2026年5月16日 (土曜日)

米国と欧州の接近の”今”を感じる

2023年晩秋、ニューヨークの名門クラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのレジデンス(ライヴ)期間中に、ニュージャージーの歴史的なヴァン・ゲルダー・スタジオにてレコーディング。ECMレーベルにしては珍しいスタジオ選択。ここでも、ECMレーベルの「米国ジャズへの接近」「グローバル・ジャズへの裾野拡大」を感じる。

Joe Lovano & Marcin Wasilewski Trio『Homage』(写真左)。2023年11月18日、米国ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのヴァン・ゲルダー・スタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、Joe Lovano (ts, tarogato, gong), Marcin Wasilewski (p), Slawomir Kurkiewicz (b), Michal Miskiewicz (ds)。ECM Recordsから、2025年4月25日のリリース。

このアルバムでは、ECMレーベルの音の「今」の一端を感じる事が出来る。ジョー・ロヴァーノは米国のサックス奏者。圧倒的な極太のダークトーン、伝統とアヴァンギャルドの融合がロヴァーノのサックスの個性なのだが、出てくる音の響きは当然「米国的」。

しかし、ロヴァーノは、ECMレーベルでの録音の時は、ECMの音のカラーに合わせて、音数を絞り、空間の響きを大切にした「静かでスピリチュアルな祈り」のようなパフォーマンスを展開する。米国的な「音の質」で、ECMレーベルライクな「音」を紡ぎ出す。いわゆる「米国ジャズの欧州ジャズへの接近」である。これが、聴いていて興味深く、最近のロバーノのECM盤を聴く最大の楽しみになっている。
 

Joe-lovano-marcin-wasilewski-triohomage  
 

マルチン・ボシレフスキ・トリオは、ポーランドが世界に誇る、現代最高峰のピアノ・トリオの一つ。このトリオの音楽性は「ヨーロッパ・ジャズの極み」とされる、静寂とリリシズム、ダークで、深く、スピリチュアルな表現力が個性。加えて、ユニークなのは、ジャンルを超えた「ポップ・センス」。ポップ・ロックの楽曲を、原曲の良さを活かしつつ、完全に自分たちのディープなジャズの世界観に染め上げるのに長けている。

ジョー・ロヴァーノの「豪快で太いアメリカン・サックス」と、マルチン・ボシレフスキ・トリオの「繊細で透明感のあるヨーロピアン・ピアノ」が出会い、化学反応を起こして、叙情的な美しさをベースにしつつ、本作ではより自由で広がりのある「インプロヴィゼーション」と、メンバー間のスリリングな「インタープレイ」を展開している。

ロヴァーノの音数を絞り、空間の響きを大切にした「静かでスピリチュアルな祈り」のようなパフォーマンスが、マルチン・ボシレフスキ・トリオの静寂とリリシズム、ダークで、深く、スピリチュアルなリズム・セクションをバックに、ECMレーベルの独特の「限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした音世界」に染め上げられ、朗々と叙情的に展開されていく。

マルチン・トリオ本来の美しくポップなメロディ・ラインをあえて少し崩し、欧州的な音の響きを米国的に少しチューニングし、ロヴァーノが得意とする「自由に流れるような即興演奏」や「大胆な音の掛け合いによるインタープレイ」に軸足を置いた、非常にスリリングで冒険的な内容になっている。まさに、ECMレーベルの「今」を感じることができる好盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

2026年5月14日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・321

ジャズを聴き始めた頃から、ディー・ディー・ブリッジウォーター(以降「ディーディー」)のボーカルがお気に入りである。圧倒的なスキャット能力と即興性、ドラマチックな表現力と声量、多彩なジャンルを内包するスタイル、圧倒的なエネルギーと迫力。伝統的なジャズの技術と圧倒的なエンターテインメント性を融合させたボーカルスタイルは、リアルタイムでずっと愛聴してきた。

Dee Dee Bridgewater and Bill Charlap『Elemental』(写真左)。2025年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Dee Dee Bridgewater (vo, produce), Bill Charlap (p)。現代の女性ジャズ・ボーカリストの重鎮、ディー・ディー・ブリッジウォーターと、現代のネオ・バップなピアニスト、ビル・チャーラップとのデュオ・コラボレーション盤。久し振りにディーディーの個性を聴いた。

2019年から始まった2人のライブ活動、とある。この盤は、2019年から始まった二人のデュオ・コラボレーションの集大成の様なアルバムなんだろう。ピアノだけを伴奏にジャズ・ボーカルを唄い上げる。これって、簡単そうに見えて、ボーカルからしてもピアノからしても、意外と難しいのだが、この二人は濃密な一体感、打てば響く共鳴感、お互いがお互いを高め合う相互な化学反応が、収録された音から醸し出されていて、思わず引き込まれる。
 

Dee-dee-bridgewater-and-bill-charlapelem

 
ディーディーのボーカルは相変わらず見事である。ディーディーのボーカルの個性が溢れんばかりに伝わってくる。「原曲のメロディ」に立ち返る、彼女ならではの円熟の表現。深みを増した「低音域」とダイナミクス。そして、伴奏がピアノだけというところから、人声を「打楽器や管楽器」に変える圧倒的な技術を聴かせてくれている。

そして、現代のネオ・バップなピアニスト、ビル・チャーラップの歌伴ピアノが絶品。チャーラップは明確なバップ・ピアノで、ディーディーの圧倒的なエネルギーと迫力のあるボーカルに相対し、ディーディーのボーカルをがっちりとサポートし、ガッツリと鼓舞する。彼女の熱くダイナミックなボーカルが、チャーラップの繊細で端正なバップ・ピアノと合わさることで、極上の緊張感と調和を生み出している。

ディーディーの感情と芸術性のすべてが剥き出しになった素晴らしい内容のアルバム。チャーラップの歌伴としてのバップ・ピアノの優秀性が露わになった素晴らしい内容のアルバム。「お互いが主役であり伴奏者である」という対等な対話、そして一瞬の隙もない緊張感と遊び心の共存。これ、近年のボーカルの優秀盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年4月29日 (水曜日)

”新局面を迎える” 浅利史花です

プロ活動10周年を迎える浅利史花が、伝統的なオルガン・ジャズの系譜を受け継ぎながら、新たなステージへと踏み出した意欲作。これまでのキャリアを土台にしつつ、タイトルには、次の10年に向けて「新しいフェーズ(段階)」へ踏み出すという決意が込められている、とのこと。「伝統への敬意と、自分らしい新境地の融合」がテーマ。

Fumika Asari『Enter A New Phase』(写真左)。2026年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、浅利史花 (g), 長田信慶 (org), 柳沼佑育 (ds), ゲストに, 江澤茜 (as, : trk 4,6,8)。 日本のジャズギタリスト、浅利史花(あさり ふみか)のサード・アルバム。基本はギター・オルガン・ドラムの「OGDトリオ」スタイルで、一部楽曲にサックスが加わる。

今作の最大の特徴は、全編を通してオルガン・ジャズのスタイルを採用している点。伝統的で一番基本となる、ピアノ入りのギター・カルテットをメインにやってきたが、端正なバップスタイルの浅利のギターがあまりに綺麗過ぎて、伝統的なピアノ入りギター・カルテットでは、ジャズ・ギター独特のアーバンでジャジーでファンキーな雰囲気が立ち上がってこない。
 

Fumika-asarienter-a-new-phase  

 
そこで、このギター・オルガン・ドラムの「OGDトリオ」スタイルである。まず、オルガンが効いている。オルガンのファンキーでジャジーなグルーヴが、浅利のギターにファンクネスをふんわり塗して、浅利のギターがよりジャジーに響く。この「OGDトリオ」スタイルの採用が、浅利のギターに新たな魅力を付加した。そんな雰囲気がダイレクトに伝わる内容。

収録曲はスタンダード・カバー4曲+浅利オリシナル4曲の全8曲を収録。オリジナル曲は、当然、浅利のギターが映える曲で良い感じなんだが、やはり、スタンダード曲の「You Don't Know What Love Is」や「I'll Close My Eyes」の彼女独特の解釈とアレンジが現代的でグッド。決して、過去の成果に引き摺られていないところがグッド。

江澤茜のアルト・サックスのゲスト参加も効いている。演奏全体のファンキー度が上がって、浅利の端正で流麗なギターが浮き出てくる様な、不思議なアレンジ効果を生んでいる。オルガンとアルト・サックスの参加で、浅利のギターにファンクネスがふんわり被って、浅利のギターが正統派ジャジーなバップ・ギターにステップアップしている。3枚目のリーダー作。浅利のギターはその個性を確立した感がある。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

2026年3月18日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・317

ライヴ盤としての前作『Footprints Live!』は、それまでのショーター・ミュージックの最終到達点であり、最高到達点であった。ショーターの自作曲の、ショーターのアレンジによる、ショーターを振り返る為のライヴ盤だった。

前作のスタジオ録音盤『Alegria』は、それまでのショーター・ミュージックの最終到達点であり、最高到達点を示した『Footprints Live!』の音世界に、ワールド・ミュージックの音要素を織り込んだ、コンテンポラリーな純ジャズ的内容になっていた。

Wayne Shorter『Beyond the Sound Barrier』(写真左)。北米、ヨーロッパ、アジアを巡るツアー中の、2002年11月から2004年4月にかけてのライヴ録音。2005年のリリース。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ss, ts,arr), Danilo Pérez (ac-p), John Patitucci (b), Brian Blade (ds)、以上が「Footprints Quartet」。ツアー中のライヴ録音なので、基本的にゲストは無い。「Footprints Quartet」の4人だけのガチのライヴ・パフォーマンスが記録されている。

で、この『Beyond the Sound Barrier』は、これからのショーター・ミュージックの志向を示唆している様な内容になっている様に感じる。それまで、時々、顔を出していた「深刻なフレーズ」や「宇宙人との交信フレーズ」が無い。このライヴではショーターは地球人ジャズ・ミュージシャンとのみ、交信している。変に捻れたところが無く、ポジティヴで健康的なショーターのフレーズの数々が印象深い。
 

Wayne-shorterbeyond-the-sound-barrier

 
今の耳で振り返ると、上質の、当時、最高峰レベルの、現代の「ネオ・ハードバップ」志向の音世界なのが判る、ネオ・モードをベースに、フリーに、アブストラクトに、スピリチュアルに、変化しまくるカルテットのサウンド。明らかに、サウンド全体をリードしているのは、ショーターのサックスなのだが、ショーターの指し示す方向に、クイックにサウンドを変化させる、バックの3人、リズム・セクションのトリオの演奏力が凄まじい。

ショーターがそれまで、音志向として採用してきた「深刻なフレーズ」や「宇宙人との交信フレーズ」、「ワールド・ミュージックの音要素」が無い。質実剛健なネオ・ハードバップな、ネオ・モードのサウンドが、真剣勝負なライヴ演奏として展開される。

強いて言えば、ウェザー・リポートのデビュー盤『Weather Report』、セカンド盤の『I Sing The Body Electric』、そして『Live in Japan』あたりの、「コンテンポラリーでモーダルなエレ・ジャズ」を、アコースティックに焼き直したような音世界に、フリー、アブストラクト、スピリチュアルな音要素を加えた「ネオ・ハードバップ」なサウンドである。

ただ、不思議なのは、このライヴ盤で、これからのショーター・ミュージックの志向を示唆している様な内容になっている様にも関わらず、この後、8年間、この「Footprints Quartet」は、スタジオ盤もライヴ盤もリリースしなかったこと。

2013年に突如「Footprints Quartet」のライヴ盤『Without a Net』をリリースして、我々を驚かせた。この8年間のブランクについては今のところ不明。この佳作盤『Beyond the Sound Barrier』の位置づけが曖昧になってしまったのは残念だった。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から15年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年12月 9日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤 119

ふと、ジョージ・ケイブルスが聴きたくなった。ジョージ・ケイブルス(George Cables)。1944年11月生まれ。今年で81歳になるベテラン・ピアニスト。ブレイキーやロリンズ、デックスなどのサイドメンを務める。僕は、復帰後のアート・ペッパーとの共演で、彼の名とプレイを知った。

George Cables『Icons & Influences』(写真左)。2013年9月16日の録音。ちなみにパーソネルは、George Cables (p), Dezron Douglas (b), Victor Lewis (ds)。深化する醸熟ブルージーなピアニスト、ジョージ・ケイブルス、79歳でのパフォーマンス。デズロン・ダグラスのベース、ビクター・ルイスのドラムをバックのリズム隊に擁した、ピアノ・トリオ編成。

彼のピアノは、しなやかな硬質さを持ったタッチ、適度に多弁なインプロビゼーション。聴いていて、実に端正であり、実に「雅」であり「粋」である。とにかく、聴いていて楽しい、「メインストリーム・ジャズ」をバッチリ感じさせてくれるピアノである。この盤でも、そんなケイブルスの個性的なピアノがてんこ盛り。

良く唄うピアノである。スタンダード曲はもとより、ミュージシャンズ・チューン、そして自作曲と、テーマの旋律が流麗な曲を選んでいるのか、ケイブルスの良く唄うピアノが、更に映えに映える。
 

George-cablesicons-influences

 
しなやかな硬質さを持ったタッチが軽快に、爽快感を撒き散らしながら、シーツ・オブ・サウンド風の速くてモーダルなアドリブを展開する。ほんの少しだけ、指がもつれるところはあるが、全く気にならない。

ブルージーな展開がとりわけ絶品。適度に多弁だが、端正で典雅で粋な弾きっぷりで、決して俗っぽくならず、上質の「聴かせる」ブルース志向のピアノ・インプロビゼーションに仕立て上げられていて見事。ケイブルス流のモーダルな展開が、これまた唄うが如くの雅さで、とてもお洒落でクール。当時、79歳とは思えない溌剌さと明快さ。

そして、ケイブルスの「ケイブルス流」のモーダルな展開は「古くない」。過去の”どこかで聴いた様な」モーダルなフレーズはどこにも聴かれない。ケイブルスの79歳になっても、さらに深化する、ケイブルスのモード解釈が実に頼もしく響く。この盤は、ハードバップの焼き直しでもなければ、20世紀のモード奏法へのオマージュでも無い。

この盤のトリオ演奏は、現代の「ネオ・ハードバップ&ネオ・モード」。現代の若手中堅の「ネオ・ハードバップ&ネオ・モード」なイマージネーションに比肩する、ケイブルス流のモード・パフォーマンス。そして、ブルージーで適度に多弁なところが、ケイブルス独特の響きを醸し出して、現代のジャズ・シーンにおいても、唯一無二の個性を保持していて立派。この盤も謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」の1枚とさせていただきたい。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年12月 1日 (月曜日)

好盤・レイチェルZ『Sensual』

Rachel Z(レイチェルZ)。本名は「レイチェル・C・ニコラッソ」。アメリカはNYの生まれ。バークリー音楽大学、ニュー・イングランド音楽院を経て、プロデビュー。1980年代末に、マイク・マクニエリに認められて、人気フュージョンバンド、ステップス・アヘッドのメンバーとなって、認知度が飛躍的にアップした。

続いて1995年、ウェイン・ショーターの7年ぶりの新作となった「ハイ・ライフ」に全面参加。このアルバムの中でのレイチェルZは、キーボードとオーケストレーションを担当、高い評価を受けている。

Rachel Z『Sensual』(写真左)。2024年の作品。ちなみにパーソネルは、Rachel Z (p, electronica), Tony Levin, Matt Penman, Jonathan Toscano (b), Omar Hakim (ds), Mino Cinelu (perc)。レイチェルZの通算13枚目のリーダー作。

レイチェルZのピアノは、ピアノの幅、いわゆるスケールで聴かせるピアノ。演奏の幅の広さと奥行きと響きで聴かせる、実に味のあるピアノ。この盤では、そんな個性に、耽美的でリリカル、印象派的なピアノという個性が加わって、ピアノの表現の幅が更に広がっている。耽美的でリリカルなメロディーとハーモニー。ありそうで無い、意外と個性の強いピアノの響き。
 

Rachel-zsensual  

 
アレンジも秀逸。全9曲中、共作も含むRachel Zのオリジナルが8曲。ジャズ、ロック、フォーク、ワールドミュージックの音要素を融合させた、コンテンポラリーな純ジャズ志向にがっちりアレンジ、ポスト・バップなパフォーマンスが前面に押し出てくる工夫を凝らしたアレンジは、聴いていて、とても楽しい。

ベーシスト3人が交代で対応しているが、ジョナサン・トスカーノのベースが、レイチェルZとの相性という点で、頭一つ抜きん出ている。そして、オマー・ハキムの、ダイナミックで多彩なドラミングスタイルによる、魅惑的なリズム&ビートが、演奏全体を引き締め、鼓舞し、レイチェルZのピアノに寄り添う。

三者が生み出すグルーヴは、仄かに「新しい」。現代のポスト・バップな雰囲気。レイチェルZなりのアレンジが生み出す、レイチェルZ独特のグルーヴ。

レイチェルZは、1962年12月28日生まれ。今年で63歳。ジャズ・ミュージシャンとしては、大ベテランの域に入りつつある。しかし、日本盤としてのアルバムリリースがほとんど無いこと、彼女を積極的に推すネットショップも無いことが影響して、日本での認知度は今も低いまま。どうしてかなあ。このアルバムの内容、なかなかのものだと思うのだが。とにかく好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年11月30日 (日曜日)

ゴールドバーグ ”世界の果てにて”

アーロン・ゴールドバーグは、ジョシュア・レッドマン、ギレルモ・クライン、ジョン・エリス、ジミー・グリーン、オマー・アヴィタル(OAMトリオの共同リーダー)などのアーティストのリーダーおよびサイドマンとして、1990年代後半から2000年代初頭にかけてジャズ界から注目を集めてきた。

Aaron Goldberg『At the Edge of the World』(写真左)。2016年9月16, 21日の録音。ちなみにパーソネルは、Aaron Goldberg (p), Matt Penman (b), Leon Parker (ds, vo, perc, embodirhythm)。現代のトップ・ピアニストの1人、アーロン・ゴールドバーグがリーダーの、マット・ペンマン、レオン・パーカーとのトリオ作品。

アーロン・ゴールドバーグの、オーソドックスで耽美的、リリカルな音使いで、従来のハードバップなピアノかと思いきや、以前に無い、独特な「ならでは」のフレーズが出てきて、演奏全体を通じて「ネオ・ハードバップ&ネオ・モード」の先端を行く「ポスト・バップ」な音作りが、なんともはやユニーク。聴いていて飽きない。
 
Aaron-goldbergat-the-edge-of-the-world
 
アーマッド・ジャマルの演奏で有名な「Poinciana」から始まるが、コールドバーグの活力あるピアノが活き活きと響き渡り、新鮮なハーモニーとリズムの強烈さを生み出している。「Black Orpheus (Manha De Carnaval)」では、控えめなサンバのビートが心地良い、ブラジリアンな雰囲気満載の展開だが、レオン・パーカーのパーカッションが効果的に響く。耽美的でリリカルなサンバ・ジャズの響きが心地良い。

マッコイ・タイナー作の「Effendi」では、トリオ演奏の相互関係の中、結束力のあるインタープレイを繰り広げる。「Luaty」では、シンプルで典雅なワルツを奏で、「Tokyo Dream」では、芳しいブルースの香りを漂わせる。ハッチャーソンの「Isn't This My Sound Around Me」「When You Are Near」では、モード的なアプローチの中、ペンマンとパーカーが気持ちよさそうにスイングする。

アーロン・ゴールドバーグのピアノ、マット・ペンマンのベース、レオン・パーカーのドラムが、三位一体となってよくまとまった、有機的に結合した、なかなかのトリオ演奏である。共演を重ね、演奏内容を深化させてきた、優秀なピアノ・トリオであることが良く判る、名演を集めた佳作。聴き飽きることが無い。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年11月23日 (日曜日)

21世紀のマリアーノを堪能する

スーッと真っ直ぐな伸びの良い爽やか音。これがチャーリー・マリアーノのアルトサックスの個性である。そして、マリアーノは、ビバップ、ハードバップに留まらず、1960年代後半には、クロスオーバー・ジャズにチャレンジし、良好なパフォーマンスを残している。インド音楽にも興味を示し、マルチなアルト・サックス奏者という印象を残している。

Charlie Mariano『Not Quite a Ballad』(写真左)。2000年7月21日、ドイツのヴュルツブルグでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Alto Saxophone – Charlie Mariano (as), Bernhard Pichl (p), Rudi Engel (b), Bill Elgart (ds), Jonathan Seers (cond)、で、バックにヴュルツブルグ管弦楽団がつく。

もともとは、1998年11月、マリアーノはヴュルツブルク・フィルハーモニー管弦楽団と、長年の悲願であった、クラシックの交響楽団との共演を果たしている。そして、2年後、ヴュルツブルクで2度目のコラボレーションが実現、そのコンサートのライヴ音源が今回のライヴ盤である。そして、このライヴには、マリアーノのバックに「ニュー・オン・ザ・コーナー・トリオ」がリズム・セクションとして参加している。

そして、この「ニュー・オン・ザ・コーナー・トリオ」(Bernhard Pichl (p), Rudi Engel (b), Bill Elgart (ds))は、1994年以来、ヴュルツブルク管弦楽団と定期的にジャズ・プロダクションを共同で企画していて、今回、マリアーノとヴュルツブルク管弦楽団とのコラボレーションの中で、リズム・セクションを担うニュー・オン・ザ・コーナー・トリオが、マリアーノと管弦楽団の橋渡し的役割を果たしている。
 

Charlie-marianonot-quite-a-ballad

 
チャーリー・マリアーノのアルト・サックスの音色って、 とても流麗で渋いっていう印象が強い。 質実剛健、切れ味の良いよく響くブラス。そして、マリアーノのアルト・サックスは、なにより、音が「明るく耽美的」なバップなアルト・サックスという雰囲気で、音が力強く、良く通り、よく唄う。

このライヴ盤では、この明るく耽美的で、音が力強くてよく通り、よく唄う。そんなマリアーノアルト・サックスを、トリオを従えた「ワンホーン・カルテット」として、また、ヴュルツブルグ管弦楽団を従えた「ウィズ・ストリングス」として楽しむ事が出来る。

アルビノーニの「Adagio」では、そんなマリアーノのアルト・サックスが映えに映える。道化師のアリア「Vesti La Giubba」は、マリアーノのリリカルで耽美的でドラマチックな吹きっぷりが見事。インドの作曲家ラママニの「Yagapriya」は、インド音楽の雰囲気が織り込まれたユニークなもの。そしてタイトル曲の「Not Quite a Ballad」では、マリアーノのベスト・パフォーマンスを聴くことが出来る。

このライヴ盤は、マリアーノの「ワンホーン・カルテット」と「ウィズ・ストリングス」の両方を堪能することが出来、マリアーノのアルト・サックスの個性を存分に楽しむことができる好盤。「ニュー・オン・ザ・コーナー・トリオ」のトリオ演奏も、ヴュルツブルグ管弦楽団の演奏もレベルが高く、申し分無い。決して、メジャーな存在ではないが、良いライヴ盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年11月17日 (月曜日)

バトル・シリーズの3作目です。

相も変わらず、Smoke Sessions Records の新譜を聴く度に、まあ、よくこれだけコンスタントに、現代のネオ・ハードバップ、現代のコンテンポラリー・ジャズの好盤をリリースし続けているものだ、と感心する。しかも、ベテラン、中堅のジャズマンを登用して、時折、興味深いアレンジ、演奏編成を仕掛けるのだから、隅に置けない。

Eric Alexander & Vincent Herring『Split Decision』(写真左)。2024年7月4–6日の録音。ちなみにパーソネルは、Vincent Herring (as), Eric Alexander (ts), Mike LeDonne (p), John Webber (b), Lewis Nash (ds)。ヴィンセント・ハーリングのアルト・サックス、エリック・アレキサンダーのテナー・サックスの2サックスが2管フロントのクインテット編成。アレキサンダー&ハーリングのバトル・シリーズの3作目。

ジャズ界屈指のサックス奏者2人が、楽しくフレンドリーな「2管フロント」で、リラックスした、それでいて、大らかで力感溢れる2サックスのユニゾン&ハーモニー、時にサックスのバトル、時に、それぞれの歌心溢れるアドリブ・ソロを披露する。良い意味で競争力のある2人、活力のある、ハードバピッシュな演奏を競うが如く、時に、手を取り合って、展開する。
 

Eric-alexander-vincent-herringsplit-deci

 
この2管フロントのパフォーマンスを聴いて思うのだが、その2人の音には、もはやコルトレーンの影は無い。現代のネオ・ハードバックのサックスについては、コルトレーン・スタイルは「常識」となり、ジャズ・サックスの「基本」となった。コルトレーンの没後、約60年。ほぼ、そのサックス・スタイルの変遷をリアルタイムに感じてきたが、この盤の演奏を聴いていて、万感の想いがする。

名手2人のパフォーマンスである。悪かろう筈が無い。2人とも、それぞれの個性とテクニックのありったけを尽くして、サックスを吹きまくる。どこかで少しでもミスをしたら、相手に「切られる」、みたいな、心地良い集中を感じる良好なテンションと、和やかな熱気の中での素晴らしいパフォーマンス。Smoke Sessions Records の真骨頂である。

マイク ・ルドン、ジョン・ウェバー、ルイス・ナッシュのリズム・セクションも良好&好調。ルドンはマッコイ・タイナー張りのプレイで胸の空くようなプレイを展開、ウェバーのベースは堅実なビートを弾き出し、ナッシュのドラムが演奏全体のリズム&ビートをコントロールする。フロント2管を含めたクインテット、心地良いネオ・ハードバップを叩き出す。好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2025年11月 5日 (水曜日)

ハレルの現代の ”ポストバップ”

不思議な雰囲気のコンテンポラリーなネオ・ハードバップな作品。ハードバップ時代の流麗なテーマに、エレクトリックピアノで活気づけられたより現代的なグルーヴが融合した、ジャズの伝統と現代性を見事に融合した現代のコンテンポラリー・ジャズの秀作である。

Tom Harrell『Alternate Summer』(写真左)。2022年11月28日、12月27日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Tom Harrell (tp), Dayna Stephens (ts), Mark Turner (ts), Charles Altura (ac-g, el-g), Luis Perdomo (p, rhodes), Ugonna Okegwo (b), Adam Cruz (ds)。

リーダーはトランペットのトム・ハレル。デイナ・スティーブンス、マーク・ターナーのテナー、チャールズ・アルトゥラのギター、ベネズエラ生まれのルイス・ペルドモのピアノ、ローズ、ドイツ系ナイジェリア人のウゴナ・オケグウォのベース、アダム・クルーズのドラム のセプテット編成。

アルバムの中、トム・ハレルのトランペットは、いつもながら、素晴らしい表現力と深みのある音色で、楽曲全体のサウンドを統一し、一本の筋をグッと通している。
 今回のハレルは、伝統的なバップ・トランペットに終始しているが、出てくるその柔軟でどこか哀愁感漂う、耽美的でリリカルなトランペットは懐古趣味のそれではない。現代のネオ・ハードバップど真ん中の、現代のバップ・トランペットの音色であり、パフォーマンスである。
 

Tom-harrellalternate-summer

 
冒頭「Miramar」は、スタッカートを基調としたメロディーと、独創的な即興演奏を彩るブルージーでグルーヴィーなフレーズがユニーク。ハレルのトランペットの洗練された表現が見事、サックス奏者のターナーとキーボード奏者のペルドモが豊かでメロディアスな旋律を紡ぎ上げる。

2曲目の「Peanut」は、ファンクネスを心地良く漂わせるポスト・バップなチューン。3曲目のタイトル曲「Alternate Summer」は、温かみのあるさわやかなバラード。

以降、「Intermetzo」は、オケグウォの素晴らしいベースソロと官能的な響きが彩る、上品な3/4拍子の楽曲。「UV」は、アルトゥラのしなやかなエレギが飛翔する変則ブルース。「Chalcedon」は、魅惑的なメロディとペルドモのグルーヴ感溢れるキーボード・ワークが光るポストバップの秀曲。

そして、「Plateau」は、脈打つリズムのベースが大活躍。「Wind」は、躍動感あふれるインタープレイが見事、そして、陶酔感あふれる「Radius」で大団円。

ウォームな各楽器の音色、各楽器のバランスの良さ、録音も良く、聴いていて気持ちが良い。現代のネオ・ハードバップど真ん中、現代のコンテンポラリーなポストバップな音世界は、温故知新な音に満ちていて、飽きが来ない。良いアルバム、トム・ハレルの秀作です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

_Blue Noteの100枚 _ECMのアルバム45選 _この盤のドラムを聴け! _この盤のピアノを聴け! _こんなアルバムあったんや _ながら聴きのジャズも良い _クリスマスにピッタリの盤 _コンテンポラリーな純ジャズ _ジャケ買い「海外女性編」 _ジャズ・ギターの名演 洋楽編 _ジャズ喫茶で流したい _トランペットの隠れ名盤 _ビッグバンド・ジャズは楽し _ビートルズのカヴァー集 _ピアノ・トリオの代表的名盤 _フェンダー・ローズを愛でる _フュージョン・ジャズの優秀盤 _僕なりの超名盤研究 _和ジャズの優れもの _和フュージョンの優秀盤 _夜の静寂にクールなジャズ _音楽喫茶『松和』の昼下がり A&Mレーベル AOR Argo & Cadetレーベル Atlanticレーベル Bethlehemレーベル Blue Note 1500番台 Blue Note 4000番台 Blue Note 4100番台 Blue Note 4200番台 Blue Note 4300番台 Blue Note 4400番台 Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル DD・ブリッジウォーター ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル Jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 アイク・ケベック アキコ・グレース アジムス アストラッド・ジルベルト アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アントニオ・サンチェス アンドリュー・ヒル アンドレ・プレヴィン アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・ゴールドバーグ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イリアーヌ・イリアス イリノイ・ジャケー インパルス!レコード ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウォルフガング・ムースピール ウディ・ショウ ウラ名盤 エグベルト・ジスモンチ エスビョルン・スヴェンソン エスペランサ・スポルディング エディ・ハリス エメット・コーエン エリック・アレキサンダー エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルヴィン・ジョーンズ エロール・ガーナー エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オズ・ノイ オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ ガボール・ザボ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリス・ポッター クリフォード・ブラウン クルセイダーズ クレア・フィッシャー クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニーG ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン ゴンサロ・ルバルカバ ゴーゴー・ペンギン サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド・ジョーンズ サム・ヤヘル サム・リヴァース サンタナ サン・ラ・アーケストラ ザ・バンド シェリー・マン シダー・ウォルトン シャイ・マエストロ シャカタク ジェイ & カイ ジェイ・ジェイ・ジョンソン ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジェリー・マリガン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジミー・ヒース ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・バリトン・サックス ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・ラージ ジョエル・ロス ジョシュア・レッドマン ジョナサン・ブレイク ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・コルトレーン on Atlantic ジョン・コルトレーン on Prestige ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ファレル ジョー・ヘンダーソン ジョー・ロヴァーノ ジーン・アモンズ スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン ステイシー・ケント ステップス・アヘッド スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・スティット ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャーリー・ヘイデン チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テッド・カーソン テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ドン・チェリー ナット・アダレイ ニルス・ラン・ドーキー ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハワード・マギー ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハービー・マン ハーブ・アルパート ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・シャンク バド・パウエル バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグ・ジョン・パットン ビリー・コブハム ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビル・ブルーフォード ビートルズ ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・アップチャーチ フィル・ウッズ フォープレイ フランク・ウエス フランク・シナトラ フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・アーヴィン ブッカー・リトル ブライアン・ブレイド ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザーズ プログレッシブ・ロックの名盤 ヘレン・メリル ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボビー・ハンフリー ボブ・ジェームス ボブ・ブルックマイヤー ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイク’・スターン マイケル・ブレッカー マイルス( ボックス盤) マイルス(その他) マイルス(アコ)改訂版 マイルス(アコ)旧版 マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マハヴィシュヌ・オーケストラ マルグリュー・ミラー マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・5 マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モンティ・アレキサンダー モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラムゼイ・ルイス ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラリー・ヤング ラルフ・タウナー ランディ・ブレッカー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レイ・ブラウン レジェンドなロック盤 レス・マッキャン レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロニー・リストン・スミス ロバート・グラスパー ロベン・フォード ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー ヴィンセント・ハーリング 上原ひろみ 北欧ジャズ 古澤良治郎 吉田拓郎 向井滋春 四人囃子 国府弘子 増尾好秋 大村憲司 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 松岡直也 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 阿川泰子 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー