2025年12月30日 (火曜日)

インド音楽+ジャズロックの融合

シャクティ(Shakti)は1970年代後半に活動した伝説のバンド。ジャズ・ロックとインドの伝統音楽を融合しているとてもユニークなバンドで、クロスオーバー・ギターの第一人者、ジョン・マクラフリンとインドのヴァイオリニスト、L. シャンカールが結成したバンド。

Shakti『Shakti with John McLaughlin』(写真左)。1975年7月5日、ロングアイランドの「Southampton College」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g), L. Shankar (vln), Ramnad Raghavan (mridangam), T. H. Vinayakram (ghatam, mridangam), Zakir Hussain (tabla)。

ジョン・マクラフリン率いるユニット「シャクティ(Shakti)」名義の1975年7月の、サウス・ハンプトン大学でのライヴ録音作品。インド音楽のリズム&ビートに乗せて演奏する、その独特の個性溢れるクロスオーバー・ジャズは、唯一無二である。これぞ「クロスオーバー」であり、インド音楽とエレ・ジャズ、ジャズ・ロックとの融合が怪しくも美しい。

ムリダンガム(Mridangam)は、南インドの古典音楽(カルナータカ音楽)で使われる、両面を叩く木製の太鼓。ガタム(Ghatam)は、主にインド南部のカルナータカ音楽で使われる打楽器。鉄分を含む赤土で作られた素焼きの壺を、素手で叩くことによって音を出す。タブラ(Tabla)は、インド亜大陸発祥の二つ一組で演奏される伝統的な打楽器。
 
Shaktishakti-with-john-mclaughlin  
 
このムリダンガム、ガタム、タブラのインドの伝統的な打楽器群で、インド音楽の独特のリズム&ビートを叩きだしている。まず、これが癖になる。妖艶でかつアジアンな雰囲気が色濃いグルーヴが醸し出される。そのインド音楽独特のグルーヴの上を、マクラフリンのエレギと、L. シャンカールのヴァイオリンが、インド音楽独特の旋律をベースにインタープレイが繰り広げる。

このシャクティは、マハヴィシュヌ・オーケストラの初代解散後に結成され、1975年から1977年にかけて広範囲にツアーを行っている。僕はこのライブ盤を、大学近くの「秘密の喫茶店」で聴かせてもらった。

初めて聴いた時は衝撃だった。インド音楽がジャズ・ロックとが融合している。ジャズの懐ろの深さと広さを思い知った、最初の体験であった。この、インド=ジャズ・フュージョンのリズム&ビートは癖になる。そして、その上を飛翔するマクラフリンのギターと、L. シャンカールのヴァイオリン。今の耳で聴いても「衝撃」。そして、これも「ジャズ」である。

そして、マクラフリンのギター・テクニックの凄さに「驚愕」。インド音楽のリズム&ビートに乗って、唄うが如く、話が如く、流麗にエレギを弾きまくる。そのテクニックたるや、凄まじい限り。クラシックとの融合、ロックとの融合、そしてインド音楽との融合など、挑戦的ギタリストの最右翼、マクラフリンの面目躍如。ジャズの「融合の成果」の一つとして傾聴に値する好盤である。
 
 

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2025年6月18日 (水曜日)

再び ”Jack Johnson” を聴き直す

今月発売のレココレ2025年7月号の特集は「ジャズ/フュージョン・ギターの名演 洋楽編」。正確に言うと、モダン・ジャズ、クロスオーバー/フュージョン・ジャズの範疇の中の名盤・好盤の中で、ギターに特化して評価できるアルバムをピックアップして紹介している。

その記事の中のアルバムを順に見ていて、これまでに当ブログで以前に記事にしたアルバムが懐かしく、ついつい、聴き直したくなった。今日は「エレクトリック・マイルス」。ギタリストは、ジョン・マクラフリン。

Miles Davis『Tribute to Jack Johnson』(写真左)。1970年2月18日, 4月7日の録音。1971年2月のリリース。1900年代初頭、初の黒人ヘビー級チャンピオンとして活躍した伝説のボクサー、ジャック・ジョンソンをテーマとして作られた映画のサントラである。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

1970年2月18日の録音のパーソネルは、Miles Davis (tp), Bennie Maupin (b-cl), John McLaughlin, Sonny Sharrock (el-g), Chick Corea (el-p), Dave Holland (el-b), Jack DeJohnette (ds)。

1970年4月7日の録音のパーソネルは、Miles Davis (tp), Steve Grossman (ss), John McLaughlin (el-g), Herbie Hancock (org), Michael Henderson (el-b), Billy Cobham (ds), Brock Peters (narration)。

再び、聴き直したくなった、僕がジャズを本格的に聴き始めた頃からの大のお気に入りの、「エレ・マイルス」の名盤。
 

Miles-davistribute-to-jack-johnson

 
ハイレベルの凄まじいエレ・ジャズ、クロスオーバー・ジャズの演奏を基に、プロデューサーのテオ・マセロがテープ編集を駆使して出来上がった、いわゆる「テープ・コラージュ」の傑作、マイルスのセッション演奏の素材が、凄まじく優れているからこそ為し得た「テープ・コラージュ」の傑作である。

「Right Off」の出だしから全編に渡る。ジョン・マクラフリンのカッティング・エレギの凄まじさ。その弾き出されるロック・ビートの鋭さ、激しさ、凄まじさ。アーティステックで創造的な、拡がりとイマージネーション溢れる、触れるだけで切れるような「鋭敏なエッジのエレギのビート」。

そんな「エレギのビート」に追従する超重量級のベース&ドラム。エレギに負けないエモーショナルな熱く激しく打ち付ける様な強靱でソリッドなビート。「ビートだ、ビートが一番重要だ」、マイルスの言葉が実に説得力をもって迫ってくる。

そんなエレギとベースとドラムの超重量級のビートに乗って、エモーショナルで激しいボーカルのようなマイルスのトランペットが「むっちゃ格好良い」。エモーショナルで激しい、シャウトする様な、唄う様なマイルスのトランペットが闊歩する。肩で風を切って、悠然と堂々と、孤高のトランペットが鳴り響く。

「お望みなら、世界最高のロック・バンドを組んでみせるぜ」と有言実行した(格好良いなあ〜)マイルスとテオの「テープ・コラージュ」の最高の成果の一つ。

そして、それを確固たるものにする、ジョン・マクラフリンのカッティング・エレギが刻む凄まじきビート、そして、それを支える超重量級のベース&ドラム。エレクトリック・ジャズの、クロスオーバー・ジャズの名盤である。
 
 

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2025年3月24日 (月曜日)

スパニッシュ志向のマクラフリン

実験的でシリアスで求道的なアプローチを身上とした「マハヴィシュヌ・オーケストラ」を解散し、インド音楽志向のエレ・ジャズを追求したシャクティを立ち上げたマクラフリン。その傍らで、アル・ディ・メオラ、パコ・デ・ルシアとのスーパー・ギター・トリオを立ち上げ、一世を風靡。そして、マクラフリンは1980年代に突入する。

John McLaughlin『Belo Horizonte』(写真左)。June–July 1981年6〜7月の録音。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g), Paco de Lucía (ac-g), Augustin Dumay (vln, vo), François Jeanneau (sax), François Couturier, Katia Labèque (key), Jean Paul Celea (b), Tommy Campbell (ds, perc), Jean-Pierre Drouet, Steve Sheman (perc)。

アル・ディ・メオラ、パコ・デ・ルシアとのスーパー・ギター・トリオを経て制作された、マクラフリンのソロ・リーダー作。前作『Electric Dreams』の「コズミックなクロスオーバー&フュージョン」志向のコンテンポラリーなエレ・ジャズの雰囲気を踏襲しつつ、スーパー・トリオで体験した、フラメンコ風のギターのテイストを織り込んで、ユニークな音世界を創出した傑作。

クロスオーバー&フュージョン志向の純エレ・ジャズの中で「アコースティック・ギターをどう活かすか」を最重要テーマに、アコースティック・ギターが映えに映えるアレンジが全編に渡って施されている。エレ・ジャズの要素、フェンダー・ローズやシンセサイザーなどは、このアコースティック・ギターを映えさせる役割に徹している。
 

John-mclaughlinbelo-horizonte 

 
そして、そんなアコースティック・ギターを映えさせる為に選んだテイストが「スパニッシュ」志向。それまで、プログレとジャズの融合がメインテーマだったマクラフリンが、フラメンコ風のギター風のフレーズを、軽快でポップなタッチで弾きまくる。実験的要素は全く無い。

それまで、シリアスで求道的な作品が中心だったマクラフリンが、スパニッシュ志向に転身して、フュージョン・ジャズ志向のポップなエレ・ジャズを展開している。しかも、その内容はとても充実していて濃い。

面白いのは、バックのバンド演奏が全く目立ってこないこと。軽快でポップなスパニッシュ志向のマクラフリンのアコースティック・ギターを引き立て、流麗さを浮き立たせるバック・バンドの演奏なんだが、それまでのマクラフリンのテクニック最優先のバック・バンドの演奏とは正反対のイメージ。

決して、テクニカルでもなく、雰囲気だけでリズム&ビートを醸し出している。しかし、これが、この盤でのマクラフリンのアコースティック・ギターに合っている。プロデュースの妙ですね。

1980年代のマクラフリンの最初の好盤だと思います。スパニッシュ志向のマクラフリンのアコースティック・ギターがとても魅力的に響いています。
 
 

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2025年3月21日 (金曜日)

マクラフリンの考えるエレ•ジャズ

プログレッシヴ・ロックとエレクトリック・ジャズとのクロスオーバー・ジャズ志向のグループ・サウンドを追求した「マハビシュヌ・オ―ケストラ」は、1975年7-8月の録音の第5作目『Inner Worlds』で、その活動に終止符を打った。しかし、ギタリスト、ジョン・マクラフリンをフィーチャーしたソロ活動については、順調にリーダー作を重ねている。

John McLaughlin『Electric Dreams』(写真左)。邦題『欲望と精霊』。1978年11-12月の録音。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (6, 12 & 13-string ac-g & el-g, banjo), L. Shankar (vin), Stu Goldberg (key), Fernando Saunders (b, vo), Tony "Thunder" Smith (ds, vo), Alyrio Lima (perc), David Sanborn (as on "The Unknown Dissident")。

ジョン・マクラフリンと彼の「ワン・トゥルース・バンド」による1979年リリースの5枚目のソロアルバム。演奏全体の雰囲気は、コンテンポラリーなエレクトリック・ジャズ。当時、初期のウエザー・リポートや、チック・コリアのバンドが志向していた「コズミックなクロスオーバー&フュージョン」と同一志向の音作りだが、当然のことながら、マクラフリンのギターが大々的にフィーチャーされている。
 

John-mclaughlinelectric-dreams

 
タイトルを完全無視する様な、印象的なアコギで、短いながらも衝撃的なオープニングから、なかなかの出来。そして、いきなり始まる「Mles Davis」。この曲は、マイルスはアルバム『ビッチズ・ブリュー』の中の曲に「ジョン・マクラフリン」というタイトルを付けた曲を収録しているのだが、この盤での「Mles Davis」は、そのお返し(アンサー・ソング)。マイルス抜きのマイルス・サウンドといった感じで、マクラフリンのギターのソロは、まさに「マイルスのトランペット」風。

バンジョーのソロがユニークなタイトル曲やサンボーンが吹いてるアーバンな曲とか、フェルナンド・サンダースのヴォーカルをフィーチャーしたコンテンポラリーなヴォーカル曲とか、様々な要素の曲が入っているが、基本は、あくまで「コズミックなクロスオーバー&フュージョン」志向のコンテンポラリーなエレ・ジャズ。内容がバラエティーに富んでいるのは、ウエザー・リポート然り、チック・コリアのバンド然り。そういう点では、このマクラフリンのエレ・ジャズは、ウエザーやチックと比較しても引けを取らない。

1970年代のマクラフリンの傑作。「コズミックなクロスオーバー&フュージョン」志向のコンテンポラリーなエレ・ジャズの名盤の一枚としても良い内容。しかし、我が国では、この『Electric Dreams』って、人気がないんですよね。まず、邦題『欲望と精霊』が悪かったんやないかと。ウエザーやチックと比較しても引けを取らない、マクラフリンの考える「コンテンポラリーなエレ・ジャズ」。再評価を望みたい。
 
 

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2025年3月20日 (木曜日)

マハビシュヌのラスト・アルバム

マハビシュヌ・オ―ケストラのエレクトリックなクロスオーバー・ジャズな音世界は、昔からのお気に入り。マハヴィシュヌは、ジャズとロックの融合からのジャズロック。そこにクラシックの要素や英国プログレッシヴ・ロックのテイストを取り入れた、マハヴィシュヌの音の志向は「クロスオーバー」。

Mahavishnu Orchestra & John McLaughlin『Inner Worlds』(写真左)。邦題『内深界』。1975年7-8月の録音。1976年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g, g-syn), Stu Goldberg (org, p), Ralphe Armstrong (b), Narada Michael Walden (ds, congas, b-marimba, shaker)。第2期マハビシュヌ・オ―ケストラのラスト・アルバム、マハビシュヌとしては5枚目のアルバム。

マハビシュヌ・オ―ケストラとしては初めてヴァイオリン奏者が不在。その不在となったヴァイオリンに代わって、マクラフリンのギターシンセサイザーがメイン楽器として活躍している。まだ、扱いが難しかった初期のギターシンセサイザーをメイン楽器として導入し、かなり実験的な内容になっている。

その反動なのか、その実験性を中和させる狙いがあったのか、ヴォーカル入りのポップな楽曲もあって、硬派な「マハビシュヌ者」の方々からは評判芳しくないアルバムとして敬遠されている(笑)。
 

Mahavishnu-orchestra-john-mclaughlininne

 
このヴォーカル入りのポップな楽曲は、当時、流行しつつあった、ソフト&メロウなフュージョン・サウンドの先取りとも捉えることが出来、1975年という時代、マハビシュヌの様な硬派でサイケで攻撃的なクロスオーバー・ジャズが過去のものになりつつあった、ということを実感する。

このヴォーカル入りのポップな楽曲を除けば、初期のギターシンセサイザーの積極導入、「360 Systems Frequency Shifter」という装置を活用して、アンビエント・ノイズな音世界の現出など、実験的なサウンド作りが前面に押し出されている。

ギターとヴァイオリンのバトルを、マクラフリン一人での再現とか、12弦ギターでも速弾きで弾きまくるテクニックとか、も含めて、マクラフリンの実験的冒険的なアプローチがてんこ盛り。しかし、これでは「マハビシュヌ・オ―ケストラ」というバンド・サウンドとしては外れたもので、このアルバムが、マハビシュヌ・オ―ケストラのラスト・アルバムになったのも頷ける。

ジャズロックというよりは、プログレッシヴ・ロックとエレクトリック・ジャズとのクロスオーバー・ジャズな内容で、かろうじてマハビシュヌ・サウンドはキープされているが、目立つのはマクラフリンのギターシンセ。アルバムの内容的には統一感に乏しく、趣味性の高いアルバムだと言える。逆に、マクラフリン者には一聴の価値がある実験作ではある。
 
 

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2024年10月 3日 (木曜日)

唯一無二な ”マハヴィシュヌの音”

ジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラは、マクラフリンがマハヴィシュヌを結成する前に所属していた、トニー・ウィリアムス率いるライフタイムと、よく一緒くたに語られるが、マハヴィシュヌとライフタイムは全く「音の志向」が異なる。

ライフタイムは、エレクトリックな「限りなく自由度の高い」モード・ジャズから、エレクトリックなフリー・ジャズ。ライフタイムの音の志向は「フリー」。片や、マハヴィシュヌは、ジャズとロックの融合からのジャズロック。そこにクラシックの要素や英国プログレッシヴ・ロックのテイストを取り入れた、マハヴィシュヌの音の志向は「クロスオーバー」。

Mahavishnu Orchestra『Visions of the Emerald Beyond』(写真)。邦題『エメラルドの幻影』。 1974年12月4日から12月14日まで、NYの「エレクトリック・レディ・スタジオ」で録音。その後、1974年12月16日から12月24日まで、ロンドンの「トライデント・スタジオ」でミックスダウンされている。

ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g, vo), Jean-Luc Ponty (vin, vo), Ralphe Armstrong (b, vo), Narada Michael Walden (perc, ds, vo, clavinet), Gayle Moran (key, vo)。ジャズ・エレギのイノベーター&レジェンド、ジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラの4枚目のアルバム。

今回の『Visions of the Emerald Beyond』を聴くと、マハヴィシュヌの音の志向である「クロスオーバー」を強く感じることができる。
 

Visions-of-the-emerald-beyond

 
この盤では、ジャン=リュック・ポンティのバイオリンが大々的にフィーチャーされている。このバイオリンを聴いていると、英国プログレのキング・クリムゾンのデヴィッド・クロスや、伊プログレのPFMのマウロ・パガーニのヴァイオリンを想起する。もともと、欧州ではジャズとプログレッシヴ・ロックとの境界が曖昧で「クロスオーバー」している。

マクラフリンのエレギだって、英国プログレや和蘭プログレ、伊プログレでのエレギのテイストに強烈な影響を与えているようで、欧州のエレクトリック・ジャズとプログレッシヴ・ロックとの境界が曖昧なのは、エレギもバイオリンと同じ。そういう意味で、マハヴィシュヌの音は「欧州プログレとのクロスオーバー」な傾向にあると僕は睨んでいる。

そういう考察抜きにも、この盤でのマハヴィシュヌの音世界は唯一無二。エレクトリック・ジャズのモーダルな展開をベースに、ジャズロックやプログレの要素を交えた音世界は迫力満点。訴求力抜群。

お得意の「インドの瞑想モード」で始まるジャズロックあり、トライブ感溢れるジャズロックあり、流麗なプログレ調ジャズロックあり、グルーヴ感抜群のジャズファンクあり。マハヴィシュヌのジャズロックをベースとした「クロスオーバー」な音世界が満載。

『エメラルドの幻影』。いかにも、当時の日本のCBSソニーらしい、気恥ずかしい、赤面ものの邦題である(笑)。クロスオーバー・ジャズの名盤につける雰囲気の邦題やないよね。ジャケのイラストは、既出のアルバムとの統一感があって良い感じなんですが,,,。まあ、邦題は横に置いておいて、中身の演奏を堪能したいと思います(笑)。
 
 

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2024年9月27日 (金曜日)

ライフタイムの「フリーの成熟」

そういえば、トニー・ウィリアムスって、フリー・ジャズが好きだったな。そんな思い出がある。マイルス楽団にいた頃も、親分マイルスのいないところで、フリーなドラミングに走ったり、自らのリーダー作では、公然とフリー・ジャズを展開して、とにかく「ブイブイ」言わせていた。

The Tony Williams Lifetime『(Turn It Over)』(写真左)。1970年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Tony Williams (ds, vocals on "This Night This Song", "Once I Loved", "A Famous Blues"), John McLaughlin (g, vocals on "A Famous Blues"), Larry Young (org), Jack Bruce (b, lead vocals on "One Word")。

そんなトニー・ウィリアムスが主宰する「ライフタイム」の第2弾。内容的には、先のライフタイムのデビュー作の、電気エフェクトがかかったエレギとオルガンをフロントにした「先進的なフリー・ジャズ」は変わらない。というか、グッと洗練された「成熟イメージ」。

ベース・ラインの強化を狙ったのか、英国の伝説のブルース・ロック・グループ「クリーム」から、ジャック・ブルースをベーシスト兼ボーカル担当として招聘している。

確かに、デビュー作では、ベース・ラインはオルガンのラリー・ヤングが担当していたのだが、まず、右手でフリーなフレーズを弾きながら、定型のベース・ラインを供給するなんて出来ないので、実は影が薄かった、というか、放棄されていたイメージがある。
 

The-tony-williams-lifetimeturn-it-over

 
この2作目では、ジャック・ブルースがエレベで定型のベース・ラインを供給しているので、トニー+マクラフリン+ヤングのフリーな展開の底に、どっしりとした安定感がある。この辺りが、グッと洗練された「成熟イメージ」として、耳に響くのだろう。

しかし、ロック畑のブルースが、よくここまで、フリーな演奏のベース・ラインを弾きこなせるなあ、と感心する。英国では「ロックとジャズの境界が曖昧」だが、ブルースのエレベのプレイを聴いていて、それが良く判る。

この盤の特徴として、ボーカル入りのナンバーが多く採用されていること、があげられる。ボーカルの雰囲気は「サイケデリック」

。当時、流行だったサイケデリック・ロックからの影響だろうが、フリー・ジャズにサイケデリック、当時、米国で、若者中心に人気のあった「フリーとサイケ」の組み合わせ、そのものを反映しているところが、なんだか「抜け目が無い」。が、先進的なフリー・ジャズが、信条の「ライフタイム」としては、あまり成功しているとは思えない。

この盤は、トニー・ウィリアムスが主宰する「ライフタイム」の音世界である、電気エフェクトがかかったエレギとオルガンをフロントにした「先進的なフリー・ジャズ」の成熟を聴くことが出来る。逆に言うと、これ以上の発展は難しいくらいの成熟度である。実際に、次作ではメンバー構成がガラッと変わることになる。
 
 

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2024年9月26日 (木曜日)

トニーの先進的なフリー・ジャズ

トニー・ウィリアムスのドラミングがお気に入りだった。純ジャズのドラミングも、クロスオーバーでのドラミングも、どちらも僕にとっては「お気に入り」。超ハイテクニックで叩きまくるが、どれだけ速く叩こうが、複雑に叩こうが、リズム&ビートはしっかりとキープされ、独特のデジタルチックなグルーヴもしっかり確保されている。フロント楽器によって、叩き方、叩く内容を変化させる器用さも素晴らしい。

The Tony Williams Lifetime『Emergency!』(写真左)。1969年5月の録音。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g), Tony Williams (ds, vo), Larry Young (org)。早逝のウルトラ・テクニカルなレジェンド・ドラマー、トニー・ウィリアムスが立ち上げたトリオ「Lifetime」のデビュー盤。

ギターに、ジョン・マクラフリン。マハヴィシュニヌ・オーケストラを立ち上げる前の「ライフタイム」への参加である。オルガンに、ラリー・ヤング。「オルガンのコルトレーン」と形容された、オルガンで、シーツ・オブ・サウンドとモーダルなフレーズを弾きまくる猛者である。ドラムには、もちろん、トニー・ウィリアムス。

ところで、この盤、「フュージョン・ジャズの先駆け」とか、「クロスオーバー・ジャズの発祥」などと評価されているが、僕は違うと思う。

まず、聴き手のニーズに合わせて、ソフト&メロウを基調とした、R&Bなどと融合したフュージョン・ジャズの先駆け、とは全く異なる内容だと思う。このライフタイムの演奏は、ソフト&メロウなんて論外だし、R&Bの影のかけらもない。何をもって、フュージョン・ジャズの先駆けと評価するのか、全く理解できない。

そして、基本ジャズとロックの融合がメインのクロスオーバー・ジャズの発祥、については、エレギを使用しているところはロックに似ているが、演奏全体のリズム&ビートは「ジャズ」の域を出ていない。それぞれの楽器のフレーズだって、ロックっぽいものは全く無い。ジャジーなフレーズがてんこ盛りである。
 

The-tony-williams-lifetimeemergency

 
冒頭のタイトル曲「Emergency」を聴くと、この演奏って、フュージョン・ジャズでもなければ、クロスオーバー・ジャズでも無い。この演奏は、電気エフェクトがかかったエレギとオルガンをフロントにした「先進的なフリー・ジャズ」である。

トニー・ウィリアムスのフリーなドラミングには、一定のリズム&ビートとグルーヴがキープされていて、このトニーのドラミングのビートに乗ってフリーに演奏することが「最低限のルール」のようで、トニーのドラミングがしっかりしているので、意外とフリー・ジャズな演奏に聴こえないのだが、この盤全体の演奏は「フリー・ジャズ」である。

そして、そんなトニーのドラミングに乗って、ギターのマクラフリンも、オルガンのヤングも「フリー・ジャズな演奏」を展開するが、二人のフリーな演奏は、限りなく自由度の高いモーダルなフレーズからスタートして、その延長線上の先でフリーに展開する手法に則っているので、意外とメロディアス。聴き通すことに「苦痛は伴わない」。

激情に駆られて、無手勝流に吹きまくる、馬の嘶きの様なフリーキーな吹奏とは一線を画する、マクラフリンとヤングならではのユニークなもの。

フリー・ジャズな演奏が基本なのだが、ビートとグルーヴがしっかりしているのと、フロント楽器のフレーズがモードから派生してフリーに展開する手法をとっているので、「聴かせる音楽」として成立しているのが、このライフタイムのフリー・ジャズの特徴であり個性である。

しかし、当時、これだけ尖った内容の電気エフェクトがかかったエレギとオルガンをフロントにした「フリー・ジャズ」をアルバム化したなあ、と感心する。

そして、このアルバムを制作&リリースしたのは、1950年代から、聴き手のニーズに合わせて「聴かせるジャズ」「聴いて楽しいジャズ」を制作してきた、大手ジャズ・レーベルの「ヴァーヴ」というから、驚きである。

しかし、よくヴァーヴがこんなに尖ったフリー・ジャズな盤を制作したなあ。当時の「時代」がそうさせたのだろうか。
 
 

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2024年7月27日 (土曜日)

マクラフリンの初期の名盤です

ジャズ・エレギのイノベーター&レジェンドの一人、ジョン・マクラフリン。彼は、ギタリストのキャリアの中で、何度か、そのスタイルを大きく変えている。いわゆる「進化」するタイプのギタリストで、その「進化」の跡は、後継に対して、一つの「スタイル」として定着している。

John McLaughlin『My Goal's Beyond』(写真)。March 1971年3月、NYでの録音。John McLaughlin (ac-g), Charlie Haden (b), Jerry Goodman (vln), Mahalakshmi (tanpura), Dave Liebman (fl, ss), Billy Cobham (ds), Airto Moreira (perc), Badal Roy (tabla)。

マクラフリンのソロ3作目。全編アコースティック・ ギターによる演奏がメイン。アルバム構成としては、LP時代のA面は、インド音楽への傾倒を露わにした、マクラフリンの新しいスタイルの演奏。マクラフリンの精神的指導者であるインドの導師、 シュリ・チンモイに捧げられている。B面は、マニアックなミュージシャンズ・チューンや自作曲を演奏している。

まず、当時のマクラフリンの最初の「進化」である、インド音楽への傾倒。とはいえ、完全にインド音楽している訳では無くて、インド音楽とジャズロックの「クロスオーバー」な演奏と形容するのがしっくりくる。ただ、ジャズロックがメインの演奏に、インド音楽のフレーズとビートが濃厚に漂い、インド音楽とジャズロックの融合は「成功」している。

ジェリー・グッドマンのバイオリン、デイヴ・リーブマンのフルート&ソプラノ・サックスが効果的に、深淵で幽玄なスピリチュアルな響きを撒き散らし、バダル・ロイのタブラがインド音楽志向のリズム&ビートを一手に引き受ける。ヘイデンのベース、コブハムのドラム、モレイラのパーカッションが、ジャズロックなリズム&ビートをしっかりとキープする。
 

John-mclaughlinmy-goals-beyond

 
そんなインド音楽とジャズロックの「クロスオーバー」な演奏をバックに、マクラフリンのアコギがスピリチュアルに飛翔する。インド音楽のストレンジな響きに流されない、切れ味の良い、スピリチュアルなマクラフリンのアコギの響き。このマクラフリンのアコギがこのインド音楽の雰囲気濃厚な演奏をジャズロックに仕立て上げている。

LP時代のB面の演奏も実に興味深い。最初の1曲目「Goodbye Pork Pie Hat」は、英国ロックのオールド・ファンは懐かしさに駆られると思う。あのジェフ・ベックの名演の基になったであろう、このマクラフリンのアコギのパソーマンス。アレンジが後のジェフ・ベックの演奏とほとんど同じ。アコギでの切れ味良いスピリチュアルな弾き回しは、明らかにジェフ・ベックのエレギの演奏を上回る。

LP時代のB面は、2〜3分の小品ばかりだが、マクラフリンのアコギのパフォーマンスは申し分ない。このB面のアコギのパフォーマンスの優れた内容がマクラフリンの基本的個性であり、マクラフリンがジャズロック&クロスオーバー・ジャズのギター・レジェンドである所以だろう。ところどころ、コブハムによる様々なシンバルのアクセントが効果的に加わるところもなかなか「ニクい」アレンジである。

このアルバムでのジャズロック&クロスオーバー・ジャズでの「バイオリン」の導入は、英国のプログレッシヴ・ロックにも影響を与えた様で、ロバート・フリップ率いる、第3期キング・クリムゾンのバイオリンの導入にも繋がっている、と言われる。それも納得の「効果的なヴァイオリンの導入」も見事。

マクラフリンのエフェクトを駆使したエレギよりも、この盤でのアコギのパフォーマンスに、とことん感じ入ります。インド音楽への傾倒も興味深い内容ですが、僕は、この盤でのマクラフリンのアコギのパフォーマンスに、ギター・レジェンドとしての「凄み」をビンビンに感じます。
 
 

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2024年7月26日 (金曜日)

サイケデリックなジャズ・ロック

ジョン・マクラフリンのエレギは、ジャズに軸足をしっかり残した、先鋭的で革新的なエレギで唯一無二。ジャズ色の強いクロスオーバーなエレギなので、何故か我が国では人気は高くないが、ジャズ・エレギのイノベーターの一人として、絶対に無視できない。

John McLaughlin『Devotion』(写真左)。1970年2月の録音。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (el-g), Larry Young (org, el-p), Billy Rich (b), Buddy Miles (ds, perc)。ジョン・マクラフリンのソロ・リーダー作の2作目になる。

パーソネルを見渡すと、お気に入りのプログレッシヴなオルガン奏者、ラリー・ヤング。そして、ジミ・ヘンドリックスと共演歴のあるビリー・リッチ。ジミ・ヘンドリックスのバンド・オブ・ジプシーのドラマーであった、バディ・マイルス。ジミヘンゆかりのリズム隊が目を引く。

そして、この盤を聴くと、思わずニヤリ。これって「ジミヘン」やん。マクラフリン流のジミヘン・フレーズの嵐。演奏の基本は「サイケディック・ロック」をベースとしたクロスオーバー・ジャズ。

ジミヘンと共演歴のあるベースとドラムのリズム隊が「バンド・オブ・ジプシー」風のリズム&ビートを叩きまくって、演奏全体のサイケ色、ジミヘン色を色濃くしている。
 

John-mclaughlindevotion

 
1970年2月の録音なので、まだ、ジミヘンは存命していた時期の録音になる(ジミヘンは1970年9月にオーヴァードーズが原因で急逝している)。そういう意味では、この盤は、マクラフリンによる「ジミヘンへのオマージュ」を表明した企画盤とも解釈出来る。

さすがはマクラフリンといったエレギの弾き回しで、ジミヘンのオマージュ的な音作りではあるが、ジミヘンそっくりでは全く無い。ギターの基本テクニックはマクラフリンの方が上。

ロック的なグルーヴはジミヘンだが、マクラフリンはジャズロック的なグルーヴで応戦している。マクラフリンの弾き回しは端正で規律的。ジミヘンの弾き回しは適度にラフで直感的。アタッチメントによる音の加工も、両者、似て非なるもの。

マクラフリンのエレギとヤングのオルガンのフレーズは完全に「モード」。サイケ色に彩られたモーダルなフレーズをマクラフリンとヤングは弾きまくる。マイルスのアルバムやトニー・ウィリアムスのライフタイムでブイブイ言わせていた「呪術的でアブストラクトに捻れた」切れ味の良い、サイケデリックなフレーズの嵐。

適度なテンションも張っていて、サイケ色が強いながら、演奏全体は整っていて、理路整然としている。カッチリまとまった、しっかり作り込まれたサイケデリック・ジャズロックである。

音の雰囲気はいかにも「英国的」。ブリティッシュなサイケデリック・ロックの音の雰囲気や、プログレッシヴ・ロックの音の雰囲気をしっかりと漂わせている。こういうところが、英国のジャズロック、クロスオーバー・ジャズならでは個性であり、僕はとても気に入っている。
 
 

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