「One For All」というグループ
我が国の場合、日本のレコード会社が提携している海外レーベルのアルバムについては、優秀なもの、売れ筋なものは、日本のレコード会社の販売戦略に乗って、日本の中でも人気盤になったり、話題盤になったりするのだが、全く提携関係の無い海外レーベルのアルバムについては、内容が優秀だろうが、我が国の中ではその情報が流通することが無かった。
しかし、1990年代終わり辺りから、インターネットの普及によって、日本のレコード会社が全く関係しない海外のジャズ・レーベルのアルバムについての情報が、リアルタイムに近い形で入手出来る様になった。そして、音楽音源のサブスク・サイトにその音源がアップされる様になって、海外レーベルの優秀盤を比較的容易に愛でることが出来る様になった。
One For All『What's Going On?』(写真左)。2007年5月29日、NYでの録音。Venus Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、Elic Alexander (ts), Jim Rotondi (tp), Steve Davis (tb), David Hazeltine (p), John Webber(b), Joe Farnsworth (ds)。
エリック・アレキサンダーのテナー・サックス、ジム・ロトンダディのトランペット、スティーヴ・デイヴィスのトロンボーンが3管フロントのセクセット編成。録音時点で、メンバーは皆、30歳台の若手バリバリで、ネオ・ハードバップな演奏ながら、演奏の展開としては新しい響きをこれでもか、という感じで繰り出していて爽快感抜群。昔のハードバップの音の響きを懐かしむこと無く、21世紀のハードバップな演奏・解釈は一聴に値する。
One For Allは、1997年にこのパーソネルのメンバーで結成された「ネオ・ハードバップ」専門のグループ。大変優れたメンインストリーム志向の純ジャズ・グループなんだが、我が国ではあまり馴染みが無い。日本のレコード会社の販売戦略に乗らなかったことが主原因なのだが、この大変優れたメンストリーム志向の純ジャズ軍団の音に触れていないのは、ちょっと残念なのことだと僕は思う。
あのヴィーナス・レコードからのリリースとなる『What's Going On?』であるが、従来のヴィーナス・レコードの音傾向を全く無視して、しっかりと One Fot Allの音を前面に押し出している。構成メンバー全員が当時にして「一国一城の主」的存在の若手中堅がメインで、テクニック優秀、ハードバップ的な音を意図的に出しつつ、スマートなオリジナリティーを発揮している様は頼もしい。
アレンジが実に良い。アレンジが良いから、メンバー各々のハイテクニックも活きる。タイトル曲の「What's Going On?」は、ソウル・ミュージックの雄、マーヴィン・ゲイの名曲なのだが、このソウルフルな名曲が、スインギーで4ビートなハードバップな演奏でカヴァーされるなんて思ってもみなかった。思わず「降参」。むっちゃ格好いいアレンジ。
ヴィーナス・レコードの音志向とはちょっと異なるのだが、そんなことお構いなしに、ひたすらネオ・ハードバップな演奏を繰り広げていく。あのヴィーナス・レコードでのアルバムからして、この新しくてコッテコテ「ネオ・ハードバップ」な内容は、メンバー相互の相性の良さと、お互いに切磋琢磨する前向きなスタンス、そして、メンバー全員の自信の賜だろう。
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