唄うケニー・バレルは素敵です
ジャズには「異色盤」と呼ばれる、こんなアルバムあったんや、なアルバムがある。本職の楽器以外に、玄人裸足の別の楽器があって、それをメインにしたリーダー作とか、純ジャズ志向の硬派なジャズマンが、いきなりフュージョン志向のリーダー作を出したり、とか、「異色盤」のバリエーションには事欠かない。
Kenny Burrell『Weaver of Dreams』(写真左)。1960年10月18日 - 1961年6月28日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g, vo), Bobby Jaspar (ts), Tommy Flanagan (p), Joe Benjamin, Wendell Marshall (b), Bill English, Bobby Donaldson (ds)。ボーカル入りのクインテット編成。
ボーカル入りのクインテット編成(5人編成)って、ボーカル入りだとセクステット編成(6人編成)じゃないのか、と直感的に感じる方は、ジャズに精通した「ジャズ者ベテラン」。
確かに、このセッションの楽器編成は、バレルのギター、ジャスパーのテナー、トミフラのピアノ、ベンジャミン or マーシャルのベース、イングリッシュ or ドナルドソンのドラム、の5楽器。ここにボーカルが入るから「6人編成」が正解、では無いのである。
実は、この盤でのボーカルは、漆黒アーバン&ブルージーなギタリスト、ケニー・バレル本人。つまり、ケニー・バレルがギターとボーカルを兼任しているのだ。ケニー・バレルが唄えるなんて、僕はこのアルバムを聴くまで、全く知らなかった。
全く知らなかった、として、この盤を初めて聴いた時、いきなりボーカル入りの「I'll Buy You a Star」が出てきて、まず「ああ、このアルバムって、ケニー・バレルの伴奏上手をアピールするアルバムかな」と思い、このボーカル、なかなか味があって上手い。誰だろう、この男性ボーカル、と思いつつ、全く、思い当たる節が無い。
「Weaver of Dreams」「The More I See You」「I'm Just a Lucky So-and-So」「A Fine Romance」「Until the Real Thing Comes Along」「That Old Feeling」「If I Had You」「Afternoon in Paris」「Like Someone in Love」など、渋い小粋なスタンダード曲を、丁寧にウォームにアーバンに唄い上げていく、上質なボーカル。
バレル本人が唄っていると知ったのは、このアルバムを聴き終えて、どうにもこのボーカルの主が判らなくて、降参とばかりにライナーノーツを見て、パーソネルを確認した時。いや〜、バレルがこんなに歌が上手いとは思わなかった。脱帽である。
バレルのボーカルを支えるバック・バンドの演奏も小粋。バレル本人の漆黒アーバン&ブルージーなギター、トミフラの伴奏上手のいぶし銀ピアノ、ジャスパーの寄り添う様な優しく力強いテナー、堅実なベース&ドラムに乗って、極上の、ボーカルを支え盛り立てる「伴奏上手な」バッキングが心地よく、思わず心がホンワカする。
これだけ、ボーカルが上手いのだから、もっとボーカルがメインのアルバムを出したら良いのに、と思うのだが、バレルはそうはしない。そこにバレルのギタリストしての強烈な矜持を感じる。でもまあ、それにしても、バレルのボーカルは上手い、良い。この盤、癒しの好盤として、今でも時々、CDプレイヤーのトレイに載ったりする。
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