2022年7月26日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・15

バド・パウエルは、モダン・ジャズ・ピアノの祖であり、ピアノ・トリオ・スタイルを確立させた、つまり「ピアノ+ベース+ドラム」の現代のピアノ・トリオ編成を定着させたピアニスト。ジャズ・ピアノを知る上では避けては通れないピアニストであり、パウエルのピアノを理解しておかないと、他のピアニストの個性や特徴が判らなくなる。

といって、パウエルのどのアルバムを聴けば良いのか、迷うところではある。ルーストの『バド・パウエルの芸術』が一番だが、これは内容が非常に尖っていて、ジャズ者初心者にとっては荷が重い。ブルーノートの『The Amazing Bud Powell Vol.1』だって、冒頭の「Un Poco Loco」の3連発には「ひく」。パウエルのピアノが嫌いになっては元も子もないので、まずはパウエルのピアノに親しむことが出来るアルバムを選ぶことになる。

Bud Powell『The Scene Changes : The Amazing Bud Powell Vol.5』(写真左)。1958年12月29日の録音。ブルーノートの4009番。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。パウエルの米国での正式リーダー作の最終盤である。編成は「ピアノ+ベース+ドラム」のピアノ・トリオ編成。
 

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冒頭の「Cleopatra's Dream(クレオパトラの夢)」が、我が国では異常に人気があって、僕がジャズを聴き始めた頃は、この曲をジャズ喫茶でリクエストするのは「ジャズのトーシロ(素人)」とされた(笑)。それほど、人気があって、判り易い内容なのだが、パウエルのピアノの弾きっぷりはかなり個性的であることが判る。全盛期はまだまだこんなものではないが、パウエルのピアノの先鋭的なところがしっかり捉えられている。

2曲目以降の演奏についても、パウエルはトリオ演奏であっても、ベース、ドラムに関しては「我関せず」。1人ピアノをバリバリ弾いて突っ走るタイプなのだが、この盤ではしっかりとベース、ドラムの音を聴きながら、バップなピアノを弾き進めている様子が良く判る。いわゆる「パウエルだけが尖った」ところがこの盤には無い。パウエルのピアノがとても聴き易いのはそのせいだろう。

この盤は、バド・パウエル入門盤として最適、というか、この盤しかない、と思う。確かにこの盤は、バド・パウエルの全盛期を捉えた演奏では無い。しかし、当時として革新的なジャズピアノとしての、右手・左手の使い方が実に良く判る、パウエルの個性を理解するのに十分な内容を維持している。ゴスペルチックな「Borderick」、カリプソチックな「Comin' Up」など、当時のパウエルが「過去の人」になっていないことが良く判る。
 
 

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2022年2月27日 (日曜日)

後期パウエルの「いいところ」

Twitterの「今日のラスト」で、久々にバド・パウエル(Bud Powell)を聴き直していて、やっぱり、モダンジャズ・ピアノの基本はバドやなあ、と改めて感心した。フロントの旋律楽器としてホーンライクな弾き回し、リズム・セクションに回った時の絶妙なバッキング。どれもが、現代のジャズ・ピアノに繋がる「基本中の基本」のスタイルである。

バリバリ弾きまくるバドも凄く良いが、僕は1953年以降、退院後のパウエルがより好きである。絶望的な健康上の問題はあったが、バドのキャリア後半のピアノは、リラックスして楽しんで弾いていて、どこか優しさとジャズ・ピアニストとしての矜持を感じるのだ。全盛期に比べると指は回らない、でも、イマージネーションはより豊かになっている。

Bud Powell『Inner Fires』(写真左)。1953年4月5日、ワシントンD.C.におけるライヴ音源。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), Charlie Mingus (b), Roy Haynes (ds)。1982年に発掘されたプライベート音源で、僕に取って、LP時代、リアルタイムで聴いたバドである。バドお得意のトリオ演奏。
 

Inner-fires_1

 
冒頭の「I Want to Be Happy」は従来のバドを彷彿とさせる。「Salt Peanuts」「Woody n’You」「Little Willie Leaps」などのバップ・チューンはお手のもの、「Somebody Loves Me」「Nice Work If You Can Get It」等の歌ものについても快調に弾き回している。

バドの力強いタッチが良い。時期的に見て、体調が良かったのだろう、全編、快調に飛ばしている。イントロ部分やアドリブの弾き回しなど、イマージネーションは豊か。指が回らないところはあるし、ミスタッチもある。完璧な全盛期からはほど遠い、という辛口の評価もあろうかと思うが、ほど遠いとは言え、それでも、ジャズ・ピアノの水準としてはかなり高い。

音質がイマイチだが、1953年以降の後期バド・パウエルの「いいところ」を聴き取れる優秀盤だと思う。ジャケがジャズ盤にしてはとびきり前衛的で、かなり「引く」が、意外と違和感が無い。意外と当時のパウエルのイメージを上手く表しているのかもしれない。ちなみに、ラストに入っているインタヴューは、パド・パウエルの貴重な生の声です。
 
 
 
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2021年12月 2日 (木曜日)

久し振りの「パウエル節」である

昔に活躍したジャズマンを起用してスタンダード曲を演奏させる、そんな「昔の名前で出ています」的なアルバムを制作してリリースする。ヴィーナス・レコードの十八番であるが、そう言えば、欧州の老舗ジャズレーベル、スティープルチェイス・レーベルも同じ様なアルバム作りをしていたような気がしてきた。

米国のジャズ・シーンの居心地が悪くなり、欧州へ移住した一流ジャズマンにリーダー作制作の機会を与え、数々の優秀盤を世に送り出したのが、スティープルチェイス・レーベル。まあ、こちらの場合、日本人好みのスタンダード曲やバラード曲などは演奏させなかったが。ただ、アプローチは似たようなところがあって、僕はこのスティープルチェイスの「昔の名前で出ています」的なアルバムが好きだ。

Bud Powell Trio『1962 Stockholm Oslo』(写真左)。1〜5曲目が、1962年3月、ストックホルムでの録音。6曲目から9曲目までが、1962年11月、オスロでの録音。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), Erik Amundsen (b), Ole Jacob Hansen (ds)。ベースのエリック・アムンゼン、ドラムのオレ・ヤコブ・ハンセンは、共にノルウェー出身。
 

1962-stockholm-oslo_20211202220501 

 
リーダーでピアノ担当のバド・パウエルは、お馴染み「モダン・ジャズ・ピアノの祖」と呼ばれる早逝の天才ピアニスト。パウエル派1959年、パリに移住している。その欧州滞在の機会を捉えて、スティープルチェイスは、パウエルのリーダー作を録音している。「at the Golden Circle」シリーズがつとに有名。今回の『1962 Stockholm Oslo』の前半5曲は、その「at the Golden Circle」シリーズの録音の2日前、同じく「Golden Circle」での録音とのこと。

このアルバムでのパウエルは体調はまずまずだったのでは無いか。寛いだ雰囲気で、お馴染みの癖のあるタッチとノリで、パウエルは鼻歌を唄うかの様にピアノを弾き進めている。全盛期の切れ味抜群、何かが取り憑いたようなイマージネーション溢れるアドリブは望むべくもないが、なかなか聴き心地の良い「パウエル節」を堪能させてくれる。難しいこと言いっこ無しで、パウエルらしい弾きっぷりを楽しませてくれる。

全盛期を過ぎたとは言え、パウエルの個性はまだまだ尖っていて、唯一無二のバップ・ピアニストという点で人後に落ちない。今回のアルバムや「at the Golden Circle」シリーズの様に、普段着の寛いだパウエルが、気持ちの赴くままに、バップなピアノを気持ちよさそうに弾く。それで良いではないか。歴史を変えるような名盤な内容では無いが、久し振りに「パウエル節」を楽しませてくれる好盤だと思う。
 
 
 
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2021年4月27日 (火曜日)

パウエルのプロ魂と優しさと。

バップ・ピアノの祖、バド・パウエル(Bud Powell)。ビ・バップの祖、チャーリー・パーカーについて「1950年代のパーカーは駄目」と評価されていたが、意外とそうではない。パウエルについても、ブルーノート・レーベルに残したリーダー作については「ピークを過ぎた演奏故、内容はイマイチ」とされている。が、どうして、今の耳で聴くと、なかなか味のあるリーダー作を残してくれている。

『The Scene Changes: The Amazing Bud Powell, Vol.5』(写真左)。ブルーノートの4009番。1958年12月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。パウエルお得意のピアノ・トリオ編成。ビ・バップでならした、パウエル馴染みのリズム隊を採用していない。

ハードバップ畑のファースト・コール・ベーシスト、ポール・チェンバースと、職人技ドラマーのアート・テイラーを当てているところが注目ポイント。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの深慮遠謀が見え隠れする。通常は、馴染みのリズム隊では無いので、へそを曲げて、やりにくそうにピアノを弾きそうなもんだが、パウエルは違った。

明らかに、ポール・チェンバースの先進的なウォーキング・ベースと、アート・テイラーの硬軟自在かつ変幻自在なドラミングに刺激を受けて、気合いを入れてピアノを弾いている様がアルバムから聴こえてくる。バックのリズム隊の供給するリズム&ビートにしっかりと乗って、ドライブ感溢れる、誠実なバップ・ピアノを聴かせてくれる。パウエルの「プロ魂」をビンビンに感じる。総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンとしては「してやったり」である。
 

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冒頭の超有名な「Cleopatra's Dream(クレオパトラの夢)」は、いきなり前奏無しに、印象的でキャッチャーなテーマが入ってくる仕掛けと全編マイナー調で貫く潔さで「日本人受け」がとても良い。が、演奏の展開はシンプルで捻りは無い。人気の秘密は「曲の持つ旋律の良さ」だと思っている。パウエルはサラッと弾き倒して、シンプルに演奏を終える。

僕はそれより、2曲目以降のパウエルのパフォーマンスの方が聴き応えがあると思っている。2曲目の「Duid Deed」から、マイナー調のブルージーな曲が続くが、内容的にはストイックでアーティステックなフレーズと弾き回しが魅力。バリバリ弾き倒すパウエルはここにはいない。バップに流麗にダンディズム溢れるタッチで弾き込む。こんなパウエル、むっちゃ格好良いではないですか。

5曲目の「Borderick」などは、明るいゴスペルチックな旋律を持つ佳曲。冒頭の「Cleopatra's Dream」から、ずっとマイナー調の曲が続いてきたので、出だしの明るい音調のテーマを聴くだけで「おお〜っ」と思ってしまう。ゆったりとしたテンポで明るくハッピーに旋律を紡ぎ上げていくパウエルのピアノはとても優しい。7曲目のカリプソ調の「Comin' Up」のなかなか見事な出来で、思わずノリノリである。

この盤の収録曲は全てパウエルの作曲。コンポーザーとしての才にも長けていたパウエルの片鱗を感じることが出来る。ちなみにジャケットのパウエルの向かって右の子供はパウエルの実子である。優しいお父さんよろしく、レコーディングに連れてきたのだろうか。そう、この盤にはパウエルのプロ魂と優しさが溢れている。
 
 
 

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2021年3月19日 (金曜日)

静的な天才パウエルを押さえる

ブルーノート・レーベルの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは大のジャンキー嫌い。ジャズマンには「ジャンキー」が多い。クラブとかアルバムのレコーディングのギャラを麻薬に注ぎ込むジャズマンは数知れず。それでも、ライオンはどれだけ優れたジャズマンでも、ジャンキー、いわゆる麻薬常習者にはレコーディングの声をかけなかった。

ブルーノートはビ・バップからハードバップ時代の一流のジャズマンについては、ほとんど押さえているところが凄いんだが、チャーリー・パーカーの音源は無い。アート・ペッパーも無い。基本的に麻薬常習者はどれだけ優れたジャズマンでも御法度なのだ。健全な体と精神にこそ良い音が宿る。それを身上としていたのがアルフレッド・ライオンである。

『Time Waits: The Amazing Bud Powell Vol.4』。(写真左)。1958年5月の録音。ブルーノートの1598番。ちなみに、Bud Powell (p), Sam Jones (b), Philly Joe Jones (ds)。バド・パウエルお得意のトリオ編成。ブルーノートでのレコーディングらしく、ベースにサム・ジョーンズ、ドラムにフィリージョー。

 
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麻薬中毒やアルコール中毒に陥り、精神病院にも収監されていた時期を経て、健康状態が改善された時期の録音である。バド・パウエルについては、ブルーノートは、彼の健康状態が改善されたタイミングで、5枚のリーダー作を録音している。他のレーベルの録音と比較して、確かに全盛期に比べて天才的な弾き回しは無い。でも、個性と味のあるピアノはさすが。

派手な弾き回しや天才的な閃きアドリブなどを聴くことは皆無、どちらかと言えば、パウエルにしては「優しい」弾き回しが、破滅派天才ピアニスト、バド・パウエルのイメージと合わないのか、この「Vol.4」は、ブルーノートのパウエル盤で一番人気が無い盤。でも、この盤、精神状態の穏やかなパウエルの弾き回しを聴いている感じがする。とても優しく、とても誠実な弾き回しなのだ。

端正でジェントルで真摯なパウエルのピアノ。これってブルーノートでないと聴けない代物。このピアノが意外とパウエルの本質だったりして、と思って聴くと、本当にしみじみとしてしまう。動的な表現力も凄いが、静的な表現力も凄い。やはりパウエルは天才だった。そんな静的なパウエルを押さえたブルーノート。凄いなあ、と思う。
 
 
 
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2021年1月12日 (火曜日)

『The Amazing Bud Powell Volume Three - Bud! 』

バド・パウエルは「ピアノ・トリオ」の祖である。しかし、重度のジャンキーで様々な問題があった。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは大の「ジャンキー嫌い」。確かに、ジャンキーなジャズマンの演奏には、その良し悪しについてかなりの「バラツキ」があって、安定した状態での、そのジャズマンの真の実力と個性を記録するのが難しい。そこがライオンがジャンキーを嫌うところなんだろう。

通常ならばライオンは、絶対に、重度のジャンキーだったバド・パウエルのピアノを録音しようとは思わなかったと思う。しかし、バド・パウエルのピアノは「天才」のピアノ。その演奏スタイルは「ピアノ・トリオ」の祖と形容されるもの。重度のジャンキーながら、パウエルについては何とか記録しておきたい、とライオンは考え直したのだろうと推察している。

『The Amazing Bud Powell Volume Three - Bud! 』(写真左)。1957年8月3日の録音。 BNの1571番。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), Curtis Fuller (tb), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。基本はパウエルメインのトリオ編成。6〜8曲目に、カーティス・フラーのトロンボーンが入ったカルテット編成。トロンボーン1管のワンホーン・カルテットって珍しい。
 
 
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ライオンは、重度のジャンキーであったパウエルが、比較的まともな状態なのを見計らって録音したフシがある。ブルーノートの残したパウエルのパフォーマンスは、どれもがかなり整っている。多少のミスタッチはあれど、良い時のパウエルが紡ぎ出す独特のフレーズや高速な弾き回しを、ブルーノートはシッカリと捉えている。

この盤も例外では無い。比較的良い状態のパウエルが端正な音で記録されている。玄人好みの職人芸的リズム隊、ベースがポルチェン、ドラムがテイラーというのも、パウエルのパフォーマンスが良い状態になるよう配慮している。パウエルが苛つく事無く、自らのプレイに集中している感じが伝わってくる。

この盤は、比較的良い状態のパウエルのパフォーマンスを聴くことが出来る。グループサウンズとしての出来も良く、パウエルのソロ・パフォーマンスも申し分無い。破綻すれすれのスリリングなパウエルを求める向きには、この整って流麗なパウエルは物足りないかも知れない。しかし、我々、ジャズ・ピアノ者には、この盤でのパウエルは聴き易くて良い感じなのだ。僕はこの盤でのパウエル、かなりお気に入りです。
 
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて        【更新しました】 2020.10.07 更新。

  ・『Middle Man』 1980

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  ・ジョン・レノンの40回目の命日

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  ・僕達はタツローの源へ遡った

 

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2017年5月24日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・59

ピアノ・トリオを欲する耳になって久しい。毎日、ピアノ・トリオに耳を傾けている。ピアノ・トリオを聴き続けていると、結局、この二人のトリオ演奏に辿り着く。一人は「Bud Powell(バド・パウエル)」、もう一人は「Bill Evans(ビル・エバンス)」。どちらも、ピアノ・トリオを語る上で、絶対に外せない二人である。

今日はその外せない二人のうちの一人「Bud Powell(バド・パウエル)」のトリオ演奏を聴く。モダン・ジャズ・ピアノの父とされるバド・パウエルについては、正式なアルバムから逝去後の発掘音源まで、相当数のアルバムがリリースされている。

ちなみに、パウエルの最盛期は1940年代後半から50年代初頭にかけてとされる。しかしながら、麻薬やアルコールなどの中毒に苦しみ、統合失調症を患う50年代中期以降にも意外な好盤があるのだ。1940年代後半から50年代初頭は「煌めく」ような鬼気迫るハイ・テクニック、ハイ・テンションな演奏。しかし、50年代中期以降は味わいのある、フレーズを聴かせる様な演奏がメイン。

例えばこれ。Bud Powell『Swingin' With Bud』(写真左)。1957年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), George Duvivier (b), Art Taylor (ds)。聴けば判るのだが、程良いテンションの下、パウエルの適度にリラックスした魅力的なプレイが聴ける。唸り声も控えめ、全編に渡って破綻するところが無い。恐らく、体調面が良い時期の録音だったんだろう。
 

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選曲も良い感じで、リラックスした寛ぎの演奏とアップテンポの電光石火な演奏とが交互に出てきますが、まずは、このリラックスした寛ぎの演奏が良い。ハイ・テクニックに走ることは全く無く、テクニックは着実な面を前面に押し出して、フレーズが良く判る、タッチのしっかりとしたプレイが良い。

逆にアップテンポの曲は、この時期には珍しく破綻することは無く、指がもつれたりすることも無い。実にしっかりとしたハイ・テク ニックで弾きまくる。しかし、鬼気迫るハイテンションなものでは無い。良い感じでリラックスした堅実なもの。だから、パウエルの紡ぎ出す、魅惑的なアドリブ・フレーズがとってもよく判る。

パウエルはビ・バップの祖の一人とされるので、パウエルの持ち味は、「煌めく」ような鬼気迫るハイ・テクニック、ハイ・テンションな演奏だ、とされることが多いが、この盤でのアドリブ・フレーズの流麗さを鑑みると、意外と味わいのある、フレーズを聴かせる様な演奏がパウエルの本質ではないのか、と思ったりする。

排気量の大きい車がゆったりと悠然とした速度で走るかの様な、実に余裕度の高い、ビ・バップなピアノです。「オブリヴィアン」「ショウナフ」「ソルト・ピーナッツ」等、パウエル十八番の演奏も聴き応えがあります。バド・パウエルが、かの有名盤『クレオパトラの夢』の前年に残した隠れ好盤です。
 
 
 
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2015年5月10日 (日曜日)

ジャズ・ピアノのスタイルの基本

昔、クラシック・ピアノを8年間習っていたこともあって、ジャズにおいても一番好きな楽器はピアノである。自分でもある程度のレベルまで弾き込んでいたのと、最後の1年間、ジャズ・ピアノの基礎を教えて貰っていたことがベースになって、ピアノのプレイの良し悪しや難易度などは、他の楽器よりは体感できる。

ジャズ・ピアノにも、様々なスタイルがあるのだが、「これが決定打」というスタイルは無い。モダン・ジャズ・ピアノの基本は、やはりバド・パウエルのスタイルだろう。ジャズ・ピアノのスタイルに限定すれば、パウエルのスタイルが基本にあって、その対極として、ビル・エバンスのスタイルがあると感じている。そして、そのどちらのスタイルも甲乙付けがたい。様々なジャズ・ピアノを聴き進めていくと、必ず、基本に戻りたくなる時がある。そんな時はやはり、バド・パウエルだ。

バド・パウエルに戻る時に聴くアルバムは、Bud Powell『Jazz Giant』(写真左)。1949年2月の録音と1950年2月の録音の2セッションを併せたアルバム。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p) をリーダーとして、1949年2月の録音は、Ray Brown (b), Max Roach (ds)、1950年2月の録音では、Curley Russell (b), Max Roach (ds) が参加している。
 

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冒頭の「Tempus Fugue-it」を聴けば、このバド・パウエルのピアノのスタイルが良く判る。余計な装飾が全く無い、スピード感溢れるストレートなアドリブ・フレーズ。どうやって弾いているんや、と思わず唸りたくなる、聴くだけでは判らない高度なテクニック。甘さを排除したストイックなアレンジ。ジャズ・ピアノがアーティステックなレベルまでに昇華された素晴らしい演奏である。

この「Tempus Fugue-it」で提示されるバド・パウエルのピアノ・スタイルは、2曲目の「Celia」以降もしっかりと踏襲される。3曲目の「Cherokee」の弾き回しは、ジャズ・ピアノとしての一つの指針となるものだろう。4曲目の「I'll keep Loving You」については、ジャズ・ピアノとしてのバラード演奏としてのひとつの好例として聴かれるべきもの。

こうやって、この『Jazz Giant』を聴き直して見ると、やはり、ジャズ・ピアノとしての基本がギッシリ詰まった好盤ということが言える。つまりは、何時になっても、21世紀の今になっても、この『Jazz Giant』は、ジャズ・ピアノのスタイルの基本として、避けては通れない、必ず定期的に再確認されるべきアルバムである。

今回もまたまたバド・パウエルに戻っている。『Jazz Giant』を聴きながら、ジャズ・ピアノのスタイルの基本を確認している。この基本を確認することによって、最近の新しいジャズ・ピアニストのスタイルも十分に理解することができるのだ。

 
 

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2010年10月 4日 (月曜日)

改めてバド・パウエルを想う

ビル・エバンスのリーダー作の聴き返しをしていると、時々、バド・パウエルが聴きたくなる。ビル・エバンスのジャズ・ピアノを理解するには、バド・パウエルのビ・バップ・ピアノは避けて通れない。

バド・パウエル、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーらによって確立された「ビ・バップ」スタイルのジャズを、ジャズ・ピアノの分野に定着させ、「モダン・ジャズピアノの祖」と呼ばれる(Wikipediaより)。

ビ・バップは「テクニックとインプロビゼーションの閃き」を競う、演奏する側からのアプローチ。特に、フロント楽器、サックス、トランペットが中心で、旋律を奏でることが出来るピアノもフロント楽器としては、ビ・バップの中で花形楽器の一つであった。そのビ・バップのピアノの最高峰が「バド・パウエル」。

クラシック・ピアノの対極にある、譜面の無い、再現性の無い、意図的なフレーズの起伏、意図な抑揚の無い世界。感性と直感の世界。しかも、もともとジャズの大事な要素であった「楽しむための音楽、ダンスのための音楽」を全く排除した、演奏テクニックとインプロビゼーションの閃きだけを全面に押し出した「ストイックな音世界」。

バド・パウエルの『Jazz Giant』(写真左)を聴いて欲しい。アルバムの内容については、2009年5月2日のブログ(左をクリック)を参照されたい。このアルバムはバド・パウエルの、否、ビ・バップの「ピアノ・トリオ」の最高峰の演奏を聴くことが出来る。

頭の「Tempus Fugue-It」を聴けば判る。叙情性、ロマンティシズムを全く排除した、ただただ、演奏テクニックとインプロビゼーションの閃きだけを全面に押し出した、ストイックな、高テンションな演奏のみを追求する世界。そのストイックで硬質な叩き付けるようなタッチは「暴力的」ですらある。とにかく、テクニック至上主義、ビ・バップの世界がここにある。
 

Bud_jazzgiant

 
ドラムは正確なリズムで、バドの右手のハイテクニックな世界を支え、ベースは、バドが右手のハイテクニックに集中する為に、左手のベースラインを的確にサポートする。つまり、ドラムとベースは、ビ・バップ・ピアノの最高峰、バド・パウエルの演奏を惹き立たせる為だけにのみ存在する。

硬質なフレーズ、叩き付けるような「暴力的な」タッチ。ロマンティシズムを排除した、テクニックのみを追求した、あくまでも、どこまでも「ストイックな世界」。

そんな世界の中で、ふと「ロマンティシズムな香り」がそこはかと漂う、バドのピアノソロをフューチャーした、4曲目の「I'll Keep Lvoing You」。ここでのバドは「浪漫の塊」。バラードをソロで弾かせた時のバドは、時折「浪漫」な雰囲気を蔓延させる。ストイックな世界の中で、ポッカリと和やかな日だまりの様な「浪漫」な世界。これが、バドの「狡いところ」(笑)。この「浪漫」な雰囲気が不意にやって来て、バドに「やられる」。

バドの世界、ビ・バップ・ピアノの世界は、クラシック・ピアノと完全に対極にある世界。また、ビル・エバンスの様に、聴かせるジャズ・ピアノとは全く対極にある、インタープレイをベースに演奏テクニックを展開するピアノとは全く対極にあるジャズ・ピアノ。ピアノの和音の響きとベースのラインとの「バランスで展開するピアノ」とは全く対極にあるジャズ・ピアノ。

ビル・エバンスを、ジャズの歴史と共に、ジャズの演奏スタイルと共に理解するには、バド・パウエルの「ビ・バップ・ピアノ」は避けて通れない。ビル・エバンスのスタイルとは、全くの対極にあるバド・パウエルの演奏スタイル。ビル・エバンスを理解するには、バド・パウエルは避けて通れない。

そんなバド・パウエルのビ・バップ・ピアノ。手っ取り早く体験するには『Jazz Giant』が一番のお勧め。ちょっと音は悪いけど気にしない。なんとなくレトロではあるが、なかなかシンプルで小粋なジャケットデザインと共に、ジャズ者の皆さん全員に一度は手にして頂きたい、というか避けて通ってはいけない、ジャズ・ピアノの名盤中の名盤です。 
 
 
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2010年7月 4日 (日曜日)

ジャズ評論を鵜呑みにする無かれ

サッカーWC、準々決勝が終了しましたが、素晴らしい試合ばかりでしたね〜。特に、オランダとドイツのサッカーは抜きん出ている印象。もう既に完全な寝不足状態です(笑)。

後1週間、準決勝以降は、日本時間で朝の3時30分からの試合開始、しかも平日なので、当然、本業もあって、これからは体力勝負になります。本業とこのブログの更新とサッカーWCで、このところの僕の人生は精一杯です(笑)。

さて、今回のサッカーWCでも言えることですが、戦前の下馬評、サッカー評論家の事前評価ほど、当てになら無いものはない。しっかりと長年努力されている一部の評論家の方々以外は全く的外れ。これって、ジャズにも言えることです。昔の著名な評論家の意見をそのまま踏襲したままの「ジャズ評論」「アルバム評論」って結構ある。

これってジャズ者初心者の頃、困るんですよね。自分の耳で聴いて感じた印象と、ジャズ本の「アルバム解説」とが合わない時って、ジャズ者初心者の頃って、自らの感性を疑うんですよね。さすがに、ジャズを聴き始めて30年以上経った今では、自らの感性を疑うことは無いですけどね〜(笑)。

今回、久しぶりに聴いた『Sonny Stitt Bud Powell & J.J. Johnson』(写真左)。このアルバムだって、今までのジャズ本、ジャズ評論家の評価とは、また違った印象のある名盤である。

私の所有している最新のCDは全17曲を収録しているが、1~4曲目が「1949年12月11日」の録音、5~9曲目が「1950年1月26日」の録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Stitt(ts) Bad Powell(p) Curley Russell(b) Max Roach(ds)。10~17曲目は「1949年10月17日」の録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Stitt(ts) J.J.Johnson(tb) John Lewis(p) Nelson Boyd(b) Max Roach(ds)。

1949〜50年と言えば、ジャズ界は「ビ・バップ」という演奏様式が成熟した時期。その「ビ・バップ」のスタイルをジャズ・ピアノの分野に定着させ、現代の標準フォーマットである、ピアノ、ベース、ドラムスの「ピアノ・トリオ」形式を創始、「モダン・ジャズピアノの祖」とも称される、バド・パウエル。
 

Sonny_bud_jj

 
そのバド・パウエルの全盛期のピアノが、このアルバムの1〜9曲目で聴ける。よって、この『Sonny Stitt Bud Powell & J.J. Johnson』は、このバド・パウエルのピアノが堪能できる1〜9曲目ばかりが持てはやされる。しかし、確かにバド・パウエルのピアノには鬼気迫るものがあるが、他のアルバムにも、バド・パウエルの全盛期の演奏を捉えたものはある。

やはり、このアルバムは、リーダー格のSonny Stitt(ts)のバップ・テナーを愛でるアルバムだろう。鬼気迫る、全盛期の唯我独尊的なバド・パウエルのピアノを向こうに回して、悠然と気持ちの入った、ハイテクニックなテナーを吹き上げるソニー・スティット。その余裕あるハイテクニックなインプロビゼーションは、スケールが大きく、優雅ですらある。バドのピアノとスティットのテナーとの相対する対比。

ジャズ・ピアノという観点では、10〜17曲目、「1949年10月17日」の録音の John Lewis(p)のピアノも素晴らしい内容だ。鬼気迫る唯我独尊的なバド・パウエルの凄まじいピアノとは真逆の、落ち着いた展開の、実に優雅な雰囲気のジョン・ルイスのピアノ。ここでのルイスのピアノは、スティットのスケールが大きく、優雅なテナーにピッタリ。スティットのその余裕あるハイテクニックなインプロビゼーションには機転良く、転がるような高速フレーズで追従できる柔軟性を併せ持つ。

ジョン・ルイスの、間を活かしつつツボを押さえた優雅な展開、機微を呼んで転がるようにテクニック溢れる高速な展開、とのバランスの取れた緩急自在のインプロビゼーションは、バド・パウエルのピアノに十分対抗できるものだと僕は思う。もう少し、評価されても良いのでは・・・。 
 
この『Sonny Stitt Bud Powell & J.J. Johnson』のタイトルとはちょっと異なる、Sonny Stitt(ts) Bad Powell(p) John Lewis(p) の3人3様のテクニックと個性を愛でるべきアルバムでしょう。今までのジャズ本の評論の様に、1〜9曲目までのバド・パウエルが参加したセッションだけを聴くのは、実に勿体無い。ちゃんと10〜17曲目にも耳を傾け、日本では何故かあまり名前の挙がらない、ソニー・スティットのテナーに対して、アルバム全体の演奏を通して、その素晴らしさを再認識するべきアルバムだと僕は思います。
 
しかし、さすがは「Prestigeレーベル」(笑)、アルバム・ジャケットが滅茶苦茶怪しい。なんなんだ、このジャケットのイラストは・・・。その素晴らしい内容に比して、この滅茶苦茶怪しいジャケット・デザインとのアンバランスが、これまた、当時のジャズらしい、不思議な魅力を湛えたアルバムでもあります。 
 
 
 
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