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2026年8月13日 (木曜日)

ハードバップ/スウィングの好盤

Riversideレーベルのカタログを順に見ていくと、ほどなく「マンデル・ロウ」に遭遇する。ブルーノートやプレスティッジでは全く聴いたことが無いギタリストの名前、マンデル・ロウはジャズ・ギタリスト。1922年4月21日ミシシッピ州ローレル生まれ。Wikipediaによると「ラジオ、テレビ、映画で、またセッションミュージシャンとしてもよく働いたアメリカのジャズ・ギタリスト」とある。

Mundell Lowe『A Grand Night For Swinging』(写真左)。1957年3月7日(tracks 1, 3, 4 & 7) と4月10日(tracks 2, 5 & 6)の録音。Riversideレーベルの「RLP 12-238」。ちなみにパーソネルは、Mundell Lowe (g), Billy Taylor (p), Les Grinage (b), Ed Thigpen (ds), Gene Quill (as :tracks 2, 5 & 6)。

ジャズ・ギタリストとして純粋に活動したのは、1950年代がメイン。1955年から57年の間に、リヴァーサイドから4枚のリーダ作をリリースしている。そのラストの4枚目のリーダー作がこのアルバムになる。心地良くエレガント、クールで軽快な音色のマンデル・ロウのギター。スローなナンバーの中、流麗なコードワークでじっくり聴かせる技に、意外に凄みを感じる。それは4枚目のリーダー作でも変わらない。
 

Mundell-lowea-grand-night-for-swinging

 
逆にこの盤では、クールで軽快なトーンで知られていたロウが、「もっとハードに、力強くスウィングできること」を証明するが如く、非常に小気味よくてハッピーな弾き回しをしているのが着目点。弾き回しの基本は「スウィング」。ハードバップど真ん中の時代の録音だから、この盤の演奏志向は「スウィング」である。クール・スタイルから、タフで泥臭いハード・スウィングへのステップアップをこの盤で図っている。

ビリー・テイラーの上品かつ軽快なピアノでのバッキングの妙、そしてエド・シグペンの正確&堅実なドラミングが絶妙に噛み合って、良好なリズム&ビートを叩き出している。アルト・サックスが入ったクインテット演奏では、クイルのアルト・サックスのエッジの効いたアグレッシブな吹奏が、セッションに良い意味での荒々しさと泥臭いファクネスを付加していて、ハード・スィングなセッション志向に貢献している。

全体的にミディアム〜アップテンポの楽曲が中心で、ジャズ初心者からギタージャズ好きまで、誰もが心地よく楽しめる「極上のスウィング・アルバム」。リラックスした雰囲気でありながら、ジャムセッションらしいスリリングな閃きが詰まった、1950年代のハードバップ/スウィングの好盤と言える。
 
 

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2026年8月 4日 (火曜日)

プレスティッジの中間派の好盤

ビ・バップの「聴かせる部分」をピックアップし、スイング時代のメロディアス&スインギーな音作りを施しつつ、ハードバップのフォーマットに適応した、いわゆる「中間派」の音である。ハードバップ時代によくあった、先進的な奏法&スタイルを追求するのではなく、あくまで、聴いて楽しむジャズとしての、スインギーなスタイルを踏襲した、いわゆる「中間派」の音世界である。

James Moody and His Band『Wail Moody, Wail』(写真左)。1955年12月12日の録音。プレスティッジの7036番。ちなみにパーソネルは、James Moody (ts, as), Dave Burns (tp), William Shepherd (tb), Pee Wee Moore (bs), Jimmy Boyd (p), John Latham (b), Clarence Johnston (ds)。ビ・バップ時代から活躍していた、音楽志向的には「中間派」のジェームス・ムーディーのアルバムである。

ムーディーのサックス、バーンズのトランペット、シェパードのトロンボーン、ムーアのバリサクの4管フロントのセプテット(七人編成)。フロントに4本の管楽器を配した、ブラスの厚みのあるユニゾン&ハーモニーと、活気あふれるアンサンブルが特徴。ムーディがビ・バップの熱気をそのまま残しつつ、ハード・バップへと移り変わるタイミングでの、ムーディーの音作りの志向が確認出来る好盤である。
 

James-moody-and-his-bandwail-moody-wail  

 
「ビ・バップの熱気をそのまま残しつつ」と表現されてはいるが、ビ・バップの演奏テクニック優先のアクロバティックな部分はそぎ落として、ビ・バップの前のジャズの演奏トレンドだった「スイング」の音作りを踏襲して、ハードバップの演奏フォーマットに適応した、ビ・バップのジャム・セッションの熱量と、スイングを踏襲した、ハードバップ対応な息の長いソロ・リレーを融合した、そんな感じがする音作りが実に雰囲気である。

ムーディーのサックスは、オールド・スタイルの吹奏。サックスの吹奏のお尻の部分に「ビブラート」がほんのりかかっている。大々的ではないが、ムーディーのサックスはオールド・スタイル。しかし、このオールド・スタイルのサックスが、ビ・バップの「聴かせる部分」をピックアップし、スイング時代のメロディアス&スインギーな音作りにピッタリなのだ。太く温かみのあるハッピーなスイング感が前面にでた、ムーディーのサックスは聴きものである。

ほどよくアレンジされた、4本の管楽器(4管フロント)による分厚くスインギーで華やかなアンサンブルがこの盤の聴きどころ。中間派ジャズの特徴である「スイング感」が半端ない。先進的なハードバップでは無いが、聴いて楽しい、モダン・ジャズとして、聴き応えのあるアルバムであることは間違い無い。とりわけ、バラード演奏での「歌心」は聴く耳に染みる。そして、演奏全体の雰囲気が「適度にリラックスして楽しげ」。何よりである。
 
 

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2026年7月30日 (木曜日)

4管フロントのユニークな好盤

よくまあ、こんな4管フロントのセプテットを考えついたものだと思う。4管フロントなので、4管のユニゾン&ハーモニーやテーマ部のアレンジや、アドリブ・ソロの順番など、単純に即興演奏がメインのインタープレイとは全く違う悩ましさがある。特に、4管フロントのアンサンブルのアレンジが絶対に鍵を握る。でないと聴けたもんじゃ無い。

Jon Eardley『The Jon Eardley Seven』(写真左)。1956年1月13日の録音。プレスティッジの7033番。ちなみにパーソネルは、Jon Eardley (tp), Milt Gold (tb), Phil Woods (as), Zoot Sims (ts), George Syran (p), Teddy Kotick (b), Nick Stabulas (ds)。珍しいフロント4管のセプテット編成(7人編成)。

リズム隊のメンバーは上に他では見かけない名前ばかり。しかし、個性は薄いが上手くて、このアルバムのフロント4管のバックで、良好なリズム&ビートを供給して、リズム隊の任をしっかり果たしている。

アルバム全体に、軽快で爽快、それでいて綿密で小粋な「ジャズを聴かせる」雰囲気が漂っている。リーダーのジョン・アードレイとテナーのズート・シムズは、ジェリー・マリガン・セクステットのレギュラー・メンバーとして活動していたという背景もあってだろう、西海岸風クール・ジャズの質感をしっかり受け継いでいる。これが、このアルバムに独特の雰囲気を与えている。
 

On-eardleythe-jon-eardley-seven

 
冒頭の「Leap Year」。ピアニストのジョージ・サイランが書き下ろした軽快なナンバー。4管アンサンブルが印象に残る哀愁系ハードバップ。4管による調和の取れた爽やかなテーマから、各人の流れるようなソロへと引き継がれる展開。厚みがありつつ、端正で品の良い爽やかな西海岸ジャズ風のアレンジと、小粋でしなやかなスイング感が実に良い。

フロント4管に、白人アルトの名手ウッズや、味のあるテナーのズートが参加しているところが注目ポイント。リーダーのアードレイのトランペットも奥ゆかしくも端正で良好。ゴールドのトロンボーンは、中低音域をカバーして、高音域のアードレイや、鋭く突き抜けるウッズを下から包み込むように支えるクッションの役割を果たしている。

つまりは、フロント4管それぞれの力量豊かな吹奏とアンサンブル、そして、それを支える考え抜かれたアレンジがこの盤の優れたところ。

西海岸ジャズ的な軽快で爽快でお洒落な「聴かせる」アレンジと、東海岸ジャズ的な力強いハードバップなアンサンブルが効果的にミックスした、ユニークな内容の好盤である。
 
 

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2026年7月13日 (月曜日)

レイニーの70年代の傑作の一枚

ジミー・レイニー(Jimmy Raney・1927年8月20日 - 1995年5月10日)は、アメリカ合衆国ケンタッキー州ルイビル生まれのアメリカ人ジャズギタリスト。1946年よりギタリストとして活動。ハードバップ時代を駆け抜け、1967年、アルコール依存症やその他の職業上の問題により、NYを離れ、故郷のルイビルに戻る。1970年代にカムバック、ルイビルで心不全のため死去するまで、活動を続けた。

Jimmy Raney『Momentum』(写真左)。1974年7月21日、NYのRCAスタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Raney (g), Richard Davis (b), Alan Dawson (ds)。モダンジャズ・ギターの達人であるジミー・レイニーが、1974年に録音し、ドイツの名門レーベル「MPS」から1975年に発表したピアノレス・トリオ編成の好盤である。本作は、レイニーが1970年代に本格的なカムバックを遂げた彼の円熟期の妙技を堪能できる秀作。

白人ギタリストの代表格、ジミー・レイニーのギターは、ファンクネスや音の粘りや翳りが希薄で、テクニックを全面に押し出した、素直でシンプルで硬質なギター。1950年代にどっと現れた白人ギタリストの音である。明らかに、チャーリー・クリスチャンから派生したタル・ファーロウ〜バーニー・ケッセルの流れの中にある音。このアルバムでは、そんな燻し銀の様な、職人芸的ジャズ・ギターが堪能出来る。
 

Jimmy-raneymomentum

 
全編を通して、オーソドックスな、流麗で知的なシングル・トーンが展開される。エフェクターに頼らないストレート・アヘッドなジャズ・ギター。フレーズのアイデアが湧き出る様に溢れ出すプレイが最大の聴きどころ。エリック・ドルフィーやヴァン・モリソンとの共演で知られる重厚ベースのリチャード・デイヴィスと、デイヴ・ブルーベックらと活動した敏腕ドラマーのアラン・ドーソンが脇を固め、このリズム隊のスイング感が、レイニーを煽りに煽る。

本作はジミー・レイニーのオリジナル曲が2曲、ジャズ・スタンダードが4曲という構成になっている。レイニー自身のオリジナル曲の演奏は良いのは当たり前として、このアルバムでは、スタンダード曲におけるパフォーマンスが聴きもの。「Autumn in New York」について、このトリオによる演奏はジャズ・ギター史に残る屈指の名演のひとつとされる。僕はラストの「Just Friends」が好きだなあ。

本作は、ジャズ・プロデューサーのドン・シュリッテンに促される形でシーンに完全復帰を果たした、彼のカムバック劇を象徴する一枚。ピアノレスのギター・トリオのハイレベルな妙技が堪能出来る。ベース〜ドラムスとのトリオ編成で展開される、レイニーの円熟期のパフォーマンス。これ、1970年代のジャズ・ギター盤の傑作の一枚だと思います。
 
 

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2026年7月 5日 (日曜日)

白人テナーの極上アンサンブル

ウディ・ハーマン楽団の伝説的なサックス・セクション「フォー・ブラザーズ(Four Brothers)」の系譜を継ぐ、クール・ジャズ/白人テナーサックスの軽快で洒脱なアンサンブルを堪能できるアルバム内容。アルバム名義は、スタン・ゲッツとズート・シムズになっているが、後半の1953年9月8日の録音には入っていないので注意が必要。全く、当時のプレスティッジのボブ・ワインストックのアルバム編集、アルバムリリースのマナーについては、全く理解出来ない。

Stan Getz and Zoot Sims『The Brothers』(写真左)。録音日とパーソネルは下記の通り。Prestigeの7022番。テナー・サックス奏者のスタン・ゲッツとズート・シムズをフィーチャーし、1956年にプレスティッジ・レコードからリリースされた、プレスティッジお得意の全くかけ離れた2セッションの合体盤である。1953年9月8日の録音は、1953年、プレスティッジから、Zoot Sims All-Stars名義で、10 inch盤としてもリリースされている。

パーソネルについては、Zoot Sims, Al Cohn (ts) は、2セッション共通で、
1949年4月8日の録音のパーソネルは、Stan Getz, Allen Eager, Brew Moore (ts), Walter Bishop (p), Gene Ramey (b), Charlie Perry (ds)。
1953年9月8日の録音のパーソネルは、Kai Winding (tb), George Wallington (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。
 

Stan-getz-and-zoot-simsthe-brothers  

 
1949年のセッションについては、当時、ウディ・ハーマン楽団のサックス・セクションが「フォー・ブラザーズ」として一世を風靡していて、そのスタイルをさらに推し進め、当時のトップ白人テナー奏者を5人も集めて結成された、まさに「ドリーム・チーム」によるセッションの記録になっている。

レスター・ヤングの流れを汲む、軽やかでクールなトーンが特徴。アレンジは主にジェリー・マリガンが担当しており、緻密でありながらもスリリングな4本のテナーサックスによるアンサンブルをバックに、代わる代わる登場するテナーのアドリブ・ソロが最大の聴きどころ。

1952年のセッションについては、ジャズ界きっての名テナー・コンビとして知られる、ズート・シムズとアル・コーンの「ズート&アル」によるセッション。1949年のセッションに比べると、より黒っぽく、アーシーで力強いモダン・バップの色彩が強い演奏になっている。リズム隊が充実していて、ピアノのウォリントン、ベースのヒース、ドラムのブレイキーと、ドライブ感のあるタフなスイング感溢れるリズム&ビートを供給している。
 
1949年と1952年の録音なので、録音状態はあまりよくないが、それでも、テナーのアンサンブルと、それぞれのテナー奏者の個性溢れるアドリブ・ソロが楽しめる内容にはなっている。ちなみに、オリジナル・アルバムのライナーにはソロオーダーが記載されている。ネットでもその情報が拾えるので、それを片手に鑑賞するのも乙なものである。
 
 

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2026年6月18日 (木曜日)

J&KのCTIクロスオーバーな盤

米国のジャズ・トロンボーン奏者であるJ・J・ジョンソン(J. J. Johnson)とカイ・ウィンディング(Kai Winding)の黄金コンビ(通称 J & K)。1950年代からジャズ界屈指のトロンボーン・デュオとして名を馳せた彼らが、1960年代末期のポップスやボサノヴァの要素を取り入れた、CTI謹製のクロスオーバ−&フュージョン盤である。

J & K『Betwixt & Between』(写真左)。A&M 3000 seriesのSP-3016番。1968年10ー12月, 1969年1月の録音。ちなみにパーソネルは、以下のとおり。ここに、ストリングスがバックに入る。

J. J. Johnson, Kai Winding (tb, arr), Marvin Stamm (flh0, Tony Studd (b-tb), Paul Ingraham (French horn), Herbie Hancock (p), Charles Covington (org), Roger Kellaway (clavinet, arr), Joe Beck, Eric Gale, Stuart Scharf (g), Chuck Domanico, Russell George, Chuck Rainey (el-b), Ron Carter (b), Leo Morris, Denny Seiwell (ds), Airto Moreira (ds, finger cymbals), Warren Smith (tambourine)。

なかなか面白いチャレンジブルな内容。一言で言うと「バロック(クラシック)」と「ポップ・ジャズ」の融合。ポップスやボサノヴァのカバー曲の合間に、バッハのコラールやプロコフィエフなどのクラシック(バロック調)の短い間奏(インタールード)が挿入されている。

この間奏部分はブラス・クインテット(金管五重奏)とギターによって演奏され、曲同士をシームレスに繋ぐコラージュのような役割を果たしている。全10曲、「ブラジリアン」から「旬のポップス」から「ファンキーな実験作」の合間に「クラシック(バッハ)」の要素がコラージュのようにはめ込まれている、トータル・アルバムの様な作りが実にユニーク。
 

J-kbetwixt-between  

 
冒頭の「Casa Forte/Bach Chorale #237」を聴くと、この盤の面白さが判る。いきなり、ストリングス入りのイージーリスニング志向のクロスオーバー・ジャズといった面持ちで、まあこんなもんか、と思いながら聴いていると、J & Kのトロンボーンのユニゾン&ハーモニーをメインとするアレンジが小粋でハイレベルで、思わず、身を乗り出したりする。

この1曲目の「Casa Forte/Bach Chorale #237」は、ブラジルの偉大な音楽家エドゥ・ロボ(Edu Lobo)が作曲した、本作を代表するアフロ・ブラジリアン・ナンバー「Casa Forte」から、曲の終盤から流れるように「バッハのコラール第237番」へと繋がるという、ブラジル音楽とバロック音楽のコラボ・アレンジが施されていて、実にユニーク。

3曲目は「Little Drummer Boy」は、クリスマス・キャロルとして世界的に有名な名曲を、モダン・ジャズの解釈でカバーしている。ここでも、トロンボーンのウォームなトーンが活きた、どこかドリーミーで遊び心のあるアレンジが小粋。エレクトリックなクロスオーバーなバックの演奏もCTIっぽくて恰好良い。

そして、バックの演奏が、ファンキーなエレクトリック・クラヴィネットの導入や、トロンボーンの音をオクターブ変化させる「バリトーン(Varitone)」アンプリファイア(エフェクター)を使用するギターの音色など、1960年代末らしいサイケデリックな音と、それを包含するCTIレーベルらしい音の響きとグルーヴ感が見事に表現されていて、聴いていて、なかなかに楽しい。

そう意味で、この盤、いかにも、CTIレーベルらしいアルバムと言える。冒頭の一曲を聴くだけで、ああ、この盤は絶対に「A&M/CTI盤」だと確信する。それほど、A&M/CTIらしい音がアレンジがこの盤に詰まっている。この盤、意外や意外、なかなかのA&M/CTIの好盤の一枚でしょう。
 
 

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2026年6月17日 (水曜日)

豪快テナーと陰影ピアノの火花

プレスティッジ・レコード(Prestige Records)は、1949年にボブ・ウェインストックによって設立された、アメリカの歴史的なジャズ・レコード・レーベル。ブルーノートやリバーサイドと並び、1950年代のモダン・ジャズ(特にハード・バップ)黄金期を支えた三大名門レーベルの一つ。

Elmo Hope and Frank Foster『Hope Meets Foster』(写真左)。1955年10月4日の録音。PrestigeのPRLP 7021番。ちなみにパーソネルは、Frank Foster (ts), Charles Freeman Lee (tp, tracks 2, 3 & 5), Elmo Hope (p), John Ore (b), Art Taylor (ds)。バップ・ピアノの名手、エルモ・ホープと、カウント・ベイシーのビッグバンドのテナー奏者、フランク・フォスターの共同名義のジャム・セッション風の録音。

1950年代半ば、ハードバップ全盛時代を象徴する、力強く溌剌としたアドリブの応酬を堪能できるスタジオ録音盤である。曲によってトランペットを加えたクインテットと、カルテットの2つの編成でセッションの記録であるが、どちらの演奏も、本当にハードバップらしい演奏で、聴いていて、いつも感じ入るばかり。
 

Elmo-hopeandfrank-fosterhope-meets-foste

 
エルモ・ホープのバップ・ピアノが聴きもの。バド・パウエル直系の鋭くも独特なひねりのあるフレーズが個性で、バド・パウエル直系でありながら、よりダークで知的な、マイナー感溢れるフレージングが特徴。そこに、不協和音の美しい使い方が見え隠れし、独特の「陰影」を醸し出す。モンクほどではないが、予測できない音の跳躍が面白いというか、この「音の跳躍」が意外と癖になる。

フランク・フォスターのテナー・サックスは、カウント・ベイシー楽団でも披露していた「豪快に、ストレートにスウィングする」分かりやすい魅力を持ったテナー。エルモ・ホープのピアノのコンピングとの相性が抜群で、サックスの隙間を縫うような、ホープの鋭いアクセントが、フォスターのテナーを、よりモダンでタイトな印象に仕立て上げている。

このアルバムの一番の聴きどころは「エルモ・ホープ」。ホープの優れた作曲能力と構築美溢れる演奏がしっかりと捉えられていて、聴いていてとても興味深い。本作でのホープは、フロントの管楽器を引き立てる伴奏者だけではなく、自らのバップで緻密で「翳りある」サウンド・イメージを、バンド全体に浸透させる「実質のリーダー」としての存在感が大きい。
 
 

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2026年5月 3日 (日曜日)

ライオネル・ハンプトン健在

1982年と言えば、フュージョン・ジャズが全盛期を越えて、下降線を辿り始めた頃。それでも、その人気はまだまだ維持されていて、純ジャズ、ましてや、スイング・ジャズの入り込む余地は無かった。が、フージョン・ジャズの全盛のアンダーグラウンドで、純ジャズは生き存えていた。そして、このライヴ・アルバムでは、スイング・ジャズもしっかりと継承されていたことが確認出来る。

Lionel Hampton And His Orchestra『Made In Japan』(写真左)。1982年6月1日は新宿厚生年金会館、6月3日は渋谷公会堂でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは以下の通り。スイング・ヴァイブの雄、ライオネル・ハンプトン率いるジャズ・オーケストラの東京のおけるライヴ録音。

Lionel Hampton (vib), John Colliainni (p), Todd Coolman (b), Duffy Jackson (ds), Sam Turner (perc)。以下はブラス・セクション、Glen Wilson, Yoshi Malta, Paul Jeffrey, Ricky Ford, Tom Chapin (sax), Trombone – Charles Stephens, Chris Gulhaugen, John Gordon (tb), Trumpet – Barry Ries, John Marshall, Johnny Walker, Vince Cutro (tp)。

ハンプトンの十八番である「Air Mail Special」や、ハンプトンおなじみのメドレー「Stardust - Moonglow」、フレディ・ハバード作曲の難曲「Jodo」を高速テンポで演じ切ったり、素晴らしいパフォーマンスがてんこ盛り。
 

Lionel-hampton-and-his-orchestramade-in-

 
それほどまでに内容の濃い、ライオネル・ハンプトンのヴァイブを始めとするスイング・ジャズの名演の数々がこのライヴ盤に記録されている。さらに素晴らしいのは、パーソネルを見渡すと、若手実力派を揃えたビッグバンドを率いていること。当時若手だった リッキー・フォード や、日本を代表するサックス奏者の MALTA(ヨシ・マルタ)、トム・チェイピンらが参加している。

当時70代半ばだったハンプトンであるが、その演奏は驚くほどパワフル。一糸乱れぬビッグバンドのアンサンブルと相まって、素晴らしいパフォーマンスを披露している。

若手実力派を揃えたビッグバンドということもあって、伝統的なスイングだけに留まらず、ハードバップやモードなど、当時として、モダンなジャズの感覚も反映されていて、懐古趣味などどこ吹く風、当時として、現代的でモダンなスイング志向のビッグバンドの音が実に良い。

単なる「ベテランの来日記念盤」を超えた、単なる来日記念公演という「お祭り騒ぎ」に留まらない、スイング志向の、モダンな感覚を融合させたビッグバンド・ジャズの傑作として評価して良い内容。かつてハンプトン率いるオーケストラが世界中を席巻した「スウィングの力」が、衰え知らずなことを証明した好ライヴ盤です。
 
 

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2026年4月13日 (月曜日)

ライトでポップなロニー・スミス

イージーリスニング志向のジャズ・オルガンの名手、ロニー・スミスが、トランペットのリー・モーガン、トロンボーンのジュリアン・プリースター、テナーサックスのベニー・モーピン、ギターのメルヴィン・スパークス、ドラムのイドリス・ムハンマドと組んだ、セクステット編成。

Lonnie Smith『Turning Point』(写真左)。1969年1月3日の録音。ブルーノートの4313番。ちなみにパーソネルは、Lonnie Smith (org), Lee Morgan (tp), Bennie Maupin (ts), Julian Priester (tb), Melvin Sparks (g), Idris Muhammad (ds)。ロニー・スミスのオルガンがメインの、ファンキー&ソウル・ジャズ志向のジャズ・ファンク。

とてもスッキリした内容のジャズ・ファンク。ファンキー&ソウル・ジャズの雰囲気濃厚なジャズ・ファンクは、緩やかでダンサフル。しかし。踊りまくるというグルーヴではない。イージーリスニング志向のライトでポップなジャズ・ファンクで、ながら聴きに最適なオルガン・ジャズでもある。
 

Lonnie-smithturning-point

 
ロニー・スミスのオルガンは、端正で明瞭。癖がなく、音は真っ直ぐに伸びる。テクニックはそこそこ、しかし、聴き心地は良好。そんなロニー・スミスのオルガンが、アレサ・フランクリンもカヴァーしたドン・コヴェイの「シー・ソー」、レノン=マッカートニーの「エリナー・リグビー」などのポップス曲をカヴァーする。良い雰囲気だ。

途中出てくるトランペットが只者では無い。誰だろうと聴き耳を立てたら、これはリー・モーガンでした。さすがのバイタルでブリリアントなトランペット。そして、切れ味良い、新主流派っぽいテナーが魅力のモウピンのテナー、ソウルフルでR&B志向のエレギが堪らない。このメンバーでのライトでポップなジャズ・ファンク。切れ味良く、輪郭の良いオルガン・ジャズを演出する。

抽象的なジャケット・デザインとは正反対の、正統派で硬派な、ライトでポップなオルガン・ジャズ。ファンキー&ソウル・ジャズ志向の音作りがクール。従来のオルガン・ジャズとはことなる、新しいタイプのオルガン・ジャズ。さすが、オルガン・ジャズに強いブルーノート・レーベルの成果である。
 
 

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2026年4月12日 (日曜日)

”エラの歌唱力に舌を巻く” 盤

僕のジャズ・ヴォーカルの好みは偏っている。基本、旧来の伝統的なジャズ・ヴォーカルのマナー、こってこてのオールド・スタイルのフェイクやヴィブラートの入った歌唱が苦手。ストレートでポップな唄いっぷりが好みで、ヴォーカル盤はたまにしか聴かなかった、のだが、最近、何故か、ちょくちょく聴く様になった。歳を取ったせいだろうか(笑)。

Ella Fitzgerald『The Sunshine of Your Love』(写真左)。1968年10月、サンフランシスコのフェアモント・ホテル、ベネチアン・ルームでのライヴ録音。MPSレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ella Fitzgerald (vo), バックバンド=Tracks 1–6:Ernie Hecksher's Big Band、Track 7–12 Tommy Flanagan Trio、Tommy Flanagan (p), Frank DeLaRosa (b), Ed Thigpen (ds)。

収録曲の大部分は、1960年代後半の現代的なポップ・ソングのジャズ・カヴァー。女性ジャズ・シンガーの最古参の一人、レジェンドのエラ・フィッツジェラルドが、1960年代後半の現代的なポップ・ソングを唄う。旧来の伝統的なジャズ・ヴォーカルのマナーで唄うのかな、とあまり期待して無かったのだが、冒頭のレノン=マッカートニーの「Hey Jude」を聴いて、これは、と思わず引き込まれる。
 

Ella-fitzgeraldthe-sunshine-of-your-love  

 
続くタイトル曲が「The Sunshine Of Your Love」は、当時、人気のロック・グループ「クリーム」のヒット曲。ジャック・ブルースとエリック・クラプトンの作。これがまた、見事にジャズ・ボーカル曲に変身している。ベースがブルースという有利な点はあるにせよ、先の「Hey Jude」を含めて、マーティ・ペイチのアレンジが素晴らしい。

他の曲、バカラックの名曲や、ディオンヌ・ワーウィックやアレサ・フランクリンの歌唱でお馴染みの「This Girl's in Love With You」、映画音楽のスタンダード曲の「Watch What Happens」や「Give Me The Simple Life」など、ポップな曲を、エレは難なく、モダンに、ポップに、ロックに唄い上げる。エラの歌唱力に脱帽である。エラは、どんなポップ曲もスインギーなジャズ・ボーカルに変身させる。

実は、僕は高校時代、FMで、エラの「Hey Jude」と「The Sunshine Of Your Love」を聴いて、この2曲はエアチェックして愛聴していた。この2曲、どのアルバムに入っているんだろう、と思いながら、大学時代、例の秘密の喫茶店のママさんがこのライヴ盤を教えてくれた。それ以来、ジャズ・ヴォーカルが苦手な僕の愛聴盤の一枚になった。思い出深いエラのライヴ盤である。
 
 

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