音は鋭角でスッキリ。弾きまくるフレーズのレンジは大変広く、スケールの大きい音の展開。シンプルな割に重厚な響きが不思議なティー独特の和音。この1曲目のアース・ウィンド&ファイアーの名曲のカバー演奏を聴くだけで、ティーのアコピの独特な個性をしっかりと確認できる。

以降、「The Way」「My Funny Valentine」「Strokin'」「In Real Time」と、もうこれは「大リチャード・ティー大会」(笑)。どこもかしこも、あちらもこちらも、どこを取っても、リチャード・ティーのアコピがエレピが炸裂しまくっています。ちなみにパーソネルは、Richard Tee (p,key), Steve Gadd (ds), Ralph MacDonald (per), John Tropea (g), Will Lee (b), Ronnie Cuber (bs), 伊藤君子 (vo)。
 

Tee_real_time_live_1992

 
伊藤君子のボーカルは、ラストの「Bridge Over Troubled Water(明日に架ける橋)」に飛び入りしたもの。他のメンバーはと見渡せば、いやいや、長年、ティーと様々なセッションを繰り広げてきた、手練のベテラン・ミュージシャンがズラリ。

やはり、ティーのキーボードには、スティーブ・ガッドのドラムがピッタリ。素晴らしい相性で演奏しまくるのは。ラス前9曲目の「Take The A Train(A列車で行こう)」。ティーの初リーダー作『Strokin'』のラストでの名演で有名な大スタンダード・ナンバーだが、このライブ盤での「Take The A Train」も、それに負けず劣らず素晴らしい内容。ティーとガッドの息をもつかせない掛け合いと、適度なテンションが快適な「Take The A Train」。

ただし、ラップっぽい出だしで始まる、8曲目「It's Time(イッツ・タイム)」はメンバー紹介も兼ねた19分以上に渡る長尺演奏で、ラップっぽいティーのボーカルについても、取り立てて何かを感じるものでもなく、ちょっと単調なリズム&ビートも含めて、19分以上に渡る演奏はかなり冗長。記録としては良いが、アルバムとしては、オミットしても良かったのではないかと思う。

このライブが1992年10月28日。このライブの翌年、1993年7月21日にティーは他界する。それを考えると、このライブ音源はかなり貴重なものになる。よくぞリリースしてくれたものだ、と感謝する。

少しラフな部分があって、ライブ音源として秀逸、とまでは言えませんが、ティーのマニアにとっては、相当に貴重な、垂涎もののライブ音源であることには変わりありません。ジャズ者初心者の方々に対してはお勧めとはいきませんが、フュージョン者の方々に対しては、持っていて損は無い「ライブ盤の佳作」としておきたいと思います。

 

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2012年8月 9日 (木曜日)

スタッフの絶頂期の頃の記録です

「Stuff(スタッフ)」はニューヨークのファースト・コールのスタジオ系ミュージシャン6人によって結成されたオールスター・バンド。フュージョンのジャンルで、私の一番好きなバンドです。

メンバー構成は、リチャード・ティーのキーボード、ゴードン・エドワーズのベース、エリック・ゲイルとコーネル・デュプリーのツイン・ギター、スティーヴ・ガッドとクリス・パーカーのツイン・ドラムス。ツイン・ギター、ツイン・ドラムの構成が個性的で、独特の粘りのあるグルーブが見事なバンドでした。

その「Stuff(スタッフ)」が1978年に来日。ツイン・ドラムの片割れであるクリス・パーカーが病欠。これが残念ではあったが、残りのメンバーは元気に来日。確か、大阪にも来たはず・・・。行きたかった、聴きたかったが、まだ大学生なりたてで金が無い。泣く泣く見送ったことを覚えている。確か、中野サンプラザでのライブ演奏は、NHK−FMでオンエアされたのでは無かったでしょうか。確か、エアチェックして大切に夜な夜な聴いていた記憶があります。

さて、このスタッフの来日公演の演奏を記録したライブ盤がCD化されています。LPでの発売当時、日本でのみのリリースだった、1978年11月20日郵便貯金ホールでのライヴ盤。そのタイトルは『Live Stuff(Live in Japan)』(写真左)。2ndアルバム『More Stuff』 をリリースした翌年で、スタッフの絶頂期の頃の記録。『Live In New York』 と双璧をなす、スタッフの優秀ライブ盤。

冒頭の「Foots」から、既にコッテコテのファンクネス全開である。ガッドの縦ノリのドラミングは、異様なまでのファンキーなリズム&ビートを叩き出す。エリック・ゲイルとコーネル・デュプリーのツイン・ギターも、コッテコテ、パッキパキのファンキー・エレギを弾きまくる。そして、極めつけは、ティーのキーボード。ファンク以外何物でも無い、徹頭徹尾ファンキーなキーボード。
 

Live_stuff_in_japan

 
2曲目の「Junior Walker Medley: Road Runner/Pucker Up Buttercup」のメドレーもファンキーそのものの演奏。途中、長尺のガッドのドラム・ソロが繰り広げられるが、これはちょっと「蛇足」だろう。アルバム始まって2曲早々に、延々と続くドラム・ソロを持ってきた、アルバム・プロデュースはいただけない。

3曲目「Need Somebody」そして、4曲目のアルバム2つめのメドレー「Signed, Sealed, Delivered I'm Yours/Stuff's Theme」は、スタッフらしいファンクネス溢れるフュージョンなインスト・ナンバー。スタッフらしさがギッシリと詰まっている。

そして、面白いのは、5曲目の「Love of Mine」。ティーのボーカルをフィーチャーした演奏なんだが、聴衆の手拍子が「オン・ビート」、いわゆる「頭打ち」の手拍子である。ジャズは基本的に「オフ・ビート」、いわゆる「後ろ打ち」である。いやはや、この頃の日本の聴衆は、まだ、オフ・ビートな手拍子に馴れていなかった。その「オン・ビート」の手拍子に乗って、オフ・ビートを叩き出そうとするガッドは、実に叩き難そうにドラムを叩いている(笑)。

この日の「Stuff(スタッフ)」のメンバーは二日酔いやら疲れやらで、決してベストプレイではない、という解説を読んだことがありますが、改めて聴き直してみて、その状況というのは、CDの音を通して十分に想像できます。確かに、ところどころ、音がよれっていたり、大雑把に弾き倒してみたり、確かに、玄人スタジオ・ミュージシャン集団の演奏としては、荒過ぎ、かつ、大味なところは否めません。

しかし、その荒過ぎ、かつ、大味なところを補って余りある、エネルギッシュで、こってこてファンキーで疾走感溢れる演奏は素晴らしいものがあります。スタッフ者(ファン)であれば、このCDはマスト・アイテムです。とにかく懐かしい。この初CD化された盤を手に入れて、その演奏に聴き耳を立てた時、幾ばくか万感な想いが胸に去来しました。とにかく懐かしい、内容のあるライブ盤です。
 
 
 
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2012年1月26日 (木曜日)

泣きのギターが炸裂しまくり

1975年のソロ・デビュー作は『Forecast』(2010年7月11日のブログ参照・左をクリック)、翌1976年の『Ginseng Woman』はセカンド・アルバム(2011年1月11日のブログ参照・左をクリック)。その『Ginseng Woman』に続く、Eric Gale(エリック・ゲイル)自身3枚目となるリーダー・アルバム『Multiplication』(写真左)。

この『Multiplication』は、ゲイルのR&B志向が存分に反映されたアルバムだろう。ファンクネスの香り芳しく、ソフト&メロウなフュージョン炸裂なゲイルの代表作の一枚。

冒頭の「Morning Glory」はソフト&メロウで、落ち着きのあるジャジーなナンバー。ちょっとトロピカルな雰囲気漂い、ゲイルの官能的なギターが乱舞する。アレンジは「丸判りのボブ・ジェームス」。どっから聴いても、ボブ・ジェームスのアレンジ。弦の使い方、ブラスの重ね方、キーボードの手癖、どれを取っても「ボブ・ジェームスのアレンジ」。

ボブ・ジェームスのアレンジ満載なので、一瞬、これって「ボブ・ジェームスのアルバム?」って思ってしまいますが大丈夫です。Grover Washington Jr.のテナーも、存在感があって凄い威力です。一瞬、これって「グローバー・ワシントンJr.のアルバム?」って思ってしまいますが大丈夫です。エリック・ゲイルのソロはふんだんに入っています。

2曲目の「Gypsy Jello」は、1970年代のフュージョン・マニアであれば外せない名曲。Stuffのメンバー、Richard Teeのアルバムに収録されたり、あの伝説のN.Y.All Starsの来日公演でも演奏されていましたね。ゲイルの泣きのギターは炸裂しまくりです。聴き応え十分。ゲイルのファンクネス芳しいジャジーなギターは絶品。
 

Gale_multiplication_3

 
3曲目の「Sometimes I Feel Like A Motherless Child」は、トラディショナルな「黒人霊歌」。ホーンやストリングスの仰々しいアレンジも大変好ましく、ブルージーな泣きのギターには、コッテコテのデコレーショナルなアレンジが必須なのだ。

そして、4曲目の「Oh! Mary Don't You Weep」。コーラスをフィーチャーしたゴスペルな雰囲気抜群で、米国ルーツ・ミュージック好きならば、この演奏には「痺れる」こと請け合い。

アレンジが、コッテコテにファンキーで、コッテコテにゴスペルチックで格好良い。ゲイルのギターは泣きまくり、ティーのハモンド&ピアノのファンキーな響きは絶品中の絶品。まるで教会の残響を思わせるような録音と相まって、このゴスペルチックな演奏は、このアルバムのベストトラックだろう。

他の曲もどれもが良い内容です。とにかく、ギブソンのフル・アコースティック・ギターの鳴りや響きを活かしたゲイルの泣きのギターは唯一無二の個性。その抜群のタイム感覚と歌心のあるプレイは他の追従を許さない。1970年代のフュージョン・ジャズの中で、ゲイルの泣きのギターは「宝」である。

しかし、この『Multiplication』のアルバム・ジャケットは酷いなあ。どうやったら、こんなデザインが思い浮かぶのやら(笑)。
 
『Ginseng Woman』も酷かったが、この訳が判らない酷いジャケット二つをわざわざ併せて、新しいアルバム・ジャケットのデザインとしている『Ginseng Woman』と『Multiplication』のカップリング盤(写真右)は、酷いを通り超して凄いです(笑)。

 
 

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2012年1月11日 (水曜日)

弾きまくる「泣きのギター」

あの伝説のフュージョン・バンド「Stuff」が好きなフュージョン者の方であれば、この辺の「Stuff」のメンバーのソロアルバムに触手を伸ばしていた筈である。いや、手を伸ばしていなければ、「Stuff」マニアでは無い(笑)。

泣きのギター「エリック・ゲイル(Eric Gale)」。この人のギターは、ファンキーでメロウ、ブルージーで「むせび泣く」ように音が伸びる「泣きのギター」が個性。エリック・ゲイルのソロアルバムは、この「泣きのギター」と「ポップなソフト&メロウなフュージョン・ジャズ」の両方が楽しめる。

1976年の作品『Ginseng Woman』(写真)。エリック・ゲイルのセカンド・アルバムになる(ファースト・アルバムは『Forecast』: 2010年7月11日のブログ参照・左をクリック)。CTI時代から頻繁にエリック・ゲイルを起用してきたBob James(ボブ・ジェームス)がプロデュース・編曲・キーボード担当と八面六臂のバックアップ。

やけど、これはあかんやろう(笑)。冒頭の「Ginseng Woman」の前奏のアレンジから、ボブ・ジェームス編曲が「もろ判り」の、思いっきり「ボブ・ジェームズ節」が炸裂した、どう聴いても「ボブ・ジェームスがリーダー」の演奏(笑)。当のゲイルも、ボブ・ジェームスのリーダー作で客演した時の同じ雰囲気で「泣きのギター」を紡ぎ上げている(笑)。

ブラスやストリングスの音の重ね方、ボブ・ジェームスの手癖のように良く出てくる「お決まりのフレーズ」、伴奏の入り方、入れ方、どれをとっても、どれを聴いても、どこから聴いても「ボブ・ジェームス」である。ちょっと、この『Ginseng Woman』は、ボブ・ジェームスの色が出過ぎていると言えば、出過ぎている。

確かに、この『Ginseng Woman』というアルバム、ボブ・ジェームスの音が色濃く反映されていて、エリック・ゲイルのみならず、ボブ・ジェームスのファンの方々にもお勧めな内容なんですね、これが(笑)。でも、2曲目以降、確かに、ボブ・ジェームスの色は相変わらず濃いですが、エリック・ゲイルの「泣きのギター」も存分に楽しめる演奏がズラリと並んでいます。ご安心を(笑)。 
 

Ginseng_woman

 
2曲目の「Red Ground」なんぞは、実に良い雰囲気。明るい爽快感溢れる海を連想させる、ゆったりとしたカリビアンな演奏は、実に良い。リラックス感満載のトロピカル・ミュージックとでも表現したら良いでしょうか。この曲でも、ボブ・ジェームスのアレンジが光ります。

3曲目の「Sara Smile」は、ホール&オーツの名曲のカバー。そこはかとなく、レゲエ感覚のリズムを巧く取り入れたこの演奏もなかなかの好演。女性コーラスの入り方も、なかなか「アーバン」かつ、ブルージーな雰囲気で、ゲイルの「泣きのギター」が映える。このトラックは、ボブ・ジェームス臭さも希薄で、ゲイル色満開と言ったところか。

4曲目の「De Rabbit」以降、5曲目「She Is My Lady」、ラストの6曲目「East End, West End」まで、エリック・ゲイルが弾きまくる。「泣きのギター」満載のトラックが3曲連続、エリック・ゲイルの「泣きのギター」が心ゆくまで堪能できる。

それもそのはず、Steve Gadd(ds)〜Richard Tee(key)をフィーチャーしており、これってもう「Stuff」です。その「Stuff」の演奏に、独特のリズム&ビートと派手なブラスの効いた、ボブ・ジェームスのアレンジを組み合わせた、これはもう「無敵」の演奏です(笑)。

特に、5曲目のバラード「She Is My Lady」は絶品。リチャード・ティー独特の個性的なストロークの効いたアコピのバッキング。これって、「Stuff」のバラード・ナンバーのアプローチを想起させますね。そして、官能的で素晴らしいソロを聴かせているHank Crawfordの「泣きのアルト」が実に良い。ゲイルの「泣きのギター」と相まって、「泣きの相乗効果」抜群のジャジーなバラードです。

ボブ・ジェームス色が強かったり、ゲイルが所属していた伝説のフュージョン・バンド「Stuff」の色が強かったり、ゲイルのソロアルバムとしての、ゲイルならではの音作りを感じることは出来ませんが、ゲイルの好きなアレンジやリズム・セクションに乗って、弾きまくる「泣きのギター」は結構圧巻で、結構聴き物です。フュージョン・ジャズの佳作として、気軽に楽しめる一枚です。
 
 
 
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2011年10月26日 (水曜日)

スタッフで一番好きな盤 『More Stuff』

スタッフはフュージョン・バンドの中でも一二を争う「お気に入りのバンド」なんだが、そういえば、このブログで、そのスタッフの中で一番好きな盤について語っていなかった。

このスタッフというフュージョン・バンドにはホーンが無い。ジャズの語りの主役となるサックスやトランペットが無い。いわゆるジャズの世界のリズムセクションと呼ばれる楽器だけで構成されているのだ。つまりが、このリズムセクションが、圧倒的な馬鹿テクをもって、うねりまくるのだ。しかも、あくまで洒脱に、大人の音世界の中で「うねる」のだ。

そんな「うねりまくり」のスタッフの2枚目のアルバム『More Stuff』(写真左)。1977年のリリース。このアルバムでは、かなりソウルっぽく、ファンキーな色合いが前面に出ている。それが最大の魅力。

ひとつ間違えば「ポップな軽音楽バンド」と言われそうな、かなり、あからさまなソウルっぽさなんだが、スタッフというバンドは、やはり「ただ者」ではなく、その馬鹿テクと「うねり」で、きっちりとフュージョン・ジャズしてしまっているところが見事。とにかく、むっちゃファンキー。

このアルバムでも、やはり、主役は、キーボードのリチャード・ティーとドラムのスティーブ・ガッドで、このアルバムの全曲において、この2人は大活躍している。とりわけ、キーボードのティーは、歌まで披露しちゃっているのだ。

お世辞にもうまいとはいえないが、味のあるティーおじさんのボーカル。ラストの「Need Somebody」。とにかく渋い。おっと、ベースのゴードン・エドワーズも歌っているのを忘れていた。4曲目の「Love of Mine」。これもお世辞にもうまいとはいえんが、味のあるボーカルで、まあまあ聴けるから良しとしよう。
 

More_stuff

 
遡って、1曲目のティーのピアノを聴いてみると、ティーって、ピアノもうねりまくっている。フェンダーローズのように、朗々とねばり、うねるのだ。どうやって弾いているのかしらん。実に、ここちよく「ねばって」「うねって」いるのだ。

それと、このアルバムの最大のハイライトであり、フュージョンの名演のひとつであるのが、7曲目の「As」だ。この曲はスティービー・ワンダーの名曲であるが、この曲こそが、スタッフというバンドの特徴と良さを最大に引き出している。「うねりまくり」、「ねばり」、「ファンキー」にスイングする、見事な「スタッフ」がここにある。

しかし、このスタッフというバンドの再結成はもう無い。なぜなら、キーボードのリチャード・ティーとギターのエリック・ゲイルとコーネル・デュプリーは既に他界してしまっているからだ。今ではCDでしか「うねりまくり」のスタッフを聴くことができない。残念なことだ。

とにかくこのアルバムの魅力は、7曲目の「As」。そうスティービー・ワンダーの名曲のカバー「As」に尽きる。この「As」の3分28秒にスタッフの魅力の全てが凝縮されているのだ。
 
 
 
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2011年10月 5日 (水曜日)

「作り込まれた」感の 『Stuff It』

スタッフ3枚目のスタジオ録音盤である『Stuff It』(写真左)。なぜか、スタッフのファンの間でも、なかなかその名前が挙がらない、ちょっと可愛そうなアルバム。

出来が悪い訳では無い。しかし、デビュー作と前作は音作りの傾向はほぼ同じだったが、このサードアルバムは音作りの傾向が違う。プロデューサーが違うのが原因だろう。ライブ感が希薄になったというか、セッション的雰囲気が希薄になったというか、演奏全体の勢いが無くなったというか、大人しくなったというか、とにかく前作までとアルバム全体の雰囲気が違う。

ちなみに、ファースト・アルバムのプロデューサーは「トミー・リピューマとハーブ・ロヴェル」。セカンド・アルバムは「ヴァン・マッコイとチャーリー・チップス」。そして、このサード・アルバムの『Stuff It』は「スティーヴ・クロッパー」。

しかし、内容が劣っている訳では無い。ご機嫌ファンキーなノリは健在だし、R&Bでキャッチなインプロビゼーションも健在。しかし、前作までには無かった、ホーン・セクションやコーラスのアレンジやイージーリスニング・ジャズ的なアレンジがあしらわれており、恐らく、この「作り込まれた」感を違和感と感じて、ファースト・アルバムからのスタッフのファンは、この『Stuff It』を敬遠するのかも知れない。
 

Stuff_it

 
それでも、縦ノリファンキーなガッドのドラムは相変わらずノリノリだし、クリストファー・パーカーとのツイン・ドラムスも健在。ティーの「どファンキー」なキーボードは更に磨きがかかり、コーネル・デュプレーとエリック・ゲイルのツイン・エレギはどこから聴いてもファンクネスの塊。ゴードン・エドワーズのヴォーカルも渋くて素敵。

よくよく聴き直してみると、やっぱり、ホーンやコーラス、ストリングスのアレンジが邪魔かな。作り込まれた感とデコレーションな雰囲気が、どうも邪魔に感じる面がある。悪くはないんですけどね。無くてもええやないか、と思ってしまうんですよね。恐らく、この作り込まれた感がこの『Stuff It』の評価を下げているのだと思います。

ホーン・アレンジまでは、R&Bな雰囲気作りってことでまだ良いんですが、コーラスやストリングスはやはり「蛇足」。ゴスペルチックなコーラスを被せなくても、本来のスタッフの演奏自体が限りなくファンキーだし、ゆったりとした演奏でのティーのキーボードとコーネル・デュプレー+エリック・ゲイルのツイン・エレギのユニゾン&ハーモニーは限りなくゴスペルチックなのだ。

シンプルでノリノリのファンキー・フュージョンなバンドが、手厚いアレンジを施されてポップさが増したところが減点対象か。でも、スタッフのファンの僕にとっては、このポップさも余り悪いものとは感じないので、僕としては、このアルバムも好きです。まあ、好きなモノは、多少のミスマッチはあっても好きは好き。「あばたもえくぼ」。惚れたもんの弱みですね(笑)。

 
 
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2011年5月18日 (水曜日)

コーネル・デュプリーの訃報

GW前、元キャンディーズの田中好子さんの訃報も、昨日の児玉清さんの訃報もショック。学生時代から親しんできた芸能人が鬼籍に入るのは辛い。
 
ジャズ界でも訃報が相次いでいて、5月8日に、元「Stuff」のギタリスト、コーネル・デュブリーが亡くなった。お気に入りだっただけに、これまた辛い。晩年は肺気腫を患い、チューブに繋がれながら演奏、肺移植手術の費用を集めるために仲間がチャリティーライブをしていたりしていたようです。
 
コーネル・デュプリー(Cornell Dupree)は、ジャズ・ギタリスト。フュージョン・ギタリストと言った方が座りが良いかも知れない。あの伝説のファンキー・フュージョン・バンド「Stuff」のギタリストでもあり、その後、Stuffのメンバー有志中心で結成された「The Gadd Gang」のギタリストでもある。
 
コーネル・デュプリーのギターはとにかくファンキー。しかも、テレキャスの硬質の音と相まって、バキバキのファンキー。そして、弾き方に特徴があって、ちょっと個性的な「タメ」があって、その後、一気にアドリブ・フレーズを弾き切るって感じの、聴けば、おおよそ、コーネル・デュプリーやなこれは、と判るほど、個性的な弾きっぷりである。
 
デビュー・アルバム『Teasin'』 を1974年にリリース。ゴードン・エドワーズによるセッション・バンド、「エンサイクロペディア・オブ・ソウル」にも参加。このバンドが縁で、あの伝説のファンキー・フュージョン・バンド「Stuff」にギタリストとして参加。そして、「Stuff」の自然消滅の後、Stuffのメンバー有志中心で結成された「The Gadd Gang」のギタリストとして活躍。うん、この辺りが、デュプリーの一番輝いていた時期かもしれない。
 
追悼の意味を込めて、1974年にリリースのデビュー・アルバム『Teasin'』(写真左)を聴く。このアルバムは、いつ聴いても良い。デュプリーの個性が、デュプリーの特性がぎっしりと詰まっている。デュプリーの本質を理解したければ、真っ先に、このデビュー・アルバム『Teasin'』を聴くことをお勧めする。
 

Teasin

 
「Stuff」は、ファンキー・フュージョン・バンドとして、「フロント管楽器」無しのリズム・セクションのみで構成された、実に硬派なバンドだった。フレーズに頼ることなく、リズム・セクションのリズム&ビート、ノリ&うねりで勝負するバンドだった。これが、また凄いんだが。そこに、小粋なギター・ソロのフレーズが被るんで、僕たちは喝采の声を上げるのだ。
 
デビュー・アルバム『Teasin'』を聴いていると、もともとデュプリーは、「Stuff」よりもよりポップな、より大衆的で聴きやすい、一般万民に受け入れられ易いファンキー・フュージョンを狙っていた節がある。4曲目「Feel All Right」や7曲目「Okie Dokie Stomp」のポップで大衆的なファンキーなノリには、今でも「ニヤリ」としてしまう。僕も意外と好きなんですよ、このポップで大衆的なファンキーなノリが・・・。
 
そして、ラストの「Plain Ol' Blues」のコテコテなスロー・ブルースなノリは、いや〜捨て難い(笑)。これ、凄いですよ。大学時代から、この「Plain Ol' Blues」を聴く度毎に「感じ入ってしまう」のだが、いやいや、とにかく、コーネル・デュプリーのテレキャスの硬質でシャープなエレギの音で奏でられるブルースって、もしかしたら、唯一無二かもしれない。
 
昔々、この1974年にリリースのデビュー・アルバム『Teasin'』を、大学時代、大阪梅田の大手レコード店で見つけて(外盤だったか?)、大枚叩いて手に入れた覚えがある。そして、この『Teasin'』は、大学近くの下宿で、しばらくの間、ヘビーローテーションな一枚となって鳴り響いていた。
 
鼻高々だったなあ。この1974年にリリースのデビュー・アルバム『Teasin'』を所有し、これを毎日、聴き愛でている奴って、そうそういない、と鼻高々だった。
 
が、しかし、この『Teasin'』というアルバムが、フュージョン・ジャズの世界で、実に小粋で、実にマニアックな存在だということを理解する友人はいなかった。当時は、AOR全盛時代。ファンキー・フュージョンなギター・アルバムは、あまりにマニアック過ぎて、その「粋」を理解してくれる取り巻きはいなかった(笑)。
 
コーネル・デュプリー追悼と言うには、ちょっとお粗末なエピソードかもしれないが、僕たちにとって、コーネル・デュプリーの存在って、そんな存在だったのだ。実に小粋で、実にマニアックな存在。そして、僕は今でも、コーネル・デュプリーのテレキャスの硬質でシャープなエレギの音が大好きだ。

Cornell Dupree(コーネル・デュプリー)2011年5月8日逝去。享年68歳。ご冥福をお祈りします。合掌。
 
 
 
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2010年7月11日 (日曜日)

R&B調を歌うように弾くギター 『Forecast』

昨日、CDの棚卸しをして、CDの収納方法もちょっと変えて、フュージョン・ジャズのアルバムが取り出しやすくなった。加えて、棚卸しの結果、しばらく自分が所有していたことを忘れていたアルバムを発掘したりする(笑)。

そんな一枚が、Eric Gale(エリック・ゲイル)の『Forecast』(写真左)。そう言えば持っていたっけ、忘れてた(笑)。1973年1月の録音である。CTIの傍系であるKUDUからのリリース。もちろんプロデューサーはCreed Taylor(クリード・テイラー)。イージーリスニング系フュージョンである。ちなみにパーソネルは以下の通り。

Eric Gale (g); Elliot Rosoff, David Nadien, Gene Orloff, Irving Spice, Max Ellen, Harry Lookofsky, Joe Malin (vln); Alfred Brown , Emanuel Vardi (viola); Seymour Barab, George Ricci (cello); George Marge (fl); Hubert Laws (fl piccolo); Joe Farrell (fl, ts); Jerry Dodgion (as, ts); Pepper Adams (bs); Jon Faddis, Marvin Stamm, Randy Brecker, Victor Paz, John Frosk (tp, flh); Tony Studd (tb, bh); Garnett Brown, Alan Raph (tb); Bob James (p, el-p, org, syn, marimba); Gordon Edwards , Bill Salter (el-b); Idris Muhammad, Rick Marotta (ds); Artie Jenkins, Arthur Jenkins (cog, tamb); Ralph MacDonald (per) 。

いや〜、凄い数のメンバーですね〜。しかも、一人一人名前を確認していくと、なかなかの有名人が名を連ねています。これだけのメンバーを調達するって、かなりコストもかかったことでしょう。派手好きのクリード・テイラーらしい人のかけ方ですね。でも、フュージョンのアルバムの場合、意外と重要なのは、プロデューサーでは無く、ディレクター&アレンジャーの存在。このアルバムでは、若き日のボブ・ジェームスがその任に就いています。

冒頭の「Killing Me Softly With His Song(やさしく歌って)」の内容に騙されてはいけません。このロバータ・フラックの歌唱で有名なこの曲、ボブ・ジェームスとエリック・ゲイルが、実に俗っぽいアレンジに乗って、実に俗っぽく、歌の旋律を中心にギターを弾き進めていきます。目立ったアドリブも無い、アレンジされらストリングスのフレーズも陳腐。これが、当時、若手精鋭のボブ・ジェームスのディレクション&アレンジかと落胆しかけますが、このアルバムの真価は、2曲目のエリック・ゲイル作の『Cleopatra』から。
 

Eric_gale_forecast

 
2曲目の『Cleopatra』から、演奏の雰囲気がガラッと変わる。演奏の基本形は「R&B」に早変わり。バックのビートもイージーリスニングから、バリバリのR&Bに早変わり。格好良いゲイルのギター。ちょうど、ジャクソン5の「ABC」の様な、ポジティブで明るいR&Bなノリ。ボブ・ジェームスのキーボードも、完璧にR&Bモードに変更。1973年の録音なんだが、ボブ・ジェームスのキーボードの音は、後の「Mr.NY」と形容される、アーバンで洒脱な音が完全に確立されているのに、妙に感心する(笑)。

3曲目の「Dindi(ジンジ)」のアレンジが「ニクイ」。粋である。この曲はですね〜、確か、Antonio Carlos Jobim / Aloysio de Oliveira共作のボサノバの名曲中の名曲なんですが、これをボサノバ色を一切消し去って、スロー・バラード調に切々とギターで弾き上げていく。エリック・ゲイルの真骨頂。切々と歌うようにギターを弾き上げていくゲイルのギターのバックで、ボブ・ジェームスの実に趣味の良い、実に効果的な「そこはかとない」スパイスの様な弦のアレンジが、これまた「ニクイ」。そして、ボブ・ジェームスのキーボードが冴えに冴える。

4曲目の「White Moth」以降、「Tonsue Corte」「Forecast」と全て、エリック・ゲイル作のオリジナル曲が続くが、このゲイルのオリジナル曲の演奏が秀逸。4曲目の「White Moth」なんぞ、少しスペーシーなイントロから一転、アーバンなブラスの響きなんざあ、ボブ・ジェームス御大の音そのもの。そのボブ・ジェームスな音をバックに、エリック・ゲイルがR&B風のギターをバキバキパキと弾き上げていく。実に格好良い。このように、フュージョン初期の良い部分ばかりが、この後半の3曲に詰まっています。

アルバムに全体で35分に満たない、かなり「けちくさい」曲の収録が「玉に瑕」ですが、そんなことも全く気にならない位、このアルバムを埋め尽くす、フュージョン初期の良質の演奏が圧倒的です。エリック・ゲイルのR&B調を歌うように弾くギターが実に印象的で、何回も聴き直したくなる(出来れば1曲目除いて・笑)、そんな素晴らしい内容のアルバムです。 
 
 
 
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