アイク・ケベックの『春の如く』
先週の後半から、やっと気温が3月らしくなった。ここ千葉県北西部地方は、毎年、3月に入ってもなかなか寒気が去ることは無く、奈良の東大寺二月堂のお水取りが始まっても、まだ寒い日が続くのが通例。しかし、一昨日辺りからやっと気温が上がってきて、まだ少し肌寒さは残るが、仄かに春めいてきた。
Ike Quebec『It Might As Well Be Spring』(写真左)。邦題『春の如く』。ブルーノートの4105番。1961年12月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Ike Quebec (ts), Freddie Roach (org), Milt Hinton (b), Al Harewood (ds)。中間派の渋い渋いテナー・マン、アイク・ケベックがワン・ホーンのカルテット編成。キーボードはピアノでは無く、オルガンが入っている。
実に雰囲気のある演奏の数々。特に冒頭の「It Might As Well Be Spring(春の如く)」なんか、今の季節にピッタリの、ほんわか優しく、それでいて、ジャジーで「骨太な」渋いケベックのテナーがいきなり耳を引く。そして、何と言っても、フレディー・ローチのオルガンが良い。ケベックの優しく渋いテナーを包むように、引き立てる様に寄り添っている。
ケベックのテナーにローチのオルガンを充てたのが、この盤の大成功なところ。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンからして「してやったり」の気分だっただろう。テクニックやアイデアで度肝を抜くような派手さは無いが、ソウルフルで歌心溢れる、スインギーなケベックのテナーがこの盤全体に充満している。
この盤は、ケベックのテナーを愛でるべき盤だろう。1曲目の「It Might As Well Be Spring」もさることながら、4曲目の「Lover Man」でも、ケベックのほんわか優しく、それでいて、ジャジーで「骨太な」渋いテナーが堪能できる。5曲目の「Ol' Man River」の圧倒的なスイング感も特筆すべきもの。ケベックのゆったりとしたグルーブ感はたまりませんね。
タイトルの「It Might As Well Be Spring(春の如く)」も良いし、ケベックが公園の芝生の上で日なたぼっこをしている、緑色基調のジャケットも凄く良い。タイトル良し、ジャケット良し、演奏良し、この盤は、ケベックの代表作と言っても良い、普遍的なジャズが詰まった名盤だと思います。
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